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お見合いファイルNo.8
名前:三ノ輪勝利
年齢:32歳
身長:179cm
職業:芸能事務所社長
大堂が寝起きの目をこすってブースを出て行くのと入れ替わりに、次の見合い者がやってきた。
髪をパーマで遊ばせて派手な紫のスーツを着た男性は、小綺麗な顔をしている。
「はじめまして。三ノ輪勝利です。勝利って呼んで」
三ノ輪は爽やかな笑顔を浮かべた。さすがはアイドルグループに所属していた元芸能人だ。
姫子は三ノ輪がアイドルとして活躍していた時代を知らないが、事前の調べによれば10年ほど前に芸能界を電撃引退し、その後若くして事務所を立ち上げたらしい。家庭環境含めて経歴は苦労人で、そのせいか微笑をたたえる三ノ輪の目は笑っていないように見えた。
「姫子ちゃん、すっごく可愛いね。驚いちゃった」
「いえ、私なんて全然です」
「お世辞じゃなくてホントにだよ。顔はもとよりスタイルのバランスもいいし逸材だ。どうしてどの事務所も姫子ちゃんのこと、見つけられてないんだろう。あんまり都会に遊びに行かない?」
「そうですね。父が過保護なので人混みにはあまり……」
「うわ、絶対そのせいだ。よかった、姫子ちゃんが箱入り娘で。じゃなきゃ今頃どこかからデビューしてたよ」
「いや、そんな……照れちゃいます」
怒涛の褒め言葉に姫子は困りつつ笑った。照れてしまったのは本当だが、普段望月のことで頭がいっぱいで芸能人のことなど全く考えないのでいい返しが思い浮かばない。
芸能事務所の社長になんと言えば失礼にならないのかと思っていると、ほほ笑んでいた三ノ輪が急に表情を消した。
「今の、どう思った?」
「……え?」
無表情に輪をかけて、三ノ輪の瞳から光も消える。
「もし今ので芸能界入りたくなったなら、絶対オススメしないよ。適当な褒め言葉に惑わされすぎ」
三ノ輪は冷たく言って脚を組むと、口元を歪めた。
「芸能界なんて極道より汚いからね。権力者のジジイに媚び売って食いつなぐ。求められればなんでも捧げて。それが無理なら憧れるのもやめた方がいい」
完全に目が死んでいる。
今まで会ってきたどの男性よりも三ノ輪の目は死んでいて、芸能界がどんなところなのかを物語っていた。
「な、なんでもは……怖いですね」
「まぁでも、姫子ちゃんは可愛いよ。興味があるならぜひウチに入ってほしいな」
三ノ輪はまた急に切り替えて微笑を浮かべ、姫子に名刺を渡した。
コロコロと表情が変わる様は、三ノ輪の感情をわからなくさせていて不気味だ。
「三ノ輪さん。今回はスカウトじゃなく見合いなんで」
「わかってる。でもウチは芸能事務所の中ではかなりマシなほうだよ。枕もゼロ」
「お嬢、芸能界デビューなんて絶対親父が許しませんよ。あと俺も嫌です」
「わ、私はそんな気ないですよ! 安心してください!」
(ちょっと待って、望月さんが嫌なのはなんで!?)
望月が付け足した言葉に姫子の頭は混乱した。
ヤクザの娘がデビューなんてしたら週刊誌にすっぱ抜かれるから?とか考えてはみたが、望月の表情から読み取れることはない。
「え~残念。芸能界に憧れない女の子の方が珍しいよ」
「すみません。私、あまりテレビも観ないので疎くて」
「すごいな、本当に箱入りなんだね。友達と好きな芸能人の話とかしないの? 恋バナとかの方が盛り上がるのかな」
「そうですね、恋バナの方が多いと思います」
「じゃあ、姫子ちゃんもほんとは好きな人いるんだ」
「え!? い、いないですよ!?」
姫子は三ノ輪の指摘を、わざわざ望月を振り返って否定した。姫子の焦った視線を受けた望月は、きょとんと見返してくる。
「ほ、ほんとにいないです! ほんとに!」
「そこまで否定すると逆に怪しいよ。とにかく僕と結婚するなら汚い世界には触れさせない。ただ、僕のものにならないなら事務所にだけでも入ってほしいな」
三ノ輪は姫子に好きな人がいるかどうかは別にどちらでもいいようで、さらりと流した。姫子だけ必死で滑稽である。
「……どうして、私と結婚したいと思うんですか」
「芸能界は元からヤクザと親密で、大蛇組は超有名どころだ。仲良くしといて損はない。君と見合いする男たちは大抵似たような理由なんじゃない?」
「それは、そうだったりそうじゃなかったり……ですね。父の押しに負けた方や親に言われて仕方なくって方もいらっしゃいます」
「へえ~、結構事情があるんだな。でも1番は姫子ちゃんが可愛いからってことだと思うけどね。だから今日もこんなに男が集まってるんだ」
会場を指さして三ノ輪は笑う。
爽やかだが、やはりその目は笑っていなかった。
名前:三ノ輪勝利
年齢:32歳
身長:179cm
職業:芸能事務所社長
大堂が寝起きの目をこすってブースを出て行くのと入れ替わりに、次の見合い者がやってきた。
髪をパーマで遊ばせて派手な紫のスーツを着た男性は、小綺麗な顔をしている。
「はじめまして。三ノ輪勝利です。勝利って呼んで」
三ノ輪は爽やかな笑顔を浮かべた。さすがはアイドルグループに所属していた元芸能人だ。
姫子は三ノ輪がアイドルとして活躍していた時代を知らないが、事前の調べによれば10年ほど前に芸能界を電撃引退し、その後若くして事務所を立ち上げたらしい。家庭環境含めて経歴は苦労人で、そのせいか微笑をたたえる三ノ輪の目は笑っていないように見えた。
「姫子ちゃん、すっごく可愛いね。驚いちゃった」
「いえ、私なんて全然です」
「お世辞じゃなくてホントにだよ。顔はもとよりスタイルのバランスもいいし逸材だ。どうしてどの事務所も姫子ちゃんのこと、見つけられてないんだろう。あんまり都会に遊びに行かない?」
「そうですね。父が過保護なので人混みにはあまり……」
「うわ、絶対そのせいだ。よかった、姫子ちゃんが箱入り娘で。じゃなきゃ今頃どこかからデビューしてたよ」
「いや、そんな……照れちゃいます」
怒涛の褒め言葉に姫子は困りつつ笑った。照れてしまったのは本当だが、普段望月のことで頭がいっぱいで芸能人のことなど全く考えないのでいい返しが思い浮かばない。
芸能事務所の社長になんと言えば失礼にならないのかと思っていると、ほほ笑んでいた三ノ輪が急に表情を消した。
「今の、どう思った?」
「……え?」
無表情に輪をかけて、三ノ輪の瞳から光も消える。
「もし今ので芸能界入りたくなったなら、絶対オススメしないよ。適当な褒め言葉に惑わされすぎ」
三ノ輪は冷たく言って脚を組むと、口元を歪めた。
「芸能界なんて極道より汚いからね。権力者のジジイに媚び売って食いつなぐ。求められればなんでも捧げて。それが無理なら憧れるのもやめた方がいい」
完全に目が死んでいる。
今まで会ってきたどの男性よりも三ノ輪の目は死んでいて、芸能界がどんなところなのかを物語っていた。
「な、なんでもは……怖いですね」
「まぁでも、姫子ちゃんは可愛いよ。興味があるならぜひウチに入ってほしいな」
三ノ輪はまた急に切り替えて微笑を浮かべ、姫子に名刺を渡した。
コロコロと表情が変わる様は、三ノ輪の感情をわからなくさせていて不気味だ。
「三ノ輪さん。今回はスカウトじゃなく見合いなんで」
「わかってる。でもウチは芸能事務所の中ではかなりマシなほうだよ。枕もゼロ」
「お嬢、芸能界デビューなんて絶対親父が許しませんよ。あと俺も嫌です」
「わ、私はそんな気ないですよ! 安心してください!」
(ちょっと待って、望月さんが嫌なのはなんで!?)
望月が付け足した言葉に姫子の頭は混乱した。
ヤクザの娘がデビューなんてしたら週刊誌にすっぱ抜かれるから?とか考えてはみたが、望月の表情から読み取れることはない。
「え~残念。芸能界に憧れない女の子の方が珍しいよ」
「すみません。私、あまりテレビも観ないので疎くて」
「すごいな、本当に箱入りなんだね。友達と好きな芸能人の話とかしないの? 恋バナとかの方が盛り上がるのかな」
「そうですね、恋バナの方が多いと思います」
「じゃあ、姫子ちゃんもほんとは好きな人いるんだ」
「え!? い、いないですよ!?」
姫子は三ノ輪の指摘を、わざわざ望月を振り返って否定した。姫子の焦った視線を受けた望月は、きょとんと見返してくる。
「ほ、ほんとにいないです! ほんとに!」
「そこまで否定すると逆に怪しいよ。とにかく僕と結婚するなら汚い世界には触れさせない。ただ、僕のものにならないなら事務所にだけでも入ってほしいな」
三ノ輪は姫子に好きな人がいるかどうかは別にどちらでもいいようで、さらりと流した。姫子だけ必死で滑稽である。
「……どうして、私と結婚したいと思うんですか」
「芸能界は元からヤクザと親密で、大蛇組は超有名どころだ。仲良くしといて損はない。君と見合いする男たちは大抵似たような理由なんじゃない?」
「それは、そうだったりそうじゃなかったり……ですね。父の押しに負けた方や親に言われて仕方なくって方もいらっしゃいます」
「へえ~、結構事情があるんだな。でも1番は姫子ちゃんが可愛いからってことだと思うけどね。だから今日もこんなに男が集まってるんだ」
会場を指さして三ノ輪は笑う。
爽やかだが、やはりその目は笑っていなかった。
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