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34.マンフリート

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              ❃❃❃




 それから穏やかで愛に満ちた日々が過ぎていくと思いきや、実は違っていた。


 大切にされすぎていて、いまだにマンフリートは最後まで体を重ねようとはしないのだ。なぜしてくれないのかと一度だけ恥をしのんで聞いたのだが、傷つけるのは己であっても許されることではない、そう言われて、いつものようにただ抱き合って眠っただけだ。


 最近では、お互いのものを触ったり、擦り合わせて扱き上げたり快感を得ることはあっても、その先にはなぜか進もうとしないのだ。


 ルシャナも最初の経験を怖いと感じることはない。それはマンフリートが必死で自分の助けてくれようとしたからだとわかっているからだ。だから恐怖はないと何度説明しても、まだだめだとの一点張りだ。


「何かいい方法はないかな……」


 未経験のチャドラに相談するわけにも行かず、かといってリチャードに相談するのは気まずいし……。


 方法はひとつだけだ。


 強硬手段に出るしかない。いずれするときは来るだろうが、それがいつになるかわからないのであれば、こちらから迫るしかない。


 目標を定めたルシャナは、今晩のためにいろいろと準備を始めた。

 帰宅したマンフリートと一緒に食堂で楽しい夕食時を過ごした。予想通り少し仕事をしてから部屋へ戻ると言われたので、さあここからがルシャナの準備の始まりだ。


「ルシャナ様、今日はもうよろしいんですか?」


「うん、なんだか疲れちゃったから、ベッドで本を読みながらこのまま寝るね」


「では、明かりを落としておきますか?」


「んーん。マンフリート様がもう少ししたらくると思うから、彼に消してもらうね」


「ではまた明日参りますね。おやすみなさいませ、ルシャナ様」


「おやすみ、チャドラ」


 寝室から出て行ったのを確認して、リビングで何か片付けているようだが、ドアの閉まる音で完全にチャドラはいなくなった。


「さあ、急がないと……っ」


 まずは今日お昼にチャドラが持ってきたバラの花束から、すごくよい匂いが立ちこめていた。このバラを数本抜いて、タンスの中に入れておいたのだ。これから着る夜着に少しでも香りが残ればと思っての作戦だ。


 それから、しっかりうがいして苦手なニッキの木もこれから噛む予定だ。そうすれば口の中がすっきり爽快になる。


 白湯さゆが飲みたいと嘘を言って湯を確保し、それで体の隅々をきれいになるまで磨き上げたのだ。

 もちろん夜着はいつものセパレートのものではなく、脱がされることを想定して、バラの香り付きの彼のシャツを勝手に拝借して着用している。膝丈ほどあるので、問題ないだろう。


 そして、下着は……恥ずかしいがつけていない。


 すーすーするが上掛けを掛けてしまえば問題ないだろう。その後は、どうなるのかわからないが、アドリブで行こう。きっとマンフリートがなんとかしてくれるはずだ。


「あとは思いつかないな……。出たとこ勝負で、いいよね。だってわからないもの」


 一度きりしかしたことはないし、それもほとんど痛みと悲しみが記憶のほとんどを占めていたため、正直ほとんど覚えていない。


「痛いのは嫌だけれど、元いた世界では子供を作るための大切な行為でもあったんだ。ここではタマゴを魔力で体内にいれるっていうから、繋がらなくても子供は出来ちゃうわけで……子供を作りたいから抱いて、っていうのが使えないのが難点だよね……」


 ひたすら甘えてみよう。きっと何か名案がひらめくかもしれない。そして今晩、この気持ちが高ぶったときに成功させなければ、自分自身の気力も落ちてしまう。


 体格差がありすぎて壊してしまいそうだというのを、なんとか払拭したい。こう見えても一応は男子だ。そこまで女性のように華奢なことはない……と思いたい。


 すべて準備は整った。高鳴る心臓はこれ以上ないほど早く動いている。そして、期待と不安が入り交じった感情真っ只中のルシャナ。


 そうとは知らぬいつも通りのマンフリート。


 二人の攻防は今まさには始まろうとしていた。






「ルシャナ? もう寝たのか?」


「マンフリート様……起きてます」


 危ない、少しうとうとしかけた。リビングからマンフリートに名前を呼ばれてハッとする。決戦の日に眠くなるなど、緊張感の足りない証拠だ。


 マンフリートは何も知らずにいつも通りに服を脱ぎ、下だけ夜着に履き替えてベッドに潜り込んできた。


「もう、寝るか?」


「んーん。大丈夫です。ちょっとお腹いっぱいで横になっていただけですから」


「ああ、今日の料理も凝っていたからな。牛肉の蒸し煮かな? あれはとろけそうにうまかったな」


「はい。そのあとのデザートも美味しかったですよ。桃のコンポート大好きです……」


 他愛ない話をしているが、ルシャナは心ここにあらずでどこか上の空だ。


「ん、眠いのか? そろそろ寝るか」


 返事を待たずに明かりを消すのはいつものことだ。

 さあ、ここから始まりだ。上手くいきますようにと心の中で祈った。


「おいで……」


 抱きしめられて、頭の上にキスを落とされ、そして徐々に口へと移動していくのだ。キスも激しくなり、ルシャナも必死でマンフリートに追い縋るようにして抱きつく。


あまりにも気持ちよくて、つい目的を忘れていつものようにマンフリートの腹に自分のものを擦りつけてしまうのだ。そうするとマンフリートは下着の中からルシャナのものを引き出して握りしめてくれる。


 だが今日は違う。いつものようにルシャナの下半身へ手を持っていくと、下着もなにもつけていないルシャナに驚き、ぴたりと手を止める。


 しかし今日はそれをルシャナが許さず、そのまま強引に自分の股間へとマンフリートの手を持っていく。だが、まだマンフリートは余裕があるのか、くすりと笑っていつものように扱いてくれる。


「あっ……あぁ……」


(いけない! 自分ばっかり気持ちよくなったら、いつもと同じになってしまう!)


 我に返り、今度はマンフリートの下着を少しずり下げる。


(恥ずかしがっていたらダメ! 何が何でも絶対に成功させなきゃ!)


「ルシャナ? 何を?」


 怪訝そうな声でマンフリートが言うのを無視する。息が上がったままだし、達していないので体が火照ったままだが、今は自分のことは後回しだ。



 ルシャナの鬼気迫る気迫に気圧けおされるされたのか、肩を押せば簡単にベッドに倒れ込んだ。彼を完全に仰向けにさせると、上掛けを剥いで彼の足に跨がる。


「ど、どうした、ルシャナ?」


 何をされるのか不安なのだろう、心配になって体を起こそうとしたので、

「動かないで!」


 決死の覚悟でそう言うと、ルシャナは一気にマンフリートのパンツに手をかけて下着ごと刷り下げた。


 すると質量のとても大きなマンフリートのものが目に飛び込んできた。黒々とした下生えも見事で、ふわりと雄の匂いを感じた。


(なんか……くらくらするかも)


 たったそれだけで、ルシャナのものは硬度を増したのだが、愛しい人の太くて硬いものを目の前にして恍惚となり、気づけば舌で舐めていた。


「ル、ルシャナ? 止めるんだ」


 マンフリートは押し戻そうとするのだが、ルシャナも負けてはいない。両足をしっかり股で挟み込み、両手でがっしりとホールドした状態で、舌だけを彼のものに這わせているのだ。


 両手を使ったほうがいいのだが、途端に体勢を変えられてしまいそうなので、そのまま少し上に移動して、口だけを動かす。


 歯で傷つけないように甘噛みをして、舌で突いたり這わせたりしているうちに、ぴくりとそれは動き、徐々に硬度を増していく。

 それが嬉しくて、今度は角度を変えてみる。


「こ、ら、ルシャナっ」


 動きを止めたらきっと恥ずかしさで死ねる。


 さきほどよりも少し息が乱れているマンフリートは、どうやら感じてくれているようで、俄然がぜんやる気になってきた。こんな恥ずかしいことと思っていたが、自分の口で育っていくのかと思うと、案外やってみるとうれしいものだ。


 気づけばいつのまにか両手でずっしりと重たいものを持ち上げ、擦りながらキャンディを舐めるように、舌を出して上下させた。


(ん、少し苦いのが出てきたかも。感じてくれているんだね)


「も、いいから、ルシャナ。これ以上は……だめ、だ」


 そう言って本気で引きはがそうとしてきたので、ルシャナは両足にしがみつく。


「いや! どうして、最後まで、してくれないんですか? 僕が、嫌いなんですか?」


 マンフリートは困り果てたような顔をして、いつもの説明をするのだ。もう聞き飽きたくらい同じ言葉を繰り返し繰り返し……。


「僕は、いいって言っているでしょ。どうして、そんなに頑固なんですか?」


 動かないで、と言って再びマンフリートの肩を思いっきり押す。こんなことで本当は頑丈なマンフリートが倒れないことを知っているのに、ルシャナに抵抗できない彼はいとも簡単にこうやって倒れ込むのだ。


「僕、最後までしますから……ね!」


 本当はやり方などわからない。でも、最後まで、今日成し遂げなければ永遠に結ばれない気がしたので、ルシャナはマンフリートのまだあまり硬くなっていないそれを両手で持ち上げ、自分の蕾に押し当てる。

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