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番外編SS
【続】大富豪はかまってほしい 3
しおりを挟む背後から零を捕まえて、そのまま引き上げダイヤの膝に乗せる。
零は勘弁してくれとばたばた暴れたが、ダイヤは零の頬に顔を寄せながら胸に腕をまわして笑い転げる姿を楽しんだ。
「むりですっ、もう降参ですってばッ」
強制的に笑わせられて疲れた零は、しかしどこか楽しそうにダイヤへ言う。
子供の戯れ合いのような懐かしさにダイヤはもっと浸っていたかったが、零の限界を知り仕方なく手を離す。
笑い疲れた零はそのままパタリとベッドへ沈み、笑いすぎて腹筋が痛いのか、お腹を抱えて息を整え始めた。
「はははっ、すまないね零。少しやりすぎ……──」
ダイヤはそんな零に謝りながら頬に張り付いた髪を取ってやろうと手を伸ばし、止まった。
笑い疲れてはぁはぁと荒い呼吸を繰り返す零の頬は上気し、服や髪は乱れて力なく横たわる。おまけに瞳はうっすら涙で潤んでいた。
そんな零はダイヤと目が合うとふにゃりと恥ずかしげに笑い、頭に付けた耳が嬉しそうにピクピクと動いた……ように見えた。
ダイヤはたまらずゴクリと喉を鳴らし、意図せず情欲的な姿になった零の頬に触れる。
落ち着け……と、今まで敵った事の無い欲望を今回も抑えようと試みるダイヤ。
しかし、
「もぉ……ダイヤ様、激しすぎます……」
「──~~っ!! 零っ!」
今回もやはりと言うべきか、零の無意識に発せられた際どい言葉に、ダイヤの理性は簡単に崩れ去ったのだった。
* * *
空が白みはじめ、すんと澄んだ空気に包まれたそんな時間。
ダイヤは自分の胸の中ですやすやと眠る零を眺めていた。
腕の中にすっぽりと収まってしまう小さな体にまたもや無理をさせてしまって、ダイヤは反省と共に己の腕で安心して眠る可愛らしい姿に幸せを感じた。
「……可愛いな……」
誰に言うでもなく自然とこぼれた呟き。
零の頭に付けていたふわふわの耳はいつの間にか外れてベッドの隅に転がっていた。
柔らかな朝日がステンドグラスから差し込み二人を包む。
胸が温かく感じるのは零の体温か、日の光のおかげか、それとも……
零の柔らかな髪をもてあそぶとくすぐっそうに身をよじって、その姿にまた頬を緩ませた。
好きだな、と、幾度と感じた想いを今日も噛みしめる。
そばに居るだけで幸せになれる存在。時間が許す限り愛でたい、触れたい、ずっと見ていたい。
一度共に過ごす幸せを知ってしまえばもう手放せない。彼が居ない生活など心が枯れて死んでしまいそうだ。
「そうか……」
猫を強請ってきた彼女らも、同じだったのだろうか。
利益なんてものは求めない。ただそばに居てくれるだけで自然と笑みが溢れ、抱きしめ守りたくなるような存在。
「──……いや、違うな」
零は愛玩動物ではない。
いくらこちらが守りすべてを与えようとした所で、零は首をたてには振らないだろう。彼は自立した人間なのだから。
そして、その上で自分の意思でそばに居てくれるのだ。
なにより自分の零へ愛は、猫を愛でる彼女らよりずっと重いと自負している。
「好きだよ零……」
そんな幸せを噛み締めていた早朝。
零を起こさないようにジンラミーがこっそりとダイヤを起こしに来た。
「──……ラミー、何をしているんだ?」
ただ起こしに来ただけかと思っていたら、何故かジンラミーはベッド上にあった猫耳をダイヤの頭に付けたのでダイヤは困惑する。
そんなダイヤにジンラミーは微笑んだ。
「本日は特別な書斎をご用意しておりますのでお取り引きの書類の確認はそちらでお願いいたします。なに、そちらを付けていればお仲間が寄って来ますので寂しくは御座いませんよ」
「何を言って──」
「──夕方には商談を控えておりますのでそれまでにお済ませくださいませ」
ジンラミーが用意した特別な書斎。
貼り付けた笑顔に恐怖を感じたダイヤは慌てて飛び起き従えば、簡易書机が用意されていた。なぜか橋の下に……
「……何で机に『拾ってください』と書かれているんだ?」
「申し訳ありませんなぁ、大きな箱がご用意出来なかったものですから」
「いや、そうじゃなくてだな……」
訊きたい事は山程あったが、山のような書類を置いてジンラミーは去ってしまった。
ハートが猫を飼いたいと言っているのを止めて欲しければ今日一日ここですべての書類に目を通せと交換条件を叩き付けられて。
橋の下で野良猫に囲まれて死にものぐるいで仕事をこなしていく猫耳姿のダイヤ。
それを目撃してしまったエバは、なんとも言えない表情で足早に去っていった。
【End】
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