ヤクザのお嬢は25人の婚約者に迫られてるけど若頭が好き!

タタミ

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 お見合いファイルNo.13
 名前:玉城数馬たまきかずま
 年齢:26歳
 身長:178cm
 職業:地主

「じゃ、またあとで会いましょうね。大和さん」
「俺は別に会いたくありませんが」
「これ、僕の名刺です。木内に用がある、って言ってもらえればいつでも駆けつけますから」

 望月の乾いた返答に臆することなく名刺を押しつけ、木内は両手を振ってブースを後にした。
 どうにかしてブース内に居残ろうとする木内に、望月が「今出ていくなら、後で担当のシマを教える」と譲歩して、やっと去ってもらったのだ。

「お嬢、変な男と会わせてすみませんでした。木内のことは忘れてください。キャスティングミスだと親父にも伝えておきます」

 うんざりという顔で望月が頭を下げる。

「いえ、私は平気ですよ。さすが望月さん、男性にもモテますね」
「モテとかじゃなくてストーカーですよ、あんなの」

(手段を選ばない公権力に好かれてしまう望月さん……。罪な魅力……)

 思わぬ恋のライバル出現に姫子が眉を寄せていると、ブースのパーテーションがノックされた。

「どーも。こんにちは、玉城です~」

 ノックと同時に入ってきた男性──玉城は、関西のイントネーションで挨拶をした。
 25人もの見合い相手を集めることになったら関西人くらいさっさと出てきそうなものだが、13人目でやっと登場となった背景には、大蛇組が関東のヤクザであることが影響している。関西には関西のヤクザ組織がひしめき合っており、縄張りではない大蛇組にツテが少ないのだ。

「玉城さん、初めまして。地主をされているということで……」

 玉城の服装は派手な色のスーツだった。指には金の指輪、手首には金のロレックスが巻かれており、見た目だけで言えば望月よりガラが悪い。
 地主ってヤクザの隠語じゃないよな?と頭の中で一瞬考える間に、椅子に座った玉城がビシッと姫子を指さした。

「あ、『地主とかなんやねん、うさんくさ~』って思うたでしょ。まぁ実際うさんくさいからなんも言い返せへんけどな。先祖代々受け継いだ土地を高値で貸して、場所代せしめさせてもろてます」

 自虐を交えて豪快に笑う姿は関西のイメージ通りといった感じで、今までの候補者たちとは一線を画す陽気さがあった。見た目よりは話しやすそうだ。

「関西の土地を扱われているんですよね。不動産収入がメインということですか」
「そうそう。でも関東の土地もちょっと手出しとるよ。それこそ大蛇組に地上げ手伝うてもろた縁で、今回姫子さんに会えとるし」

 さらりと言われて引っ掛かった。地上げというのは土地を購入することだと思うが、それにヤクザを使うというのは非合法の香りがぷんぷんする。

「地上げにヤクザを使ってもいいんですか?」
「ハハ! そんなわけないやろ。姫子さん、おもろいなー。ええボケや」

 玉城は手を叩いて笑っている。ちらっと望月を見やると、関わったことがあるのか神妙に頷かれた。

「ヤクザを使うてOKの業界なんてないわ。日本は法治国家やで」
「じゃあ、犯罪ってことですよね……?」
「フッ、ハハ! ちょお待って、畳み掛けてくるやん。こんなん好きになるわ~姫子さん。ヤクザのお嬢さんが犯罪者かどうか気にしとるん、お笑いすぎるやろ。完成度高いわ」

 集団見合いの前に望月にも「ガチの犯罪者、嫌なんですか? 俺たちヤクザがそもそもガチの犯罪者じゃないですか」と言われたことが蘇る。

(それはそうなんだけど……。でもヤクザとその他の犯罪は違うというか……私がヤクザに慣れすぎてるだけ……?)

 父も初恋の人もヤクザなので、どうしても贔屓目に見てしまう。
 そもそも結婚するなら望月がいいし、望月との結婚が無理ならせめて堅気がいいとどうしても思ってしまう。
 今思えば、序盤の俺様神崎やホストの成美などはかなりまともな部類だったのかもしれないと思考の深淵に入り込みかけていると、ようやく笑いがおさまった玉城がお茶を飲み干して頬杖をついた。

「はーおもろい。俺は姫子さんのことめっちゃ気に入ったわ。俺と繋がれば関西ヤクザとのパイプもできるし、大蛇組の勢力拡大狙うならwin-winとちゃう?」
「政略結婚の場合は、好条件かと思いますが……」
「正直今日のメンバーで一番稼どんの俺やで。公にしてへん収入も含めたら、やけど。土地も家もあげるし、欲しければビル一棟くらいならプレゼントする。大蛇組の関西事務所、手配すんのもお手のもん。そこのお兄さん、若頭やろ? 関西任せられて更なる出世も目前や」

 玉城は姫子だけではなく望月にまで営業をかけ始めている。関西の商売人は押しが強い。
 望月の出世まで言われてしまっては、姫子の心が揺らぐのもまた当然であった。政略結婚に落ち着くなら玉城はありかとグルグル考えていると、反応の薄い姫子に気がないと思ったらしい玉城は大袈裟にため息を吐いた。

「俺じゃアカン? 龍吾さんの思惑的に、金で苦労させるような男は呼ばれてないもんな。ちょっとアピールに金は弱いか~。そしたらやっぱ大蛇組の関西進出をメインに考えてもろて──」

 玉城は次なる一手を繰り出そうと前のめりになったが、姫子はそれよりも龍吾の思惑という言葉が気になった。

「あの、父の思惑というのはどういった内容ですか」
「え? ああ、別に本人に聞いたわけちゃうけどな。普通に1個しかないやん、理由。20歳にもなっとらん可愛い一人娘を、急にどこぞの馬の骨に差し出すって言い出したんやろ? 龍吾さんは自分の進退に不安があんねん。近々デカい抗争でもあるんとちゃう。せやから娘はせめて金のある男のとこに逃がしとこって魂胆や」

 さらさらと語る玉城の言い分が正しいのかはわからなかった。
 しかし、理由なき見合い騒動に、もっともらしい理由が浮上したのは事実であった。
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