33 / 34
仕組まれていた
しおりを挟む「…正直、貴女が彼の名前を呼んだ時心臓が止まるかと思ったよ。まだ彼に気持ちが残っているのかと思ったから…。」
ロメオが連れ去られ、再び和やかな音楽が流れ始めたホールを六人で抜け出し、場所を移動していく最中にエディオにそう告げられたメアリーナはふわり、と微笑んだ。
「…そうですね。
先程までは、心のどこかで彼に淡い期待をしていたのは事実です。子どもの頃、私が好きだった、傍に居たいと思えた優しくて明るく屈託のない彼は今でもどこかにいるにではないかと。
…招待状もない夜会に侵入してくるとは思いませんでしたけど、会って、最後に言うことが出来て良かったです。スッキリしました。」
「そう…それなら、良かった。」
六人は侯爵家の客室へと案内され、そこで先程の話の続きをする事となった。一旦男性達は窓際の席へと移動し、女性陣のみでソファー席へと座る。
ティアラがパッと顔の前でお祈りのポーズをすると、上目遣いでメアリーナの顔を見た。
「先に謝っておくわ、ごめんなさいメア。」
「ワタクシも。ごめんなさい。」
「え?二人とも、どうしたというの?」
メアリーナの両隣に座ったティアラとカレンデュレアは彼女越しに顔を合わせると実は、と話し始めた。
元々この夜会はメアリーナの多種多様な異性と知り合う為の場として開催したのではなく、エディオとの出会いの場として開催したとのこと。
「え?え?」
「ライからずっと相談を受けていたの。メアに恋をして研究も手につかなくなってる『大バカ野郎』がいて、と。」
「えっ?!」
「でも、その頃の貴女には先程のクソムシみたいな婚約者がいらっしゃったでしょう?だから、ワタクシからは何も伝えることが出来なくて。」
大バカ野郎、クソムシ…こんなに美人で色っぽい侯爵令嬢の口からそんな言葉を聞ける日が来るとは、と、カレンデュレアの言葉にメアリーナはポカンとしながら、今度はティアラを見た。ティアラはパチッとウインクをすると可愛らしく微笑んだ。
「でも、キモクソムシは居なくなったし、そこで今回のことを思いついたのよ。」
「キモクソムシ…。」
キモがついた。
「ラルバイン様は研究ばっかりに冒頭してしまう所があるみたいだけど、メアに恋をしてその研究に手がつかなくなったって聞いて。二人をどうしても一度出会わせたかったの。」
ごめんね、と再び頭を下げる少女達に、メアリーナは慌てて首を横に振った。
「二人とも謝らないで。私、本日の夜会に参加してよかったと思っているわ。」
「「本当?」」
「ええ。ラルバイン様の事は…ま、まだ分からないけれど、これから知っていけばいいと思うの…。」
「!!是非そうしてください!」
窓際の席にいてこちらの話をじっと聞いていたエディオが、ばっと立ち上がってそう叫ぶのを、ライオネルとアルトがどーどーと言いながら宥めている。
メアリーナはそんな彼の姿に頬を赤く染めた。そして、躊躇いがちに小さく頷いたのを見て、エディオはハッと硬直して、その後頭を抱えて座り込んでしまった。
「大丈夫よ、メア。あれは貴女の可愛らしさにただノックアウトされて鼻血が出そうになっているのを止めようとしているだけの姿よ、気にする事はないわ。」
「え、鼻血…?」
1,113
あなたにおすすめの小説
誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。
しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。
幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。
その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。
実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。
やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。
妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。
絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。
なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。
彼の本当の相手は…別に居るのだ。
もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる