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だって欲しいじゃない【マリアンヌ】
しおりを挟むあの日、掃除を他の人に押し付けることが出来なかった日。ぶつくされていたマリアンヌは、瞬時にそれを忘れてしまうほどの運命的な出会いをした、と思っていた。
目の前の渡り廊下歩いてゆく颯爽とした姿。
銀色に輝く髪。肩下辺りまで伸びた真っ直ぐなそれを首の後ろでまとめて結い、真っ直ぐと前を見つめる形の良い切れ長の瞳は薄紫色。横顔は精巧な彫刻のように整っていて中性的で美しかった。
着ているブレザーの色が自分達の学年とは違うので、恐らく歳上だろう。
背はそれほど高くは無いが、手足が長くスラッとしていてとてもスタイルが良かった。そしてその姿はまるで王子様のようで。
彼を一目見た瞬間に、マリアンヌは恋に落ちた。
(見つけたわ...。あの人こそ私の運命の人よ...!!)
その日、彼は急いでいるのか早歩きでマリアンヌの方を見ることも無く通り過ぎて行き、話しかける隙もなかったけれど。掃除を放り投げたマリアンヌは、教室に走って帰り残っていた生徒に詰め寄った。
「銀髪の薄紫色の瞳の男性の名前を教えて!」
「はあ...?」
「いいから!学年は上よ!」
「ぎ、銀髪に薄紫の瞳は多分、エリオット・フランコリン様だと思うけど、フランコリン様は「エリオット様ね!」
そう言うと、目を爛々と輝かせてマリアンヌは教室から出ていった。クラスメイトの
「フランコリン様は聖女様の婚約者だよ...」
という呟きを残して。
(絶対に欲しいわ!エリオット様が欲しい!こんなの初めてよ!)
自宅に帰ったマリアンヌは、ベッドに寝転びながら頭の中でずっとエリオットの事を考えていた。
気弱で病弱に見せることで沢山の男性に傅かれて来たマリアンヌだったが、気分は良かったが特別な一人を見つけることは無かった。だが、ここに来て唯一を見つけてしまった。
(嫌だわ。私は直ぐに男の人を虜にしてしまうから...。エリオット様に話しかければ気に入られてしまうに違いないわ.....。)
そういうの、本当に困ってしまうのよね...とマリアンヌは自室でにんまりと笑った。
まずは彼に話しかけるところから始めるとして。
「きっかけをどうしようかしら.....。一発で仕留めたいわ。
...そうだわ!掃除を押し付けられたことにして、彼に弱々しく縋って...。病弱なふりもして気を引けば完璧だわ。
きゃー!どうしましょう...こんな気持ちは初めてよ!」
そして今現在。
(何よこれ...。)
座り込んだままの自分の目の前には絶対に自分のモノにしたいと思っていたエリオットがいて。けれど、その隣には認めたくは無いけれど、とても美しい少女が婚約者だと名乗って立っている。
「はい、ちゃんとロッカーに戻しておいてね!」
水色の髪の少女に、ぐいっと押し付けられた箒を持ち、私はまだ呆然としていた。こんなはずは無い。いつもであれば、マリアンヌが甘えれば、病弱に見せれば、落ちない男などいなかったのに、と。
「君は病弱なようだけど、学園に来るよりもまずは病院に行った方がいいのでは?アスリオス国にいるのであれば、魔法も体力も弱いとなると不利な事しか出てこないよ。」
「ふ、不利...?」
「この国では、魔力や身体能力が高い者が良いとされている。もしも、魔力が弱くとも魔法を学園で学べばある程度は使えるようになるし、身体も運動をしたり食事を変えてなるべく強くした方がいい。今後の就業や結婚においてもそれは君のためになるだろう。」
「で、でも!私、生まれつき身体が弱くて...!」
そう言われても、マリアンヌはまだ自分のスタンスを捨てきれなかった。今までの成功体験が、それを許さなかった。
「あら~?貴女ほんとうに身体が弱いの~?」
「な、何よ!何か文句あるって言うのですか?!」
クリステルの言葉に、マリアンヌはぎくりと身を強ばらせた。白金髪の少女は緩く首をかしげ心底不思議そうな顔をした。
「だって~。さっき、鼻血を止める時に身体の状態を診させてもらったけど~何も無かったわよ~?」
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