5 / 37
ちょ、超絶美形?!
しおりを挟む「美形が見られてラッキーくらいに思わないとやっていけませんね…。」
(あ、でも。)
ぼーっとしたまま、少女はそうモゴモゴと呟いた後にふと気がついた。そもそも、もう物語を退場したアリアが今後の展開を見ることが出来るのかは不明である。
この後のアリアの人生をアリアは知らない。
ちなみに、この夜会の出来事の約一ヶ月後に、主人公は学園へと途中入学してきたはずだ。光魔法の使い手として、貴族だらけの学園に入学した彼女は、そこから酸いも甘いも経験してゆく。そういうラブストーリー(?)なのだ。
酸いと言えば。
入学の式典から二日後。渡り廊下を歩いていたアリアは、突然令嬢達に取り囲まれたことがあった。何がなんやら分からないアリアは目を白黒させて怯えていただけだったけれど。
『貴女、マテオとはどういう関係なのかしら?一体何処のどなたなの?…黙っていないでお返事なさいな。…ワタクシが問うてるのに黙ったままなんてなんて失礼なのかしら。流石人の持ち物に手を出そうとするだけの事はあるわ。ワタクシが誰か分かって?』
黒髪の美しい見た目の少女にいきなり高圧的に詰め寄られた時。その人物こそがナディア・マットン侯爵令嬢。この物語の悪役令嬢(マテオにちょっかいを出した時にだけ現れるめちゃんこアクの強いキャラクター)である事をこの時点で思い出していれば、アリアは今頃こんな事になってなかったのだろう。
アリアは伯爵家の一人娘だ。
跡継ぎは彼女の子どもになるので、爵位の釣り合う者に入婿をしてもらう予定だった。
マテオをストーカーする程に想っていてたとしても、もしくはストーカーをせずに想っていたとしても、そもそも彼は公爵家の跡取り。どうにもならなかったというのに。
「ナディア様に絡まれたあの時分かってさえいれば…。…そんなの無理寄りの無理ですよね。小説の人物だなんて、そんな記憶があるだなんておかしな話ですもの。
…でももう過ぎたことをどうのこうの言っても仕方がないのです…。
とりあえず、ストーカーの出番は終わったのでこのまま大人しく帰ってお父様に今夜の出来事を報告して、早急に結婚お相手を探していただいて…。もう最悪お年寄りの後妻にでもなれたら万々歳…。もしくは王都から離れた場所にある、出来れば領地に近い修道院…いえ、人々の記憶から消えられればそれでいいのですからこのまま後継のために養子を探してもらって、その後領地に閉じこもって結婚しないという手もありますね。」
ブツブツ呟きながら尚も庭園に居座っていると、風もないのに不意に頭上よりひらりと葉っぱが舞落ちてきた。
(…あら?)
それに気を取られて少女が少し視線を上に向けた瞬間、それと同時にアリアの目の前に何かが降り立つ。ガサッと真上の枝が一緒に大きく揺れたので、アリアの座るベンチの真後ろにある、大きな木の上に居たということなのか?
「失礼。」
柔らかく響きの低い声がすぐ近くから聞こえてくる。アリアは大きく目を見開いた。
「え?」
「『すとーかー』とはどういう意味なのだ?そこの美しいお嬢さん。」
「…え?」
少女は驚きでぽかんと口を開けた。
ベンチに座ったままのアリアの目の前に現れたのは、というか木から降ってきたのは…。
先程頭の中で思い出した物語の終盤で現れる隣国の王子のように見える御方が。
352
あなたにおすすめの小説
今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる