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数分も経ってないかも知れない。待っている間、嫌な予感と動悸が止まらず、時間が長く感じた。通話を終えた日野くんが、険しい顔のまま戻ってきて、ケータイを渡した。
「図書館、今日はパス。とりあえず秋野ん家まで送る」
不穏な空気に身体の緊張が増す。日野くんが私を見て、表情を緩めた。
「悪ぃ。また怖がらせた?」
「ううん。日野くんのせいじゃない。さっきの電話なんだったの?」
「いや、なんでもねぇよ」
日野くんは私の詮索を打ち切るみたいに強めの口調でいう。
「そんなわけない。美波になにかあったの?」
「なんもねぇよ」
日野くんはそういうと、半ば強引に私の手を取った。
「日野くん」
「ミナミの心配はいらねぇ。アイツのオトモダチからの電話だよ」
「本当に?」
「カラオケボックスでも見ただろ。アイツのオトモダチの柄の悪さ」
金髪の女の子や派手な男子の顔が過ぎる。
「って、柄の悪さじゃ俺も一緒だな」
「否定はできないけど、さっきの電話の人と日野くんは違うと思ってる」
「良かった。秋野にあんなカスと同類と思われてなくて。つーか、心配すんな。俺に任せとけ。ミナミ連れてきてやるから」
「日野くんは大丈夫なの?」
「俺? 全然よゆー。いつものことだし。でも、それがダメなんだってわかった」
「え?」
「秋野、怖い思いさせてごめんな」
「日野くんのせいじゃないでしょ?」
「俺のせいでもある。だからちゃんと秋野は俺が守る」
「どういうこと?」
「日頃の行いって大事なんだなってこと」
日野くんはそういうと微かに表情を曇らせた。
団地の入口の小さな公園まで送ってもらって、ベンチに座ってもう少し一緒にいることにした。日野くんの大きな手に自分の手をのせると、日野くんは私の手を確かめるみたいに握ったり緩めたりする。ギュッと手を握られた。私の不安を和らげようとしてくれているのだろう。不意に人の動いた気配がした。
「由恵」
背後からの声に、心臓が止まるかと思った。反射的に日野くんの手を離して、振り向くと、きつい目付きのお母さんが立っていた。日野くんも立ち上がる。
「どうも。はじめまして」
立ち上がりながら言う日野くんを軽く見上げるようにしながらも、お母さんは鋭い目付きをやめない。
「日野輝真です」
お母さんに軽い笑顔を見せて、頭を下げる。そしてお母さんと同じくらいの目線まで顔をあげる。
「お嬢さんとお付き合いさせてもらっています」
と再び頭を下げた。
「えっと、日野くん?」
「はい」
「頭をあげてくれる?」
「はい」
向き直ると手をスラックスのベルトの前辺りで組んだ。
「家の前でいやらしいことしないようにして? あなたは知らないみたいだけどご近所の目があるの。変に噂されても困るのよ」
「軽率でした。でも俺は真剣です。お嬢さんを傷つけないと誓います。ですから、どうか見守っていただけませんでしょうか」
「あなたたちの年頃はね、のぼせやすいのよ。学生の本分はね勉強でしょう? 真剣かもしれないけど、本来しなければならないことを蔑ろにして恋愛ばかりに現を抜かさないようにしてね?」
「はい。気をつけます。すみません」
日野くんが頭を下げると、お母さんは、ため息をついて私を見た。
「じゃあ、先に上がってるから。早く帰ってきなさいよ」
「う、うん」
お母さんは公園を出て行く。
「ごめんね。うちのお母さん、口調キツくて」
「大事な娘が心配なんだろ」
そうなのかな。私はお母さんにとって、大事な娘なのかな。階段を上がっていくお母さんを見るとふと目が合った。角度のせいか、とても冷ややかだ。
日野くんと別れて、私も家に戻る。まだ門限前だし、きっと、日野くんの印象は悪くない。却って見つかってよかったかもしれない。
「ただいま」
極力震えないように、少し声を張ってみる。
「なに浮かれてるの。みっともない」
ダイニングに行くと、椅子に座ったお母さんが私を一瞥する。
「ごめんなさい」
たぶん、打ち落とされた鳥はこんな衝撃を受けるんだろうと思った。お母さんの冷たい視線が痛い。
「恥ずかしいったらないわ。しまりのない顔して、バカじゃないの。のぼせて成績落としたり、留年するようなことはしないでよ。まったく。頭痛の種が増えたわ」
お母さんは苛立ちを吐き捨てるようなため息をつくと、頭を抱えて、固く目をつむり、こめかみをぐりぐり揉んでいる。
「休憩したら満月の迎えにいくから、ご飯とお風呂くらい用意しておいてね。お母さん、体調悪くて仕事早めに上がらせてもらったんだから」
「うん。お大事に」
両親の寝室に入っていった。お母さんの姿が見えなくなると、ふと体が緩んだ。不意に家の電話が鳴り出して肩が跳ねた。
「……もしもし。秋野です」
返事はない。
「もしもし? どちらさまですか? もしもし?」
寝室から壁を殴る激しい音がして、電話の音の時よりビックリした。受話器を戻して自分の部屋に戻って着替える。ハーフパンツのポケットに携帯電話を入れて、いつ日野くんから連絡があってもいいようにしておく。
お母さんに言われたことで胸がもやもやして、後ろめたい気持ちがじくじくと沸き上がる。悪いことしている訳じゃないはず、だけど。深呼吸のつもりがため息で終わる。
お母さんがいうことは私の中ですごく重く響く。日野くんとの関係も、すごく悪いことをしているような気になる。日野くんは私が嫌がるようなことはしない。見た目によらず、すごく優しいのに、お母さんに批判されると、強く出られない。そんな自分が、すごく嫌だ。
でも、自分のことよりも夕飯を考えなくちゃ。お風呂を沸かすタイミングも考えなくちゃ。ふと台所の食器棚の上の神棚が目に留まった。なんとなく両親が置いていたから当たり前のようにある神棚に向かって二回手を打つ。
どうか、美波と日野くんが無事でありますように。怪我とかしませんように。
お辞儀をして、冷蔵庫の中を見ると、メインになりそうな食材はない。満月はお肉食べたいだろうな。でも昨日もお肉だったし、青魚が頭にいいんだっけ。サバの味噌煮、サンマの梅煮……。満月ならさっぱりより、こってりがいいかな。味噌煮だから、汁物はおすましにして、具はなんにしよう。簡単にわかめとたまごでいいか。サバの味噌煮とわかめとたまごの汁物と、ほうれん草のおひたしでいいかな。夕飯考えるの難しいなぁ……。
戸棚の中の食費用の封筒から千円札を二枚持って、薄いパーカーを羽織ってスーパーに向かう。サバとほうれん草とやっぱりもう一品足したくなって、頭の中の買い物リストにツナ缶も追加する。途中で何度か携帯をチェックしたけどなにもない。
日野くん、大丈夫かなぁ。
スーパーの中のパン屋さんのイートインに満月がいた。満月と男の子、それぞれの向かいに女の子。驚いたけど、声はかけずに買い物かごをとって、通りすぎようとした。けれど、満月も私に気づいて目があった。私は曖昧な会釈のようなものをして通りすぎた。
買い物を済ませて家に向かっていると団地の前の東屋のベンチに満月がいた。
私を待っていたんだろう。私を見つけると、気まずい顔をしてゆっくり歩いてきた。
「あの、さっき……」
なにか喉にひっかかったような声で満月が言った。
「お母さん、土日にしかスーパーいかないけど、ご近所さんに見られたらすぐ耳に入るよ」
「……うん」
「別に悪いことしてるんじゃないんだからいいじゃない、と思うよ。お母さんには言えないけど」
「……うん」
満月はちょっと下向き加減のまま、私が持っているスーパーの袋に手を伸ばして持ってくれた。
「今日の晩飯なに?」
「サバ味噌とわかめのお汁と人参のツナあえ」
「豚のしょうが焼きがいい」
「えー。もう買い物終わったから、明日。それに昨日トンカツしたじゃない」
「肉食べたい」
「明日ー!」
「でも、ぶっちゃけ、母さんの飯より姉ちゃんの飯のがうまいからなー。作ってもらえなくなると困るから黙っとこー」
と笑って見せる。いつの間にか身長も私より高くなったのに、笑顔は私より小さい時とあまり変わらない。まぁ、最近まで小学生だったわけだしそりゃそうか。あ、なんか、褒められて嬉しくて涙が出そう。
「お母さん、具合悪くて寝てるから、静かにね」
泣かないように我慢して、階段の手前で言うと、満月がため息をついた。
「俺、いい学校行って、まあまあの大学卒業して、そこそこのとこに就職して、はやくこの家から出ていきたい。塾も受験も自分のためだから嫌じゃないけど、母さんがいちいちついてくるのが嫌なんだよね。まぁ、未成年だから仕方ないのかも知れないけどさ。あ~あ。クソババア」
「お母さんにそんなこと言っちゃダメだよ」
「姉ちゃんが一番思ってることじゃないの」
「思わないよ」
「だからいいなりなんだ?」
「そうじゃない。お母さんにクソババアなんて言うべきじゃない」
「なんでそんなにいい子ぶってんの?」
「いい子ぶってなんかないよ」
むかついたり、怒ったり、攻撃的なことをしても空気が悪くなるだけだし、なにより、反撃が怖い。収拾がつかなくなって取り返しのつかないことになったら。これ以上嫌われたら、私は家にいられなくなる。
「姉ちゃん見てるとイライラする」
ひやりとした痛みが胸を走った。満月は先に階段を昇っていく。
人に嫌われるのって簡単だなあ。嫌われてばかり。どうしたら好きでい続けて貰えるんだろう。私も私が嫌いだもん。嫌ってる人の気持ちはわかる。わかるんだけど、どうしようもないよ。お母さんに嫌われないようにしてても嫌われてるし、満月にも嫌われて、美波にも。そして、きっと日野くんだってすぐに。せっかく好きになってもらえたのに、それすら怖いことになる自分が嫌だと心底思う。
「図書館、今日はパス。とりあえず秋野ん家まで送る」
不穏な空気に身体の緊張が増す。日野くんが私を見て、表情を緩めた。
「悪ぃ。また怖がらせた?」
「ううん。日野くんのせいじゃない。さっきの電話なんだったの?」
「いや、なんでもねぇよ」
日野くんは私の詮索を打ち切るみたいに強めの口調でいう。
「そんなわけない。美波になにかあったの?」
「なんもねぇよ」
日野くんはそういうと、半ば強引に私の手を取った。
「日野くん」
「ミナミの心配はいらねぇ。アイツのオトモダチからの電話だよ」
「本当に?」
「カラオケボックスでも見ただろ。アイツのオトモダチの柄の悪さ」
金髪の女の子や派手な男子の顔が過ぎる。
「って、柄の悪さじゃ俺も一緒だな」
「否定はできないけど、さっきの電話の人と日野くんは違うと思ってる」
「良かった。秋野にあんなカスと同類と思われてなくて。つーか、心配すんな。俺に任せとけ。ミナミ連れてきてやるから」
「日野くんは大丈夫なの?」
「俺? 全然よゆー。いつものことだし。でも、それがダメなんだってわかった」
「え?」
「秋野、怖い思いさせてごめんな」
「日野くんのせいじゃないでしょ?」
「俺のせいでもある。だからちゃんと秋野は俺が守る」
「どういうこと?」
「日頃の行いって大事なんだなってこと」
日野くんはそういうと微かに表情を曇らせた。
団地の入口の小さな公園まで送ってもらって、ベンチに座ってもう少し一緒にいることにした。日野くんの大きな手に自分の手をのせると、日野くんは私の手を確かめるみたいに握ったり緩めたりする。ギュッと手を握られた。私の不安を和らげようとしてくれているのだろう。不意に人の動いた気配がした。
「由恵」
背後からの声に、心臓が止まるかと思った。反射的に日野くんの手を離して、振り向くと、きつい目付きのお母さんが立っていた。日野くんも立ち上がる。
「どうも。はじめまして」
立ち上がりながら言う日野くんを軽く見上げるようにしながらも、お母さんは鋭い目付きをやめない。
「日野輝真です」
お母さんに軽い笑顔を見せて、頭を下げる。そしてお母さんと同じくらいの目線まで顔をあげる。
「お嬢さんとお付き合いさせてもらっています」
と再び頭を下げた。
「えっと、日野くん?」
「はい」
「頭をあげてくれる?」
「はい」
向き直ると手をスラックスのベルトの前辺りで組んだ。
「家の前でいやらしいことしないようにして? あなたは知らないみたいだけどご近所の目があるの。変に噂されても困るのよ」
「軽率でした。でも俺は真剣です。お嬢さんを傷つけないと誓います。ですから、どうか見守っていただけませんでしょうか」
「あなたたちの年頃はね、のぼせやすいのよ。学生の本分はね勉強でしょう? 真剣かもしれないけど、本来しなければならないことを蔑ろにして恋愛ばかりに現を抜かさないようにしてね?」
「はい。気をつけます。すみません」
日野くんが頭を下げると、お母さんは、ため息をついて私を見た。
「じゃあ、先に上がってるから。早く帰ってきなさいよ」
「う、うん」
お母さんは公園を出て行く。
「ごめんね。うちのお母さん、口調キツくて」
「大事な娘が心配なんだろ」
そうなのかな。私はお母さんにとって、大事な娘なのかな。階段を上がっていくお母さんを見るとふと目が合った。角度のせいか、とても冷ややかだ。
日野くんと別れて、私も家に戻る。まだ門限前だし、きっと、日野くんの印象は悪くない。却って見つかってよかったかもしれない。
「ただいま」
極力震えないように、少し声を張ってみる。
「なに浮かれてるの。みっともない」
ダイニングに行くと、椅子に座ったお母さんが私を一瞥する。
「ごめんなさい」
たぶん、打ち落とされた鳥はこんな衝撃を受けるんだろうと思った。お母さんの冷たい視線が痛い。
「恥ずかしいったらないわ。しまりのない顔して、バカじゃないの。のぼせて成績落としたり、留年するようなことはしないでよ。まったく。頭痛の種が増えたわ」
お母さんは苛立ちを吐き捨てるようなため息をつくと、頭を抱えて、固く目をつむり、こめかみをぐりぐり揉んでいる。
「休憩したら満月の迎えにいくから、ご飯とお風呂くらい用意しておいてね。お母さん、体調悪くて仕事早めに上がらせてもらったんだから」
「うん。お大事に」
両親の寝室に入っていった。お母さんの姿が見えなくなると、ふと体が緩んだ。不意に家の電話が鳴り出して肩が跳ねた。
「……もしもし。秋野です」
返事はない。
「もしもし? どちらさまですか? もしもし?」
寝室から壁を殴る激しい音がして、電話の音の時よりビックリした。受話器を戻して自分の部屋に戻って着替える。ハーフパンツのポケットに携帯電話を入れて、いつ日野くんから連絡があってもいいようにしておく。
お母さんに言われたことで胸がもやもやして、後ろめたい気持ちがじくじくと沸き上がる。悪いことしている訳じゃないはず、だけど。深呼吸のつもりがため息で終わる。
お母さんがいうことは私の中ですごく重く響く。日野くんとの関係も、すごく悪いことをしているような気になる。日野くんは私が嫌がるようなことはしない。見た目によらず、すごく優しいのに、お母さんに批判されると、強く出られない。そんな自分が、すごく嫌だ。
でも、自分のことよりも夕飯を考えなくちゃ。お風呂を沸かすタイミングも考えなくちゃ。ふと台所の食器棚の上の神棚が目に留まった。なんとなく両親が置いていたから当たり前のようにある神棚に向かって二回手を打つ。
どうか、美波と日野くんが無事でありますように。怪我とかしませんように。
お辞儀をして、冷蔵庫の中を見ると、メインになりそうな食材はない。満月はお肉食べたいだろうな。でも昨日もお肉だったし、青魚が頭にいいんだっけ。サバの味噌煮、サンマの梅煮……。満月ならさっぱりより、こってりがいいかな。味噌煮だから、汁物はおすましにして、具はなんにしよう。簡単にわかめとたまごでいいか。サバの味噌煮とわかめとたまごの汁物と、ほうれん草のおひたしでいいかな。夕飯考えるの難しいなぁ……。
戸棚の中の食費用の封筒から千円札を二枚持って、薄いパーカーを羽織ってスーパーに向かう。サバとほうれん草とやっぱりもう一品足したくなって、頭の中の買い物リストにツナ缶も追加する。途中で何度か携帯をチェックしたけどなにもない。
日野くん、大丈夫かなぁ。
スーパーの中のパン屋さんのイートインに満月がいた。満月と男の子、それぞれの向かいに女の子。驚いたけど、声はかけずに買い物かごをとって、通りすぎようとした。けれど、満月も私に気づいて目があった。私は曖昧な会釈のようなものをして通りすぎた。
買い物を済ませて家に向かっていると団地の前の東屋のベンチに満月がいた。
私を待っていたんだろう。私を見つけると、気まずい顔をしてゆっくり歩いてきた。
「あの、さっき……」
なにか喉にひっかかったような声で満月が言った。
「お母さん、土日にしかスーパーいかないけど、ご近所さんに見られたらすぐ耳に入るよ」
「……うん」
「別に悪いことしてるんじゃないんだからいいじゃない、と思うよ。お母さんには言えないけど」
「……うん」
満月はちょっと下向き加減のまま、私が持っているスーパーの袋に手を伸ばして持ってくれた。
「今日の晩飯なに?」
「サバ味噌とわかめのお汁と人参のツナあえ」
「豚のしょうが焼きがいい」
「えー。もう買い物終わったから、明日。それに昨日トンカツしたじゃない」
「肉食べたい」
「明日ー!」
「でも、ぶっちゃけ、母さんの飯より姉ちゃんの飯のがうまいからなー。作ってもらえなくなると困るから黙っとこー」
と笑って見せる。いつの間にか身長も私より高くなったのに、笑顔は私より小さい時とあまり変わらない。まぁ、最近まで小学生だったわけだしそりゃそうか。あ、なんか、褒められて嬉しくて涙が出そう。
「お母さん、具合悪くて寝てるから、静かにね」
泣かないように我慢して、階段の手前で言うと、満月がため息をついた。
「俺、いい学校行って、まあまあの大学卒業して、そこそこのとこに就職して、はやくこの家から出ていきたい。塾も受験も自分のためだから嫌じゃないけど、母さんがいちいちついてくるのが嫌なんだよね。まぁ、未成年だから仕方ないのかも知れないけどさ。あ~あ。クソババア」
「お母さんにそんなこと言っちゃダメだよ」
「姉ちゃんが一番思ってることじゃないの」
「思わないよ」
「だからいいなりなんだ?」
「そうじゃない。お母さんにクソババアなんて言うべきじゃない」
「なんでそんなにいい子ぶってんの?」
「いい子ぶってなんかないよ」
むかついたり、怒ったり、攻撃的なことをしても空気が悪くなるだけだし、なにより、反撃が怖い。収拾がつかなくなって取り返しのつかないことになったら。これ以上嫌われたら、私は家にいられなくなる。
「姉ちゃん見てるとイライラする」
ひやりとした痛みが胸を走った。満月は先に階段を昇っていく。
人に嫌われるのって簡単だなあ。嫌われてばかり。どうしたら好きでい続けて貰えるんだろう。私も私が嫌いだもん。嫌ってる人の気持ちはわかる。わかるんだけど、どうしようもないよ。お母さんに嫌われないようにしてても嫌われてるし、満月にも嫌われて、美波にも。そして、きっと日野くんだってすぐに。せっかく好きになってもらえたのに、それすら怖いことになる自分が嫌だと心底思う。
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