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【21、恋慕】
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空白だった一週間を埋めるように、彼は私を抱いた。
私も、彼の気が済むまで抱いて欲しかったし、抱かれたかった。
理性なんかとっくに吹き飛んで、くらくらするほど快楽を貪って…二人同時に果てた時、彼はぎゅっと私を抱き締めた。
荒い息を沈めるようにして、キスをする。
私は、この唇に、もう何回キスされて、もう何回愛されたんだろう…
私は、彼の肩に頬を押し付けて、つい、微笑ってしまった。
「いつも……樹くんは……すごい汗……」
「本気で抱いてるから……里佳子さんのこと」
「本気とか、そうじゃないとかあるの??」
「あるよ」
「じゃあ……」
私はどうしても聞いてみたくて、彼の額と首筋に甘えてキスすると、カチッとした鎖骨の付け根にもキスをして、言葉を続けた。
「ミキちゃんと、した時は……?」
「酒の勢いでやるのはただのオナニー。
本気もなにもないよ…」
やっぱりしたんだ…
なんて、今さらちょっとムッとするけど…
私も同罪だから、何も言えない。
それに、今一緒にいるのは私だし、本気じゃないって、なんだか感じる。
彼がこんなこと言うなら、絶対に私の勝ち…だよね。
「それってさあ、女の子にしてみたらすごい失礼なことなんだけど…
私、今、『良かった』って…ほっとしちゃった…
嫌な女だよね?」
「…別に、そんなことないんじゃん?」
「そうかな?」
「そうだよ」
その答えを聞いて、私は、ふと思い付いたことがある。
彼の胸に自分の胸を合わせて、 彼の体に乗りながら私は、少しだけ不安になりながら聞いてみた。
「ね、樹くん……?」
「ん?」
「あたし………」
「うん…」
「……樹くんと、赤ちゃんを作れたら良かったってなって…」
「はっ?!」
私が突然そんなことを言ったせいか、彼は驚いて、きょとんとしたまま私の顔を見てる。
うん…
これが普通の反応だよね…
あたしが、結婚するって言ったら…
樹くんは、止めてくれるかな…?
俺と付き合おうって…
結婚しようって…
言ってくれるかな…?
そう思ったら、急に切なくなって、私は、自分の頬を樹くん頬くっつけてぎゅっとしがみついてみる。
「そしたら…信ちゃんとも別れて、樹くんには迷惑かけないように、あたしそっといなくなって…
あたしと樹くんの幸せを、沢山持って産まれてきた赤ちゃんを、一人で育てていくのに…」
「い、一体何を言って……っ!?
子供作るのは無理だから……っ」
「それはわかってるから大丈夫…
ただ、そうできたら良かったなって…」
「急に何を言ってんの?」
「ん……」
夢を追いかけてる途中の若い樹くんに、私は、自分の理想なんて押し付けられない…
彼より年上の私は、七歳も年下の彼に、そんな希望を抱いたらダメだよね…
私は、そっと彼の唇にキスをした。
そんな私の髪に、彼の手がかかる。
唇を離したら、彼は、やけに優しく私の髪を撫でてくれた。
「そもそも、なんで一人で育てるとかになんの?
子供作ることできたら、そりゃ俺だってちゃんと責任ぐらい取るし…」
責任、取ってくれるつもりなんだ…
そんなの嫌だ、おろせって言われたらどうしようかと思ったけど…
そうだよね、樹くんは、そんな人じゃない…
こう見えてすごくまっすぐに、誰かを愛してくれる人だから…
私は嬉しくなって、思わず笑った。
「………うふふ
あたし………樹くんが好き…」
「……うん」
「樹くんは?あたしが好き?」
樹くんは、一瞬きょとんとしたけど、ちょっと照れたように笑って答えてくれた。
「……好きだよ」
「……嬉しい……」
私は、もう一度、ぎゅっと彼にしがみついた。
幸せ…
だけど、お別れしなくちゃ…
お別れしないと、ダメだよね…
*
だけど、結局私は、別れなんて切り出せなかった。
結婚の話しも、ゆっくり進むんだろうと思っていたのに…
何故か信ちゃんは、やたらと急いで話を進めて行ってしまう。
11月の頭に、突然、なんの連絡もなしに戻ってきて『今から里佳子の両親のとこ行こう!』とか言われて、流石に私は怒った。
「確かに大切なことだけど、もう少しちゃんと話してから進めてよ!」
って私が言うと、珍しくしょげた顔をして、信ちゃんは私に言った。
「いや~ばぁちゃんが、もう、長くなさそうだからさ…」
唐突なプロポーズも、急いで結婚を進めてるのも、お婆さまのため…そう気がついて、私は呆れるやら、可笑しいやら。
信ちゃんも、根はとっても優しい人だ。
ちょっと1人よがりだけど、優しいし面倒見もいいから、部下にも慕われて人望もある。
悪い人じゃないのは、よくわかってた。
それに、信ちゃんは職業も収入も安定している。
ちゃんと両親に連絡して事情を話して、久々に実家を訪れたら、厳しかった母も、以前は家にあまりいなかった父も、二人そろって結婚を喜んでくれた。
そして、後日、信ちゃんの実家に報告にいくと「こんなおかしな息子と結婚してくれるのは、里佳子ちゃんぐらいしかいないから、ありがとう」と、お義母様に泣いて喜ばれてしまった。
結婚は、祝福されてするのが一番…
そう…
結婚は、自分たちだけの問題じゃないんだ…
そんなことはわかってる。
わかってるし、嬉しいけど…
胸が苦しかった。
こんなに祝福されて結婚するのに…
あたしは…
あたしは、まだ樹くんのことが好きで…
別れないといけないのに…
離れたくないと心で叫んでいる、自分自身の感情に苦しめられていった…
私も、彼の気が済むまで抱いて欲しかったし、抱かれたかった。
理性なんかとっくに吹き飛んで、くらくらするほど快楽を貪って…二人同時に果てた時、彼はぎゅっと私を抱き締めた。
荒い息を沈めるようにして、キスをする。
私は、この唇に、もう何回キスされて、もう何回愛されたんだろう…
私は、彼の肩に頬を押し付けて、つい、微笑ってしまった。
「いつも……樹くんは……すごい汗……」
「本気で抱いてるから……里佳子さんのこと」
「本気とか、そうじゃないとかあるの??」
「あるよ」
「じゃあ……」
私はどうしても聞いてみたくて、彼の額と首筋に甘えてキスすると、カチッとした鎖骨の付け根にもキスをして、言葉を続けた。
「ミキちゃんと、した時は……?」
「酒の勢いでやるのはただのオナニー。
本気もなにもないよ…」
やっぱりしたんだ…
なんて、今さらちょっとムッとするけど…
私も同罪だから、何も言えない。
それに、今一緒にいるのは私だし、本気じゃないって、なんだか感じる。
彼がこんなこと言うなら、絶対に私の勝ち…だよね。
「それってさあ、女の子にしてみたらすごい失礼なことなんだけど…
私、今、『良かった』って…ほっとしちゃった…
嫌な女だよね?」
「…別に、そんなことないんじゃん?」
「そうかな?」
「そうだよ」
その答えを聞いて、私は、ふと思い付いたことがある。
彼の胸に自分の胸を合わせて、 彼の体に乗りながら私は、少しだけ不安になりながら聞いてみた。
「ね、樹くん……?」
「ん?」
「あたし………」
「うん…」
「……樹くんと、赤ちゃんを作れたら良かったってなって…」
「はっ?!」
私が突然そんなことを言ったせいか、彼は驚いて、きょとんとしたまま私の顔を見てる。
うん…
これが普通の反応だよね…
あたしが、結婚するって言ったら…
樹くんは、止めてくれるかな…?
俺と付き合おうって…
結婚しようって…
言ってくれるかな…?
そう思ったら、急に切なくなって、私は、自分の頬を樹くん頬くっつけてぎゅっとしがみついてみる。
「そしたら…信ちゃんとも別れて、樹くんには迷惑かけないように、あたしそっといなくなって…
あたしと樹くんの幸せを、沢山持って産まれてきた赤ちゃんを、一人で育てていくのに…」
「い、一体何を言って……っ!?
子供作るのは無理だから……っ」
「それはわかってるから大丈夫…
ただ、そうできたら良かったなって…」
「急に何を言ってんの?」
「ん……」
夢を追いかけてる途中の若い樹くんに、私は、自分の理想なんて押し付けられない…
彼より年上の私は、七歳も年下の彼に、そんな希望を抱いたらダメだよね…
私は、そっと彼の唇にキスをした。
そんな私の髪に、彼の手がかかる。
唇を離したら、彼は、やけに優しく私の髪を撫でてくれた。
「そもそも、なんで一人で育てるとかになんの?
子供作ることできたら、そりゃ俺だってちゃんと責任ぐらい取るし…」
責任、取ってくれるつもりなんだ…
そんなの嫌だ、おろせって言われたらどうしようかと思ったけど…
そうだよね、樹くんは、そんな人じゃない…
こう見えてすごくまっすぐに、誰かを愛してくれる人だから…
私は嬉しくなって、思わず笑った。
「………うふふ
あたし………樹くんが好き…」
「……うん」
「樹くんは?あたしが好き?」
樹くんは、一瞬きょとんとしたけど、ちょっと照れたように笑って答えてくれた。
「……好きだよ」
「……嬉しい……」
私は、もう一度、ぎゅっと彼にしがみついた。
幸せ…
だけど、お別れしなくちゃ…
お別れしないと、ダメだよね…
*
だけど、結局私は、別れなんて切り出せなかった。
結婚の話しも、ゆっくり進むんだろうと思っていたのに…
何故か信ちゃんは、やたらと急いで話を進めて行ってしまう。
11月の頭に、突然、なんの連絡もなしに戻ってきて『今から里佳子の両親のとこ行こう!』とか言われて、流石に私は怒った。
「確かに大切なことだけど、もう少しちゃんと話してから進めてよ!」
って私が言うと、珍しくしょげた顔をして、信ちゃんは私に言った。
「いや~ばぁちゃんが、もう、長くなさそうだからさ…」
唐突なプロポーズも、急いで結婚を進めてるのも、お婆さまのため…そう気がついて、私は呆れるやら、可笑しいやら。
信ちゃんも、根はとっても優しい人だ。
ちょっと1人よがりだけど、優しいし面倒見もいいから、部下にも慕われて人望もある。
悪い人じゃないのは、よくわかってた。
それに、信ちゃんは職業も収入も安定している。
ちゃんと両親に連絡して事情を話して、久々に実家を訪れたら、厳しかった母も、以前は家にあまりいなかった父も、二人そろって結婚を喜んでくれた。
そして、後日、信ちゃんの実家に報告にいくと「こんなおかしな息子と結婚してくれるのは、里佳子ちゃんぐらいしかいないから、ありがとう」と、お義母様に泣いて喜ばれてしまった。
結婚は、祝福されてするのが一番…
そう…
結婚は、自分たちだけの問題じゃないんだ…
そんなことはわかってる。
わかってるし、嬉しいけど…
胸が苦しかった。
こんなに祝福されて結婚するのに…
あたしは…
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