黄金の空

ちゃん

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第一章 最初の国

青年と鳥4

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 やっぱりな、と呟くチャドにエメットが続けて話をした。

 「実は私の甥っ子なんですが、昔から鳥が好きで中でも今のヨウムはとても懐っこくてよく一緒にいるみたいですよ。…甥っ子をご存知なんですか?」

 頭に疑問符を浮かべたままのエヴァの代わりにチャドが頷いて答えた。

 「多分な。そして落とした魔石はそのヨウムが拾った可能性が高い。まあ正確に言うと盗られただけどな」
 「……い、今、何と?」
 「ちょ、ちょっとチャド…どういう意味?」

 エヴァとエメットの声がほぼ同時に重なった。

 「あれだけ頭が良くてしっかりした鳥なら飼ってるやつもそれなりに金がかかってるはず。それなら行商人かとも考えたが…その金と同じ位育てる側にも知識がないと駄目だ。と、なると相応の身分が必要。…二つを完璧に持ってるやつと考えると側近あたりが妥当だろう。おっさん、そのヨウムって鳥の名前はパーロンか?」

 謎解きのようにスラスラと述べるチャドを横で見ていると、エメットの焦った声が聞こえた。

 「は、はい…パーロンという名前です。では…今、城内に保管されている魔石はパーロンが無理矢理盗っていったという事ですか?」
 「見てみないと分からないが多分な。ついでに言うと、こいつは陽の国の皇女で俺は側近だ。魔石の件が片付いたら王陛下と王子に謁見の許しを頂きたい」
 「…は!?…え、あの…」

 焦りを通り越して青褪めたエメットはしどろもどろになっている。

 「チャド…今さっき着いたばかりでそんな両方を急がなくても」
 「うるさい。両方とも時間なんて無いし、かけたくもないんだよ」
 「……」

 否とはとても言えないような威圧感にエヴァは押し黙った。
 何となく嫌な雰囲気が流れ始めた時、背後からエメットの名を呼ぶ声がした。

 「あれ?エメットさん?城の前で何やってるんですか?」
 
 一斉に声主を見ると、赤褐色の髪をした青年が一人立っていた。
 エヴァと同じ位か、少し下位のまだ何処となくあどけなさが残る顔立ちだ。
 エメットが慌てて青年に駆け寄ると思い切り肩を掴んで揺らした。

 「セ、セシル!お前…いや、パーロンは何処にいる!?」
 「ちょっと…落ち着いてくださいよ!パーロンならまた嘘ついて偽物の魔石を何処かから盗ってきたから部屋で籠に入れて懲らしめてます」
 「馬鹿者、何て失礼な事を言うんだ!それは偽物ではない!」
 「は?何言ってるんですか?」
 「…パーロンは処刑されても文句は言えないぞ」
 「だから!何言ってるのか分かんないですよ!それより…」

 言い合いを始めた二人を見てチャドが大きく咳払いをした。

 「…おっさん、取り敢えず早く魔石を見せてもらいたい」

 明らかに分かる作り笑いにエメットの顔が再び青褪めた。
 弱々しい返事をしたエメットはチャドの元に戻ると縮こまったように背を丸めながら城の中へと歩き出した。

 (誰が偉いのか分からないわね。エメットが悪いわけじゃないのに)

 チャドの後ろをゆっくり歩きながらエメットへの申し訳なさを感じていると、トントン、と肩を叩かれた。

 「ねえ、あんた達誰?エメットさんの客人?」
 「…ええと…」

 何となく口籠ると、セシルと呼ばれた青年は眉を顰めた。

 「あ?…あんまり見ない風貌だな。パーロンの話、あんたら関係してるのか?」
 「…そうね。陽の国から来る途中でパーロンに魔石を盗られてしまったみたいなの」
 「は?パーロンが今朝咥えてきた魔石って本物だったのか!?」

 大きな目を更に大きくして驚くセシルに若干困惑しながらエヴァは頷いた。

 「本物ならこうしちゃいられない…早くユウノに…」
 「え?あ…ちょっと!」

 ぶつぶつと独り言を呟いた後、急にセシルは城に背を向けて走り出した。

 (何なの、あの子…一応側近…なのよね?)

 突然現れあっという間にいなくなった風の国の側近に呆気に取られていると、不意にセシルの走っていった方向から鈴の音が鳴ったような気がして振り返った。

 (鈴の音…あの側近から?)

 「…おい、エヴァ。早くしろ」
 「う、うん…」

 鈴の音が気になりながら、チャドの苛つきを含んだ声音に名を呼ばれてしまうと慌てて後を追うようにエヴァも城内へと足を踏み入れた。

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