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第十六章 サウスラーニは面倒臭い。

幕間86話 仕事は待ってはくれないね。②

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    ハザル卿の進行でオオガミへの事業報告は続いていた。

    「はい。次は続いて『エチゴヤ』商会会頭ビル殿。」
「はい。伯爵家がオーナーで運営されている商会『エチゴヤ』の会頭、ビル・ジョブスと申します。お二方ともに宜しくお願いします。早速報告ですが、十二の月、一の月共に収支は黒字であります。それも大幅な黒字でありました。内容的には、特産の塩の販売地域が拡大しまして店のあるツール、王都、リヒトの内、王都とリヒトでの販売数が常に売り切れ状態に近い形で推移しています。出来ましたら更なる増産を希望致します。また、新しい調味料やオーナーのレシピによる軽食店も順調でして、クッキーを始めとしたスイーツが最近ではヒットしております。魔道具の販売では、冷蔵庫や冷凍庫が肉や野菜を大量に扱うギルドや業者を中心に、少しずつ販売台数を増やしてはおりますが今の季節がらか、動きは鈍いです。しかし、季節が暖かくなるにつれ、伸びるであろうと予測しております。次に改造馬車ですが、こちらは競合業者も多い事もあり、伸びは今一つです。商品の認知度が低いことが最大のネックかと思われます。最後に手押し式の水汲みポンプですが、これはツール領内はほぼ行き渡りまして、王都とリヒトに於いても入荷待ち状態です。この様に一部を除いてどの商品の売上げも高く今後は店舗の増設に伴う人材の確保やその教育が課題となってくると予想されます。収支内容の詳しくは報告書に記載してあります。最後にオーナーには春先に向けて新しいスイーツの新作をお願いします。また、鍛冶での新商品も合わせてお願いします。以上です。」
「有り難うございました。大幅な黒字と言うことでしたが、閣下何かご質問はございますが?」
「質問じゃあ無いけどね。商品の増産は慌てなくて良いからね。慌てて拡大すると人手が足りないとかなって、作業が荒くなり、品質低下につながるからね。慌てて質の落ちた物を販売するよりは、多少客には待って貰うくらいの状態の方がお客の需要は続くからね。まぁ、ビルさんなら私から言わなくても、この辺の機微は分かっていると思うけどね(笑)。あと新作については了解した。次に進めてくれ。」 
「はい。では、次は直轄農園の農園長ルイス殿。」
「はい。伯爵家の直轄農園で農園長をしていますルイスと申します。改めて宜しくお願いします。」

緊張からか、やたらと汗をかいては手拭いで拭いている。

(あー、こういうの苦手なんだろうなぁ。この前話したばかりだし、短く切り上げさせよう。)

汗を拭きつつ、手元の資料を読み上げている。

「えー、閣下には十日程前に最近の業務について説明させて頂いてますので、詳しい数字や作業状況は報告書に書いておきましたので後ほど確認をお願いします。収支は少し黒字となります。今後の課題としましては、薬草の種蒔き、新しい作物の育成の着手や農耕地の拡大等があげられます。閣下に於いては、先日もお願い致しましたが、新規の農地の開墾をお願いします。新しい作物の育成も予定しております。あと、未成人者の就業について、指示をお願いします。以上です。」
「有り難うございました。閣下質問は?」
「ルイスには、この前色々と話したから特には無いけどね。人手は足りている?」
「は、はい。現在の農地面積に対してはやや足りないかと言う所です。勿論、今後開墾するとその分足らなくなるかと。」
「そうか、じゃあ引き続き役所と連携して、流民の受け皿になってくれ。頼むよ。あと、未成人の就業については、この前話した通り、十三歳から許可するが、成人するまでは、賃金は月銀貨三十枚とする。但し、十二歳以下は許可しない。いいね?あと、新しく温室栽培の為の準備をしたいので、また改めて話そう。」
「は、はい。承知しました。」
「閣下次に移って宜しいでしょうか?」
「うん、頼む。」
「はい。次は国軍副司令
のキスリング大佐殿。」
「はっ。皆さん、初めまして。私はツール駐屯地軍の副司令官、バーナード・フォン・キスリング法衣男爵と申します。軍の参謀本部出身でこの度将軍閣下の副司令官を拝命いたしました。今後ともに宜しくお願いします。」
「キスリング大佐、堅いよ、もっとリラックスしていいから。」
「はっ、す、すみません。何分こういった場は慣れないもので。申し訳ありません。・・・現状については、提出しました報告書をお読みください。軍の収支は国の管轄なので閣下以外にはお話しできませんが、活動内容については、特に街道の巡視と魔の森での強化訓練を行っております。魔の森での訓練については、騎士団の協力の下、著しい練度の上昇が見られます。特に待遇等で改善の要求はありません。それよりも、王都にいた頃よりも食事が良くなっており皆士気の上昇に繋がっております。これも魔物の討伐のお陰であります。以上です。」
 「有り難うございました。閣下質問は?」
「いや。今後も、しっかりと鍛練してくれれば良いから。帝国はある事情で王国には手を出してはこれないが、いつ出動がかかるか分からない状態だから、気を抜くこと無く鍛練してくれ。」
「はっ、承知しました。」
「では、次に役所の各部所からの報告です。まず民政部長アルトリンゲン殿、」
「はい。ツール民政部長のアルトリンゲン・バイザーです。宜しくお願いします。報告ですが、まず町の人口ですが、十二の月末締めで五万人を越えました。そこで、近々に閣下に城壁の拡大をお願いします。三の月の末までにお願い致します。そうしないと、流民の流入によるスラムの拡大化を止められなくなります。次にその流民の戸籍化ですが、正直間に合っていません。司法警察部にも協力頂いてますが、最近の流民の流入量が一の月になってから、ますます増加しており、大袈裟ではなく十万人になるのも時間の問題かと思います。調べたところ流民は主に国内よりも帝国領内からの者が多くなっております。対応の為に予算内での人員の増強をお願いします。流民相手の低賃貸住宅の貸し出し業務についてですが、造った端から契約となっております。今後も更に増築して頂きたいです。他の収支や事業については報告書をお読みください。以上です。」
「有り難うアルトリンゲン殿。閣下質問は?」
「遂に五万人を越えたか。赴任した時は二万人程だったのにね。アルトリンゲン君、まだ暫く今の状況が続くが、人員については財務部と相談してくれるか。あと城壁の事だが、今手掛けている仕事が一段落したら取り掛かるとする。三の月末までには済ませておくから。兎に角引き続き、戸籍化を進めてくれ。役所のなかで一番忙しいかと思うが、頑張ってくれ。」
「はい。頑張ります。」
「次は財務部長レオパルド卿宜しく。」
「はい。私はツール役所で財務部長をしています、レオパルド・フォン・ターセル騎士爵と申します。宜しくお願いします。」

更に会議は続く。
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