君は私の心を揺らす〜SilkBlue〜【L】

坂田 零

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【15、情熱】

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 いつの間にか、彼の肌が私に馴染んで。
 いつの間にか、私の心は彼で一杯になってしまって。
 私は、彼に抱かれる度に、とても幸せな気分になる。
 だけどその分、私の中の罪悪感も大きくなっていく。
 その気持ちを、ストレートに私に注ぐ樹くんと、10年も付き合ってても、私をどう思ってるのかもわからない信ちゃん。
 今の私は、そのどちらも選べずに、中途半端な場所をうろうろしてる。

 何故、樹くんを選べない?
 何故、信ちゃんを選べない?

 樹くんは若すぎて、まだまだ先に夢があって、ずっとそれを追いかけてるけど、ひたむきに私を思ってくれてるのがわかる。

 信ちゃんは、安定した仕事を持っていて、私には無関心みたいだけど、安心感があるし性格的に私を裏切る人じゃない。

 私は、そんな二人を天秤にかけているんだ。

 ほんとに、嫌な女…

 朝、目が覚めると、目の前に彼の無防備な寝顔があった。
 
 可愛い…

 罪悪感で心が痛い。
 でも、そんな私は、彼の髪を撫でて、ベッドを降りた。
 昨夜、いつもみたいに熱っぽく彼に抱かれた私の体には、その形跡が残ってる。

 キスマークなんて付けられたことも、付けたこともないって言ったら、イタズラっこの彼は、わざわざ私の太腿の内側に唇の跡をつけて、「ここは、これをしないと見つけられない場所だから」って言って、私を舌先で弄んだ。
 思い出すだけで、なんだか体の芯が熱くなってしまう。

 もぉ…
 今日はフレックスだからいいけど…
 
  私は、スーツに着替えて、リビングに行くとコーヒーを淹れる。
 いつもよりちょっと遅いから、少しゆっくりできるかな~

 そんなことを思ってたら、寝室のドアが開いた。

「あれ?ごめん、起こした?」

 寝ぼけた顔をした樹くんが、寝ぼけたまま、私の隣に座る。

 「ん~…なんか目が覚めた」 

「眠そう!もうちょっと寝ててもいいんだよ? 」
 
 あまりにも寝ぼけた顔してるから、私は可笑しくなって思わず、彼の首にしがみつく。
 そんな彼の耳の下には、昨夜、ふざけあって付けた私の唇の跡。
 なんだか、ちょっと、嬉しい。
 彼は寝ぼけたまま、ちょっと掠れた声で言う。

「里佳子さんが仕事行く時に、一緒に部屋でるよ、一度家に帰る」

「ん、わかったよ、朝御飯作るね」

「作ってやろうか…?」

「寝ぼけてるのに大丈夫?」

 私は可笑しくなってそう言った。
 彼は、ちょっとだけ目が覚めた顔になって、ぽんって私のおでこを叩く。

「里佳子さんより俺のが料理上手いよ」

「ちょ!なにそれ!?失礼な!」

 思わず反論した私を、彼は可笑しそうに見ると、ソファーを立った。
 でも、彼の言葉は確かに当たってて反論できなかった。

 テレビを見てた私の前には、すごく美味しそうなフレンチトースト。

 「反論なんてできない…」

 思わずそう呟いた私に、彼は、得意気に笑ってみせる。
 ハチミツもメープルシロップもないから、その代わりにマーマレードを塗って口に運ぶ。

 「なんか悔しい!」

 「ざまぁ!」
 
  樹くんは可笑しそうに爆笑する。

 「なにそれもぉ!」

「マーマレードこぼしてるよ」

 「っ!?」

  見ると、仕事用のブラウスの胸元にマーマレードが…

「あああああ!仕事今からなのに!」

 そんな私を見て、樹くんは更に可笑しそうに笑う。
 
 「着替えないとな」

 「もぉ!」

 私は、ティッシュを取ってブラウスのマーマレードを拭く。
 すると、すっと彼の手が伸びてきて、私のブラウスのボタンを外し始めた。

「え?ちょっと、何してんの?」

 彼はイタズラっぽく笑った。
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