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独り占めっ!

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 もしかして、静かにしてほしい、もうゆっくり眠りたいんだと、バーヌには迷惑だったのかもしれないと……思ったんだけれど、やめられませんでした。
 バーヌ……。名前を呼ばれて嬉しかったの?
 バーヌ……。私が名前を呼ぶことで、嬉しい気持ちで旅立つことができたの?
 もう、何もしてあげられないって思っていたけれど、私は……名前を呼んであげることができたってことかな……。
 ぽろぽろと涙が落ちた。
「ご、ご主人様、あの、あの、ご主人様が金狼と呼びたいなら、あの、僕はなんと呼ばれようと……」
 バーヌがおろおろとしています。
「違うよ。バーヌが、バーヌって呼ばれるのが好きだって聞いて、嬉しくなったんだよ」
 袖口でらんぼうに涙をぬぐって、バーヌの顔を見て笑った。
「ご主人様っ」
 唐突に、バーヌがぎゅーっと、私を抱きしめた。
 うー、またご主人様って言ったっ。でも、今回は許そうと思います。
 突然泣き出した私に驚かせたりいろいろしましたし。うん。
 あれ?
「ねぇ、バーヌ、ところで、結局、さっき不機嫌な顔してたけど、何が嫌なの?ちゃんと言って」
 もしかすると、バーヌを鑑定して不機嫌と単語を追加すると理由は分かるかもしれない。
 だけれど、そんな人の気持ちをのぞき込むような使い方はしたくない。というか、してはダメだよね。
 ……まぁ、十分人の過去とか覗くようなことしちゃってますが……。
「ルクマールさんには、もう一度お礼しなくちゃ……」
 そういえば、初めに冒険者になったときのおもらし画像見ちゃったり、水虫の秘密あばいちゃったり……よくよく考えると、けっこう申し訳ないことしちゃったよね。
 そのあと、看板作ってくれたり、ナインヘッドドラゴンとの闘いでも私のお願いいろいろ聞いてくれたし。
 ぶわっと、急に寒気が。
「ご主人様、僕に嫌なことは嫌だとはっきり言ってと言いましたよね?」
 う、寒気の原因はバーヌです。
 怒ってます。めちゃくちゃ怒ってます。
「絶対に、ルクマールを奴隷にしちゃ駄目ですからね、絶対に嫌ですっ!」
 は?え?い?
 どうして、ルクマールさんにお礼をするというつぶやきが、奴隷にするってことになるの?
 まさか、ルクマールさんが「奴隷にしてくれー」って言っていた願いをかなえてあげるのがお礼だと思ったのでしょうか?
 いやいや、さすがに、あれはちょっとした冗談でしょう。そんなことで簡単に人が奴隷になったり奴隷にしたりしないでしょう……。
 それに、そもそも……。
「奴隷にはしないし、そもそも奴隷を持つ気もないよ。バーヌのことも……頑張ってなるべく早く解放するから……ね?」
 にこっと笑って主張する。
 奴隷なんて言葉、口にするのも腹立たしい。
「僕は……」
 一転、バーヌが悲しそうな顔をする。
「僕を開放したら許さない……」
 ぶつぶつとバーヌがつぶやいています。
 だから、聞こえないよ。

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まったく、バーヌは……独占欲強いですね……

(`・ω・´)
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