幽モブ アダルトルート(完結)

北川晶

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後日談 夜会のあと③ (イアンside)

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     ◆夜会のあと(イアンside)

 クロウと、肌をぴったりと重ね合わせるだけで、心は満ち足りる。
 唇と唇、胸と胸が合えば、彼がより、近くにあると実感できて、嬉しくなる。

 しかし、体はもう、それでは物足りない。
 己のモノは、凶暴な熱をはらんでいた。

 クロウの華奢な体躯を抱き締めて、張り詰めた剛直を、そのつるりとした肌に、こすりつける。そして、彼の屹立にも、押しつけた。
 ビリッとするような、強い悦楽を感じたが。
 クロウもそのようで、感電したみたいにピクリと跳ねた。

 そうだ。これは。こうして、ふたりで高まり合って。感じ合う行為なのだ。

「イアンさ、ま…ぁ…も、イ、きそう…あぁ」
 クロウが、極めそうになり。我も、究極に高ぶっていて。
 すぐにも突き入れたい衝動に駆られてしまって。少し、急いでしまったかもしれない。
 クロウは官能を得ていたのに。性急に蕾をほぐしたことで、彼は眉間にしわを寄せ、つらそうな表情になってしまった。
 苦痛を強いたくなくて、指を抜こうとしたが…。

「ダメッ、痛くても、良いのです。イアン様が、満足していただけるなら。僕はイアン様の死神なのだから、これくらい我慢できます。イアン様に、もっと触れてほしいのです」
 黒い瞳を、小鹿のようにピカピカさせて。そのような健気けなげなことを言う。

 そんなの…落ちない男など、いるわけない。

 あぁ、可愛い。可愛くって、仕方がない。
 だが、我は。クロウの中に、ある種の必死さのようなものを感じ取った。
 今日決めないと、もう次はない、というような。
 そんなことはないのだが?
 我は、クロウを手放す気はないので。

 しかし、我もあせっていたのだ。
 早く、クロウを手に入れたくて。
 誰にも邪魔されないくらいの絆を、結びたくて。
 体の熱を、しずめたくて。

 そのように、お互いの気が、急いていたから。体が硬くなり、痛みをも生んだのかもしれない。
「わかった。ゆっくりしよう、な?」

 我は、クロウに痛みを感じさせないよう、できるだけ優しく、指をうごめかせた。
 そう、クロウは猫なのだから。
 優しく、そっと、柔らかく、だ。

 彼の表情を注視しながら、挿し入れた中指を、徐々に出し入れした。
 すると、クロウの体が、ビクリと反応する箇所があって。
 その部分をゆるゆると、指の腹で撫でると。クロウの瞳が、うりゅっと、潤んだ。

「イアンさ、ま。そこ…気持ち、い…」
 痛みに、こわばっていた体が。とろりと蕩けるように、蕾もほぐれてくるのが、指先で感じられた。
 挿入する指を増やし、同じ場所を刺激し続けると。粘膜が、指に柔らかく絡みついてきて。
 つらそうだったクロウが、快楽を覚えているのだとわかって。ホッとした。

「ん、ん…イアン様ぁ、あ、んぅ…ん」
 長いストロークで指を出し入れできるようになると、敏感な場所を指が通りがかるとき、クロウの声が甘くにじむようになった。

 もう、我慢できなかった。

 早く、クロウが欲しい。全身でクロウを感じたい。
 指を引き抜き、彼の足を左右に開くと、あらわになった蕾に、我は己をあてがう。
 最後の最後で、彼を壊さないよう、理性を総動員して、ゆっくりゆっくり進めていった。

「あ、イアン様が、中に、入って…んっ、あぁ…」
 クロウの目元が、大きく開いて、瞳が丸くなる。
 その表情は、痛々しくもあるが。
 どちらかというと、妖艶で。
 我を、一生懸命受け入れよう、包み込もうとするその気概が、彼を美しくも見せていた。

 それに。我は、これほどの悦楽を、今まで甘受したことはない。
 後孔に、入れ込む先から、突端を甘やかに締めつけられ。中に進むたびに、ねだるように、剛直を握り込まれるかのように、まといついて。
 その気持ち良さに、圧倒された。

「もっと、奥まで…ください」
 気を使って、ゆっくり進めていたというのに。その言葉は反則だと思う。
 もう、頭が真っ白になって、理性が吹き飛んでしまった。
 思わず、本能のままに、強く突き上げてしまう。

「はっ、あぁ…っ」
 いきなり深く挿入され、クロウは叫びを上げた。
「すまない、クロウ…」
 煽るようなことを言う、クロウも悪いと思いつつ。痛みを与えたくなかった我は、するりと謝罪の言葉が漏れてしまった。

 王は、簡単に謝罪を口にしない、と教育されていたというのに。
 愛する者の前では、そのような教育は、意味をなさない。

 つまり…我はクロウに弱いのだ。敵わないのだ。

 中におさめたまま、しばらく動かないようにして。彼の前髪を、そっとかき上げた。
 額の汗で、黒髪が張り付いて…苦痛に耐える彼がいたわしい。

 あぁ、可哀想に。
 早く痛みがおさまればいい。

 自分がもたらした責め苦だというのに、自分勝手にも、そう思ってしまう。
「謝らないでください、イアン様。ぼく、嬉しいんです。イアン様と深く、つながることができた。本当に、イアン様のものになれたのが。あの…気持ち良いですか?」

「あぁ、すごく、気持ちがいい」
 それしか考えられないので、素直に打ち明ける。

 すると、クロウはなぜか、泣きそうな表情に顔を歪めたが。
 すぐにニコリと、あの、我の大好きな微笑みを浮かべる。

「良かった。僕は男だから。イアン様が嫌悪を抱かないか、ちゃんと最後までできるのかって…不安だったのです」
 クロウは大きく手を差し伸べ、我の首にその手を回すと、キュッと抱きついてくる。

 本当に。こういうの、敵わないな、と思ってしまう。

 男を受け入れる、彼の方が、負担が大きく。現に今、つらそうだというのに。
 我を気遣って、こうして笑って見せるのだから。
 愛情が、どんどんと募っていく。
 もう、だいぶ、彼を愛しているのだが。

 毎秒、毎秒、好きになる。

「なにを馬鹿なことを。我がどれだけ、おまえを愛しているか、欲しがっているか、まだ、わかっていないようだな?」
 ならば、ひと晩かけて。我の、この、重くて熱い愛情を、これでもかというくらいに、浴びせないとならないな? クロウが、もう、お腹がいっぱいだと思うくらいに。

 彼をいじらしいと思うとき。我はいつも、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
 これは、せつないという感情なのだ。
 クロウと交流して、初めて知った感情でもある。

 痛いけれど、温かくて。苦しいけれど、そばにいたくて。
 そういうとき、我は。クロウをギュッと抱き締めたくなるのだ。
 救ってやりたいとか、守ってやりたいとか、慰めてやりたいとか。そんな優しい気持ちで心が満たされる。

 だが、そう思って。クロウを抱き締めたら。
 クロウに挿入していた己が、前後してしまい。剛直の表面すべてを粘膜でゾロリと刺激される、凄まじい官能が走り抜けて。声が喉に詰まった。

「はぁ…ん」
 クロウも、色っぽい声が漏れて。その声に、またギュンと己がたぎって。あの凶暴な熱が、再び生まれ出でる。

 というか、クロウっ。その声は、ダメだ。

 全世界の男がギュンとするだろう?
 我以外の前で、絶対にこんな声を出してはならぬっ。
 そんな怒りとともに、腰を引いて、クロウの中に突き入れる。
 その動きが、もう、良くて。そのことしか考えられなくなってしまった。

「ん、んっ、あ、んぅ、ん」
 腰を揺らして、奥へ突き入れるたびに。クロウが、こらえきれない喘ぎを漏らす。
 可哀想、とは思うのだが。
 抑止にはならない。むしろ、もっとクロウを乱したくなってしまう。
 これは、あれだ。クロウの困った顔が見たいと思う、嗜虐的な一面。
 そんなものが己の中にあることを、それも、クロウと出会って初めて知った事のひとつだ。

 その悪癖が、今、出ている。

 痛めつけたいのでは、決してないのだが。
 究極の快楽で、彼を狂わせたら。普段、物静かで清らかなクロウは、どんな表情を見せるのだろう。
 その欲が、頭から離れなくて。
 クロウの、いろいろな顔が見たくて。

 我は、クロウの中を、熱烈にかき乱した。

「やぁ…中、ジンジンするぅ。こ、こんなに? あ、イアン様ぁ、怖いいぃ」
 クロウは、我の胸に、額をスリスリして。身悶える。
 助けを求めているのかもしれないが。でも、甘えているみたいで、可愛い。

「どうした? クロウ。なにが怖いのだ? 痛いのか? 苦しいのか?」
 屹立に、我は触れていないが。クロウのそこは、しっかりそそり立っている。
 怖いと言っても、体の反応を見れば、不快ではないのだとわかる。
 だが、わかっていて、あえて、聞くのは。

 クロウの口から、淫らな答えを聞きたいからだ。

「い、痛くは、ないのですけど。でも、こんな感覚…は、初めてで。ぼく、イアンさまに、こんな…あぁ」
「こんな? どんななのだ? どうすると良いのか、教えてくれ? クロウ」

 とびきり、色っぽく。クロウの耳元に囁くと。
 はわぁ…とクロウは言葉にならぬ声を漏らした。

 クロウは我の声が好き、みたいなのだ。
 自分の声というのが、どういうものか、自分ではわからないが。
 クロウは時折、耳に囁くと、はわぁ…と言う。
 たぶん。好きという意味の、ため息だと思う。

「あ、あぁ…いい、です。いい、のぉ。イアンさまぁ、それ…あっ、い…いぃ…」
 クロウは恍惚として、黒い瞳を潤ませて。我をとろんとした眼差しでみつめる。
 しかし、感じていることを、清純な彼は恥ずかしく思うみたいで。真っ赤な顔を、両手で覆ってしまった。
 その仕草は、愛くるしいが。
 馬鹿な。その媚態がそそるというのに。もっと見せろ。

「ご、ごめんな、さい…ぼく、初めてなのに…は、はしたなくて」
「おまえが気持ちが良いことが、一番に決まっているだろう? そのように思うことはない」
 慰めるように、頬や目蓋に、小さくキスする。

「本当に、初めてなのですよ?」
 どうやら、淫乱だと疑われるのを、恐れているみたいだ。

 本当に、おバカさんだな。

 クロウほどに、清楚で上品な者が、淫乱などと。思うわけもないのに。
 それにこういう行為のときは、少しくらい奔放でもよいのだ。
 我の目の前でならな?

「わかっているとも。ふたりで一緒に、頑張って。ふたりで気持ち良いと思えるところまで、来たのではないか? 最初に、痛そうにしていたクロウのことを、忘れてはいない」
 言いながらも、我は腰の動きを止められない。
 締めつけてくるクロウの中を、じっくりと抜き差しし、その極上の悦楽を堪能する。

 だが、体の位置と、クロウと我の体格差により、まだ剛直のすべてをおさめられてはいなかった。
 我はクロウに、首にしっかり掴まっているように告げ、体を起こす。クロウの足を腕に引っかけて開かせたまま、彼を己の上に座らせた。
 体をつなげたまま、向き合って、寝台の上に座る体勢だ。

「うわっ、あ、あぁ…ふ、深いぃ」
 クロウは自分の体重と引力によって、剛直を根元まで受け入れた。

「今、我のすべてが、おまえの中にある。感じるか?」
 痛がるどころか、どこかうっとりした顔つきで、クロウは目を細めた。
 濡れたサクランボの唇が、やんわりと開いて。
 ガブリとしたい、衝動に駆られた。

「か、感じます。イアン様を…あ、ぁ…熱い。イアン様のように、猛々しくて。ぼく…」
 誘うように、クロウは吐息で囁いて。我の頬を指先で撫でる。
 まるで、この張り詰めた情熱を欲しがっているかのようで。
 体をゆるやかに揺さぶると。彼は、気持ち良さそうに背筋をそらした。

 でも、その感じ入る顔を、目の前でつぶさに、我に見られているのに気づいて。恥じらいに頬を染め。我の胸に顔を埋めて隠した。

 ヤバい。本当に、頭からバリバリと食べてしまいたいくらい、可愛いっ。
「か、噛んでも、よろしいですよ? ぼく、イアンさまに噛まれるの、好きぃ」
 今、上目遣いでそんなことを言ったら。命の危機だぞ? クロウっ。
 だが、お言葉に甘えて。我はクロウの首筋にやんわりと歯を立てた。

「は…ぁ。ふふ、イアン様」
 ゆるりと犬歯を柔肌に食いこませると。クロウは、ひそやかに笑って。我の頭を撫でた。
 その手の動きが、子供をあやすみたいに優しくて。
 本当に、我に噛まれるのが、好きみたい。そんなふうに錯覚してしまいそうだ。

 ずっと、我慢していた。クロウを食べたいという衝動を。

 細くて折れそうなクロウの首を、本気で噛んだりはしないが。
 どうしてか、我は。
 ハミハミカミカミと、口や歯でクロウの肌の感触を味わうのが好きで。腰が疼いて。ギュンと高揚するのだ。

 するとクロウも。中で我がみなぎるのを知覚して『は…ん』と可愛い声で鳴いた。
「お、おっきぃ…やぁ、しないでぇ…も、おっきく、しないでぇ?」

 それは無理な相談だ。
 というか、むしろズクズクと剛直を突き入れてしまう。

「大きくしたまま、突いては、ダメか? 我は、こうして…ずっとクロウの中をこすり続けたいのだが?」
「お…お許しを…へ、変に、なっちゃうから。き、気持ち良いの…だ、めぇ…」
 いやいやと首を振る。
 そんな可愛い仕草は、逆効果だというのに。

「イアン様の、意地悪ぅ。も、イ…イっちゃい、ますぅ」
「駄目だ。先に達してはならぬ」
 我の無情な命令に、クロウは唇をわななかせた。
 そのプルプルする唇が、美味そうで。
 我は大きな口を開けて、クロウの唇をひと口でぺろりと食べてしまう。

 我の膝の上に乗っても、クロウの目線は下にあるから。少し頭を下げなければならないが。
 御馳走を前にして、そのようなことは取るに足りない。
 頭を傾け、クロウの唇に食らいつく。そして、息をも奪うような、ねっとりとした濃厚なくちづけを仕掛けた。
 さらに、剛直を上下させるように腰を揺らし、クロウを体の上で弾ませた。

「ん、ん…んぁ…は、ぁ。んぅむ、ん、んっ」
 ベッドのきしむ音、情交の濡れた音が、室内に淫靡に響く。
 くちゅくちゅ、ギシギシ、律動するたびに鳴る淫らな音と、妖艶な息遣いが、ふたりの熱情を高めていった。

「で、出ちゃう…だ、だめぇ…」
 キスの合間に、クロウが音を上げた。
 激しい揺さぶりに耐えるため、クロウは我の首から手を離せないが。張り詰め切った屹立が、快楽の涙をしとどにこぼしていて。
 その感覚を、なやましく思って、我の腕に引っかけている足をもぞもぞ動かしている。

「出ては、ダメなのか?」
 含み笑いをしながら、聞くと。
 クロウは信じられないっ、とばかりに目を丸くした。

「い、イアンさまが、先に達しては、な、ならないとっ、言ったので。イアン様の、お、お許しが、なければ…」
 なにやら、涙目で、上目遣いで、うらめしげに、みつめてくる。
 もう…。今のおまえは、なにをしても可愛いから、怒ってもダメだぞ?
 それに、その従順さがいじらしい。

「いいだろう、達することを許す」
 我の言葉に、クロウは一瞬、笑みを浮かべる。
 だが我は、クロウの耳たぶをかじりながら。非情な言葉を囁いた。

「ただし、後ろだけでイけるなら、な?」
 そうして、我は再び腰を揺らして律動した。
 しかし、性体験が初めてのクロウには、後ろの刺激だけで極めるのは、難易度が高すぎたようだ。
 過ぎる快感に、身悶えているのに。達するには、局部への刺激が足りず。
 クロウはついに、泣き出した。

「す、すみませぇん、イアンさまぁ。で、できま、せんっ。ぼくぅ…あ、ぅ、い、イかせて、くださいぃ」
 きらめく涙を、ツッとこぼして。クロウは眉尻を下げた。

 クロウは、王家への忠誠の念が厚い。我の期待に応えられないことが、とても悲しいのだろう。
 謝りながら、我に甘えて懇願するクロウを見て。
 さすがに、可哀想になってしまった。

「そのように泣くんじゃない。閨でのことは、言葉遊びに過ぎないのだ。怒ったりしないから、泣きやめ?」
 なだめるように、クロウのこめかみや目蓋に、小さくキスを落とす。
 本気で可哀想だと思っているのだが。

 我は、萎えなかった。
 むしろ、クロウの泣き顔に。たぎる。

 滅茶苦茶に甘やかして。滅茶苦茶に乱したい。
 その相反する気持ちが、我の中に存在しているのだ。
 これは、愛と恋。なのかもしれないな。

「我の死神は、ピュアだから。今日は、勘弁してやる。だから、もう泣くな」
 ちゅっちゅっと、クロウのとがる唇や、濡れる目元に、慈愛のキスを贈り。手は、クロウの屹立を撫でた。
 硬くしなる、そこを。筋に沿って、指でたどり。
 ヌルヌルの穂先を、親指で丸くこする。
 指を、手のひらを、行き来させ。クロウの官能を引き出すように、愛撫した。

 とはいえ、我も。余裕の態度を装っているが。クロウから与えられる悦楽は、至福の極みで。もう限界が近かった。
 今も、我が屹立をしごくと。クロウの後孔がヒクヒクとうごめいて。
 我を、快楽の淵へと誘っているのだ。

「イアンさまぁ、イ、きます。あぁ、お許しを…許してぇ」
 クロウは、我の手に屹立を刺激され、その愉悦に溺れて。
 惑乱しているみたいで。許すと言ったのに、許してと、引き続き懇願している。

「ふふ、許すと言っているだろう? クロウ。許す。可愛い、クロウ」
 耳元で囁いてやると。クロウは歓喜の笑みを浮かべて。なやましげに、物欲しそうに、腰を揺らした。

「んん、い、いいのぉ。イアンさまぁ、好きっ。イアン様が、好きぃ」
 クロウの腰の揺らめきと、ビクビクとひくつく蕾のうごめきに、我は耐え。クロウが精を解き放つまで、屹立を刺激して、彼をうながした。
 そして、手の中の膨張を感じて、ひと際強く、しごく。

「いいぞ、クロウ」
「あぁ、んぁっ…ぁ」

 我の声に合わせ、クロウは思い切り、白濁をほとばしらせた。
 背をそらし、絶頂に身を震わせる。

 クロウに締めつけられる中を、二度、剛直で強く突き上げ。我も、情熱をクロウの中へ注いだ。
 精の奔流を体の中で感じたのか、クロウは、んッ、と甘い吐息をつき。
 そしてくったりと、我の胸に、身を預けた。

 お互いに、全力で駆け抜けたみたいに、荒い息をついている。
 小さな体で頑張ってくれたクロウが。我は、愛おしくて、愛おしくて。腕の中にキュッと、真綿で包むように、優しく、優しく、抱き締めた。

 この上もない歓喜に、満ちあふれている。
 体が浄化されたみたいに、清涼感があった。
 クロウとふたりだから、この素晴らしいひとときが持てたのだ、と。
 幸せだ、と。しみじみ思う。

 そんな充足感にひたっていたが。
 腕の中のクロウが、いつまでも身動きしないから。まずいと思った。
 クロウの中から、剛直を慎重に引き抜き、彼を寝台に横たえる。

「クロウ、大丈夫か? 初めての情交だというのに、無理をさせてしまったか?」
 比較対象は、あまりないが。我のモノは、クロウと比べると、かなり大きい。
 受け入れるクロウには、負担がかかっただろう。
 わかっていたし、セドリックからも無理させるなと言われていたのに。
 最中は、セドリックのことなど、全く頭の中になかった。

 反省していると、クロウは。ダメージを受け、身を起こせないながらも。顔を我に向けて、柔らかい、お日様の微笑みを浮かべた。

「いいえ? 僕は、イアン様に、愛を示したかったのです。最後まで、イアン様に抱いていただき、僕はとっても幸せです」
「…おいで」

 我も、クロウの隣に身を横たえ。腕を枕にするようにして、クロウを抱き寄せる。
 我の望みを叶えるために、一生懸命、尽くしてくれた。
 その身を捧げてくれた。
 可愛くて、健気で、綺麗な、我の花嫁。
 多幸感が満ちあふれ、クロウの背中をいたわるようにそっと撫でた。

「愛している。クロウ…愛している」
「イアンさまっ、ぼ、ぼくもっ、あ、あ…愛してますっ。す、す…しゅきぃ」
 ぎゅうっとクロウに抱きつかれ。
 我は、もう…本当に、本当に、雷が落ちてビリビリするくらいに、衝撃的に愛くるしくなって。可愛くて可愛くて…あぁ、語彙力が足りな過ぎて、もどかしいほどに、クロウが可愛かった。

 腕の中のぬくもりを、生涯大事にすると。我はこのとき、心に誓った。

 もう彼を、ひとりにはしない。
 自分は、王だが。その肩書がなければ。なにも持たない。なにも知らない。ちっぽけな人間だ。
 それを、今回の顛末で、我は重々承知させられた。

 だけど。クロウのことは。己の手で守りたい。
 ひとりの人間として。ひとりの男として。ただのイアンとして。
 愛する者を、この手の中に、そっと包んで。守るのだ。守っていきたいのだ。
 願うように。
 祈るように。

 我はクロウを、強く、強く、かき抱く。愛をいっぱい込めて…。

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