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クリステルの力
しおりを挟む「きゃーっ!エリオット様助けて!」
叫んだマリアンヌがエリオットへと手を伸ばそうとするが、それはクリステルによって叩き落とされた。
「えっ!痛い!酷いわ!」
「私の婚約者に無闇に触れようとしないでくださる~?」
驚愕したマリアンヌを冷めた表情で見ながらそう言うと、クリステルはそのまま改めて少女へと白い手を伸ばした。
「?!」
その瞬間。辺りが眩い真っ白な光に包まれ、驚いたマリアンヌは目をきつく閉じた。
「これで良いでしょ~。」
聞こえてきた声に、マリアンヌが恐る恐る目を開けてみると既に光は消え失せ、通常の明るさの廊下に戻っていた。
「な、何をしたんですか?!」
「鼻血、とめたのよ~。」
「...は?!」
鼻血...?!とマリアンヌが自分の顔を触ると、壁に打ち付けてボタボタと流れていたはずの鼻血が止まっていた。しかも、襟元から胸にかけて付着していた血液も、何事も無かったかのように消えている。
「え...?何これ...。」
「そのままだと見た目の心象がよくないし~。私たちが何かしたとか言われても困るし~。うん、証拠隠滅~。」
「魔法の重ねがけを一瞬でやったのか。」
「さっすが、我が学園のルーキーねえ。」
エリオットが感心したように言い、ネイフィアがちょっとだけ悔しそうにため息をついた。
クリステルが行ったのは、まず治癒魔法で鼻血を止め、洗浄魔法で制服とリボンを洗い、熱魔法でサッと乾かした。あっという間で、魔法をかけられている本人も分からないほどの極めて高度なそれを、一瞬でやってのけたのだった。
「え...?は...?」
「クリステルはこの学園で一番の魔力持ちであり、魔法使いなのよ。」
「テルテルは、次世代の『ロマンス様御一行』の勇者だって言われてるんだよ!」
まるで自分の事のように誇らしげに言いながら、ノエリアは治してもらったのにお礼も言わないマリアンヌを嫌いなタイプだなあと思った。そんな事をクリステルに言うと、「私が勝手に治しただけたから~」と言うのだろうけど、何にせよきっと気が合わないに違いない。クリステルの婚約者であり恋人のエリオットに媚びを売っているのも気に食わなかった。だから、若干威嚇している子猫のように毛が逆だっているのを、ドードーとネイフィアが宥めていた。
「それで~?エリオはどうしてここにいるのですか?」
「ああ、これを持ってきたんだ。」
さっきから折られまくっている話を進めようと、クリステルがエリオットに話しかけた。思い出した、というように彼が差し出したのは、一本の箒だった。
「渡り廊下の掃除を手伝った日に、何故か分からないが私にこの箒を押し付けて帰って行ったんでね。放課後で誰もいなかったからどこのクラスの備品が分からなくて。『マリアンヌ・フォーワード』と言う名だけ名乗って居なくなったものだから、この転入生が何組かも知らなかったし、彼女の特徴を先生に確認してこのクラスだと知ったので、返しに来たってわけ。」
「お、押付けた訳ではありません!ま、またお会いしたくて...!箒を預けたらきっと来て下さると思っておりました...!」
マリアンヌはうるるん、と音がしそうなほど潤んだ瞳で上目遣いをしてエリオットを見つめるも、大きなため息をつかれて目を見開いた。
「迷惑だな。」
「そ、そんな...!エリオット様!」
「大体なぜ君は私の名前を知っているんだ?呼ぶことを許した覚えは無いのだけれど。」
「そ、それは...。」
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