魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ

文字の大きさ
30 / 69

28

しおりを挟む
 王家室のソファにはマーティアス王子、クシェル王子、ラルフ王子の3人が座っていた。
 俺の腕からするりと降りたネコのイリスさんは、バギンッという不穏な音をさせて一瞬で人に戻る。

「皆様、お時間いただきありがとうございます。ルカ様はどうぞお座りください」
「あれダンは? てっきりルカくんと一緒に来るかと思った」
「ダン王子はついさっき、従者のクライドさんと話があるとかでいなくなっちゃいまして……」
「なんでルカさんとダンが一緒にいると思ったの?」

 クシェル王子の言葉に、ラルフ王子が首を傾げた。

「ラルフくん知らないの? ルカくんってダンのところに入り浸ってるんだよ。ダンも手出すの早いよね~先越されちゃった。俺の相手もしてほしいな、ルカくん」
「いや! 手は出されてません!! 魔法を教わってるだけです!! 勘弁してください!」
「イリス殿。ダンのやつを待ちますか?」

 俺は誤解を拡散させないためにクシェル王子の発言を大きく否定したが、マーティアス王子が全く興味なさそうに話を進めた。

「ルカさんは仲良くなったんだね、ダンと」

 ラルフ王子は手を出すという意味を理解していないのか、ニコニコしてくれて多少救われる。ちょっと癒されている間にクシェル王子が俺の隣に移動してきて、当たり前のように俺の肩を抱いた。

「本題はダン様が参られてからにいたします。別件でルカ様に舞踏会についてお話できればと」
「舞踏会?」

 お伽話でしか聞かない単語に、俺は首を傾げた。

「アクラマでは年に1回、舞踏会が開催されます。生徒のみならず各国の有力者も招待される大きな催しですが、準備に労力がかかる伝統というだけで、それ以外特に意味はないものです。将来どういう関係にもならない生徒と踊って何になるんでしょうね、あれは」

 マーティアス王子が、舞踏会が嫌いだというのを隠さない説明をしてくれた。

「ええ? マーティアスくん何言ってんの。いろんな子と踊れるから楽しいんじゃん」
「おいしい料理が出るから僕は結構好き。いろんな国のスイーツを食べられるよ」

 てんでバラバラの評価だが、舞踏会はダンスと料理がメインらしい。

「来季の舞踏会にはルカ様にもご参加いただこうかと思っております。生徒は基本全員参加するものですし、魔界への理解を深めていただければと」
「いいねえ。俺ルカくんと踊りたいし大賛成」

 クシェル王子は楽しげに言って、俺を抱きしめてくる。顔が胸元に当たって苦しい。

(でも離れろって言っても無駄だからな、この人……)

 俺は諦めの表情でクシェル王子の胸元を見ながら、手を挙げた。

「参加するのは全然いいんですけど、俺まったく踊ったことなくて──」
「俺が教えてやる」
「え?」

 聞きなれた高圧的な声に顔を向けると、イリスさんの横に人影──ダン王子が立っている。

「い、いつからそこに……!」
「たった今だ。クシェル、離れろ」

 転位魔法で現れたらしいダン王子は、間髪入れずにクシェル王子を睨んだ。

「毎晩逢瀬してるんだから今くらい譲ってよ。独り占めはルール違反でしょ」
「逢瀬じゃないですってば……!」

 俺の肩を抱いたまま退かないクシェル王子に舌打ちをして、ダン王子は無理やり俺の隣に座ってくる。

「では、ダン様も揃われましたので本題に入ります。私からご報告を」

 やり取りが終わるのを律儀に待っていたイリスさんが仕切り直して、俺と王子たちの手元に書類が飛んでくる。

「現在至上宮にはルカ様の身代わりを用意し、下僕たちに異常を悟られないようにしております。身代わりは事態収束次第で記憶抹消と改ざんを行う予定です」

 書類には俺の身代わりの顔や身の上などが記されていた。身代わりの人はちゃんと俺に似ており、よく用意できたなと感心した。

「お目覚めの日にあった至上宮結界への接触に関しては、その後動きはありません。私ができる範囲で結界強化を行っておりますが、至上様による強化と比べれば足元にも及ばないものです。至上様が確実にいると思われている至上宮に、今のルカ様を戻すのは危険だと判断しております」
「このままアクラマでの生活を続けさせたいということか」
「はい。ダン様はじめ皆様のご協力によって、ルカ様には危険なく魔法を学んでいただけていると思いますので」
「そういえば、ルカくんは魔法できるようになった?」
「ちょっとだけなら……。紙を燃やせるようにはなりました」
「わ~すごいすごい。ルカさん立派だね」

 ラルフ王子が幼児を褒めるかのように拍手をしてくれる。

「カップも浮かせられなかったことを考えれば、随分と進歩していますね。学校通いの成果が出ているなら続ける意味はある」
「俺が見てやってるんだ、これで成長がないなどあり得ない」

 当然という顔で言って、ダン王子は俺の肩を抱くクシェル王子の手を魔法で引きはがした。「痛い!ひどい!」と騒ぐクシェル王子を「よしよし」とラルフ王子が慰めるのを横目に、ダン王子はイリスさんを見る。

「こいつをアクラマで生活させ続けることに異議はない。至上宮に置いたままにするより、敵の意表を突けるだろうしな。話は以上か?」
「はい。私からお伝えしたかった事項は以上です」
「ならば、俺からも話がある。およそ2日前、ロット国の辺境にある村の住人が全員消えた」
「え……消えた?」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。 本作は皆様の暖かな支援のおかげで第13回BL大賞にて学園BL賞を受賞いたしました! 心よりお礼申し上げます。 ただ今、感謝の番外編を少しずつ更新中です。 よければお時間のある時にお楽しみくださいませ

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...