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お見合いファイルNo.10
名前:滝栄
年齢:23歳
身長:175cm
職業:ファッションデザイナー
「サカエ! なに勝手に入ってきてんの」
「いや、あんたが喋りすぎなんですよ。あと仮交際とかルール違犯なんで勝手に提案しないでください」
「盗み聞きするなって~」
登場した青年──滝栄はリウと親しげなやり取りをしてから、姫子と望月に会釈した。
「交代でいいですか? この人、ほっとくとずっといますよ」
「確かにもうお時間ですので、交代いただければと思います」
「え~姫子ちゃんと全然話したりないのに。姫子ちゃん、絶対ボクが1番いい男だから。気持ちが固まったら連絡して」
望月に促されたリウは姫子にだけウインクをして立ち上がると、滝を肘で小突いてから出て行く。
リウがちゃんとブースから離れていくかを確認してから、滝は着席した。
「改めて、どうも。滝栄です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。サカエタキのデザイナーさんなんですよね。お若いのにすごいです。私も何着か持ってます」
「ああ、ありがとうございます。老舗でもないのに高くて生意気でしょう、俺の服」
冗談なのか本気なのか、表情を変えずに言う。
滝はサカエタキというブランドを擁するファッションデザイナーだ。専門学校生だった19歳でブランドを立ち上げ、爆発的に人気を獲得した逸材である。
しかし人気ブランドを立ち上げた本人はデザイナーらしからぬ雰囲気というか、服にも髪型にも無頓着に見えた。サカエタキは個性的ながらも繊細なデザインが売りの高級ブランドだが、滝はその辺に売っている量産品を着ているようだし、背もたれに脱力する姿はものすごく猫背だ。
「リウさん、どうでした?」
「海外を感じるフレンドリーさで、絵から飛び出してきたような方だなと」
「そっすか。顔がいいから気に入っちゃうかもしれないですけど、あの人はやめたほうがいいっすよ。めっちゃ自信家で我が強いんで。結婚するとなったらウェディングドレスも好きなの選べませんよ」
リウより滝の方が年下だが、見比べてみると滝がずっと年上に見える。
「あはは、ちょっと想像できますね……。滝さんはリウさんと仲がいいんですか?」
「有名モデルですからね、あの人。ファッションショーに出てもらったり、まぁ仕事相手って感じです。でも仕事以外でも絡もうとしてくるんで困ってます」
リウはプライベートでも仲良くしたいくらい滝を気に入っているが、滝は仕事以外で関わりたくないという一方通行の関係らしい。
「陽キャじゃないっすか、あの人。俺陰キャなんでああいうノリ苦手で……。姫子さんはどっちが好きですか。陽キャと陰キャ」
急に話の矛先が自分に向いて、姫子は咄嗟に望月を思い浮かべた。
望月のことを陽か陰かで考えたことはなかった。別に人嫌いで暗いイメージなどないが、明るく騒ぐイメージも全くない。
(ミステリアスと親和性があるのは……陰……?)
「……どちらかといえば、陰キャでしょうか。私自身、不特定多数の方と仲良くなれるわけじゃありませんし……」
「あーよかった。俺、姫子さんがパーティー好きだったらどうしよって思ってたんで」
滝はここで初めて少し表情を崩した。動じないように見えて、こういう場に緊張して顔が硬かったのかもしれない。
「姫子さんはすごいっすね。まだ18でしょ? 俺、23だけど結婚なんてまだまだ先のことだと思ってたのに」
「滝さんこそお若いのによくお見合いの話を受けてくださいましたね」
「俺は……服の仕事を続けられるのが1番重要なんで。政略結婚くらい打算的な関係なら、好き勝手やってても咎められないかなと思ったんですよ。ちゃんと好きになっちゃうと、仕事最優先にできないだろうし」
滝は自分の仕事に誇りを持っている。そして打算的な結婚であることにメリットを感じている。
(とにかく『結婚』をしないといけないなら、滝さんみたいな方でもいいのかも……)
好きになれるか、夫婦になれるかという観点ではなく、もっとドライに捉えてもいいのかもしれない。
「結構肩書目当てで近づいてくる人も多いんで、既婚になってもいいなという感じで参加したんですよね」
「新しい視点でした。確かに滝さんのような考え方もありですね。私はちょっと気張りすぎていたかもしれないです」
そう答えながら、姫子の脳内では急速に滝との生活がシミュレーションされていた。
滝は朝早くから夜遅くまで仕事に精を出し、海外も飛び回っていて家にいる時間は短い。
そんな環境の中で、姫子は以前とほとんど変わらぬ生活(友人やお手伝いさんとお茶、優雅な一人時間、できれば望月にたまに会う)を送る。変化と言っても着るものが全部サカエタキになるくらいで、姫子としては全く問題ない。
犯罪に手を染めず、キャラも濃くなく、年も近い。テンションが低く落ち着いているのも、自分に合っている気がする。
(滝さん……いいな……)
姫子は密かに狙いを定め、アピールしようと前のめりになった。
「私も滝さんのような考え方でお相手を──」
「でも姫子さんと実際会ったら、そんな利用するような気持ちで参加して悪かったなと反省してます。失礼でした」
「え?」
被せて言われて、姫子は固まった。
「姫子さん、すごく無欲で純粋だから。金や見た目で選ばれた男たちと何人も会ってるのに、誰にも靡いていないのはすごいですよ。俺みたいなやつは、もっと強欲で打算的な女性と結ばれるべきだと思います。すみません」
姫子を見る滝の目には申し訳なさと慈愛があった。
「え……えっと……そうでしょうか……?」
打算的に滝に靡きかけていた姫子は、フラれたショックを隠してどうにか笑みを浮かべる。
そのあといくつか雑談をして、盛り上がったりもしたが、滝からは一切姫子と結婚したいという雰囲気を感じられなかった。
名前:滝栄
年齢:23歳
身長:175cm
職業:ファッションデザイナー
「サカエ! なに勝手に入ってきてんの」
「いや、あんたが喋りすぎなんですよ。あと仮交際とかルール違犯なんで勝手に提案しないでください」
「盗み聞きするなって~」
登場した青年──滝栄はリウと親しげなやり取りをしてから、姫子と望月に会釈した。
「交代でいいですか? この人、ほっとくとずっといますよ」
「確かにもうお時間ですので、交代いただければと思います」
「え~姫子ちゃんと全然話したりないのに。姫子ちゃん、絶対ボクが1番いい男だから。気持ちが固まったら連絡して」
望月に促されたリウは姫子にだけウインクをして立ち上がると、滝を肘で小突いてから出て行く。
リウがちゃんとブースから離れていくかを確認してから、滝は着席した。
「改めて、どうも。滝栄です。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。サカエタキのデザイナーさんなんですよね。お若いのにすごいです。私も何着か持ってます」
「ああ、ありがとうございます。老舗でもないのに高くて生意気でしょう、俺の服」
冗談なのか本気なのか、表情を変えずに言う。
滝はサカエタキというブランドを擁するファッションデザイナーだ。専門学校生だった19歳でブランドを立ち上げ、爆発的に人気を獲得した逸材である。
しかし人気ブランドを立ち上げた本人はデザイナーらしからぬ雰囲気というか、服にも髪型にも無頓着に見えた。サカエタキは個性的ながらも繊細なデザインが売りの高級ブランドだが、滝はその辺に売っている量産品を着ているようだし、背もたれに脱力する姿はものすごく猫背だ。
「リウさん、どうでした?」
「海外を感じるフレンドリーさで、絵から飛び出してきたような方だなと」
「そっすか。顔がいいから気に入っちゃうかもしれないですけど、あの人はやめたほうがいいっすよ。めっちゃ自信家で我が強いんで。結婚するとなったらウェディングドレスも好きなの選べませんよ」
リウより滝の方が年下だが、見比べてみると滝がずっと年上に見える。
「あはは、ちょっと想像できますね……。滝さんはリウさんと仲がいいんですか?」
「有名モデルですからね、あの人。ファッションショーに出てもらったり、まぁ仕事相手って感じです。でも仕事以外でも絡もうとしてくるんで困ってます」
リウはプライベートでも仲良くしたいくらい滝を気に入っているが、滝は仕事以外で関わりたくないという一方通行の関係らしい。
「陽キャじゃないっすか、あの人。俺陰キャなんでああいうノリ苦手で……。姫子さんはどっちが好きですか。陽キャと陰キャ」
急に話の矛先が自分に向いて、姫子は咄嗟に望月を思い浮かべた。
望月のことを陽か陰かで考えたことはなかった。別に人嫌いで暗いイメージなどないが、明るく騒ぐイメージも全くない。
(ミステリアスと親和性があるのは……陰……?)
「……どちらかといえば、陰キャでしょうか。私自身、不特定多数の方と仲良くなれるわけじゃありませんし……」
「あーよかった。俺、姫子さんがパーティー好きだったらどうしよって思ってたんで」
滝はここで初めて少し表情を崩した。動じないように見えて、こういう場に緊張して顔が硬かったのかもしれない。
「姫子さんはすごいっすね。まだ18でしょ? 俺、23だけど結婚なんてまだまだ先のことだと思ってたのに」
「滝さんこそお若いのによくお見合いの話を受けてくださいましたね」
「俺は……服の仕事を続けられるのが1番重要なんで。政略結婚くらい打算的な関係なら、好き勝手やってても咎められないかなと思ったんですよ。ちゃんと好きになっちゃうと、仕事最優先にできないだろうし」
滝は自分の仕事に誇りを持っている。そして打算的な結婚であることにメリットを感じている。
(とにかく『結婚』をしないといけないなら、滝さんみたいな方でもいいのかも……)
好きになれるか、夫婦になれるかという観点ではなく、もっとドライに捉えてもいいのかもしれない。
「結構肩書目当てで近づいてくる人も多いんで、既婚になってもいいなという感じで参加したんですよね」
「新しい視点でした。確かに滝さんのような考え方もありですね。私はちょっと気張りすぎていたかもしれないです」
そう答えながら、姫子の脳内では急速に滝との生活がシミュレーションされていた。
滝は朝早くから夜遅くまで仕事に精を出し、海外も飛び回っていて家にいる時間は短い。
そんな環境の中で、姫子は以前とほとんど変わらぬ生活(友人やお手伝いさんとお茶、優雅な一人時間、できれば望月にたまに会う)を送る。変化と言っても着るものが全部サカエタキになるくらいで、姫子としては全く問題ない。
犯罪に手を染めず、キャラも濃くなく、年も近い。テンションが低く落ち着いているのも、自分に合っている気がする。
(滝さん……いいな……)
姫子は密かに狙いを定め、アピールしようと前のめりになった。
「私も滝さんのような考え方でお相手を──」
「でも姫子さんと実際会ったら、そんな利用するような気持ちで参加して悪かったなと反省してます。失礼でした」
「え?」
被せて言われて、姫子は固まった。
「姫子さん、すごく無欲で純粋だから。金や見た目で選ばれた男たちと何人も会ってるのに、誰にも靡いていないのはすごいですよ。俺みたいなやつは、もっと強欲で打算的な女性と結ばれるべきだと思います。すみません」
姫子を見る滝の目には申し訳なさと慈愛があった。
「え……えっと……そうでしょうか……?」
打算的に滝に靡きかけていた姫子は、フラれたショックを隠してどうにか笑みを浮かべる。
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