君は私の心を揺らす〜SilkBlue〜【L】

坂田 零

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【16、情欲】

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 戸惑う私のブラウスのボタンを外して、彼はソファーの上に私の背中を押し付けて、胸元にキスをする。
 
 「ちょっと、ま、待って…っ
樹くん、ちょっと待って…っ」

 「待たない」

 「なんで!もぉ…ば、ばかっ」

  私は、彼の肩を押し返すようにして一応は抵抗してみた。
 そんな私の唇を、彼は容赦なく奪った。

 「ん…っ」

 舌先が絡む。
 いつものキス。
 熱っぽくて、息が漏れるほど深いキス。
 
「んっ…もぉ、な、なんで…今なの?」

「今、そんな気分になったから、かな?」

「い、今から私、出勤…!」

「まだ、少し時間あるよ」

 イタズラっぽい声が、私の耳元で悪魔みたいに囁く。
 そして、ぎゅうっと私を抱き締めると、ますますイタズラっぽい表情をして、すっと私のブラウスをはだけた。
 胸元に、昨夜みたいに、甘く熱っぽくキスの雨を降らす。

 結局、私の理性なんて彼の声とキスの前に、溶け出してしまうのかもしれない。

「里佳子さん…好きだよ」

 こんな時に、これを言うのはある意味で『罪』だ、否応なしに、私は彼を受け入れるしかない。

 「んっ…あ」

 体が熱くなる。
 その手が、私の腰を撫でて太腿のあたりまで差し掛かる。

 「服…脱ぐっ、ま、まって…!」

「いいよ…着たままで」

「…っ!」

 服を着たまま、出勤前の朝に、私は一体何をしてるの?
 だけど、彼の囁く声にも、指先にも、唇にも、舌先にも、私は、もう、逆らえない。

 「い、樹くん……っ、あっ、あっ…!」

 指先が、私の中にするっと入り込む。
 私の体は…思った以上に彼の声に反応してしまうみたいだ。
 自分でもわかるぐらい、彼を受け入れたくて、どんどん溢れてくる。
 否応なしに、声が出る。

 「あっ…ん…っ」

 これから仕事なのに、私、こんなこと…

 その指先と、私の肌を辿る舌先の気持ち良さに、私の体が揺れる。

 私は、いつから、こんなえっちな女になったんだろう…

 「里佳子さん…すげー可愛い」

 そんな私に追い討ちをかけるみたいに、彼の声がそう囁く。
 そんなことを言われから、余計に私の心は高揚して、私の体は、ますます彼に敏感に反応してしまう。
  
「い、言わないで…っ、は、恥ずかしいよ」

「だって、まじで可愛いじゃん…
昨夜だって、散々こうしたのに…
まだ、こんなに」

 そう言って、彼はまた私にキスをする。
 舌先が絡む。
 息が漏れても、何度も何度もキスをして、その感触と、体を駆け巡る快感で私の頭は朦朧としていく。
 どんどん息が上がり、鼓動が早くなる。
 
 「樹くん…あたし、もぅ…!あぁっ!」

 電気が走るようなその快感で、びくんと私の体が波打った。
 
 「里佳子さん…すごいよ、これ…」

 「んっ…やだ、恥ずかしいよ、い、言わないでっ」

 出勤の時間が近づいているのに、私の体は、彼を受け入れたくて、ますます熱くなる。

 「なぁ…里佳子さん…欲しい?」

 イタズラっぽい悪魔の囁きが、私の耳元で意味深に笑いながら甘く響いた。
 私は、ぎゅっと彼の首に抱きつく。

「い、いじわる…っ
もぉ…欲しいよ…き、来て」

 彼は、私の腰を抱いて、ふわっと上半身を起こさせると、そんな私の体を腿に乗せた。

「あ……っ!」

 ぐっと深い場所に押し込まれる感覚。
 恥ずかしいのに、その快感に、私の口からは、声も息も漏れて堪えきれない。
 揺らめくような衝撃が、私の体を駆け抜けて、気がおかしくなりそうなほどの快楽を、私の心と体に刻んでいく。

 これはいけないこと。   
 彼との関係は、決して、大きな声でいえない関係。
 だけど、こうして肌を重ねる度に、彼の存在は大きくなる。

 この人が、愛しい…

「い、樹くん…っ」
 
「すげー……気持ちいいよ…里佳子さん」

「ん、あっ…!
 もっと、気持ち良くなって…っ
す、すき…樹くんが…っ好きっ」
 
 「もう…やばいっ」

 少し、切羽詰まった声でそう言った彼は、私の背中をもう一度、ソファーに押し付ける。
 私は、彼の背中に抱きついたまま、その快感に朦朧とする。
 体の奥が熱い。
 快感の波はもう耐えない。

 「あぁっ!」

 私が甘く叫ぶと、その少し後に、彼がそこに到達して、私の体に覆い被さるようにして大きく息を吐いた。

 私は、そんな彼の体重を受け止めながら、汗ばんだ彼の背中をぎゅっと抱き締める。

 「樹くん、好き…よ」
 
「……里佳子…」

「ん…?」
 
 彼はふっと顔を上げて、私にキスした。
 
 このまま、離れたくない…
 仕事…行きたくなくなっちゃった
 でも、行かないと…

 出勤前にこんなことしてる自分が、恥ずかしい。

 だけど、やっぱり…
 幸せ…
 あたし、ほんとに、嫌な女…
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