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後日談 夜会のあと③ (イアンside)
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◆夜会のあと(イアンside)
クロウと、肌をぴったりと重ね合わせるだけで、心は満ち足りる。
唇と唇、胸と胸が合えば、彼がより、近くにあると実感できて、嬉しくなる。
しかし、体はもう、それでは物足りない。
己のモノは、凶暴な熱を孕んでいた。
クロウの華奢な体躯を抱き締めて、張り詰めた剛直を、そのつるりとした肌に、こすりつける。そして、彼の屹立にも、押しつけた。
ビリッとするような、強い悦楽を感じたが。
クロウもそのようで、感電したみたいにピクリと跳ねた。
そうだ。これは。こうして、ふたりで高まり合って。感じ合う行為なのだ。
「イアンさ、ま…ぁ…も、イ、きそう…あぁ」
クロウが、極めそうになり。我も、究極に高ぶっていて。
すぐにも突き入れたい衝動に駆られてしまって。少し、急いでしまったかもしれない。
クロウは官能を得ていたのに。性急に蕾をほぐしたことで、彼は眉間にしわを寄せ、つらそうな表情になってしまった。
苦痛を強いたくなくて、指を抜こうとしたが…。
「ダメッ、痛くても、良いのです。イアン様が、満足していただけるなら。僕はイアン様の死神なのだから、これくらい我慢できます。イアン様に、もっと触れてほしいのです」
黒い瞳を、小鹿のようにピカピカさせて。そのような健気なことを言う。
そんなの…落ちない男など、いるわけない。
あぁ、可愛い。可愛くって、仕方がない。
だが、我は。クロウの中に、ある種の必死さのようなものを感じ取った。
今日決めないと、もう次はない、というような。
そんなことはないのだが?
我は、クロウを手放す気はないので。
しかし、我も焦っていたのだ。
早く、クロウを手に入れたくて。
誰にも邪魔されないくらいの絆を、結びたくて。
体の熱を、鎮めたくて。
そのように、お互いの気が、急いていたから。体が硬くなり、痛みをも生んだのかもしれない。
「わかった。ゆっくりしよう、な?」
我は、クロウに痛みを感じさせないよう、できるだけ優しく、指をうごめかせた。
そう、クロウは猫なのだから。
優しく、そっと、柔らかく、だ。
彼の表情を注視しながら、挿し入れた中指を、徐々に出し入れした。
すると、クロウの体が、ビクリと反応する箇所があって。
その部分をゆるゆると、指の腹で撫でると。クロウの瞳が、うりゅっと、潤んだ。
「イアンさ、ま。そこ…気持ち、い…」
痛みに、こわばっていた体が。とろりと蕩けるように、蕾もほぐれてくるのが、指先で感じられた。
挿入する指を増やし、同じ場所を刺激し続けると。粘膜が、指に柔らかく絡みついてきて。
つらそうだったクロウが、快楽を覚えているのだとわかって。ホッとした。
「ん、ん…イアン様ぁ、あ、んぅ…ん」
長いストロークで指を出し入れできるようになると、敏感な場所を指が通りがかるとき、クロウの声が甘くにじむようになった。
もう、我慢できなかった。
早く、クロウが欲しい。全身でクロウを感じたい。
指を引き抜き、彼の足を左右に開くと、あらわになった蕾に、我は己をあてがう。
最後の最後で、彼を壊さないよう、理性を総動員して、ゆっくりゆっくり進めていった。
「あ、イアン様が、中に、入って…んっ、あぁ…」
クロウの目元が、大きく開いて、瞳が丸くなる。
その表情は、痛々しくもあるが。
どちらかというと、妖艶で。
我を、一生懸命受け入れよう、包み込もうとするその気概が、彼を美しくも見せていた。
それに。我は、これほどの悦楽を、今まで甘受したことはない。
後孔に、入れ込む先から、突端を甘やかに締めつけられ。中に進むたびに、ねだるように、剛直を握り込まれるかのように、まといついて。
その気持ち良さに、圧倒された。
「もっと、奥まで…ください」
気を使って、ゆっくり進めていたというのに。その言葉は反則だと思う。
もう、頭が真っ白になって、理性が吹き飛んでしまった。
思わず、本能のままに、強く突き上げてしまう。
「はっ、あぁ…っ」
いきなり深く挿入され、クロウは叫びを上げた。
「すまない、クロウ…」
煽るようなことを言う、クロウも悪いと思いつつ。痛みを与えたくなかった我は、するりと謝罪の言葉が漏れてしまった。
王は、簡単に謝罪を口にしない、と教育されていたというのに。
愛する者の前では、そのような教育は、意味をなさない。
つまり…我はクロウに弱いのだ。敵わないのだ。
中におさめたまま、しばらく動かないようにして。彼の前髪を、そっとかき上げた。
額の汗で、黒髪が張り付いて…苦痛に耐える彼がいたわしい。
あぁ、可哀想に。
早く痛みがおさまればいい。
自分がもたらした責め苦だというのに、自分勝手にも、そう思ってしまう。
「謝らないでください、イアン様。ぼく、嬉しいんです。イアン様と深く、つながることができた。本当に、イアン様のものになれたのが。あの…気持ち良いですか?」
「あぁ、すごく、気持ちがいい」
それしか考えられないので、素直に打ち明ける。
すると、クロウはなぜか、泣きそうな表情に顔を歪めたが。
すぐにニコリと、あの、我の大好きな微笑みを浮かべる。
「良かった。僕は男だから。イアン様が嫌悪を抱かないか、ちゃんと最後までできるのかって…不安だったのです」
クロウは大きく手を差し伸べ、我の首にその手を回すと、キュッと抱きついてくる。
本当に。こういうの、敵わないな、と思ってしまう。
男を受け入れる、彼の方が、負担が大きく。現に今、つらそうだというのに。
我を気遣って、こうして笑って見せるのだから。
愛情が、どんどんと募っていく。
もう、だいぶ、彼を愛しているのだが。
毎秒、毎秒、好きになる。
「なにを馬鹿なことを。我がどれだけ、おまえを愛しているか、欲しがっているか、まだ、わかっていないようだな?」
ならば、ひと晩かけて。我の、この、重くて熱い愛情を、これでもかというくらいに、浴びせないとならないな? クロウが、もう、お腹がいっぱいだと思うくらいに。
彼をいじらしいと思うとき。我はいつも、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
これは、せつないという感情なのだ。
クロウと交流して、初めて知った感情でもある。
痛いけれど、温かくて。苦しいけれど、そばにいたくて。
そういうとき、我は。クロウをギュッと抱き締めたくなるのだ。
救ってやりたいとか、守ってやりたいとか、慰めてやりたいとか。そんな優しい気持ちで心が満たされる。
だが、そう思って。クロウを抱き締めたら。
クロウに挿入していた己が、前後してしまい。剛直の表面すべてを粘膜でゾロリと刺激される、凄まじい官能が走り抜けて。声が喉に詰まった。
「はぁ…ん」
クロウも、色っぽい声が漏れて。その声に、またギュンと己がたぎって。あの凶暴な熱が、再び生まれ出でる。
というか、クロウっ。その声は、ダメだ。
全世界の男がギュンとするだろう?
我以外の前で、絶対にこんな声を出してはならぬっ。
そんな怒りとともに、腰を引いて、クロウの中に突き入れる。
その動きが、もう、良くて。そのことしか考えられなくなってしまった。
「ん、んっ、あ、んぅ、ん」
腰を揺らして、奥へ突き入れるたびに。クロウが、こらえきれない喘ぎを漏らす。
可哀想、とは思うのだが。
抑止にはならない。むしろ、もっとクロウを乱したくなってしまう。
これは、あれだ。クロウの困った顔が見たいと思う、嗜虐的な一面。
そんなものが己の中にあることを、それも、クロウと出会って初めて知った事のひとつだ。
その悪癖が、今、出ている。
痛めつけたいのでは、決してないのだが。
究極の快楽で、彼を狂わせたら。普段、物静かで清らかなクロウは、どんな表情を見せるのだろう。
その欲が、頭から離れなくて。
クロウの、いろいろな顔が見たくて。
我は、クロウの中を、熱烈にかき乱した。
「やぁ…中、ジンジンするぅ。こ、こんなに? あ、イアン様ぁ、怖いいぃ」
クロウは、我の胸に、額をスリスリして。身悶える。
助けを求めているのかもしれないが。でも、甘えているみたいで、可愛い。
「どうした? クロウ。なにが怖いのだ? 痛いのか? 苦しいのか?」
屹立に、我は触れていないが。クロウのそこは、しっかりそそり立っている。
怖いと言っても、体の反応を見れば、不快ではないのだとわかる。
だが、わかっていて、あえて、聞くのは。
クロウの口から、淫らな答えを聞きたいからだ。
「い、痛くは、ないのですけど。でも、こんな感覚…は、初めてで。ぼく、イアンさまに、こんな…あぁ」
「こんな? どんななのだ? どうすると良いのか、教えてくれ? クロウ」
とびきり、色っぽく。クロウの耳元に囁くと。
はわぁ…とクロウは言葉にならぬ声を漏らした。
クロウは我の声が好き、みたいなのだ。
自分の声というのが、どういうものか、自分ではわからないが。
クロウは時折、耳に囁くと、はわぁ…と言う。
たぶん。好きという意味の、ため息だと思う。
「あ、あぁ…いい、です。いい、のぉ。イアンさまぁ、それ…あっ、い…いぃ…」
クロウは恍惚として、黒い瞳を潤ませて。我をとろんとした眼差しでみつめる。
しかし、感じていることを、清純な彼は恥ずかしく思うみたいで。真っ赤な顔を、両手で覆ってしまった。
その仕草は、愛くるしいが。
馬鹿な。その媚態がそそるというのに。もっと見せろ。
「ご、ごめんな、さい…ぼく、初めてなのに…は、はしたなくて」
「おまえが気持ちが良いことが、一番に決まっているだろう? そのように思うことはない」
慰めるように、頬や目蓋に、小さくキスする。
「本当に、初めてなのですよ?」
どうやら、淫乱だと疑われるのを、恐れているみたいだ。
本当に、おバカさんだな。
クロウほどに、清楚で上品な者が、淫乱などと。思うわけもないのに。
それにこういう行為のときは、少しくらい奔放でもよいのだ。
我の目の前でならな?
「わかっているとも。ふたりで一緒に、頑張って。ふたりで気持ち良いと思えるところまで、来たのではないか? 最初に、痛そうにしていたクロウのことを、忘れてはいない」
言いながらも、我は腰の動きを止められない。
締めつけてくるクロウの中を、じっくりと抜き差しし、その極上の悦楽を堪能する。
だが、体の位置と、クロウと我の体格差により、まだ剛直のすべてをおさめられてはいなかった。
我はクロウに、首にしっかり掴まっているように告げ、体を起こす。クロウの足を腕に引っかけて開かせたまま、彼を己の上に座らせた。
体をつなげたまま、向き合って、寝台の上に座る体勢だ。
「うわっ、あ、あぁ…ふ、深いぃ」
クロウは自分の体重と引力によって、剛直を根元まで受け入れた。
「今、我のすべてが、おまえの中にある。感じるか?」
痛がるどころか、どこかうっとりした顔つきで、クロウは目を細めた。
濡れたサクランボの唇が、やんわりと開いて。
ガブリとしたい、衝動に駆られた。
「か、感じます。イアン様を…あ、ぁ…熱い。イアン様のように、猛々しくて。ぼく…」
誘うように、クロウは吐息で囁いて。我の頬を指先で撫でる。
まるで、この張り詰めた情熱を欲しがっているかのようで。
体をゆるやかに揺さぶると。彼は、気持ち良さそうに背筋をそらした。
でも、その感じ入る顔を、目の前でつぶさに、我に見られているのに気づいて。恥じらいに頬を染め。我の胸に顔を埋めて隠した。
ヤバい。本当に、頭からバリバリと食べてしまいたいくらい、可愛いっ。
「か、噛んでも、よろしいですよ? ぼく、イアンさまに噛まれるの、好きぃ」
今、上目遣いでそんなことを言ったら。命の危機だぞ? クロウっ。
だが、お言葉に甘えて。我はクロウの首筋にやんわりと歯を立てた。
「は…ぁ。ふふ、イアン様」
ゆるりと犬歯を柔肌に食いこませると。クロウは、ひそやかに笑って。我の頭を撫でた。
その手の動きが、子供をあやすみたいに優しくて。
本当に、我に噛まれるのが、好きみたい。そんなふうに錯覚してしまいそうだ。
ずっと、我慢していた。クロウを食べたいという衝動を。
細くて折れそうなクロウの首を、本気で噛んだりはしないが。
どうしてか、我は。
ハミハミカミカミと、口や歯でクロウの肌の感触を味わうのが好きで。腰が疼いて。ギュンと高揚するのだ。
するとクロウも。中で我がみなぎるのを知覚して『は…ん』と可愛い声で鳴いた。
「お、おっきぃ…やぁ、しないでぇ…も、おっきく、しないでぇ?」
それは無理な相談だ。
というか、むしろズクズクと剛直を突き入れてしまう。
「大きくしたまま、突いては、ダメか? 我は、こうして…ずっとクロウの中をこすり続けたいのだが?」
「お…お許しを…へ、変に、なっちゃうから。き、気持ち良いの…だ、めぇ…」
いやいやと首を振る。
そんな可愛い仕草は、逆効果だというのに。
「イアン様の、意地悪ぅ。も、イ…イっちゃい、ますぅ」
「駄目だ。先に達してはならぬ」
我の無情な命令に、クロウは唇をわななかせた。
そのプルプルする唇が、美味そうで。
我は大きな口を開けて、クロウの唇をひと口でぺろりと食べてしまう。
我の膝の上に乗っても、クロウの目線は下にあるから。少し頭を下げなければならないが。
御馳走を前にして、そのようなことは取るに足りない。
頭を傾け、クロウの唇に食らいつく。そして、息をも奪うような、ねっとりとした濃厚なくちづけを仕掛けた。
さらに、剛直を上下させるように腰を揺らし、クロウを体の上で弾ませた。
「ん、ん…んぁ…は、ぁ。んぅむ、ん、んっ」
ベッドのきしむ音、情交の濡れた音が、室内に淫靡に響く。
くちゅくちゅ、ギシギシ、律動するたびに鳴る淫らな音と、妖艶な息遣いが、ふたりの熱情を高めていった。
「で、出ちゃう…だ、だめぇ…」
キスの合間に、クロウが音を上げた。
激しい揺さぶりに耐えるため、クロウは我の首から手を離せないが。張り詰め切った屹立が、快楽の涙をしとどにこぼしていて。
その感覚を、なやましく思って、我の腕に引っかけている足をもぞもぞ動かしている。
「出ては、ダメなのか?」
含み笑いをしながら、聞くと。
クロウは信じられないっ、とばかりに目を丸くした。
「い、イアンさまが、先に達しては、な、ならないとっ、言ったので。イアン様の、お、お許しが、なければ…」
なにやら、涙目で、上目遣いで、うらめしげに、みつめてくる。
もう…。今のおまえは、なにをしても可愛いから、怒ってもダメだぞ?
それに、その従順さがいじらしい。
「いいだろう、達することを許す」
我の言葉に、クロウは一瞬、笑みを浮かべる。
だが我は、クロウの耳たぶをかじりながら。非情な言葉を囁いた。
「ただし、後ろだけでイけるなら、な?」
そうして、我は再び腰を揺らして律動した。
しかし、性体験が初めてのクロウには、後ろの刺激だけで極めるのは、難易度が高すぎたようだ。
過ぎる快感に、身悶えているのに。達するには、局部への刺激が足りず。
クロウはついに、泣き出した。
「す、すみませぇん、イアンさまぁ。で、できま、せんっ。ぼくぅ…あ、ぅ、い、イかせて、くださいぃ」
きらめく涙を、ツッとこぼして。クロウは眉尻を下げた。
クロウは、王家への忠誠の念が厚い。我の期待に応えられないことが、とても悲しいのだろう。
謝りながら、我に甘えて懇願するクロウを見て。
さすがに、可哀想になってしまった。
「そのように泣くんじゃない。閨でのことは、言葉遊びに過ぎないのだ。怒ったりしないから、泣きやめ?」
なだめるように、クロウのこめかみや目蓋に、小さくキスを落とす。
本気で可哀想だと思っているのだが。
我は、萎えなかった。
むしろ、クロウの泣き顔に。たぎる。
滅茶苦茶に甘やかして。滅茶苦茶に乱したい。
その相反する気持ちが、我の中に存在しているのだ。
これは、愛と恋。なのかもしれないな。
「我の死神は、ピュアだから。今日は、勘弁してやる。だから、もう泣くな」
ちゅっちゅっと、クロウのとがる唇や、濡れる目元に、慈愛のキスを贈り。手は、クロウの屹立を撫でた。
硬くしなる、そこを。筋に沿って、指でたどり。
ヌルヌルの穂先を、親指で丸くこする。
指を、手のひらを、行き来させ。クロウの官能を引き出すように、愛撫した。
とはいえ、我も。余裕の態度を装っているが。クロウから与えられる悦楽は、至福の極みで。もう限界が近かった。
今も、我が屹立をしごくと。クロウの後孔がヒクヒクとうごめいて。
我を、快楽の淵へと誘っているのだ。
「イアンさまぁ、イ、きます。あぁ、お許しを…許してぇ」
クロウは、我の手に屹立を刺激され、その愉悦に溺れて。
惑乱しているみたいで。許すと言ったのに、許してと、引き続き懇願している。
「ふふ、許すと言っているだろう? クロウ。許す。可愛い、クロウ」
耳元で囁いてやると。クロウは歓喜の笑みを浮かべて。なやましげに、物欲しそうに、腰を揺らした。
「んん、い、いいのぉ。イアンさまぁ、好きっ。イアン様が、好きぃ」
クロウの腰の揺らめきと、ビクビクとひくつく蕾のうごめきに、我は耐え。クロウが精を解き放つまで、屹立を刺激して、彼をうながした。
そして、手の中の膨張を感じて、ひと際強く、しごく。
「いいぞ、クロウ」
「あぁ、んぁっ…ぁ」
我の声に合わせ、クロウは思い切り、白濁をほとばしらせた。
背をそらし、絶頂に身を震わせる。
クロウに締めつけられる中を、二度、剛直で強く突き上げ。我も、情熱をクロウの中へ注いだ。
精の奔流を体の中で感じたのか、クロウは、んッ、と甘い吐息をつき。
そしてくったりと、我の胸に、身を預けた。
お互いに、全力で駆け抜けたみたいに、荒い息をついている。
小さな体で頑張ってくれたクロウが。我は、愛おしくて、愛おしくて。腕の中にキュッと、真綿で包むように、優しく、優しく、抱き締めた。
この上もない歓喜に、満ちあふれている。
体が浄化されたみたいに、清涼感があった。
クロウとふたりだから、この素晴らしいひとときが持てたのだ、と。
幸せだ、と。しみじみ思う。
そんな充足感にひたっていたが。
腕の中のクロウが、いつまでも身動きしないから。まずいと思った。
クロウの中から、剛直を慎重に引き抜き、彼を寝台に横たえる。
「クロウ、大丈夫か? 初めての情交だというのに、無理をさせてしまったか?」
比較対象は、あまりないが。我のモノは、クロウと比べると、かなり大きい。
受け入れるクロウには、負担がかかっただろう。
わかっていたし、セドリックからも無理させるなと言われていたのに。
最中は、セドリックのことなど、全く頭の中になかった。
反省していると、クロウは。ダメージを受け、身を起こせないながらも。顔を我に向けて、柔らかい、お日様の微笑みを浮かべた。
「いいえ? 僕は、イアン様に、愛を示したかったのです。最後まで、イアン様に抱いていただき、僕はとっても幸せです」
「…おいで」
我も、クロウの隣に身を横たえ。腕を枕にするようにして、クロウを抱き寄せる。
我の望みを叶えるために、一生懸命、尽くしてくれた。
その身を捧げてくれた。
可愛くて、健気で、綺麗な、我の花嫁。
多幸感が満ちあふれ、クロウの背中を労わるようにそっと撫でた。
「愛している。クロウ…愛している」
「イアンさまっ、ぼ、ぼくもっ、あ、あ…愛してますっ。す、す…しゅきぃ」
ぎゅうっとクロウに抱きつかれ。
我は、もう…本当に、本当に、雷が落ちてビリビリするくらいに、衝撃的に愛くるしくなって。可愛くて可愛くて…あぁ、語彙力が足りな過ぎて、もどかしいほどに、クロウが可愛かった。
腕の中のぬくもりを、生涯大事にすると。我はこのとき、心に誓った。
もう彼を、ひとりにはしない。
自分は、王だが。その肩書がなければ。なにも持たない。なにも知らない。ちっぽけな人間だ。
それを、今回の顛末で、我は重々承知させられた。
だけど。クロウのことは。己の手で守りたい。
ひとりの人間として。ひとりの男として。ただのイアンとして。
愛する者を、この手の中に、そっと包んで。守るのだ。守っていきたいのだ。
願うように。
祈るように。
我はクロウを、強く、強く、かき抱く。愛をいっぱい込めて…。
クロウと、肌をぴったりと重ね合わせるだけで、心は満ち足りる。
唇と唇、胸と胸が合えば、彼がより、近くにあると実感できて、嬉しくなる。
しかし、体はもう、それでは物足りない。
己のモノは、凶暴な熱を孕んでいた。
クロウの華奢な体躯を抱き締めて、張り詰めた剛直を、そのつるりとした肌に、こすりつける。そして、彼の屹立にも、押しつけた。
ビリッとするような、強い悦楽を感じたが。
クロウもそのようで、感電したみたいにピクリと跳ねた。
そうだ。これは。こうして、ふたりで高まり合って。感じ合う行為なのだ。
「イアンさ、ま…ぁ…も、イ、きそう…あぁ」
クロウが、極めそうになり。我も、究極に高ぶっていて。
すぐにも突き入れたい衝動に駆られてしまって。少し、急いでしまったかもしれない。
クロウは官能を得ていたのに。性急に蕾をほぐしたことで、彼は眉間にしわを寄せ、つらそうな表情になってしまった。
苦痛を強いたくなくて、指を抜こうとしたが…。
「ダメッ、痛くても、良いのです。イアン様が、満足していただけるなら。僕はイアン様の死神なのだから、これくらい我慢できます。イアン様に、もっと触れてほしいのです」
黒い瞳を、小鹿のようにピカピカさせて。そのような健気なことを言う。
そんなの…落ちない男など、いるわけない。
あぁ、可愛い。可愛くって、仕方がない。
だが、我は。クロウの中に、ある種の必死さのようなものを感じ取った。
今日決めないと、もう次はない、というような。
そんなことはないのだが?
我は、クロウを手放す気はないので。
しかし、我も焦っていたのだ。
早く、クロウを手に入れたくて。
誰にも邪魔されないくらいの絆を、結びたくて。
体の熱を、鎮めたくて。
そのように、お互いの気が、急いていたから。体が硬くなり、痛みをも生んだのかもしれない。
「わかった。ゆっくりしよう、な?」
我は、クロウに痛みを感じさせないよう、できるだけ優しく、指をうごめかせた。
そう、クロウは猫なのだから。
優しく、そっと、柔らかく、だ。
彼の表情を注視しながら、挿し入れた中指を、徐々に出し入れした。
すると、クロウの体が、ビクリと反応する箇所があって。
その部分をゆるゆると、指の腹で撫でると。クロウの瞳が、うりゅっと、潤んだ。
「イアンさ、ま。そこ…気持ち、い…」
痛みに、こわばっていた体が。とろりと蕩けるように、蕾もほぐれてくるのが、指先で感じられた。
挿入する指を増やし、同じ場所を刺激し続けると。粘膜が、指に柔らかく絡みついてきて。
つらそうだったクロウが、快楽を覚えているのだとわかって。ホッとした。
「ん、ん…イアン様ぁ、あ、んぅ…ん」
長いストロークで指を出し入れできるようになると、敏感な場所を指が通りがかるとき、クロウの声が甘くにじむようになった。
もう、我慢できなかった。
早く、クロウが欲しい。全身でクロウを感じたい。
指を引き抜き、彼の足を左右に開くと、あらわになった蕾に、我は己をあてがう。
最後の最後で、彼を壊さないよう、理性を総動員して、ゆっくりゆっくり進めていった。
「あ、イアン様が、中に、入って…んっ、あぁ…」
クロウの目元が、大きく開いて、瞳が丸くなる。
その表情は、痛々しくもあるが。
どちらかというと、妖艶で。
我を、一生懸命受け入れよう、包み込もうとするその気概が、彼を美しくも見せていた。
それに。我は、これほどの悦楽を、今まで甘受したことはない。
後孔に、入れ込む先から、突端を甘やかに締めつけられ。中に進むたびに、ねだるように、剛直を握り込まれるかのように、まといついて。
その気持ち良さに、圧倒された。
「もっと、奥まで…ください」
気を使って、ゆっくり進めていたというのに。その言葉は反則だと思う。
もう、頭が真っ白になって、理性が吹き飛んでしまった。
思わず、本能のままに、強く突き上げてしまう。
「はっ、あぁ…っ」
いきなり深く挿入され、クロウは叫びを上げた。
「すまない、クロウ…」
煽るようなことを言う、クロウも悪いと思いつつ。痛みを与えたくなかった我は、するりと謝罪の言葉が漏れてしまった。
王は、簡単に謝罪を口にしない、と教育されていたというのに。
愛する者の前では、そのような教育は、意味をなさない。
つまり…我はクロウに弱いのだ。敵わないのだ。
中におさめたまま、しばらく動かないようにして。彼の前髪を、そっとかき上げた。
額の汗で、黒髪が張り付いて…苦痛に耐える彼がいたわしい。
あぁ、可哀想に。
早く痛みがおさまればいい。
自分がもたらした責め苦だというのに、自分勝手にも、そう思ってしまう。
「謝らないでください、イアン様。ぼく、嬉しいんです。イアン様と深く、つながることができた。本当に、イアン様のものになれたのが。あの…気持ち良いですか?」
「あぁ、すごく、気持ちがいい」
それしか考えられないので、素直に打ち明ける。
すると、クロウはなぜか、泣きそうな表情に顔を歪めたが。
すぐにニコリと、あの、我の大好きな微笑みを浮かべる。
「良かった。僕は男だから。イアン様が嫌悪を抱かないか、ちゃんと最後までできるのかって…不安だったのです」
クロウは大きく手を差し伸べ、我の首にその手を回すと、キュッと抱きついてくる。
本当に。こういうの、敵わないな、と思ってしまう。
男を受け入れる、彼の方が、負担が大きく。現に今、つらそうだというのに。
我を気遣って、こうして笑って見せるのだから。
愛情が、どんどんと募っていく。
もう、だいぶ、彼を愛しているのだが。
毎秒、毎秒、好きになる。
「なにを馬鹿なことを。我がどれだけ、おまえを愛しているか、欲しがっているか、まだ、わかっていないようだな?」
ならば、ひと晩かけて。我の、この、重くて熱い愛情を、これでもかというくらいに、浴びせないとならないな? クロウが、もう、お腹がいっぱいだと思うくらいに。
彼をいじらしいと思うとき。我はいつも、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
これは、せつないという感情なのだ。
クロウと交流して、初めて知った感情でもある。
痛いけれど、温かくて。苦しいけれど、そばにいたくて。
そういうとき、我は。クロウをギュッと抱き締めたくなるのだ。
救ってやりたいとか、守ってやりたいとか、慰めてやりたいとか。そんな優しい気持ちで心が満たされる。
だが、そう思って。クロウを抱き締めたら。
クロウに挿入していた己が、前後してしまい。剛直の表面すべてを粘膜でゾロリと刺激される、凄まじい官能が走り抜けて。声が喉に詰まった。
「はぁ…ん」
クロウも、色っぽい声が漏れて。その声に、またギュンと己がたぎって。あの凶暴な熱が、再び生まれ出でる。
というか、クロウっ。その声は、ダメだ。
全世界の男がギュンとするだろう?
我以外の前で、絶対にこんな声を出してはならぬっ。
そんな怒りとともに、腰を引いて、クロウの中に突き入れる。
その動きが、もう、良くて。そのことしか考えられなくなってしまった。
「ん、んっ、あ、んぅ、ん」
腰を揺らして、奥へ突き入れるたびに。クロウが、こらえきれない喘ぎを漏らす。
可哀想、とは思うのだが。
抑止にはならない。むしろ、もっとクロウを乱したくなってしまう。
これは、あれだ。クロウの困った顔が見たいと思う、嗜虐的な一面。
そんなものが己の中にあることを、それも、クロウと出会って初めて知った事のひとつだ。
その悪癖が、今、出ている。
痛めつけたいのでは、決してないのだが。
究極の快楽で、彼を狂わせたら。普段、物静かで清らかなクロウは、どんな表情を見せるのだろう。
その欲が、頭から離れなくて。
クロウの、いろいろな顔が見たくて。
我は、クロウの中を、熱烈にかき乱した。
「やぁ…中、ジンジンするぅ。こ、こんなに? あ、イアン様ぁ、怖いいぃ」
クロウは、我の胸に、額をスリスリして。身悶える。
助けを求めているのかもしれないが。でも、甘えているみたいで、可愛い。
「どうした? クロウ。なにが怖いのだ? 痛いのか? 苦しいのか?」
屹立に、我は触れていないが。クロウのそこは、しっかりそそり立っている。
怖いと言っても、体の反応を見れば、不快ではないのだとわかる。
だが、わかっていて、あえて、聞くのは。
クロウの口から、淫らな答えを聞きたいからだ。
「い、痛くは、ないのですけど。でも、こんな感覚…は、初めてで。ぼく、イアンさまに、こんな…あぁ」
「こんな? どんななのだ? どうすると良いのか、教えてくれ? クロウ」
とびきり、色っぽく。クロウの耳元に囁くと。
はわぁ…とクロウは言葉にならぬ声を漏らした。
クロウは我の声が好き、みたいなのだ。
自分の声というのが、どういうものか、自分ではわからないが。
クロウは時折、耳に囁くと、はわぁ…と言う。
たぶん。好きという意味の、ため息だと思う。
「あ、あぁ…いい、です。いい、のぉ。イアンさまぁ、それ…あっ、い…いぃ…」
クロウは恍惚として、黒い瞳を潤ませて。我をとろんとした眼差しでみつめる。
しかし、感じていることを、清純な彼は恥ずかしく思うみたいで。真っ赤な顔を、両手で覆ってしまった。
その仕草は、愛くるしいが。
馬鹿な。その媚態がそそるというのに。もっと見せろ。
「ご、ごめんな、さい…ぼく、初めてなのに…は、はしたなくて」
「おまえが気持ちが良いことが、一番に決まっているだろう? そのように思うことはない」
慰めるように、頬や目蓋に、小さくキスする。
「本当に、初めてなのですよ?」
どうやら、淫乱だと疑われるのを、恐れているみたいだ。
本当に、おバカさんだな。
クロウほどに、清楚で上品な者が、淫乱などと。思うわけもないのに。
それにこういう行為のときは、少しくらい奔放でもよいのだ。
我の目の前でならな?
「わかっているとも。ふたりで一緒に、頑張って。ふたりで気持ち良いと思えるところまで、来たのではないか? 最初に、痛そうにしていたクロウのことを、忘れてはいない」
言いながらも、我は腰の動きを止められない。
締めつけてくるクロウの中を、じっくりと抜き差しし、その極上の悦楽を堪能する。
だが、体の位置と、クロウと我の体格差により、まだ剛直のすべてをおさめられてはいなかった。
我はクロウに、首にしっかり掴まっているように告げ、体を起こす。クロウの足を腕に引っかけて開かせたまま、彼を己の上に座らせた。
体をつなげたまま、向き合って、寝台の上に座る体勢だ。
「うわっ、あ、あぁ…ふ、深いぃ」
クロウは自分の体重と引力によって、剛直を根元まで受け入れた。
「今、我のすべてが、おまえの中にある。感じるか?」
痛がるどころか、どこかうっとりした顔つきで、クロウは目を細めた。
濡れたサクランボの唇が、やんわりと開いて。
ガブリとしたい、衝動に駆られた。
「か、感じます。イアン様を…あ、ぁ…熱い。イアン様のように、猛々しくて。ぼく…」
誘うように、クロウは吐息で囁いて。我の頬を指先で撫でる。
まるで、この張り詰めた情熱を欲しがっているかのようで。
体をゆるやかに揺さぶると。彼は、気持ち良さそうに背筋をそらした。
でも、その感じ入る顔を、目の前でつぶさに、我に見られているのに気づいて。恥じらいに頬を染め。我の胸に顔を埋めて隠した。
ヤバい。本当に、頭からバリバリと食べてしまいたいくらい、可愛いっ。
「か、噛んでも、よろしいですよ? ぼく、イアンさまに噛まれるの、好きぃ」
今、上目遣いでそんなことを言ったら。命の危機だぞ? クロウっ。
だが、お言葉に甘えて。我はクロウの首筋にやんわりと歯を立てた。
「は…ぁ。ふふ、イアン様」
ゆるりと犬歯を柔肌に食いこませると。クロウは、ひそやかに笑って。我の頭を撫でた。
その手の動きが、子供をあやすみたいに優しくて。
本当に、我に噛まれるのが、好きみたい。そんなふうに錯覚してしまいそうだ。
ずっと、我慢していた。クロウを食べたいという衝動を。
細くて折れそうなクロウの首を、本気で噛んだりはしないが。
どうしてか、我は。
ハミハミカミカミと、口や歯でクロウの肌の感触を味わうのが好きで。腰が疼いて。ギュンと高揚するのだ。
するとクロウも。中で我がみなぎるのを知覚して『は…ん』と可愛い声で鳴いた。
「お、おっきぃ…やぁ、しないでぇ…も、おっきく、しないでぇ?」
それは無理な相談だ。
というか、むしろズクズクと剛直を突き入れてしまう。
「大きくしたまま、突いては、ダメか? 我は、こうして…ずっとクロウの中をこすり続けたいのだが?」
「お…お許しを…へ、変に、なっちゃうから。き、気持ち良いの…だ、めぇ…」
いやいやと首を振る。
そんな可愛い仕草は、逆効果だというのに。
「イアン様の、意地悪ぅ。も、イ…イっちゃい、ますぅ」
「駄目だ。先に達してはならぬ」
我の無情な命令に、クロウは唇をわななかせた。
そのプルプルする唇が、美味そうで。
我は大きな口を開けて、クロウの唇をひと口でぺろりと食べてしまう。
我の膝の上に乗っても、クロウの目線は下にあるから。少し頭を下げなければならないが。
御馳走を前にして、そのようなことは取るに足りない。
頭を傾け、クロウの唇に食らいつく。そして、息をも奪うような、ねっとりとした濃厚なくちづけを仕掛けた。
さらに、剛直を上下させるように腰を揺らし、クロウを体の上で弾ませた。
「ん、ん…んぁ…は、ぁ。んぅむ、ん、んっ」
ベッドのきしむ音、情交の濡れた音が、室内に淫靡に響く。
くちゅくちゅ、ギシギシ、律動するたびに鳴る淫らな音と、妖艶な息遣いが、ふたりの熱情を高めていった。
「で、出ちゃう…だ、だめぇ…」
キスの合間に、クロウが音を上げた。
激しい揺さぶりに耐えるため、クロウは我の首から手を離せないが。張り詰め切った屹立が、快楽の涙をしとどにこぼしていて。
その感覚を、なやましく思って、我の腕に引っかけている足をもぞもぞ動かしている。
「出ては、ダメなのか?」
含み笑いをしながら、聞くと。
クロウは信じられないっ、とばかりに目を丸くした。
「い、イアンさまが、先に達しては、な、ならないとっ、言ったので。イアン様の、お、お許しが、なければ…」
なにやら、涙目で、上目遣いで、うらめしげに、みつめてくる。
もう…。今のおまえは、なにをしても可愛いから、怒ってもダメだぞ?
それに、その従順さがいじらしい。
「いいだろう、達することを許す」
我の言葉に、クロウは一瞬、笑みを浮かべる。
だが我は、クロウの耳たぶをかじりながら。非情な言葉を囁いた。
「ただし、後ろだけでイけるなら、な?」
そうして、我は再び腰を揺らして律動した。
しかし、性体験が初めてのクロウには、後ろの刺激だけで極めるのは、難易度が高すぎたようだ。
過ぎる快感に、身悶えているのに。達するには、局部への刺激が足りず。
クロウはついに、泣き出した。
「す、すみませぇん、イアンさまぁ。で、できま、せんっ。ぼくぅ…あ、ぅ、い、イかせて、くださいぃ」
きらめく涙を、ツッとこぼして。クロウは眉尻を下げた。
クロウは、王家への忠誠の念が厚い。我の期待に応えられないことが、とても悲しいのだろう。
謝りながら、我に甘えて懇願するクロウを見て。
さすがに、可哀想になってしまった。
「そのように泣くんじゃない。閨でのことは、言葉遊びに過ぎないのだ。怒ったりしないから、泣きやめ?」
なだめるように、クロウのこめかみや目蓋に、小さくキスを落とす。
本気で可哀想だと思っているのだが。
我は、萎えなかった。
むしろ、クロウの泣き顔に。たぎる。
滅茶苦茶に甘やかして。滅茶苦茶に乱したい。
その相反する気持ちが、我の中に存在しているのだ。
これは、愛と恋。なのかもしれないな。
「我の死神は、ピュアだから。今日は、勘弁してやる。だから、もう泣くな」
ちゅっちゅっと、クロウのとがる唇や、濡れる目元に、慈愛のキスを贈り。手は、クロウの屹立を撫でた。
硬くしなる、そこを。筋に沿って、指でたどり。
ヌルヌルの穂先を、親指で丸くこする。
指を、手のひらを、行き来させ。クロウの官能を引き出すように、愛撫した。
とはいえ、我も。余裕の態度を装っているが。クロウから与えられる悦楽は、至福の極みで。もう限界が近かった。
今も、我が屹立をしごくと。クロウの後孔がヒクヒクとうごめいて。
我を、快楽の淵へと誘っているのだ。
「イアンさまぁ、イ、きます。あぁ、お許しを…許してぇ」
クロウは、我の手に屹立を刺激され、その愉悦に溺れて。
惑乱しているみたいで。許すと言ったのに、許してと、引き続き懇願している。
「ふふ、許すと言っているだろう? クロウ。許す。可愛い、クロウ」
耳元で囁いてやると。クロウは歓喜の笑みを浮かべて。なやましげに、物欲しそうに、腰を揺らした。
「んん、い、いいのぉ。イアンさまぁ、好きっ。イアン様が、好きぃ」
クロウの腰の揺らめきと、ビクビクとひくつく蕾のうごめきに、我は耐え。クロウが精を解き放つまで、屹立を刺激して、彼をうながした。
そして、手の中の膨張を感じて、ひと際強く、しごく。
「いいぞ、クロウ」
「あぁ、んぁっ…ぁ」
我の声に合わせ、クロウは思い切り、白濁をほとばしらせた。
背をそらし、絶頂に身を震わせる。
クロウに締めつけられる中を、二度、剛直で強く突き上げ。我も、情熱をクロウの中へ注いだ。
精の奔流を体の中で感じたのか、クロウは、んッ、と甘い吐息をつき。
そしてくったりと、我の胸に、身を預けた。
お互いに、全力で駆け抜けたみたいに、荒い息をついている。
小さな体で頑張ってくれたクロウが。我は、愛おしくて、愛おしくて。腕の中にキュッと、真綿で包むように、優しく、優しく、抱き締めた。
この上もない歓喜に、満ちあふれている。
体が浄化されたみたいに、清涼感があった。
クロウとふたりだから、この素晴らしいひとときが持てたのだ、と。
幸せだ、と。しみじみ思う。
そんな充足感にひたっていたが。
腕の中のクロウが、いつまでも身動きしないから。まずいと思った。
クロウの中から、剛直を慎重に引き抜き、彼を寝台に横たえる。
「クロウ、大丈夫か? 初めての情交だというのに、無理をさせてしまったか?」
比較対象は、あまりないが。我のモノは、クロウと比べると、かなり大きい。
受け入れるクロウには、負担がかかっただろう。
わかっていたし、セドリックからも無理させるなと言われていたのに。
最中は、セドリックのことなど、全く頭の中になかった。
反省していると、クロウは。ダメージを受け、身を起こせないながらも。顔を我に向けて、柔らかい、お日様の微笑みを浮かべた。
「いいえ? 僕は、イアン様に、愛を示したかったのです。最後まで、イアン様に抱いていただき、僕はとっても幸せです」
「…おいで」
我も、クロウの隣に身を横たえ。腕を枕にするようにして、クロウを抱き寄せる。
我の望みを叶えるために、一生懸命、尽くしてくれた。
その身を捧げてくれた。
可愛くて、健気で、綺麗な、我の花嫁。
多幸感が満ちあふれ、クロウの背中を労わるようにそっと撫でた。
「愛している。クロウ…愛している」
「イアンさまっ、ぼ、ぼくもっ、あ、あ…愛してますっ。す、す…しゅきぃ」
ぎゅうっとクロウに抱きつかれ。
我は、もう…本当に、本当に、雷が落ちてビリビリするくらいに、衝撃的に愛くるしくなって。可愛くて可愛くて…あぁ、語彙力が足りな過ぎて、もどかしいほどに、クロウが可愛かった。
腕の中のぬくもりを、生涯大事にすると。我はこのとき、心に誓った。
もう彼を、ひとりにはしない。
自分は、王だが。その肩書がなければ。なにも持たない。なにも知らない。ちっぽけな人間だ。
それを、今回の顛末で、我は重々承知させられた。
だけど。クロウのことは。己の手で守りたい。
ひとりの人間として。ひとりの男として。ただのイアンとして。
愛する者を、この手の中に、そっと包んで。守るのだ。守っていきたいのだ。
願うように。
祈るように。
我はクロウを、強く、強く、かき抱く。愛をいっぱい込めて…。
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