薔薇と猛獣。

小堀 健

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囚われの薔薇

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ーー「本っ当にごめんやで?また言わしてもらうけど、ホンマに楓アホやろ。」

「…今回は言われても仕方ないです。」

今日も快晴、雲ひとつない青い空。
なのにまたしても佑に説教されている俺…

「なぁ、楓。ちっとは謝ったかもしれんけど、何もせんでも向こうが歩み寄ってきてくれたんやで?こんなチャンス無いで?せやのに、お前ってやつは…」

「だからー、そう何度も言わないでよー。俺だって失敗したって思ってるんだから。」

ーー昨日。
俺の想い人である野上 悠真に何故かキスをされて。
そのキスが顔に似合わず、すんごい大人なキスで。
ついムラムラっときて。
キスが終わって暫くは惚けてたんだけど。

ふとした瞬間に冷静になって。
目の前にいる野上が、二十歳なのにまだあどけなさのある顔してるじゃん。
何か悪い事してるような気分になっちゃって。
抱いてほしーなんて思った自分が恥ずかしくて…逃げた。

「俺…ビッチなんだよ…」

「いや、意味分からんから。お前がビッチやったら世の女、みんなビッチや。」

「佑、それは言い過ぎ…」

「せやかてお前、俺の知っとる限りでは片手で足りるくらいしか…関係のあったやつおらんで?」

だからそんなに自分を卑下するなって、頭を撫でてくる。

「うん、ありがとう…」

「しっかしその男に掛かれば、楓も完全に恋する乙女やな…。」

カラカラ笑う佑。
と、途端に真顔になる。

「噂をすれば何とやらやな。」

そう、佑が言うと同時に引かれた腕。

ーー「やっと、捕まえましたよ…。」

「野…上…?」

引かれた腕の先を見れば、少し不機嫌そうな野上が居て。
俺と目が合うと、ふっと表情が柔らかくなる。

「アンタ、あれから捕まんないから…かなり探しましたよ。」

そう言いながら、俺と佑の対面の椅子に座る。

「え、えっと…」

あまりにも普通過ぎて付いていけない。
え?あれ?
俺ってこの人に嫌われてた時期あったよね?
しかも昨日何も言わずに逃げちゃったんだよね?

ーー「ふはは!楓、珍しく狼狽えとるやんけ!」

うーん、と頭を抱える俺を笑う佑。
また不機嫌そうな顔をした野上に、佑は手を差し出す。

「あ、何や勘違いしとるかもしれんけど、俺はこいつの保護者みたいなもんやから。4年の本宮や。よろしく。」

「…2年の野上です。」

不機嫌そうな顔はそのままに、素直に佑と握手をする野上。

「アンタ、オモロイなぁ!普段こんなになる事ない楓を狼狽えさせるやなんて。」

「…佑、うるさい!」

何がおかしいのか楽しそうな佑に突っ込む。
と。

「…アンタ、俺の事…どう思ってるんですか?」

「は?え?」

「何で狼狽えてるんですか。俺は至って普通に接してるのに。」

真顔でとんでもない事を聞いてくる野上。
俺の事どう思ってるのかって…
何で狼狽えてるんだって…
いくら何でも直球過ぎだ…っ!

「何でって…」

そんなの、言えるわけない。
実は俺はお前の事が好きで、でも嫌われてると思ってて。
なのにキスされるわ、いきなりこんな風に距離を縮めてくるわで混乱してるだなんて。
…年上としての威厳なんてあったもんじゃない。

「楓さん?」

「べ…」

「べ?」

「別に狼狽えてねーよ!ただ、いきなり現れたからちょっと驚いただけだ…。べ、別にお前だからとかじゃないから!」

まくしたてる様に言う。
けど、何だか恥ずかしくなって佑にも野上にも何も言わずに立ち上がると、逃げ出した。

「あ、楓さん…っ!」

「来るなよ、馬鹿…っ!」

あろう事か、一番来てほしくない相手である野上が追いかけてくる。
佑…はテーブルに座ったまま、楽しそうにニヤけてる…。
くっそ、アイツ!
絶対今の俺の状況を楽しんでる…っ

「楓、さんっ!」

グイッと腕を引かれて、走りを止められる。

「野上、離して…っ」

「嫌です。離せばアンタはまた逃げる。」

「逃げねーって。」

「…離しません。」

掴まれた腕は、痛くは無いけど思いの外ガッチリ掴まれていて。
振っても引っ張っても離してくれない。

「…聞かせてください。どう思っているか。」

ジっと見てくる野上。
観念した俺は、一度深呼吸すると野上を見上げる。

「…昼の後、一限だけ入ってる。」

「はい?」

「それが終わったら、どう思ってるか言う。だから…中庭で待ってて。」

だから離してくれ、と念を込めて見上げれば、届いたのかそっと腕を離す。

「…分かりました。なら、一限後に必ず。」

「あぁ。」

「逃げないように。」

「逃げねーわ!」

「いいや、アンタは信用ならない。」

ジト目で見てくる野上に胸がチクチクする。
てか、何で俺は野上にこんなに迫られてる?
確かにキスはされたけど、コイツから好きとか言われてないし。
あれ?
野上は何で俺がどう思ってるか聞きたいんだ?

「…お前は…どうなんだよ。」

「俺ですか?」

「そうだよ。この間まで近づきもしなかったのに、何で急に俺に関わってくんだよ。お前こそ…俺をどう思ってんだよ…」

最後の方は、か細い声になっちゃったけど…
聞きたい事を伝えた。

「…今、聞きますか。」

「いや、いい!それも後で聞く!」

…やっぱりここで聞くのは良くない。
嬉しい結果になるとは限らないし、結果次第で講義を受けられなくなるかもしれないし。

「分かりました。なら、講義後に中庭で。」

そう言うと、ふわっと笑う。

「…っ」

突然の可愛い笑顔に、言葉を発せず。
ただただ熱くなる顔に、どんだけ野上を好きなんだと自ら突っ込む。

「お、俺、もう行くから!」

恥ずかしくてつい大きめの声で言うと、野上をおいてその場を離れる。
…俺、思春期の中学生みたいだ。

何でなのかな…。
アイツの前だと、どうしても素直になれない。

「だいたい、アイツの態度が変わりすぎだから!しかもあんな事されたら…期待しちゃうじゃん。」

アイツは俺と違ってノンケで。
俺がアイツを襲ったから、アイツは俺に興味を示しただけで。
きっとあれが無ければ…アイツが俺を見る事なんて無くて…

「あー…聞きたくないなぁ…」

あと数十分経てば、俺の恋も終わる。
だけど…アイツは笑ったから。
優しい顔で…笑ってくれたから。
ちょっとだけ…期待してもいいかなーー






ーー「…見つけたよ、灰崎くん。」

ポンっと叩かれた右肩。
突然の事にビクリと体が跳ねた。

「君はどこに居ても目立つから…探すのは簡単だねぇ。」

背後から聞こえる声に不気味さを感じて、悪寒が走る。
この声は…

「鈴木教授…」

「やぁ、灰崎くん。ちょっと、いいかな。」

振り返れば、そこに立っていたのは経済学の鈴木教授。
最近避けていただけにかなり気まずい。

「僕に…何か用事ですか…?」

「いやね?君に見てもらいたい資料があって…だから、僕の資料室へ来てくれないかな…ーー?」

見て欲しい資料…?

よく分からない教授の言葉。
だけど、避けていた罪悪感から断ることは出来なくて。
講義まであと15分くらいだし…そんなに長引かないだろう。
そう考えて…教授について行った。
けど…甘かった。








ーー「灰崎くん?君が悪いんだよ?あんなに魅力的に誘ってきたのは君なのに…たった一度だけでそれからは触れさせてもくれない。」

資料室に着くなり、何故かソファに突き飛ばされて。
まさに神業と言えるくらいの速さで鍵を締めて、ネクタイで俺の腕を頭上に纏め上げる。

「照れてるのかななんて前向きに考えていたけど、そうじゃないんだよね?君は…野上くん、だったかな?彼が好きだったんだね?だから僕に触れさせてくれないし、彼を見る視線が甘い。」

「別に、アイツが好きだから教授と距離をおいた訳じゃ…」

「本当かな…?なら君は薄々気づいていたんだね?君の噂を、僕が流したってこと。」

「は…?」

驚愕の事実を飄々と発した目の前の男を、無性に殴り倒してやりたくなった。
けど、それは叶わなくて…

「どうだった?一年間。周りの君を見る目が変わって辛かった?…でもね、僕は君と同じくらい辛くて悲しかったんだよ。君に避けられて…どんなに辛かったか。」

「あんた…っ」

「君が悪いんだよ?僕の愛を蔑ろにするから。」

クスクス笑っている教授。
もう、自分がどうなろうと殴ってやりたくて。
でも、腕が縛られて動けないのが悔しい。

「悔しそうな君の表情も魅惑的で綺麗だよ。…あぁ、君があまりにも情欲を唆るから、欲情してきてしまったよ。」

言いながらズボンのチャックを下ろす教授。
見たくもないのに、見てしまう。
一度は受け入れたものなのに…野上を知ってしまった俺にはただただ不快なモノでしかない。

「さぁ、灰崎くん。慰めてくれるよね…?」

「い、嫌だ…っ!」

「野上くんがどうなってもいいのかい?僕なら彼を退学にさせる事だって出来るんだよ…?」

ここで野上の名前を出して脅してくるとか…最低だ…っ!

「…まずは口でしてもらおうかな。」

言いながら俺の顎を固定して、ソレを唇に当てられる。

ヤバい。
マジで嫌だ。
無理…っ
野上…っ!ーー



side悠真

「腹痛で休講って何なんだよ…。」

楓さんと分かれた後、いつも通りに教室に入れば…本日休講の文字。
丁度廊下を歩いていた生徒に聞けば、担当教授は腹痛で病院へと搬送されたらしく。
いつ帰れるか分からないとかで休講になったらしい。

「楓さん来るまで何十分あるんだよ…」

待ち合わせ場所である中庭でベンチに腰掛けながら…腕時計を見る。
と。

ーー「おー、お前、楓の連れやんけ。何しとんや、こないなとこで。」

…聞きたくもない声が突如として聞こえて、嫌々ながらも声がした方に顔を向ける。

「お前…楓の前と偉い違いやな。そんな睨まんでもえぇやろ。」

「元からこんな顔なんで。…何で隣に座ってんすか。」

何故か俺の隣に腰掛ける、本宮という人。

「別にえぇやんか。お前だけのベンチや無いやろ?」

「屁理屈言わないでください。」

しょうもない言い合いをしていると、突然スマホがポケットで震える。
誰かと見れば、ディスプレイには安永の文字。

「おー。」

『あ、悠真ー?今どこ?俺ら、暇でさー。お前、休講だったんだろ?遊ぼうぜー。』

安永の声と一緒に、聞こえてくる良の声。
…ちょっと待て。

「お前ら確か、経済学取ってなかったか?今日講義は?」

『それがさー、30分経っても教授が来なくてさ。何か教授の部屋も鍵が掛かっててどこ行ったか分かんないんだって。で、待ってても仕方ないから休講になったんだよ。』

30分経っても教授が来てない?
鍵がかかっていて行方不明?

「なぁ、楓さんは…」

『あぁ?楓さんって灰崎 楓?そういや居なかった様な…てかお前、あの人の事嫌ってたのにどうした?』

「…それはまた話す。忙しいから切る。」

安永の制止の声を振り切り、通話を切る。

「何や、楓居らんのか?」

「…講義に出ていないみたいです。」

「もしかせんでもこないなトコに居ったんは楓待っとったんか。…何やかんやで楓にハマっとんな、お前。」

「…あんたにそんな事言われる謂れはない。ハマっているとかじゃない。」

言えば、ハハッと笑う。

「何か可愛いな、お前。…そういや楓、鈴木教授と歩いとるん見たで。」

「……ハァ?!」

「へ?!何や、その反応。」

「ハァア?!馬鹿か!馬鹿じゃねーの?!何でそれを早く言わねーんだよ!」

思わず怒鳴って、駆け出す。
よく知らない相手に怒鳴ってしまったのは申し訳ないが。
今は楓さんの方が先だ。
もしかしたら思い違いかもしれないけど…楓さんも教授も居ないのは嫌な予感しかしない。

「クソ…っ」

楓さん、どうか思い違いであってくれーー…っ



ーー鈴木教授の個室。
物音もしないし…確かに鍵は締まってる。
が、居留守を使ってる場合もある。

最悪な展開を想像して、思わず握った拳に力が入る。
何も聞こえないとは思いながらも、壁に耳をあてるーー





ーー《…っ…っ!》

…何か、聞こえる。
呻き声の様な…

…楓さんじゃないかもしれない。
けど、楓さんかもしれない。
教授がただ腹痛でのたうち回っているという可能性もある。

「間違ってたら…素直に謝罪すればいいか。」

人間、腹を括れば何でも出来るもので。
扉に手をかければ、全力で横にスライドさせる。
メキメキと音を立てる扉。
尚も力を入れ続ければ…パキっと小さな音がなるとガラリと扉が開いた。

「な、何だね、君は…っ!か、勝手に入ってきて、しかも施設を壊すなんて…っ!」

動揺しまくりな教授は何故かソファから動かず。
両手は何かを押さえている様で。
沸々と沸き上がる感情に、何故か笑いが込み上げてきた。

無言のままに近づけば、案の定教授に押さえつけられていた楓さん。
コイツ…何て事を…

「テメェ…今すぐその汚ぇ手、退けろ。んで、その汚物もさっさとしまえ。…お前、俺の親父が何してるか知ってんだろ?もう、次はねぇ。」

ワタワタと無様に身支度を整える教授ーー鈴木の胸ぐらを掴む。

「ひ…っ」

「金輪際、楓さんに近づくな。視界に入るな。もしも守れなかった場合は…分かるよな…?」


バタバタと無様な格好で鈴木が出て行ったのを確認すると、楓さんの方へと向き直る。
が。
さっきまで居たはずの場所には居なくて。
室内を見渡せば、端っこの方でジャケットを頭から被りしゃがんでいる姿が目に入る。
近づけば…正に頭隠して尻隠さず。
頭はジャケットで隠して、その長い足と綺麗なお尻だけが見えていた。

「楓さん…」

そっと近づけば…叱られた子供のように、体を小さく縮めて。
震えていた。

「…来るな。」

「楓さん?」

「来るなよ…!」

震える声で、拒絶する。
そんな楓さんの声を無視して、その細い腰に腕を回す。

「離せよ…っ」

「…何故ですか。何で、俺に離して欲しいんですか…?」

ジャケット越しに耳元で囁やけば、ビクリと震える体。

「だって…俺、汚い…っ」

「…貴方は汚れてません。でも何で貴方が汚いと離して欲しいんですか?」

「…っ、意地悪だ…っ」

ギュッと腕に力を込めれば、漏れ始めた嗚咽。
泣いているのか…体が小刻みに震える。

「……だから。」

「はい?」

「…き、だから。」

「聞こえません。もう一度…」

「っ、好き、だから!…聞こえてんだろ…っん!」

吐き捨てる様に言ったその言葉に。
我慢できなくなった俺は、ジャケットを引き剥がして…その唇を塞ぐ。

「ん!んんぅ…っ、ヤ、汚…っ」

「っ、確かに不快ですが…汚くない。…アンタは黙って俺に侵されてろ。」


side 楓

「んふ…ァ…やめ…っ」

ーー黙って侵されてろ。
そう言ってから、どんなに引き離そうとしてもガッシリと掴まれた腕を離してはくれなくて。
それどころか、鈴木教授の精液で汚れた俺の口腔内をまるで上書きするかの様に…深いキスで蹂躙していく。

「は…っ野、上…ッ」

「……消毒しました。だからもう、貴方は汚れてるなんて言えませんから。」

長いキスが終わって、野上を見上げれば…真顔で見つめてこの言葉。

あの、野上 悠真が。
俺に嫌悪感しか向けてなかった野上 悠真が。
他の男に口を使われた俺に、キスをして…消毒って。
これは…いいように受け取ってもいいのか…?

「…楓さん。」 

グッと両肩を掴まれる。

「貴方の気持ちは聞けました。だから…俺が貴方をどう思っているか、今伝えます。俺は…貴方が、楓さんが好きです。」

ーー 一瞬、何が起こったのか…分からなかった。
まさか、野上が…俺を…?

固まる俺を抱きしめて、甘く響く声で…耳元で囁く。

「けど俺は…手に入れたら…貴方を離せない。独占したい。」

真っ直ぐな視線で俺を捕らえる。
その瞳は…正に"雄"の劣情を含んでいてーー…

「こんな俺でいいのなら…俺に抱かれてください。」

「へ…?」

抱かれてくださいって言った?
あの…野上 悠真が?
しかも独占したいとか離せないとか…
今まで好きになった人にも言われたことがない言葉。

どうして。
こいつはいつも真っ直ぐなんだ。
真っ直ぐ過ぎて…こっちも素直にならなきゃいけなくなるじゃないか。

「…ここは嫌。」

「もちろん、場所は代えますよ。下衆げすい男の個室でなんて胸糞悪いし、貴方を初めてまともに抱くのに失礼です。でも…ここは嫌ということは、俺に抱かれるのはいいんですね?」

ふわっと笑って、手なんかやんわりと甘く握ってくるから。
ドキドキが半端無くて、ただ頷く事しか出来なかった。

「じゃあ、こんな所出ましょう。」

そう言ったが早いか、野上は俺の膝裏に腕を回し、さらっと横抱きにする。
…いわゆる、お姫様抱っこ。

「ちょっと待て!これは恥ずかしい!」

「ワガママ言わないでください。貴方今凄い卑猥な顔してるんだから隠しておかないといけないんですから。」

「卑猥って…」

「目は潤んで、頬はピンク、唇は悩ましげで半開き、しかも色気を垂れ流しときたら誰も貴方を襲わない訳がない。今ここで抱かれたく無かったら大人しく俺の胸に抱かれていてください。」
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