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第四章 オレは75人の魔法少女からケツを守られている
帝都オリオン
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「坊やは、……さちよのなんなんだい?」
「ふぇ?」
予想外の質問だった。片手で持ち上げられ宙吊りにされている。もう片方の腕の紅色が鈍く輝く。返答次第では殴り殺される。慎重に答えを言わねばならない。だが、さちよさんと俺の関係ってなんなんだ。
「お、し、しりあい」
「ほう……」
ポキ。
指が鳴る音。
「じゃ、なく、て、彼氏♡」
「ほぅ……」
ビキッ。
あ、怒気が強まるのが、感じた。
「すんません。ただの……弟子です、」
嘘は言ってないよな。
「弟子、ねぇ。ふーん。坊やは、もしや黒の……杖職人(マエストロ)か」
「は、まぁ、はい。」
なんか、この2つ名文化は気恥しいな。
「無数の杖を産み魔法を打ち消す少年……。にしては坊や、弱すぎだな。魔力も弱く、膂力も小さい。オマケに不細工ときた」
うっさいわ!!
「さちよの弟子を語るなら……何を習った。」
「魔力の感じ方を…………………………………………」
「………………………………それだけか」
「え、まぁ」
すごい顔してる。落胆とやっぱりかという感情がまじった顔。まずい。弟子ならもっと色々聞いておくべきだったか。だってさちよさん教えるのド下手くそなんだもん。
「何様だ?弟子をとるほど偉くなったのか?あいつは」
ぞわぞわとした感覚がこの女性から感じられた。その直後、ぞりぞりとザラザラしたもので撫でられるような感覚がし、身構える。
「ん、坊や。……いま、魔力を感じたかい?」
「え、まぁ。2回ほど」
「なんで、1回目で構えなかった。」
「怖い感じがしなかったので」
「怖い感じ?なるほど、こうか?」
体中の毛が逆立つのを感じ、咄嗟に杖を出した。右からの気配に対応したが。衝撃が来たのは左からだった。
「がっ」
何やら思案しているようだった。考えを巡らせる。
「…魔力と呪力と意思の方向、いや心か……杖の力……巫女の後継…杖をさがす仮面のふざけた男…さちよ、あいついまさら、何を考えて…………いや、何も考えてなさそうだな……」
「あの……もし良ければ、下ろして」
頭に血が上って意識が朦朧としてきた。
「坊や。……わたしの罪はなんだと思う」
彼女はフードを上げる。顔面は傷だらけだった。頭から生える角も、もとは綺麗だったであろう肌も斬り傷だらけ。片目も潰れていた。怖っ!!!これ、間違えたら死ぬ!!何かないか?!何か?ん?外套の下から、今まで隠れてた胸部があらわに。
「こ、ころ、ひっ」
彼女の腕が輝く。
「……」
「の、悩殺ですか?」
馬鹿!俺の馬鹿!あー死んだわ。絶対死んだ。ごめん。みんな。悩殺ならぬ、脳殺されてしまうわ。頭砕かれて終わりや。
彼女は目をパチクリさせて。
「は?悩殺?ガッハッハッ!!の、悩殺って!ははっ!この私が?ガッハッハッ!!」
めちゃくちゃ笑うやん。ひぃーひぃー言いながら笑う。なんだか、笑い方、さちよさんに似てるな。この人。
「…アハハ、はぁ、はぁ、…少し…気が変わった。お前を飯にするのはやめよう」
「へ?、ぐへ」
赤腕の魔法を解いたのか。地面に落ちる。そしてそのまま引きづられる。魔法なしでも、物凄い力だ。さっきなんていった?食べる気だったの?
硬い大地に後頭部を擦り付けられ、頭が禿げ上がりそうになる。
「痛たたたたたたた!なくなる!おれ、大根おろしみたいにすり下ろされる」
「……」
俺の声が聞こえてたのか無言で放り投げられる。
「ごへ!な、なにすんだ、、、よ。」
振り向くとさっきまでいた場所に巨大なつららが突き刺さっていた。
「おまえの探知能力は、この氷のような、意思なき魔力には反応出来ない。が、」
俺は黒い杖で急に飛んできた刃を打ち消す。
「敵意ある魔力には、ほぼ自動(オート)で反応してる。これは、『赤腕』を初めとする。赤の魔導体術の基礎だ。……魔力の少ない坊やに自分と同じ部分魔装を習得させるつもりだったたんだろうさ。」
「俺が……魔装を」
「たぶんな。さっさと潜るぞ。地上は危険だ」
辺りに次々と火の雨が降り注ぐ。
「ど、どこへ」
「巣(ネスト)だ」
外套をつけた彼女の指した場所には穴があった。
「俺は早く仲間に合流したいんだけど」
「どうやって?」
彼女は辺りを見るように促す。
「ここを生きて出られると思うか?」
天変地異を一気に濃縮させたような風景が広がる。
「雲の下に落ちたなら外に無事に帰れる可能性はないと思えよ。」
雲の上では、ホウキにまたがる集団の影があった。
「親方ぁ!」
「す、すみませんでさぁ!まさか第一王女様だとはつゆ知らず」
殴り飛ばされた親方の頭を踏みつけて王女は冷たく言う。
「それで」
「へ、へぇ!お探しのガキは千虹雲海の下へ落ちました。万に一つも生きてません」
「……お前たちと話したのだな」
「は、はい、一瞬でしたが」
「あまり、この辺りで騒ぎをおこしたくはないのだが」
とどめのつもりで使った魔法の魔力が立ち所に消えた。どうやって防いだ。
「そのガキの死体を見つけてきたら、帝都の永住権をやろう。当然家族も含めてな」
「な、それは!」
「なんだ、不満か」
「滅相もねぇ!おいお前ら!さっさと探すぞ」
ホウキで飛び去る職人達を見ながら、第一王女は足元に広がるカラフルな雲を見つめる。
「奴の杖にはこの呪いを消す力もあるのか?」
燃える瞳にしばし手を当て考える。
「欲しい。是が非でも。弱肉強食!やつは弱い。奪ってやる」
龍車は尋常ではない速さで様々な色の雲の合間を飛んでいく。
「千虹雲海があるなら、帝都が近いはずだ。この速度ならあと5分ほどで帝都についちまう。まったくこの龍どこにそんな力が。よほど怖かったからか?」
翡翠が自分の限界を超えてここまでの速度を出して逃げているのは、恐怖からでは無い。あの小さな人間からの頼みを聞いたからだ。あの女の射程距離から出ていない。彼女が少年に放った魔法がもしこちらに向いていたら生き残れる可能性はなかっただろう。
「見えてきた」
「あれが……帝都、オリオン」
巨大なシャボン玉が3つ連なるようにして荒野に浮かんでいた。虹色の雲の群れの間をゆっくりと移動している。2つの玉に挟まれるようにして長細いシルエット。
「ね、ねぇ、アレって、その」
顔を少し赤らめて、カリンが話す
「い、言うなよ!」
さちよも耳を赤くして素っ頓狂な声をだす。
「いや、だって、その」
「絶対に中に入って言うなよ!死罪だぞ。絶対。たまたま中央が長細い王宮になってるからなんだって」
「そう、たまたま、でござる」
ふふんっとショーグンがドヤ顔で言い放った。
「やかましいわ!!」
どんどん帝都が近づいてくる。
「どうやって中に入るんだ」
「あの二つのシャボン玉の下に入国者用の穴があるでござる。一般人は中央の帝宮には入れないでござる。」
「とりあえず飛び降りるぞ!」
龍は大きく旋回し、空の彼方に飛んでいく。
「風向き、北東より弱!しっかり掴まっとくっすよ!カリンさん!」
「うん……」
「よっしゃ。ガッハッハッ。321で飛び立つ。離脱後の龍の残り風に気をつけろ!3.2.1」
風を切る音が耳に残り、直後に身体が激しく揺さぶられるのをかんじた。
「ぐぎぎぎぎ!!踏ん張るっす!!!」
数十秒間揺さぶられた後、目を開けると。黒い大地に虹色の雲が浮かぶ世界が広がっていた。アナホリーダ大陸の中央に位置するこの荒野はかつては木々の生い茂る豊かな森があったらしい。
一行は荒野に降りたつ。黒い大地は乾いていて、歩くと砂が舞う。所々に草は生えているが、豊かな土地には見えなかった
「ちょっと待って。何この土地。魔力がないどころか。魔力が吸われてる?!」
「あんまりばたばたすんなよ。吸い尽くされてミイラになるぞ」
ピタッと動きを止めるが、地面から吸われる感覚は慣れない
「うへぇ気持ち悪い」
「帝都が浮いてる理由がそれだ。地面から絶えず魔力を吸わちまう。魔王城が近いしな。もう一つ理由もあるが。さっさといくぞ」
ホウキはその辺に捨ておき、ゆっくりと動く城に近づく。
「なぁ、ショーグン」
「なんでござるか?アン殿」
「あたし帝都にくるのは半年ぶりなんだけどさ。魔力の吸われる量増えてないか?」
「帝都は移動しているでござる。きっと勘違いでござるよ」
「そうか?」
「でっけーな」
巨大なシャボン玉の下には人が1人通れるほどの穴があった。
「シャボン玉なら、さっきのほうきで、突っ走れば」
「ほれ」
近くの石を投げる。シャボン玉に触れた瞬間物凄い勢いで跳ね返ってきた。
「あーなるほど」
「魔法の類も同様さ。全部弾かれちまう。だから、これを引っ張る」
目の前にプラプラと板が浮いている。
『御用の方は引っ張ってください。』
さちよが、引っ張ると
チンチーん
と鐘がなる音がした。
「ぶふっ。このシルエットで、その音は。」
ショーグンが吹き出した。
「アホっすか!ショーグンさん1国の主っすよね?外交問題になるっす!もう!すみませーん中に入れてくださいっす」
「ご要件は」
「魔法少女連盟から連絡があったと思います。勇者一行です。少し休ませてほしく」
「あー話に聞いていた。支援(バックアップ)の方々ですか」
「??」
一行ら顔を見合わせる。
「勇者どのはもうお着きです。ささっ中へ」
「勇者?!アイツが!無事だったんだ!!」
駆け出そうとしたカリンをすかさず止める。
「どうどうっす。いまカリンさんが勇者なんすから。どうするっすか?」
「話に乗っかる方がスムーズそうだ。ったくどこの馬鹿だ?」
「ささっこちらのリフトにお乗り下さい」
頭上から響く女性の声が促すままに丸い形の台に乗り込む。
「あ、あとそちらの腕輪を着用ください」
「これは?」
台の上には机があり、金の腕輪が10個ほど置いてあった。
「魔力を抑える腕輪です。我が国では防犯上つけて頂きたく」
「……アン、観てくれ」
アンはルーペを出して、腕輪を見る。
「これは魔呪具の類いだね。表面には魔力を放出するように呪印が彫られていて、内側は魔力を吸収するよう彫られているようだ」
「ご慧眼ですな。我が国の住民は皆これをつけております。命を奪うものではありません。」
「理由は」
「この地には魔王の呪いが色濃く残っており、どんどん魔力が大地に吸われていきます。国を浮かせ、大地から離れていても、影響からはまぬがれません。なので、国民から集めて空気中に放出することで、国内では魔法を使えるようにしております」
「なるほど」
「危険性はないのですか?」
「あなた方が犯罪を起こさない限りは大丈夫です」
「もし犯罪を犯した場合はどうなるんすか?」
「なに。他の国と同じです。罪の重さによりますがだいたいは投獄されるか、強制労働か、ですね。勇者様のお仲間が犯罪を犯すとは思いがたく。」
手に取ると見た目ほど重くは無かった。
「カリン」
さちよは軽く呼びかけ手招きする。アンは質問する。
「あたしが前にこの国に来た時はこんなものはなかったんだが?」
「旧王政の時ですね。あの頃は犯罪率も高かったですね。ですが、この腕輪を導入以降犯罪率は低下しました。やはり、みなで国を支えるという連帯感が大事ってことですね」
「これはいつ外されますか」
「出国時に外されます。出立予定はいつですか?」
アンはさちよと目配せをし、こう告げた。
「身体を休めたら出立したいので、1日ほど」
「わかりました。ようこそ帝都オリオンへ。歓迎いたします」
全員の腕に金の腕輪があることが確認されると、ゆっくりと台があがっていく。
シャボン玉の膜が近づき、冷たいプルプルとした膜を通り過ぎる。
シャボン玉の中には街があった。屋根は赤土によって作られた瓦が敷き詰められており、家々の白い壁色とよくマッチしていた。
「はやく、はやく、アイツを」
「ガッハッハッ!焦っても魔王は逃げやしねーよ勇者様。」
「いや、違っ」
「カリン。国の中に入ったんだ。覚悟を決めろ」
街の人々はそれぞれ腕輪をしており、魔法を使っている。
「ん、なんだい?杖を使わないのかい?」
腕をかざして、畑に水をまく様子が見られた。ほかの場所では露天商が野菜を浮かせ、商売をしている。いずれも杖はない。
「杖は呪いを受けたものの補助具としての意味合いが強いのです。簡単な生活魔法は腕輪で十分になりました」
声は聞こえたが、今度は肉声だった。
「ようこそおいで下さいました。勇者様の御一行様。私、第三王女のレオ=ミンタカと申します。どうぞよろしくお願い致します。旅の疲れを癒してください。」
薄緑のドレスに向こうが透けるようなガーディガンを羽織っている。白い肌に金髪。落ち着いていて清楚で優しい印象を受ける。第1王女とはえらい違いだ。
「もっと、ゴリラみたいな方だと思っていた……」
「ば、ばか!」
王女はカリンの超失礼な一言を笑って受け流す。
「ふふふ、第1王女のアルニタスに会われたことがおありでしたか?私たち姉妹はみんな母が違うのです。父には5人の妻がいます。」
別に第1王女がゴリラとは言ってないんだが。あまりつっこまないほうが良さそうだ。性格こそあれだが、みんな顔立ちが整ってるな。
「こ、こ、こ、こんにちは。だ、第二王女のれ、レオ、あ、アルニラム。よろしく」
その王女は丸いメガネをかけて紫色のくすんだドレスに白衣を着ていた。王女と言われて驚く。
ボサボサした黒髪。白衣は様々な薬品の色で染まっていた。
「あ、改めてよ、よ、ようこそ帝都、お、オリオンへ」
王女直々の御出迎え。とてもクーデターが起こったばかりの国には思えない。
「ね、ねぇ、さちよさん」
そでをひっぱるカリンを目線で黙らせて、一行は王女について行った。
俺は謎の女性に促されるまま、地面に開けられた穴に連れ去られる。
「これは。」
「早く入りな」
うっすらとだが、神様のいた天上の間にあった扉の気配。圧迫するような重い魔力。
「どういうことですか??!何で、この魔力の感じ、魔王」
「へぇ。わかるかい。坊や。いまや大陸で、魔王の魔力に覚えがある者は両の手ほどもいないのに」壁が脈打っている。見えない手で掴まれているようで足がすくむ。
「安心しな。ここにあるのは、意思の無いただの魔王の1片さ。まだな」
気味の悪い脈打つ黒い大地の下へ潜っていくと、壁の色が徐々に白く変わっていく。少し歩くと1部屋程のこじんまりした空間があった。
横になるスペース。燃えカスのある台など。簡易的な生活の場のようだ。
「まぁ、腰掛けな」
「は、はぁ」
とりあえず、ベッドのような場所に腰掛ける。固い。杖を振り彼女は湯を沸かし茶を入れる。
「坊や、仲間はどこにいるんだ」
「帝都に向かっている、はずです。」
「……帝都か。一体何をしに?」
これは答えていいのか?謎の傷だらけの角の生えた美女。ムチで叩かれたい。いや、早くみんなの元に行かなくては。
「えっと、依頼があって。クーデターを調べに」
「はぁ、耳が早いな。100人の魔法少女たちの中には『千里眼』もいるだろうに。坊や。嵌められたね。No.2のことだ。大方、厄介なヤツらをまとめて処分でも、するつもりだったんだろ。今帝都にいくのは止めておいたほうがいい」
「クーデターがあって、き、危険だからですか?」
「いや、クーデター自体はあっさりすんだんだよ。王と王妃が国を出てっておしまいだ。戦闘は行われず、国内は今まで通りさ。」
「じゃあ、止めておいたほうがいいってのは。」
「実力不足だ」
杖でお茶の葉をつっつきながら事も無げに言い放った。
「なっ」
「帝都は軍事国家だ。平時はそれぞれがそれぞれの暮らしをしているが、全員が屈強な兵士だ。おまえじゃ花屋のお嬢さんにもかてねーよ。ましてや、王宮の兵士たちは魔法少女でいう30番台クラスがうじゃうじゃいやがる。生きて帰れないさ。今ごろお仲間たちは捕まって投獄されているだろう」
「は、早く助けないと」
「待て待て、どうやってここを抜けるんだ。」
「黒い杖で魔法を打ち消しながら行くさ」
「お前。『黒濁(こくだく)』の扱いすら満足じゃねーだろうが。さっきの落下速度。黒い杖のせいだろ」
彼女は言ったが、同時にしまったという顔にもなった。
「『黒濁(こくだく)』?あんたこの杖のことを知ってんのか?」
一瞬躊躇っていたが、話し始めた。
「……まぁな。前の使い手を少しな。黄金の巫女って呼ばれていた奴さ。『黒濁(こくだく)』と『白純(はくじゅん)』って名前の一対の黒い杖と白い杖を使ってた。」
前任者である女神のこと……か?巫女と女神は同一人物なのか?だが、貴重な情報だ。
「その戦い方を教えてくれないか」
「…坊や。戦い方を知ってどうする。わたしは罪人。この地で死を待つばかりのな。そんな輩に教えをこうか?私自身この地を抜けでるのが困難なのに」
「困難なだけで不可能ってわけじゃないんだろ?こっちは時間が無いし、普通の方法じゃ強くなれないことも分かってる。あんたが俺を助けたのも、俺の杖の力が必要だから、なんだろ」
「へ~ただの夢見がちなガキってわけじゃないのか。俺の力って言わないところも現実をよく見てるじゃないか。教えてやらん訳では無いが、ただってわけじゃいかないがね」
少し悩む。路銀はあったが、落下中にどっかにいってしまった。
「俺の杖はどうだ?」
「はっ。生憎自分の杖は自分に合ったもんがあるんでな。」
「…………これを担保に少し時間をくれないか」
三羽烏の兄からもらった黒い指輪。
「価値があるはずだ。……人からの預かりもんで、大事なもんだ。だからあんたが納得できる金が溜まるまで、それを預かってもらえないか。」
「ガッハッハッ!なんだ。その提案は!あての無いものを信用しろと?さっき会ったばかりの人間に?馬鹿か」
ちらりと見せられた。漆黒のリング。彼女は興味を示さない。
「これはその人が懸命に稼いで手に入れたもんだ。価値がないとは言わせない。あんたも俺の力が必要なんだろ?いいのか?思い知ることになるぜ」
息を吸い込み彼女を真っ直ぐ見つめる。肝心の彼女は魔炎をお手玉にして、遊んでいる。
「俺はあっさり自分が犬死する自信がある。だから俺を助けないと、あんたの望みは叶わないぞ」
火を弄んでいた彼女はこっちを向いて目をぱちくりさせた。
「ぷっ……ガッハッハッ!どんな脅し文句なんだよ!ハッハッ!!」
「あとはあんたの罪だ…」
ぴくりと彼女の耳が動く。
「坊や」
彼女の赤い杖がいつの間にかこちらに向いていた。
「……言葉を選んで話せ」
「選ばねーよ。選んでたら嘘になっちまうだろうが」
「ふぇ?」
予想外の質問だった。片手で持ち上げられ宙吊りにされている。もう片方の腕の紅色が鈍く輝く。返答次第では殴り殺される。慎重に答えを言わねばならない。だが、さちよさんと俺の関係ってなんなんだ。
「お、し、しりあい」
「ほう……」
ポキ。
指が鳴る音。
「じゃ、なく、て、彼氏♡」
「ほぅ……」
ビキッ。
あ、怒気が強まるのが、感じた。
「すんません。ただの……弟子です、」
嘘は言ってないよな。
「弟子、ねぇ。ふーん。坊やは、もしや黒の……杖職人(マエストロ)か」
「は、まぁ、はい。」
なんか、この2つ名文化は気恥しいな。
「無数の杖を産み魔法を打ち消す少年……。にしては坊や、弱すぎだな。魔力も弱く、膂力も小さい。オマケに不細工ときた」
うっさいわ!!
「さちよの弟子を語るなら……何を習った。」
「魔力の感じ方を…………………………………………」
「………………………………それだけか」
「え、まぁ」
すごい顔してる。落胆とやっぱりかという感情がまじった顔。まずい。弟子ならもっと色々聞いておくべきだったか。だってさちよさん教えるのド下手くそなんだもん。
「何様だ?弟子をとるほど偉くなったのか?あいつは」
ぞわぞわとした感覚がこの女性から感じられた。その直後、ぞりぞりとザラザラしたもので撫でられるような感覚がし、身構える。
「ん、坊や。……いま、魔力を感じたかい?」
「え、まぁ。2回ほど」
「なんで、1回目で構えなかった。」
「怖い感じがしなかったので」
「怖い感じ?なるほど、こうか?」
体中の毛が逆立つのを感じ、咄嗟に杖を出した。右からの気配に対応したが。衝撃が来たのは左からだった。
「がっ」
何やら思案しているようだった。考えを巡らせる。
「…魔力と呪力と意思の方向、いや心か……杖の力……巫女の後継…杖をさがす仮面のふざけた男…さちよ、あいついまさら、何を考えて…………いや、何も考えてなさそうだな……」
「あの……もし良ければ、下ろして」
頭に血が上って意識が朦朧としてきた。
「坊や。……わたしの罪はなんだと思う」
彼女はフードを上げる。顔面は傷だらけだった。頭から生える角も、もとは綺麗だったであろう肌も斬り傷だらけ。片目も潰れていた。怖っ!!!これ、間違えたら死ぬ!!何かないか?!何か?ん?外套の下から、今まで隠れてた胸部があらわに。
「こ、ころ、ひっ」
彼女の腕が輝く。
「……」
「の、悩殺ですか?」
馬鹿!俺の馬鹿!あー死んだわ。絶対死んだ。ごめん。みんな。悩殺ならぬ、脳殺されてしまうわ。頭砕かれて終わりや。
彼女は目をパチクリさせて。
「は?悩殺?ガッハッハッ!!の、悩殺って!ははっ!この私が?ガッハッハッ!!」
めちゃくちゃ笑うやん。ひぃーひぃー言いながら笑う。なんだか、笑い方、さちよさんに似てるな。この人。
「…アハハ、はぁ、はぁ、…少し…気が変わった。お前を飯にするのはやめよう」
「へ?、ぐへ」
赤腕の魔法を解いたのか。地面に落ちる。そしてそのまま引きづられる。魔法なしでも、物凄い力だ。さっきなんていった?食べる気だったの?
硬い大地に後頭部を擦り付けられ、頭が禿げ上がりそうになる。
「痛たたたたたたた!なくなる!おれ、大根おろしみたいにすり下ろされる」
「……」
俺の声が聞こえてたのか無言で放り投げられる。
「ごへ!な、なにすんだ、、、よ。」
振り向くとさっきまでいた場所に巨大なつららが突き刺さっていた。
「おまえの探知能力は、この氷のような、意思なき魔力には反応出来ない。が、」
俺は黒い杖で急に飛んできた刃を打ち消す。
「敵意ある魔力には、ほぼ自動(オート)で反応してる。これは、『赤腕』を初めとする。赤の魔導体術の基礎だ。……魔力の少ない坊やに自分と同じ部分魔装を習得させるつもりだったたんだろうさ。」
「俺が……魔装を」
「たぶんな。さっさと潜るぞ。地上は危険だ」
辺りに次々と火の雨が降り注ぐ。
「ど、どこへ」
「巣(ネスト)だ」
外套をつけた彼女の指した場所には穴があった。
「俺は早く仲間に合流したいんだけど」
「どうやって?」
彼女は辺りを見るように促す。
「ここを生きて出られると思うか?」
天変地異を一気に濃縮させたような風景が広がる。
「雲の下に落ちたなら外に無事に帰れる可能性はないと思えよ。」
雲の上では、ホウキにまたがる集団の影があった。
「親方ぁ!」
「す、すみませんでさぁ!まさか第一王女様だとはつゆ知らず」
殴り飛ばされた親方の頭を踏みつけて王女は冷たく言う。
「それで」
「へ、へぇ!お探しのガキは千虹雲海の下へ落ちました。万に一つも生きてません」
「……お前たちと話したのだな」
「は、はい、一瞬でしたが」
「あまり、この辺りで騒ぎをおこしたくはないのだが」
とどめのつもりで使った魔法の魔力が立ち所に消えた。どうやって防いだ。
「そのガキの死体を見つけてきたら、帝都の永住権をやろう。当然家族も含めてな」
「な、それは!」
「なんだ、不満か」
「滅相もねぇ!おいお前ら!さっさと探すぞ」
ホウキで飛び去る職人達を見ながら、第一王女は足元に広がるカラフルな雲を見つめる。
「奴の杖にはこの呪いを消す力もあるのか?」
燃える瞳にしばし手を当て考える。
「欲しい。是が非でも。弱肉強食!やつは弱い。奪ってやる」
龍車は尋常ではない速さで様々な色の雲の合間を飛んでいく。
「千虹雲海があるなら、帝都が近いはずだ。この速度ならあと5分ほどで帝都についちまう。まったくこの龍どこにそんな力が。よほど怖かったからか?」
翡翠が自分の限界を超えてここまでの速度を出して逃げているのは、恐怖からでは無い。あの小さな人間からの頼みを聞いたからだ。あの女の射程距離から出ていない。彼女が少年に放った魔法がもしこちらに向いていたら生き残れる可能性はなかっただろう。
「見えてきた」
「あれが……帝都、オリオン」
巨大なシャボン玉が3つ連なるようにして荒野に浮かんでいた。虹色の雲の群れの間をゆっくりと移動している。2つの玉に挟まれるようにして長細いシルエット。
「ね、ねぇ、アレって、その」
顔を少し赤らめて、カリンが話す
「い、言うなよ!」
さちよも耳を赤くして素っ頓狂な声をだす。
「いや、だって、その」
「絶対に中に入って言うなよ!死罪だぞ。絶対。たまたま中央が長細い王宮になってるからなんだって」
「そう、たまたま、でござる」
ふふんっとショーグンがドヤ顔で言い放った。
「やかましいわ!!」
どんどん帝都が近づいてくる。
「どうやって中に入るんだ」
「あの二つのシャボン玉の下に入国者用の穴があるでござる。一般人は中央の帝宮には入れないでござる。」
「とりあえず飛び降りるぞ!」
龍は大きく旋回し、空の彼方に飛んでいく。
「風向き、北東より弱!しっかり掴まっとくっすよ!カリンさん!」
「うん……」
「よっしゃ。ガッハッハッ。321で飛び立つ。離脱後の龍の残り風に気をつけろ!3.2.1」
風を切る音が耳に残り、直後に身体が激しく揺さぶられるのをかんじた。
「ぐぎぎぎぎ!!踏ん張るっす!!!」
数十秒間揺さぶられた後、目を開けると。黒い大地に虹色の雲が浮かぶ世界が広がっていた。アナホリーダ大陸の中央に位置するこの荒野はかつては木々の生い茂る豊かな森があったらしい。
一行は荒野に降りたつ。黒い大地は乾いていて、歩くと砂が舞う。所々に草は生えているが、豊かな土地には見えなかった
「ちょっと待って。何この土地。魔力がないどころか。魔力が吸われてる?!」
「あんまりばたばたすんなよ。吸い尽くされてミイラになるぞ」
ピタッと動きを止めるが、地面から吸われる感覚は慣れない
「うへぇ気持ち悪い」
「帝都が浮いてる理由がそれだ。地面から絶えず魔力を吸わちまう。魔王城が近いしな。もう一つ理由もあるが。さっさといくぞ」
ホウキはその辺に捨ておき、ゆっくりと動く城に近づく。
「なぁ、ショーグン」
「なんでござるか?アン殿」
「あたし帝都にくるのは半年ぶりなんだけどさ。魔力の吸われる量増えてないか?」
「帝都は移動しているでござる。きっと勘違いでござるよ」
「そうか?」
「でっけーな」
巨大なシャボン玉の下には人が1人通れるほどの穴があった。
「シャボン玉なら、さっきのほうきで、突っ走れば」
「ほれ」
近くの石を投げる。シャボン玉に触れた瞬間物凄い勢いで跳ね返ってきた。
「あーなるほど」
「魔法の類も同様さ。全部弾かれちまう。だから、これを引っ張る」
目の前にプラプラと板が浮いている。
『御用の方は引っ張ってください。』
さちよが、引っ張ると
チンチーん
と鐘がなる音がした。
「ぶふっ。このシルエットで、その音は。」
ショーグンが吹き出した。
「アホっすか!ショーグンさん1国の主っすよね?外交問題になるっす!もう!すみませーん中に入れてくださいっす」
「ご要件は」
「魔法少女連盟から連絡があったと思います。勇者一行です。少し休ませてほしく」
「あー話に聞いていた。支援(バックアップ)の方々ですか」
「??」
一行ら顔を見合わせる。
「勇者どのはもうお着きです。ささっ中へ」
「勇者?!アイツが!無事だったんだ!!」
駆け出そうとしたカリンをすかさず止める。
「どうどうっす。いまカリンさんが勇者なんすから。どうするっすか?」
「話に乗っかる方がスムーズそうだ。ったくどこの馬鹿だ?」
「ささっこちらのリフトにお乗り下さい」
頭上から響く女性の声が促すままに丸い形の台に乗り込む。
「あ、あとそちらの腕輪を着用ください」
「これは?」
台の上には机があり、金の腕輪が10個ほど置いてあった。
「魔力を抑える腕輪です。我が国では防犯上つけて頂きたく」
「……アン、観てくれ」
アンはルーペを出して、腕輪を見る。
「これは魔呪具の類いだね。表面には魔力を放出するように呪印が彫られていて、内側は魔力を吸収するよう彫られているようだ」
「ご慧眼ですな。我が国の住民は皆これをつけております。命を奪うものではありません。」
「理由は」
「この地には魔王の呪いが色濃く残っており、どんどん魔力が大地に吸われていきます。国を浮かせ、大地から離れていても、影響からはまぬがれません。なので、国民から集めて空気中に放出することで、国内では魔法を使えるようにしております」
「なるほど」
「危険性はないのですか?」
「あなた方が犯罪を起こさない限りは大丈夫です」
「もし犯罪を犯した場合はどうなるんすか?」
「なに。他の国と同じです。罪の重さによりますがだいたいは投獄されるか、強制労働か、ですね。勇者様のお仲間が犯罪を犯すとは思いがたく。」
手に取ると見た目ほど重くは無かった。
「カリン」
さちよは軽く呼びかけ手招きする。アンは質問する。
「あたしが前にこの国に来た時はこんなものはなかったんだが?」
「旧王政の時ですね。あの頃は犯罪率も高かったですね。ですが、この腕輪を導入以降犯罪率は低下しました。やはり、みなで国を支えるという連帯感が大事ってことですね」
「これはいつ外されますか」
「出国時に外されます。出立予定はいつですか?」
アンはさちよと目配せをし、こう告げた。
「身体を休めたら出立したいので、1日ほど」
「わかりました。ようこそ帝都オリオンへ。歓迎いたします」
全員の腕に金の腕輪があることが確認されると、ゆっくりと台があがっていく。
シャボン玉の膜が近づき、冷たいプルプルとした膜を通り過ぎる。
シャボン玉の中には街があった。屋根は赤土によって作られた瓦が敷き詰められており、家々の白い壁色とよくマッチしていた。
「はやく、はやく、アイツを」
「ガッハッハッ!焦っても魔王は逃げやしねーよ勇者様。」
「いや、違っ」
「カリン。国の中に入ったんだ。覚悟を決めろ」
街の人々はそれぞれ腕輪をしており、魔法を使っている。
「ん、なんだい?杖を使わないのかい?」
腕をかざして、畑に水をまく様子が見られた。ほかの場所では露天商が野菜を浮かせ、商売をしている。いずれも杖はない。
「杖は呪いを受けたものの補助具としての意味合いが強いのです。簡単な生活魔法は腕輪で十分になりました」
声は聞こえたが、今度は肉声だった。
「ようこそおいで下さいました。勇者様の御一行様。私、第三王女のレオ=ミンタカと申します。どうぞよろしくお願い致します。旅の疲れを癒してください。」
薄緑のドレスに向こうが透けるようなガーディガンを羽織っている。白い肌に金髪。落ち着いていて清楚で優しい印象を受ける。第1王女とはえらい違いだ。
「もっと、ゴリラみたいな方だと思っていた……」
「ば、ばか!」
王女はカリンの超失礼な一言を笑って受け流す。
「ふふふ、第1王女のアルニタスに会われたことがおありでしたか?私たち姉妹はみんな母が違うのです。父には5人の妻がいます。」
別に第1王女がゴリラとは言ってないんだが。あまりつっこまないほうが良さそうだ。性格こそあれだが、みんな顔立ちが整ってるな。
「こ、こ、こ、こんにちは。だ、第二王女のれ、レオ、あ、アルニラム。よろしく」
その王女は丸いメガネをかけて紫色のくすんだドレスに白衣を着ていた。王女と言われて驚く。
ボサボサした黒髪。白衣は様々な薬品の色で染まっていた。
「あ、改めてよ、よ、ようこそ帝都、お、オリオンへ」
王女直々の御出迎え。とてもクーデターが起こったばかりの国には思えない。
「ね、ねぇ、さちよさん」
そでをひっぱるカリンを目線で黙らせて、一行は王女について行った。
俺は謎の女性に促されるまま、地面に開けられた穴に連れ去られる。
「これは。」
「早く入りな」
うっすらとだが、神様のいた天上の間にあった扉の気配。圧迫するような重い魔力。
「どういうことですか??!何で、この魔力の感じ、魔王」
「へぇ。わかるかい。坊や。いまや大陸で、魔王の魔力に覚えがある者は両の手ほどもいないのに」壁が脈打っている。見えない手で掴まれているようで足がすくむ。
「安心しな。ここにあるのは、意思の無いただの魔王の1片さ。まだな」
気味の悪い脈打つ黒い大地の下へ潜っていくと、壁の色が徐々に白く変わっていく。少し歩くと1部屋程のこじんまりした空間があった。
横になるスペース。燃えカスのある台など。簡易的な生活の場のようだ。
「まぁ、腰掛けな」
「は、はぁ」
とりあえず、ベッドのような場所に腰掛ける。固い。杖を振り彼女は湯を沸かし茶を入れる。
「坊や、仲間はどこにいるんだ」
「帝都に向かっている、はずです。」
「……帝都か。一体何をしに?」
これは答えていいのか?謎の傷だらけの角の生えた美女。ムチで叩かれたい。いや、早くみんなの元に行かなくては。
「えっと、依頼があって。クーデターを調べに」
「はぁ、耳が早いな。100人の魔法少女たちの中には『千里眼』もいるだろうに。坊や。嵌められたね。No.2のことだ。大方、厄介なヤツらをまとめて処分でも、するつもりだったんだろ。今帝都にいくのは止めておいたほうがいい」
「クーデターがあって、き、危険だからですか?」
「いや、クーデター自体はあっさりすんだんだよ。王と王妃が国を出てっておしまいだ。戦闘は行われず、国内は今まで通りさ。」
「じゃあ、止めておいたほうがいいってのは。」
「実力不足だ」
杖でお茶の葉をつっつきながら事も無げに言い放った。
「なっ」
「帝都は軍事国家だ。平時はそれぞれがそれぞれの暮らしをしているが、全員が屈強な兵士だ。おまえじゃ花屋のお嬢さんにもかてねーよ。ましてや、王宮の兵士たちは魔法少女でいう30番台クラスがうじゃうじゃいやがる。生きて帰れないさ。今ごろお仲間たちは捕まって投獄されているだろう」
「は、早く助けないと」
「待て待て、どうやってここを抜けるんだ。」
「黒い杖で魔法を打ち消しながら行くさ」
「お前。『黒濁(こくだく)』の扱いすら満足じゃねーだろうが。さっきの落下速度。黒い杖のせいだろ」
彼女は言ったが、同時にしまったという顔にもなった。
「『黒濁(こくだく)』?あんたこの杖のことを知ってんのか?」
一瞬躊躇っていたが、話し始めた。
「……まぁな。前の使い手を少しな。黄金の巫女って呼ばれていた奴さ。『黒濁(こくだく)』と『白純(はくじゅん)』って名前の一対の黒い杖と白い杖を使ってた。」
前任者である女神のこと……か?巫女と女神は同一人物なのか?だが、貴重な情報だ。
「その戦い方を教えてくれないか」
「…坊や。戦い方を知ってどうする。わたしは罪人。この地で死を待つばかりのな。そんな輩に教えをこうか?私自身この地を抜けでるのが困難なのに」
「困難なだけで不可能ってわけじゃないんだろ?こっちは時間が無いし、普通の方法じゃ強くなれないことも分かってる。あんたが俺を助けたのも、俺の杖の力が必要だから、なんだろ」
「へ~ただの夢見がちなガキってわけじゃないのか。俺の力って言わないところも現実をよく見てるじゃないか。教えてやらん訳では無いが、ただってわけじゃいかないがね」
少し悩む。路銀はあったが、落下中にどっかにいってしまった。
「俺の杖はどうだ?」
「はっ。生憎自分の杖は自分に合ったもんがあるんでな。」
「…………これを担保に少し時間をくれないか」
三羽烏の兄からもらった黒い指輪。
「価値があるはずだ。……人からの預かりもんで、大事なもんだ。だからあんたが納得できる金が溜まるまで、それを預かってもらえないか。」
「ガッハッハッ!なんだ。その提案は!あての無いものを信用しろと?さっき会ったばかりの人間に?馬鹿か」
ちらりと見せられた。漆黒のリング。彼女は興味を示さない。
「これはその人が懸命に稼いで手に入れたもんだ。価値がないとは言わせない。あんたも俺の力が必要なんだろ?いいのか?思い知ることになるぜ」
息を吸い込み彼女を真っ直ぐ見つめる。肝心の彼女は魔炎をお手玉にして、遊んでいる。
「俺はあっさり自分が犬死する自信がある。だから俺を助けないと、あんたの望みは叶わないぞ」
火を弄んでいた彼女はこっちを向いて目をぱちくりさせた。
「ぷっ……ガッハッハッ!どんな脅し文句なんだよ!ハッハッ!!」
「あとはあんたの罪だ…」
ぴくりと彼女の耳が動く。
「坊や」
彼女の赤い杖がいつの間にかこちらに向いていた。
「……言葉を選んで話せ」
「選ばねーよ。選んでたら嘘になっちまうだろうが」
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