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デビュタント
しおりを挟む「ほら、みて。悪魔令嬢よ。」
「いつ見ても、真っ黒ねえ。」
「本当に。見てるだけでも呪われそうだわ。」
(……悪魔じゃなくて魔族です。真っ黒なのは髪の色だけです。
ちなみに呪えない。今すぐ貴方たちを呪ってみたいけど、呪えない……!)
ミアは直ぐ後ろから聞こえてきた、同じ年頃の少女達の自分に対する嘲笑に困惑して──内心少しだけ腹を立てながらも、まっすぐ伸びる廊下を見つめていた。
何故ならその場はデビュタントの会場で、王宮の大広間に続く廻廊であったから。
この国では四月から七月までの期間で月に二回、王城の大広間にて儀式が行われる。そこには本日社交界デビューとなる貴族の青少年が一堂に会していた。
デビュタントは二日に分けて行われ、今日はその初日だ。
お城に着くまでは、ミアはそれなりにワクワクしていたのだ。
王城には初めて入るし、これから先も用事がない限りは絶対に足を踏み入れる事ができない場所だ。
そして、デビュタント用の真新しい真っ白なドレスにも少女のテンションは爆上がりであった。真っ直ぐ長い黒髪をハーフアップに結い上げ、青色の宝石のついた銀色の髪飾りを着けた。家族にも可愛いと褒めちぎられ、ふわふわとしていて軽やかで、普段着ることの無い妖精のようなドレスのラインに心が躍っていたのに、会場についてみればこれである。
学園に通っていた時も、それなりにこの黒い髪は人の目を引いた。この国、もしくはその周辺ではとても珍しい色だからだ。入学当初は浮いて浮いて仕方なかったが、特殊な事情にて友人も出来た事により、以前よりはマシになった。
その友人が初日組に参加していない事で、何これとっても居辛い、早く帰ろうとミアは無表情のまま考えていた。
ミアの先祖が残した小説により作者本人は痛い人と思われ、その上、破棄された後には色々と間違った形でその物語は後世に伝わってしまっている。
魔王の子孫で、その魔王がどれだけ悪行の限りを尽くしたのかという事を嘆く(自分もその血が入っているという悲劇のヒロイン系、作者は男性)ものだった筈なのに、何故なのか、特に若い令嬢の間では、悪魔令嬢が非道の限りを尽くしたという、何がどうなったらそうなるの?というものに変わっていたのである。
もしかして、どこかで二次創作されてる?それならそれで、迷惑だわ。
「あらやだ、目が合ったわ。悪魔になっちゃう!」
「やだあ」
「悪魔祓いしなくちゃ」
(そっち見てないです!そしてなるなら魔王……!)
隣から相変わらず聞こえてくる(聞かせようとしてる?)雑言にちょっと見当違いの事を考えながら、ミアは心の中だけで返事を返した。
──本当に返事をしたら、彼女達は蜂の子を散らすように逃げるのだろうか?それとも食ってかかってくるだろうか?──想像して、少女は小さく頭を振った。
彼女達が本気でミアを恐れているはずがない。ただ彼女を虐める口実が欲しいだけなのだ。
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