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謝罪してから
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パンッ。
乾いた破裂音が聞こえた。
僕が投げた方――ジルさんとそれを囲んでいるガーゴイルのあたりから。
そして音がした瞬間に、白い煙がわっと広がった。
効果はてきめんだった。
音を聞いただけでは、ただ不審げな顔をしただけのガーゴイルたちが、そこから発生した煙に包まれた途端、慌てて、空中に飛び上がった。
『いまだ!』
ガーゴイルの囲みから解放されたジルさんのもとへ、僕は走り寄った。
ジルさんは、その場に蹲っていた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なもんか……な、なにこれ! くさい!!」
「だから息止めてくださいっていったじゃないですか!」
「無理! くさい! 無理!」
僕はぎゃーぎゃーわめているジルさんを、煙の外に連れ出した。
ガーゴイルは天井付近まで逃げて、羽ばたきながら、こちらの様子を窺っている。警戒心の強い奴らだ。
「大丈夫ですよ、ただ臭いだけですから!」
「だから臭いのがだめなの! 私の鼻! 死ぬ!」
「死にませんって」
ドロップしたアイテムは、『臭い玉』。
『破裂するとくさい煙を発生させる。魔物が苦手とする成分が強く含まれているが、無害。』
鋭い嗅覚スキルを持ったジルさんには地獄だっただろうけれど、何とかガーゴイルを追い払うことに成功した。
とにかく今のうちに、手鏡に呪文をかけてこのダンジョンから脱出を……
「あれ……」
「ん、どうしたの」
まだ辛そうに鼻をこすっているジルさんが聞いてくる。
僕は自分が倒れていたあたりを見回す。
「ない……ないんです、手鏡が! どこかに落として……」
「あ、たぶん違う。私見たよ」
「えっ?」
グズッ、と鼻水をすすり、ジルさんは言った。
「カウガ君、さっきガーゴイルにやられたでしょ? そのすぐ後に、君と戦っていた二体が、天井の方にあがっていったんだ。
ちらっとしか見えなかったけど、たぶん手鏡と銛だと思う。カウガ君を倒した戦利品として、奴ら、ねぐらに持ち帰ったじゃないかな。
その後すぐ二体とも、こっちに降りてきて私の戦いに加わったけど……
たぶん私がやられてたら、奴ら、このハンドアックスをせっせと持ち帰ったんだろうね。はは」
そう言ってジルさんは、乾いた笑いを漏らした。
疲れ切っている。
臭い玉をくらったからというよりは、ガーゴイルの五体をまともに相手して、かなり疲労がたまっている。
「すみません、僕のせいで手鏡が……」
「何言ってんだ。
いいんだよ。とにかくもうここまでやられたら、とことん最後までやっちゃえ、って話じゃないか。
尻尾巻いて逃げてる場合では無ぇ。カウガ君、腹をくくれ!
……ま、何か策を考えないと、正直やばそうなんだけどさ」
上を見る。
雨で、煙がどんどん散っていく。
用心深いガーゴイルは、まだ様子を窺っていて、こっちまで降りてこない。
『よっぽど臭かったんだな』
僕はちょっと笑う。
そして頭を働かせる。
『銛も手鏡も取られた。向こうは本気で、僕とジルさんを殺そうとしている。もちろん、僕らが彼らの縄張りに土足で入ったことは間違いないんだけど。
でももうやるしかない。殺すか殺されるか、決めるしかない。
幸いにも、手袋は取られなかった。頭陀袋も腰についたまま。取られたのは、銛と、手鏡だけ。
たぶん、きらきら光っているものとか金属とか、そういうものが戦利品として欲しかったんだろうな。あいつら戦う知恵はよく働くのに、そういうところはちょっと幼稚だな。
……よし。やるぞ』
顔を上げて、肩を寄せ合って飛んでいる五体のガーゴイルを見る。
『ごめんなさい。
今からあなたたちの命を、全力で奪いにいきます』
乾いた破裂音が聞こえた。
僕が投げた方――ジルさんとそれを囲んでいるガーゴイルのあたりから。
そして音がした瞬間に、白い煙がわっと広がった。
効果はてきめんだった。
音を聞いただけでは、ただ不審げな顔をしただけのガーゴイルたちが、そこから発生した煙に包まれた途端、慌てて、空中に飛び上がった。
『いまだ!』
ガーゴイルの囲みから解放されたジルさんのもとへ、僕は走り寄った。
ジルさんは、その場に蹲っていた。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なもんか……な、なにこれ! くさい!!」
「だから息止めてくださいっていったじゃないですか!」
「無理! くさい! 無理!」
僕はぎゃーぎゃーわめているジルさんを、煙の外に連れ出した。
ガーゴイルは天井付近まで逃げて、羽ばたきながら、こちらの様子を窺っている。警戒心の強い奴らだ。
「大丈夫ですよ、ただ臭いだけですから!」
「だから臭いのがだめなの! 私の鼻! 死ぬ!」
「死にませんって」
ドロップしたアイテムは、『臭い玉』。
『破裂するとくさい煙を発生させる。魔物が苦手とする成分が強く含まれているが、無害。』
鋭い嗅覚スキルを持ったジルさんには地獄だっただろうけれど、何とかガーゴイルを追い払うことに成功した。
とにかく今のうちに、手鏡に呪文をかけてこのダンジョンから脱出を……
「あれ……」
「ん、どうしたの」
まだ辛そうに鼻をこすっているジルさんが聞いてくる。
僕は自分が倒れていたあたりを見回す。
「ない……ないんです、手鏡が! どこかに落として……」
「あ、たぶん違う。私見たよ」
「えっ?」
グズッ、と鼻水をすすり、ジルさんは言った。
「カウガ君、さっきガーゴイルにやられたでしょ? そのすぐ後に、君と戦っていた二体が、天井の方にあがっていったんだ。
ちらっとしか見えなかったけど、たぶん手鏡と銛だと思う。カウガ君を倒した戦利品として、奴ら、ねぐらに持ち帰ったじゃないかな。
その後すぐ二体とも、こっちに降りてきて私の戦いに加わったけど……
たぶん私がやられてたら、奴ら、このハンドアックスをせっせと持ち帰ったんだろうね。はは」
そう言ってジルさんは、乾いた笑いを漏らした。
疲れ切っている。
臭い玉をくらったからというよりは、ガーゴイルの五体をまともに相手して、かなり疲労がたまっている。
「すみません、僕のせいで手鏡が……」
「何言ってんだ。
いいんだよ。とにかくもうここまでやられたら、とことん最後までやっちゃえ、って話じゃないか。
尻尾巻いて逃げてる場合では無ぇ。カウガ君、腹をくくれ!
……ま、何か策を考えないと、正直やばそうなんだけどさ」
上を見る。
雨で、煙がどんどん散っていく。
用心深いガーゴイルは、まだ様子を窺っていて、こっちまで降りてこない。
『よっぽど臭かったんだな』
僕はちょっと笑う。
そして頭を働かせる。
『銛も手鏡も取られた。向こうは本気で、僕とジルさんを殺そうとしている。もちろん、僕らが彼らの縄張りに土足で入ったことは間違いないんだけど。
でももうやるしかない。殺すか殺されるか、決めるしかない。
幸いにも、手袋は取られなかった。頭陀袋も腰についたまま。取られたのは、銛と、手鏡だけ。
たぶん、きらきら光っているものとか金属とか、そういうものが戦利品として欲しかったんだろうな。あいつら戦う知恵はよく働くのに、そういうところはちょっと幼稚だな。
……よし。やるぞ』
顔を上げて、肩を寄せ合って飛んでいる五体のガーゴイルを見る。
『ごめんなさい。
今からあなたたちの命を、全力で奪いにいきます』
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