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ライバルは後輩

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4月になり、俺達は2年生になった。もちろん、クラス替えがあった。

そして…なんと、俺達は、別々のクラスになってしまった。
あんなに近くで、足立を見ていられた日々を、もっと大切にすれば良かったと思ったけど…
どう足掻いても、過去には戻れない…
むしろ、俺よりも…足立の憔悴っぷりの方が凄かった。
その落ち込みっぷりや…マジで、こんなキャラだったか?ってくらいに。

部活の帰りや、放課後の家庭科準備室とか、人目を避けては、何度も何度も、励ますように、俺からチューした。
その甲斐あってか?やっと持ち直した足立…
落ち込んで、俺に甘えて来る足立が、意外と可愛くて、その姿は新たな発見だった。
しかし、それは、まだまだ序の口、嵐の前の静けさ…


2年生になった俺には、陸上部の後輩も出来た…
そして、今、目の前に居る人物、矢長 春輝。
名前の通り、輝くような笑顔の爽やか君なのだが…
何故か…足立と牽制しあっている。
バチバチと火花が飛び交う…というのが正しい表現だろう。
中学の頃、走る俺を見て、この高校を受験し、追いかけて来たと言う矢長は、真っ直ぐに俺へ向かって来ていた。

1年の矢長は、入学して数日、部活の体験入部初日から参加し、何かにつけては、俺の隣へ。
…終いには、休憩時間毎に、2年生の俺の教室まで来ていた。
1年生なのに、中々の度胸だ。

「なんで?俺?」 
と聞く俺に
「ずっと憧れてます!蛍先輩の事、大好きです!」
大好きです?んー、どういう意味だろう…
俺は考えるのがめんどくさいので、スルーしたのに…
「お前、どっか行け!マジウザイ、しかも、七瀬を下の名前で呼ぶな。潰すぞ!」
これは、大層御立腹であられる足立様のお言葉。
容赦無し…なのに、全く効果無し。
どんな攻撃も完全ブロックの矢長
「足立先輩の許可は要らないです。僕、陸上部ですから」
ニコニコと、へっちゃらで返している。 
なかなかに、強心臓の後輩だった。
怖い…
間に挟まれた俺は、どうしたら良いんだ?
「オレの方が先に七瀬を見つけたんだ!真似すんな!」
「先も後も無いですよ、ねぇ、蛍先輩?」
なんと答えたらいいのやら…
別に、矢長からは、特別な感情は感じない…ただ、憧れてくれているようだから、俺としては、満更でもない気分だった。
いつも、足立がモテまくってるのを、ぐっと堪え、黙って見ている俺としては、足立があからさまに妬いてくれるのが、少しだけ嬉しい気持ちもあった。

そんな攻防戦が毎日繰り広げられる生活が日常となり、ちょっとした名物扱いで、廊下からは、見物人まで出ていた。
中には、爽やかイケメンの矢長を応援する女子も現れ、周りは楽しそうだが…俺の心情は複雑だった。
慕ってくれる後輩は可愛いし、足立は、そもそも恋人だし。
あんまり喧嘩はして欲しくないけど…2人の相性はバツグンに悪そうだった。


今日は日曜日で、足立の部屋に遊びに来させて貰っていた。
お母さんも下の階に居られるので、そういう事はしない…というのが、俺達の暗黙の了解。
だと思っていたのに…

足立は、負のオーラを搭載し、ムスッとしている
「七瀬~、なんで矢長の奴に…優しくしてやるんだよォ」
「そんな…だってさ、一応部活の後輩だし。別に俺を恋愛的な意味で好きじゃないって分かるし。足立だって、女の子達に、ただ、キャーキャー言われても、ほおってるだろ?」
「オレは、別に他の女なんか、どうでもいいけど…七瀬は甘いから」
「甘いってどういう事だよ…」
ちょっとカチンときたけど、ふと、告白されて伊藤さんにキスまでされてしまった事が脳裏に浮かんだ。

「伊藤さんの時の事もあるし、矢長にも、何かされるんじゃないかって…オレ、不安なんだよ」
やっぱりあの時の事、まだ引っかかってんのか…
でも、俺と違って、心の中のマイナス感情も正直に伝えてくれる足立は、凄いと思った。

「これからは…俺、ちゃんと気をつけるな…それに、好きなのは足立だけだよ?」
「ん~じゃ、ちょっとこっち来て」
ベッドの上に手招きして呼ぶ足立…
素直に俺は彼の前に座ると…後ろから抱きしめられる
「下にお母さん居るから…しないよね?」
「しない…」
ちょっぴり残念に思う俺は、バカか…

足立は何も言わずに俺を抱きしめたまま、耳元に唇を付けた。
チュッていう音が鼓膜に響く。
俺は、目の前にある足立の腕に唇を落とした
「誘ってんの?」
「いや…怒りを沈めてんの」
「別に、七瀬には怒ってないし…」
穏やかじゃない足立を、どうしたら普通に戻せるのか…考える。
そして、ちょっぴり勇気を出して言ってみた
「足立も…俺の事…名前で呼ぶ?」
少しの間が開く…

「ヤダ、アイツと同じなんて。それに…“七瀬”って呼ぶと、中学の時の感覚が蘇って、なんか良いんだよ…もう少し先で良い」
「そっか…」
足立は喋りながら…俺のTシャツの中へと手を侵入させる…
下から入った手は、上へと移動し、するりと突起に触れた。
途端に…声が出る
「んんっ、ダメっ」
「なんで?ここ…好きなんでしょ?下腹がズキズキするんだろ?」
意地悪な低音が、耳元で囁かれる。
ベッドがギシリと軋む
「ねぇ、七瀬…オレの事…愛してる?」
「やっ、アッ、とりあえず…手を…止めて」
俺に愛してるか問いながら、指先で俺の突起を弄ぶ…
「オレは、愛してるよ?」
「俺も…」
「じゃ、証明見せて」
証明?ん?どゆこと?

足立は、俺の背中からスルリと抜け、俺の背を壁に持たれかけさせた。
前に回って座る彼は
「自分で胸、弄って」
「えっ?本気?」
「本気。見せて」
真剣な顔の足立に歯向かう事など出来ない。プレッシャーみたいな物を感じる。
ゆっくりと服の中に手を入れた。
さっき、足立に触れられていたソレは、ぷくりと膨れていた。
途端、足立によって、グイッと服を捲りあげられる
「ちゃんと弄って」
今日の足立は…本当に上様風味だ。
いつもより強引な感じが、逆にそれだけ不安なんだと思うと…応えたい気持ちになってくる。
俺はいつも不安だったし、それから逃げたくて別れるとまで言ってしまったから…
そういう感情は痛いほど分かるし、俺の専売特許だと思っていたけど、足立でもそういう事があると分かって、少し安心した。

足立に見せつけるように弄っていると…段々と下腹部が熱くなってくる。
足立は、膨らんでいるであろう場所を指差す
「下も触って…オレに全部見せて」
「でもっ、それは…声が…」
声を抑えられる自信は無い。
そして、下の階には…
聞かれるのはマズイって事を思えるくらいには、まだ冷静さが残っている
「じゃ、オレの指…咥えてて」
熱を孕んだ瞳を向けてくる。
差し出された人差し指を迎えるように唇を薄く開いた。
舌を絡め…指を…彼自身だと思って、丁寧に舐める。
目をギュッと閉じ…
片手は胸へ、もう一方は、下へと伸ばす。 
突然、ズボンと下着は…グイとずらされ、自身を足立の目の前へ晒されたのが分かった。
更に閉じる眼に力を込めた。
めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、足立のする事、要求を止めたりはしなかった。

「今日の七瀬…特別感ある…応えてくれて…オレ、マジで…嬉しい」
目をゆっくりと開くと、笑顔の足立が見えた。
やっと、心が解けてきてくれたみたいで、いつもの優しい彼が戻ってきた。
ちょっとSっぽい彼も好きだけど、やっぱりこっちが良いな…と思う。

「そのまま…瞳を閉じないで、オレを見つめて…そう、もっと、煽って」
恥ずかしさと、欲望と、与えたい何かが綯い交ぜななって、俺の手は動く。
足立を見つめ、彼からの視線を前身に浴びる。
指を舐める行為に没頭していると
「手が止まってる…」
と、滾りを握る俺の手の上に、足立の手が添えられた。
一気に攻め立てられ、口からは、喘ぐような切ない声が漏れ出る。
「んぐっ、あふっ、アッ、ダメっ!」
「しょうがないな…」
指が唇から抜かれ、今度は指の代わりに…
足立の唇が与えられた。
こっちの方が確実に声は防げるけど…余計に感じてしまう。
あっという間に、白濁を吐いてしまった。


「ごめん、七瀬…オレ、今日全然優しく無いよな」
「いいって、ちょっと意地悪な足立も、悪くないよ?俺ってMなのか?」
「もうちょっと待ってな…オレも成長しないと、七瀬に振られる」
「もう、そんな事しないから、安心しなよ」
 
気弱な足立も、好きだけどな…
いつもの自信満々なのも良いし、俺、足立に結構惚れてるんだけどな~
やっぱり、恋愛ってなかなか相手には気持ちが伝わらないのか…
だから、どうしても、試したくなる。
不安になったり、安心したり…相手の言葉や行動で感情が乱高下する。

でも、俺達は、まだまだ、これから時間もあるし、ゆっくりで良いのかな…って思った。
とりあえず、次の課題は…
「愛してる」と言う事かな……?
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