君は私の心を揺らす〜SilkBlue〜【L】

坂田 零

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【10、相愛】

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 何故、彼なのか…?
 と、聞かれたら、明白な答えなんてないのかもしれない。
 だけど、私には彼だった。
 私の見てる世界とは違う世界を、彼は見ている。
 彼といると、私も別な世界を見れる気がしていた。
 
 後悔なんてしない…
 この気持ちに嘘なんかつけない…
 彼が、好き…

 重なる肌の香りは、私が知っている香りじゃない。
 いつも彼が着けている香水の香りが、ますます私の体をじんと熱くする。

 恥ずかしい…
 いつもと違うから…
 変に緊張する…
 だけど…
 体が、彼を感じているから…
 どんどん、熱くなってしまう…


 「ん……っ」
 
 恥ずかしくて、私は声を圧し殺した。
 彼の手は私の体を撫で、舌先が首筋をなぞって肩から降りてきて私の胸を辿る。
 
 おかしくなったのかと思うほど、体の芯が熱く疼く。 

 こんな感覚は初めてだった…
 だから余計に恥ずかしい…

 ギシッとベッドが軋む。  
  
 私の体を辿る唇と舌先は、どんどん下に降りてくる。

 どうしよう…恥ずかしいっ
 
 だけど、私の体は波打つように反応してる。
 そんな自分がますます恥ずかしい。

 「こんなこと、されたこと…ないよっ
恥ずかしいよ…っ」

 息を上げた私の太腿をなぞるように、彼はキスをした。
 自分の体がびくんっと揺れる。
 ぐっと両手で腰を押さえつけられ、舌先が触れた瞬間、私は声を抑えきれなくなってしまった。

 「あ…っ」

 じんと体の芯が熱を帯び、彼の舌の感触を感じるたびに、私の体は波に揺られる小舟のように揺れてしまう。

 こんなに感じてしまうなんて…
 恥ずかしいっ

  信ちゃんとするときは、私の体はこんな反応はしない。
 そもそも信ちゃんは、自分勝手にセックスをするから、私のことなんてお構いなしだ。

 だけど、樹くんは…
 この子はこういうのに慣れてるんだ…
 なんだか悔しい…
 負けてる気がして悔しい…?
 それもあるけど…
 他の誰かともこんなことしてるのかな?って思うと、心が焦げそうになる。 

 でも、私の体の中を辿るこの舌の感触に、私は逆らえない。 
 それどころか、その甘い快感に私は声を圧し殺すのが精一杯だった。
 体が熱く震え、彼の舌先が触れるたびに波打つように揺れた。
  津波のように押し寄せる快感に、私はついに耐えられなくなってしまった。
 雷が落ちたかのように激しい、そして溺れるほどに甘い絶頂が私の全身を駆け抜ける。
 
「もぅ…っ、やめ…っ……っ!?
あぁっ!!」

 私は俺の手から逃げ出すと、自分を抱き締めて横を向いた。
 息が上がってる。
 堪えたくても、体が小刻みに震える。

 男の人に、こんな風にされて、こんな風になってしまうのも初めての経験だった。
 なんだか、悔しい。

 悔しいから、ゆっくりと隣に寝転んできた彼を見て、思わず、強がって言ってみた。
 
 「樹くん…やっぱり遊んでるでしょ…っ」

「遊んでない…」

「慣れてて信用できないよ、そんなの…若いくせにっ、なんか、生意気…っ」

 「……なんだよそれ?」

「なんでそんな普通なの?
あたしだけこんな…っ」

 彼は、おとなげない私の髪を、可笑しそうに笑って撫でてくれた。

「だってまだ最後までしてないし…」

 なんだかほんとに悔しいっ
 私は、ぎゅっと彼の首に抱きついて、彼の耳元で小さく言った。

「じゃあ………して……っ
樹くんも………気持ちよくなってよ」  

「……っ!?」

 彼の両腕が私の体を包み込んだ。
 熱を孕んだような唇が、また私の唇を奪いにかかる。
 熱があるんじゃないかと思う程、体が熱い。
 甘い舌先が絡みながら、私の体は、ベッドの上に押し付けられた。
 
「っん…っ」

 私は、声にならない声を上げた。 
 彼を受け入れた瞬間、慣れない感覚が全身を駆け巡る。
 ありえない程敏感に、体が反応しているのが自分でもわかる。
 こんな感覚も初めてで、なんだか怖くなった。
 でも、同時に、彼を意識した時からこうして欲しかった自分にも気がついてしまった。

 体の奥が熱い。
 いつもは痛くて早く終わって欲しいって、そう思うのに…
 堪えようとしても、もう声を抑えられないほど、彼とのセックスは気持ちが良かった。
 
 あたしの体、どこかおかしくなったのかも…
 恥ずかしいぐらい、声を抑えきれない。
 私は、彼の首に抱きついた。
 
 この人が好き…
 私…
 この人が好き…
 
 きっと私は、彼にこうやって抱いて欲しいと、ずっと思っていたんだ。
 それがいけない事なのもわかってる。
 だけど、こうやって抱いて、私を彼のものにして欲しいって、無意識にずっとそう思ってたんだ…

 全身を駆け巡る快感。
 感じる体温。
 受け止める体の重さ。

 なにもかも初めてで、そしてその全てが愛しくて愛しくて仕方ない。

 これはいけないこと…
 これは浮気…
 そんなのわかってる…
 だけど、もう、この気持ちは隠せない…

「里佳子さん…気持ち、いいっ」

 そんな彼の甘い声が、私の耳元で囁く。
 彼も、私を感じてくれてる。
 そう思うと、私の体はますます敏感に反応してしまう。 

「奥までイキたいよ…っ、すげ…気持ち良い…っ、里佳子…さんっ」

 その言葉に、私の体の奥は更に高揚して、自分でも驚くほど彼を奥まで受け入れたくなる。
 否応なしに声が出てしまう。

「あっ…あっ…んっ‥あっ…っ」  

 彼の背中に手を回すと、汗ばんでるのがわかった。
 こんなに夢中で愛してくれてる事が嬉しくて、そして愛しい。 

 津波のように快楽の波が私を浚っていく。
 心の隅に疼く罪悪感なんて、押し流してしまうほど、私の体も、そして心も感じてる。

 「あ、あたし…おかしくなっちゃうっ!」

  思わずそう叫んだ私の頭は、次の瞬間、最大になった快感で真っ白になった。

 そして、その少し後に、彼もそこに到達して、私の体に覆い被さるように倒れてきた。

 お互いに息が上がってる。
 体が熱い。
 彼の背中はすごい汗…
 
「ん…樹くん……すごい汗…」

「………ヤバい、なんか……ヤバい」

「何がやばいの?」

「なんか……色々……」

「なにそれ…!」

 なんだかそう言った彼が可愛くて、私は思わず笑うと、少しだけ呆然としてる彼の顔を覗きこんだ。
 なんだか嬉しくて、私は彼の唇にキスをして、そして、汗でしっとりする彼の髪を撫でた。

「こういう感じ…なんか、ほんと初めてで、またカルチャーショック…
こういうのは、樹くんのが絶対慣れてるよね」

「慣れてるも慣れてないも……
なんでひとの頭撫でてんの?」

「なんとなく…!」

 私は、思いきって、今夜ずっと疑問に思ってたことを、彼に聞いてみる。

「て、いうか……ねぇ…樹くん?」

「ん?」

「樹くん…なんでこうしてくれたの?」

 私、どんな顔をして彼にそう聞いたんだろう?
 一瞬、はっとした彼が、やけに優しく私の頬を撫でてくれた。

 「里佳子さんが……好きだから」

 !?
 その言葉に、私は驚いた。
 そんなに正直に、感情を口にしてくれるなんて思ってなかったから。
 嬉しいっ
 だけど、罪悪感で胸が痛い。
 この罪悪感は、信ちゃんに対してじゃない、彼に対してだ。

 私には…
 付き合ってる人がいるのに…
 そんな私に、好きって言ってくれた…
 なんか、泣きそう…
 でも、嬉しくて仕方ない…
 どうしよう…
 あたし、ほんとに嫌な女…

そう思って、私は思わず言ってしまった。

「……ありがとう…
あたし、こんな女でごめんね…
…おっぱいも小さくて、ごめんね…」

「いや、それは何も言ってないし!」

 彼は、可笑しそうに笑った。
 その顔を見て、私も笑ってしまった。

 この上なく幸せを感じる。
 彼に抱かれた形跡が、私の体のあちこちに残って、私の心にも、沢山の愛しさが残った。

 忘れられない夜。

 だけど、これは…

 ほんとなら、してはダメなこと。 


 これは『罪』だから。

 信ちゃんに対しても、彼に対しても、私が犯した『罪』なんだ…

 
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