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第二章

俺のケツと王都探索

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「うぉおおお!」
 王都はこのアナホリーダ大陸の中でも指折りの街と言われてるだけあり、活気があった。石の城壁の中はバザールのようになっており、様々な商品が所狭しとならんでいた。人々は日差しよけを付けた簡易的な店で客の呼びかけをしていた。

「さぁ、バニガンドラ産のウニュミニラだよ!安いよ安いよ!」

「アンタナサハラ!アンタナサハラ!入荷したよ!」

「王都に来たならこれを食わなきゃいけねぇ!バルガマーンのパルバル味だ!新味登場!!」

 まぁ、例によって何を売られているのかはあまり分からないのだが。

「トマト!トマトだよ!異世界人から輸入したトマトだよ!キャベツやレタスもあるよ!」

 おぉ!トマトか!異世界同士を渡るのは何も人だけでは無い。動植物もそのひとつだ。特にアナホリーダは、魔道士達の異名にも、動植物の名前が採用されているなど、意外と話が通じることも多い。時々魔力にあてられ、突然変異したものもあるが。

「なんで、こないに値上がりしとんねん!まけたって~な、にいちゃん!」

 美人のグループが何やら揉めている。

「あれ、関西弁?なんで?」
「お、この言葉を知ってるってことは、あんちゃん異世界人か?よろしゅうな」

 リーダー格のような長い黒髪の美人が声をかけてきた。180センチはあろうかという長身にこの世界では珍しいスーツのような服装。

「おねーさんも異世界人なんですか」

「ちゃうちゃう私は異世界人のクォーターや。異世界人のジーちゃんがおる。この言葉遣いもジーちゃんの影響や。」
 へー。じゃあ、このアナホリーダには、かなり前から色んな日本人がきているのか。

「好物はお好み焼きや!」

「あ、俺も!!」

「お!初めてお好み焼きについて、質問なく会話が通じたわ!なんか、うれしいな!!ジーちゃん秘伝のソース今度わけたるわ!渾身の出来ゆうとったわ!」

「ありがとうございます!楽しみだ!」

 おれも素直に嬉しい。異世界にきて、半年、さちよさん以外にはじめての日本ゆかりの人と知り合いになれた。仲良くなりたい。

「あ、一応確認したいんですけど。あ、いや、間違いない、絶対間違いないんですけど。どうしても確認しておきたくて。当然作り方は?せーのっ!」

「広島風こそ最強」
「カンサイフウこそ至高」

 よろしい、戦争だ。

「なんでや~!!!なんでやねん!!ジーちゃんがいうとったのに!!」

「嘘だ!嘘だ!なんで、こんな、神様俺を見捨てたのかあ!!」

 美人のおねーさんは頭を抱え、俺は手を祈りの形にし叫んだ。まさか異世界にてお好み焼きの好みで仲違いしてしまうとは。

「なんでや!お手軽やないかい!!ギャギャって混ぜてジュッジュやろ?」

「積み上げられた芸術が分からないのか?」

「お好み焼きにライスつくのに、そばいれるなんてナンセンスや!」

「米いらないって!パリパリそばで十分だろ!」

 そんな言い争いを引いた目で見ている4人の魔法少女。

「あの、区長さんたち、何を言ってるんでしょうか?」
「さてな、だが、公衆の面前であの悶えよう、相当な事が起きたみたいだぜ。ん?」

 大慌てで、転移駅の駅員が走ってきた。

「区長!魔道士隊より連絡、郊外の領地より王都へ杖職人(マエストロ)が転移。警戒されたし」

「あ?なんで勝手に出動しとんねん」
「それが」
「また、その時、魔道士隊へ妨害行為をした「千変」「黒猫」をともに撃退。致命傷を負わせたとのことです」
「なんやて?!」
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