【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida

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究極の条件

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『凡庸な武器/伝説の武器』という図鑑をもらってから、兄さんとよくやっていた遊び。




「戦士には何を装備させた?」と、兄さんが聞く。

僕はそれに答える。

「戦士にはね、『ヨルドムルオングの槍』を装備させた。これは数の多い敵が現れた時に、あまりパーティーに近づけさせないため。

防具は『電気石でできた鎧』で、持久戦を意識した。あと、盾を持たせずに後ろとの連携が取りやすいようにした。

それで、戦士のすぐ後ろには魔法使いをおいて……」



兄さんが最初に、どんなダンジョンに潜るのか、そこにはどんな魔物が現れるのかをお題として設定する。

僕は図鑑を見ながら、構成したパーティーメンバーにどんなアイテムを装備させるか考える。それをノートに書き込んで、まとめる。

完成したら、兄さんにそれを見せながら説明する。兄さんはダンジョンで起こりうる状況や、遭遇した敵との戦闘をシミュレーションして、僕のアイデアに点数をつけてくれる。

練習用の木の剣で斬り合うのと同じくらい、僕はこの遊びが大好きだった。



図鑑をもらったばかりの頃は、とにかく強力で、珍しい武器ばかり選んでいた。

兄さんはそれでも褒めてくれたけれど、「こういうのはどうかな?」とさりげなく別の視点を与えてくれた。

兄さんは物を教えるのがうまかった。僕をその気にさせたり、望ましい方へ誘導したりすることに長けていた。

僕はまんまと兄さんの策にはまった。

兄さんの思惑通り、僕は武器単体の珍しさや強さ、フォルムの格好良さではなく、付与された能力や、他の装備との組み合わせを重視して考えるようになった。


それに慣れてくると、兄さんは条件に縛りを設けて、遊びに変化を加えた。

「S級アイテムは2つだけ、残りはA級以下のアイテムで選ぶとしたら?」

「パーティーメンバーを、魔法使いのみで組むとしたら?」

「冒険者の名前が冠された装備品しか選んじゃいけないとしたら?」

兄さんの発想はとっぴなものが多く、僕はたびたび意表を突かれた。

同じ図鑑を見ているはずなのに、兄さんが設けた条件によって、目に留まる装飾品がその都度変わった。


僕はいつのまにか、その図鑑に載ったアイテムに対して、幅広い知識と愛着を持つようになった。

これも結局のところ、兄さんの狙い通りだったのだろう。



あるとき兄さんは、こんな条件を僕に提案した。

「ダンジョンに一人で潜るとする。

それがどんなダンジョンかは、事前に全く分からない。

持って行けるアイテムは一つ。武器でも防具でも、補助アイテムでもなんでもあり。

この条件だったら、××は何を選ぶ?」


僕は少し考えて、にやりと笑った。

それは一見シンプルにみえるが、実際に検討してみると選択肢の幅が異様に広く、わくわくするような条件だった。

「究極の条件だね」

兄さんもにやりと笑った。

「そう、究極の条件だ」


僕は図鑑をパラパラとめくった。すでに大体のアイテムの位置は頭に入っていた。

頭で与えられた状況を思い浮かべながら、見慣れたイラストの中から、引っかかるものがないか確かめる。

『目の前には、未知のダンジョン。どんな魔物が潜んでいるか、どんなアイテムが落ちているのかはわからない。

探索するのは、自分ひとり。

持っていけるアイテムはたった一つ。

じゃあ、何が役に立つんだ?』


分厚い図鑑なのに。隅々まで頭に入れているはずなのに。

僕はこれだと思うアイテムを見つけられなかった。

そして迷った挙句、ただ能力の高い、オールマイティな剣を選んだ。


兄さんはおや?という顔をして僕に尋ねた。

「どうしてこれを選んだ?」

僕は肩をすくめ、首を振った。

「消去法。ピンとくるアイテムが見つけられなかった。

難しいね、この条件。

ひとつだけだからかなり重要なはずなのに、決め手がないように思えてしまう」

「そうか」

タスラ兄さんは、僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「すごいな。そんな風にまで考えられるようになったんだな」

僕は気恥ずかしくて、手を払った。

「ねぇ、兄さんならどうする?

まさか、問いを出した側が答えられないんじゃないよね?」

僕は悪戯っぽく兄さんを挑発した。

「おうおう、言ってくれるじゃないか」

兄さんは僕の挑発にのってくれた。

「まぁ俺と××じゃ、プレイヤーがそもそも違うからな。

俺の方が、強くて大きい」

「すぐ追い越すに決まってるだろ」

僕はすぐに言い返した。

兄さんは楽しそうに笑った。

「そうだな。

まぁその違いは置いておくとして。

俺が選ぶなら、これだな」


兄さんが選んだのは、『青い渦巻き石』というシンプルなアイテムだった。

名前通り、青くて、渦巻いている模様が入った綺麗な石。

「これって……」

僕は笑った。兄さんの冗談だと思ったからだ。

でも兄さんの顔は真剣だった。

「なぁ、××。

冒険者にとって、最も大事なことは何だと思う?」

「それは……いろいろあると思うけど。

強いてあげるなら……実力、っていうか。当たり前だけど、向かってくる魔物に勝てるだけの、強さとか術を持ってることなんじゃないの」

兄さんは頷いた。

「それも大事だな。魔物が倒せないんじゃ、ダンジョンの探索は進まない。

そうしたら、地上の生活で役立つような資源は何一つ得られないからな」

「うん」

「でも××が冒険者になるんだったら、俺はもっと大事にしてほしいことがあるんだ」

「それは……なに?」

兄さんはあっさりと言った。

「自分の命だよ、××。

どんなに強力な魔物に遭遇したとしても、何度か戦えるチャンスがあれば勝てるかもしれない。

でも命を落としてしまったら、それまでなんだ。

だから」

兄さんは図鑑に載った、その青い石を指差した。

「もし一つだけ選ぶなら、俺はこれを持ってダンジョンに潜る。

もしいつか、本当にダンジョンへ行くことになったら。

××にも、この石を選ぶような考え方で、ダンジョンに挑んで欲しいんだ」





スキルで得た5つ目のアイテム。

『青い渦巻き石』。

『地面に打ちつけるなど、強い衝撃を与えることで効果を発揮する。

最後に触れた使用者を、瞬間的に離れた場所へと飛ばす。

高確率で、頭に思い浮かべた場所へ飛ぶ。

俗称:逃げ石』

ゴチッ!

ポケットから取り出した石を叩きつけると、激しい音がなった。

その瞬間、勝利を確信した学者の顔がさっと暗くなる。

「まさか、逃げ石……」

その声を聞き終わらぬうちに、体が投げ飛ばされる感覚。

ドサッ。

気がつくと僕は、地面に放り出されていた。





「わっ!」

地面から起きあがろうとしたら、目の前から声が上がった。

僕は顔を上げて、その声がした方を見た。
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