26 / 31
番外編SS
【続】大富豪はかまってほしい 3
しおりを挟む背後から零を捕まえて、そのまま引き上げダイヤの膝に乗せる。
零は勘弁してくれとばたばた暴れたが、ダイヤは零の頬に顔を寄せながら胸に腕をまわして笑い転げる姿を楽しんだ。
「むりですっ、もう降参ですってばッ」
強制的に笑わせられて疲れた零は、しかしどこか楽しそうにダイヤへ言う。
子供の戯れ合いのような懐かしさにダイヤはもっと浸っていたかったが、零の限界を知り仕方なく手を離す。
笑い疲れた零はそのままパタリとベッドへ沈み、笑いすぎて腹筋が痛いのか、お腹を抱えて息を整え始めた。
「はははっ、すまないね零。少しやりすぎ……──」
ダイヤはそんな零に謝りながら頬に張り付いた髪を取ってやろうと手を伸ばし、止まった。
笑い疲れてはぁはぁと荒い呼吸を繰り返す零の頬は上気し、服や髪は乱れて力なく横たわる。おまけに瞳はうっすら涙で潤んでいた。
そんな零はダイヤと目が合うとふにゃりと恥ずかしげに笑い、頭に付けた耳が嬉しそうにピクピクと動いた……ように見えた。
ダイヤはたまらずゴクリと喉を鳴らし、意図せず情欲的な姿になった零の頬に触れる。
落ち着け……と、今まで敵った事の無い欲望を今回も抑えようと試みるダイヤ。
しかし、
「もぉ……ダイヤ様、激しすぎます……」
「──~~っ!! 零っ!」
今回もやはりと言うべきか、零の無意識に発せられた際どい言葉に、ダイヤの理性は簡単に崩れ去ったのだった。
* * *
空が白みはじめ、すんと澄んだ空気に包まれたそんな時間。
ダイヤは自分の胸の中ですやすやと眠る零を眺めていた。
腕の中にすっぽりと収まってしまう小さな体にまたもや無理をさせてしまって、ダイヤは反省と共に己の腕で安心して眠る可愛らしい姿に幸せを感じた。
「……可愛いな……」
誰に言うでもなく自然とこぼれた呟き。
零の頭に付けていたふわふわの耳はいつの間にか外れてベッドの隅に転がっていた。
柔らかな朝日がステンドグラスから差し込み二人を包む。
胸が温かく感じるのは零の体温か、日の光のおかげか、それとも……
零の柔らかな髪をもてあそぶとくすぐっそうに身をよじって、その姿にまた頬を緩ませた。
好きだな、と、幾度と感じた想いを今日も噛みしめる。
そばに居るだけで幸せになれる存在。時間が許す限り愛でたい、触れたい、ずっと見ていたい。
一度共に過ごす幸せを知ってしまえばもう手放せない。彼が居ない生活など心が枯れて死んでしまいそうだ。
「そうか……」
猫を強請ってきた彼女らも、同じだったのだろうか。
利益なんてものは求めない。ただそばに居てくれるだけで自然と笑みが溢れ、抱きしめ守りたくなるような存在。
「──……いや、違うな」
零は愛玩動物ではない。
いくらこちらが守りすべてを与えようとした所で、零は首をたてには振らないだろう。彼は自立した人間なのだから。
そして、その上で自分の意思でそばに居てくれるのだ。
なにより自分の零へ愛は、猫を愛でる彼女らよりずっと重いと自負している。
「好きだよ零……」
そんな幸せを噛み締めていた早朝。
零を起こさないようにジンラミーがこっそりとダイヤを起こしに来た。
「──……ラミー、何をしているんだ?」
ただ起こしに来ただけかと思っていたら、何故かジンラミーはベッド上にあった猫耳をダイヤの頭に付けたのでダイヤは困惑する。
そんなダイヤにジンラミーは微笑んだ。
「本日は特別な書斎をご用意しておりますのでお取り引きの書類の確認はそちらでお願いいたします。なに、そちらを付けていればお仲間が寄って来ますので寂しくは御座いませんよ」
「何を言って──」
「──夕方には商談を控えておりますのでそれまでにお済ませくださいませ」
ジンラミーが用意した特別な書斎。
貼り付けた笑顔に恐怖を感じたダイヤは慌てて飛び起き従えば、簡易書机が用意されていた。なぜか橋の下に……
「……何で机に『拾ってください』と書かれているんだ?」
「申し訳ありませんなぁ、大きな箱がご用意出来なかったものですから」
「いや、そうじゃなくてだな……」
訊きたい事は山程あったが、山のような書類を置いてジンラミーは去ってしまった。
ハートが猫を飼いたいと言っているのを止めて欲しければ今日一日ここですべての書類に目を通せと交換条件を叩き付けられて。
橋の下で野良猫に囲まれて死にものぐるいで仕事をこなしていく猫耳姿のダイヤ。
それを目撃してしまったエバは、なんとも言えない表情で足早に去っていった。
【End】
152
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。