上 下
392 / 572
第十五章 王都で貴族のお仕事。そして・・・。

第316話 冒険者ギルドのお願い。

しおりを挟む
    昨日のパーティーでは、多少ゴタゴタはあったが、それ以外は順調に進み、後半は許嫁達とひたすらに踊りまくっていた。

    流石に人間離れの体力の為か体的には問題なかったが、周囲の男達からの嫉妬混じりの視線やプレッシャーが、元パンピーでリーマンのままの私の精神に穴が開きかねない程に突き刺さっていた。

    馬車で屋敷に戻ると、緊張が解けたのか、急に肩が凝りだして困ったね。よっぽどに知らずの内に、身体中力んで緊張していたようだ。

    『気』を巡らせて、肩の筋肉の凝りを解していく。
地球に居どころに開発した技だ。特に年を取ってからは、営業周りの足腰の疲労や肩凝りに良く効く事を発見したときは、微妙に年を食ったことを感じたな。

    「兄ちゃん、お土産はどうしたにゃ?」
「アルメイダか。遊びに行ってた訳では無いが、お土産はこれだよ。パーティーで出されていた料理だ。中々旨かったぞ。アイリスもどうぞ。」
「有り難うなのにゃ。流石、兄ちゃんなのにゃ。」

アルメイダは期待していたらしく、しかも肉料理中心に盛られた小皿を受けとると、夕食後だと言うのにニパッと笑顔で皿から肉料理を摘まみ始める。

「お土産と言えるほどの者ではないけど、代わりに明日の晩飯の時に甘いお菓子を新しく作ってやるから、それで我慢してくれるかい?」
「にゃ!甘いお菓子かなゃ。。分かったにゃ。約束だからにゃ兄ちゃん。」

更に機嫌が良くなり、ニコニコ笑うアルメイダ。その時にすかさずに話に割り込んでくるアイリス。

「あら、新しいデザートの試作をするのね?なら、当然私にも頂けるのよね?」

ニンマリと、笑顔を浮かべてアイリスが聞いてくる。

(甘味の事となると地獄耳だな、アイリスは。)

「勿論だよ。今日は一日構ってあげられなかったからね。明日も昼間には訪問の予定があるけど、夕方からは空いてそうだからね、新作を試してみるよ。プリンに負けない美味しさを約束しよう。ただ、甘いから沢山食べると、太るから注意だ。」
「にゃ、プリンよりも強いのか。それは楽しみだにゃ。」

(うん?プリンよりも強い?まあ、旨いと言うことだろうか?。)

アルメイダのトンチキな言葉に首を傾げながらもその日の夜は疲れからかぐっすりと眠った。

    翌朝、目が覚めたら少し寒いなと思って、起き上がると窓の外に白い物がちらちらと降っていた。

「雪が降っているとは。道理で寒いわけだ。積もらないと良いが。」
「ううう。寒いのにゃ。」
「・・・うう、寒いじゃないの。」

    私が起き上がった為、掛け布団がずれて、外気にさらされた為か、寒いと文句を言い立てて、目を覚ます二人。 

「おーい、サラマンドラいるかい?」
「・・・おう、ショウか。今回は何だい?」
「済まないね。この前と同じくここにいる三人を三時間程、暖めて貰えるかな?」
「構わないぜ。三時間だな?そうすると魔力三百程いるが良いか?」
「構わないよ。やってくれ。」
「分かったよ。ほらっ!」

掛け声と共に体の内側からじんわりと暖まっていく。

「どうだ?こんな感じで良いか?」
「ああ、助かるよ。また、よろしく頼むよ。」
「また、呼んでくれ。じゃな。」

それだけ言うと、サラマンドラは首飾りに戻って行った。

    すっかり、温かくなり、着替えようと思ったが、くっついている二人がなかなか起きない。

「ほら、起きないと、耳をモフるぞ。」

この言葉に、反応してガバッと跳ね起きたのはアイリスだった。

「な、なんて事を言うのよ。耳は、まだダメって言ってるでしょう。」
「起きたか。もう寒くないだろう?起きて着替えなさい。」
「う~、なんて酷いお越し方かしら。私の耳を何だと思っているのかしら。」
「え、モフリ対象。」
「う~~~。起きるわよ。」
「さて、アイリスは起きたが、こっちは未だにしぶといな。先ずはこれから。」

宣言通り、アルメイダの虎耳を摘まんでモミモミする。

「ニャ、ニャハ。ニャハハ。ウニャッ!」

モミモミとアルメイダの耳をモフっていると、初めはくすぐったい為か笑っていたが、我慢できずにモミモミしていた私の指先を噛みつこうとする。
以前にも噛まれた事は有ったので、すかさずに指を引っ込めて噛み付きを避ける。

「気持ち良く寝ている所に、イタズラはダメニャ!」
「アルメイダ、いい加減に起きてくれよ。もう寒くはないだろ?」
「ウニャ?本当だ。寒くないニャ。でもイタズラは駄目ニャ。分かったかニャ?」
「ハイハイ。二人とも起きて着替えるぞ。」

    なんだかんだあったが、着替えが済むと食堂に向かい、朝飯を食べる。


    「じゃあ、冒険者ギルドに行ってくるよ。」

    カインにそう伝えて、馬車でサウルを連れて冒険者ギルドに向かう。

    「はい、こんにちは。どのようなご用件でしょうか?」

サウルを従えて、ギルドの受付に並ぶと、見事な営業スマイルで受付嬢が聞いてきた。

「私はこう言う者だ。」

受付嬢にギルドカードを提示して話し始める。
カードを見て、瞬間顔色を変えるが変わらぬ声で対応を続ける。

「これは伯爵様。気付かずに失礼しました。どの様なご用件でしょうか?」
「こちらのマスターが私と面会したいと連絡が有ってね。面会に来たのさ。今、話せるかい?」
「暫くお待ち下さい。確認をして参ります。」

    そう言うと、立ち上がり奥の階段を上っていく。

    ギルドの中は既に仕事に冒険者達は出掛けているらしく、残っている者は極少数だ。流石にこの時間から飲んだくれている者はいなかったが。
ギルド内を眺めている内に、受付嬢が戻ってくる。

「お待たせしました。マスターがお会いするそうです。こちらへどうぞ。」

受付嬢に案内されて階段を登っていく。

「マスター、お客様をお連れしました。」
「入ってもらえ。」

    扉が開かれ、部屋の中に案内されると、正面に初老になるか位の体のガッチリした、騎士団長と言われた方が納得しそうな風貌の男性が立派な椅子に座り、書類を手にしている。そして手にしていた書類を置くと、顔を上げて私を見る。

「初めてお会いするかな。私がウェザリア王国冒険者ギルド本部マスターのキンケイド・マシューだ。オオガミ辺境伯爵閣下、それともAランク冒険者のオオガミ君?どちらで呼べば良いのかな?」
「どちらでも。私は私だ。好きに呼んでくれ。」
「ふふ、聞いていた通りの人となりだな。この場は冒険者ギルドだから、冒険者のオオガミ君として話させてもらおう。構わないな?」
「どうぞ。で、要件があるとか。何用かな?」 
「冒険者ギルドのマスターが冒険者ギルドで冒険者に要件と言えば、依頼だよ。それも指名依頼だ。」
「まぁ、確かにその通りだが、依頼の内容は?」
「王都から、西側にある東大陸の中央山脈を西へ抜けていく細い道があるのだが、そこに最近オーガが三体現れるようになったと報告があり、討伐の依頼が商業ギルドからあったのだ。実際既に被害も出ている。本来なら本部に所属する冒険者に依頼するのだが、この時期は新年と言うことで、冒険者は皆故郷に帰って休みにしているようでね。現在稼働出来る人数が少なく人手が居ないのだよ。また、相手がオーガ三体という事で、戦闘力のある冒険者でないと頼めないのでオオガミ君にぜひ頼みたい。依頼料は三体倒したら、白金貨五枚と持ち帰ったオーガの素材代だ。どうだろう、受けてもらえるかな?」
「期限とかあるのかな?」
「うむ、実は来月からフォレスター王国との交易が始まるそうで、先程説明した道をフォレスターの商人が通うわけだ。その道にオーガが三体出現したと報告があってな、商業ギルドから依頼があったわけだ。ただ、誰でも良いという訳ではないし、しかもタイミング悪く、人手もないこの時期にだ。そこで、君に白羽の矢が立った訳だ。期限は今月中だ。どうだろう。受けてくれるかな?」

「・・・オーガは確認されている三体だけですね?他に始末した方が良い魔物は無いですよね?」
「勿論、場所柄山脈の奥には色々と居るだろうが、現在交易路で確認されている魔物はオーガ三体だけだ。」
「まあ、良いでしょう。その依頼受けます。丁度暇でしたしね。運動になるでしょう。」
「有難い。感謝する。では、この依頼票を持っていき、受付で処理して貰ってくれ。雷光の異名に期待させてもらう。宜しく頼むよ」
「ま、頑張りますよ。要件はこれだけかな?」
「ああ、そうだ。」
「では、失礼するよ。」

    依頼票を受け取り、部屋を出ると階下の受付に向かい、依頼の受付をしてもらう。依頼票を見て、驚き、私のギルドカードを見て更に驚く。慌てて、依頼の受付け処理をしたあとに、カードと依頼票を返してくれた。

「大丈夫ですか?オーガが相手てすが?」

私では心配なのか、達成できるかと聞いてきた。

「ま、何とかなると思うよ。オーガ相手なら。」
「危なかったら、逃げて下さいね。命あってですから。」
「そうだね。全くその通りだ。まあ、ほどほど頑張るさ。有難う。」

    礼を言って、ギルドから出る。冒険者の仕事は久しぶりだが妙にワクワクしている自分がそこにいた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

自作バイブの研究をしに行ったら肉バイブをゲットしました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:94,380pt お気に入り:3,181

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21,763pt お気に入り:1,965

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,438pt お気に入り:3,116

異世界テイスト ~宿屋の跡継ぎは、転生前の知識とスキルで女性と客をもてなす~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:255

②正直に言うと、ダンジョンにいるのが好きなので何処にも行きません

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

処理中です...