【完結】ストーカー辞めますね、すみませんでした。伯爵令嬢が全てを思い出した時には出番は終わっていました。

須木 水夏

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ちょ、超絶美形?!

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「美形が見られてラッキーくらいに思わないとやっていけませんね…。」

(あ、でも。)

 ぼーっとしたまま、少女はそうモゴモゴと呟いた後にふと気がついた。そもそも、もう物語を退場したアリアが今後の展開を見ることが出来るのかは不明である。
 この後のアリアの人生を

 ちなみに、この夜会の出来事の約一ヶ月後に、主人公は学園へと途中入学してきたはずだ。光魔法の使い手として、貴族だらけの学園に入学した彼女は、そこから酸いも甘いも経験してゆく。そういうラブストーリー(?)なのだ。


 酸いと言えば。


 入学の式典から二日後。渡り廊下を歩いていたアリアは、突然令嬢達に取り囲まれたことがあった。何がなんやら分からないアリアは目を白黒させて怯えていただけだったけれど。


『貴女、マテオとはどういう関係なのかしら?一体何処のどなたなの?…黙っていないでお返事なさいな。…ワタクシが問うてるのに黙ったままなんてなんて失礼なのかしら。流石に手を出そうとするだけの事はあるわ。ワタクシが誰か分かって?』


 黒髪の美しい見た目の少女にいきなり高圧的に詰め寄られた時。その人物こそがナディア・マットン侯爵令嬢。この物語の悪役令嬢(マテオにちょっかいを出した時にだけ現れるめちゃんこアクの強いキャラクター)である事をこの時点で思い出していれば、アリアは今頃こんな事になってなかったのだろう。
 

 アリアは伯爵家の一人娘だ。
 跡継ぎは彼女の子どもになるので、爵位の釣り合う者に入婿をしてもらう予定だった。
 マテオをストーカーする程に想っていてたとしても、もしくはストーカーを想っていたとしても、そもそも彼は公爵家の跡取り。どうにもならなかったというのに。
 


「ナディア様に絡まれたあの時分かってさえいれば…。…そんなの無理寄りの無理ですよね。小説の人物だなんて、そんな記憶があるだなんておかしな話ですもの。
 …でももう過ぎたことをどうのこうの言っても仕方がないのです…。

 とりあえず、ストーカーの出番は終わったのでこのまま大人しく帰ってお父様に今夜の出来事を報告して、早急に結婚お相手を探していただいて…。もう最悪お年寄りの後妻にでもなれたら万々歳…。もしくは王都から離れた場所にある、出来れば領地に近い修道院…いえ、人々の記憶から消えられればそれでいいのですからこのまま後継のために養子を探してもらって、その後領地に閉じこもって結婚しないという手もありますね。」


 ブツブツ呟きながら尚も庭園に居座っていると、風もないのに不意に頭上よりひらりと葉っぱが舞落ちてきた。

(…あら?)

 それに気を取られて少女が少し視線を上に向けた瞬間、それと同時にアリアの目の前に何かが降り立つ。ガサッと真上の枝が一緒に大きく揺れたので、アリアの座るベンチの真後ろにある、大きな木の上に居たということなのか?

「失礼。」


 柔らかく響きの低い声がすぐ近くから聞こえてくる。アリアは大きく目を見開いた。


「え?」

「『すとーかー』とはどういう意味なのだ?そこの美しいお嬢さん。」

「…え?」


 少女は驚きでぽかんと口を開けた。

 ベンチに座ったままのアリアの目の前に現れたのは、というか木から降ってきたのは…。

 先程頭の中で思い出した物語の終盤で現れる隣国の王子
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