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事の顛末
しおりを挟む「…なるほど。それで、聖女様がわざわざ介入したと。」
「はい。勝手なことをして申し訳ございません。」
「いいえいいえ、聖女様の手を煩わせてしまって、面目ない事です。こちらこそ、しっかりと調べておらず間者を招き入れてしまい、ご迷惑をおかけ致しました。」
白い眉毛を下げ、恐縮するように頭を下げるのは七十代の学園長だ。クリステルとエリオットは土下座をしかねない老人の姿に、顔を見合せ苦笑いをうかべた。
マリアンヌ・フォーワード男爵令嬢は家族と共に国外に追放になった。もちろん、今回の騒ぎで魅了の力は封じられた状態で、である。
学園内での攻撃魔法の使用。得難い宝である聖女に対する暴言、そして暴行未遂。高位貴族に対する暴行未遂、スパイ疑惑などなど。
遠い北国の諜報員であったフォーワード男爵は、アストリス国の魔法の強さの秘密を調べるためにこの国へと来ていた。
大金を叩いてアストリス魔法学園に裏口入学させ、学園の様子を探るように言い聞かせていた娘が、まさか転入して直ぐにそんな騒ぎを起こすとは思っておらず驚愕した。また問答無用でアストリス国への入国を永久に禁じられてしまい、その事で兵士の前で親子喧嘩を繰り広げたらしい。
曰く。
「学園を探れなどそんな話聞いていない。私は婚約者を探しにきた」
曰く。
「このバカ娘が。お前を連れてきたのが間違いだった」
という内容だったようだ。
男爵は自身が魅了魔法の使い手であり、もちろん、マリアンヌが魅了魔法を使える事を承知していた。その力を使って学園の機密情報などを探りを入れようとしていたらしい。国に届出をしていなかった為にそれも罪として追加され、彼自身も力を封じられた。自国に帰っても今までのような仕事をすることは出来ないだろう。
魅了魔法は諜報員が敵を魅了して悪事を暴く方法で利用するなど、影の仕事ではよく使われる魔法であったが、マリアンヌの魔法威力では、魔力の弱い他国では重宝されるだろうが、この国ではほとんど蚊に刺されたくらいの影響力しかない。なので、王家としても一応登録はし、封印した後で国外に追放して放っておけば問題にはならないだろうという判断だった。
学園長室を出て、二人は肩を並べて話をしながら歩いた。
「結局、彼女は身体の弱くて儚い美少女ではなかったわね~。」
「いつか本物に出会えたらいいね。」
「あら?エリオはそのような女の子がタイプだったのかしら~?」
「まさか。強くなければ生きていけない世の中で、もしもその者が病気で困っていたとしたらきっと君は助けようとするだろう?」
「…そうね~。」
ふわ、とクリステルは微笑んだ。マリアンヌの鼻血を治した時、彼女の身体を視たのは、もしも本当に病弱なのであれば、それを自分の力で治せるのならという、クリステルの思いからだった。
結局相手はそうではなかった訳だが、子どもの頃から彼女を見つめてきたエリオットは、その事を理解していた。
「そこに、私も居たいだけだ。クリスの支えになりたいから。」
「そう…。」
真剣な薄紫色の澄んだ瞳に見つめられ、クリステルは頬を赤くした。
そしてそんな二人を、夕日の落ちる廊下の反対側から見つめる少女が二人。クリステルの顔をじっと見つめていたノエリアが、ほっと息をついた。
「良かった、変な子が居なくなって。」
「あの転入生はあのまま残ってても、魔力を見る限り上の学年に上がれなかったと思うわ。色んな子息に声もかけてたみたいだけど、魅了魔法が弱くて助かったわね。」
「…ねえ、テルテルっていっつもふわーんってしてて掴みどころないけど、婚約者といる時だけは普通の女の子みたいになるね。」
「あら、急にどうしたの?」
ノエリアの言葉にネイフィアは首を傾げた。すると、水色の髪の少女は少し頬を染めて恥ずかしそうに言った。
「私も、恋したいなーっ…て。思って。」
「…ノンがそんなこと言い始めるなんて。出会った頃は微塵もそんな感じじゃなかったのに。成長著しいわねー。」
「ネルネルは思わないの?恋したいって。」
「恋、かあ…。まあいつかはね。」
ネイフィアは窓の外を見ながら小さく呟いた。
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