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淫魔編:フォントメウ
【207話】温泉:シャナとモニカ
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同時刻、シャナとモニカは体の洗い合いっこをしていた。シャナの背中を泡立てたタオルでこすりながら、モニカが彼女に声をかける。
「おちからかげんいかがですかー?」
「うふふ、とっても気持ちいいですよ~」
「かゆいところはありませんかー?」
「ありませーん」
「はい!洗い終わりましたー!」
「ありがとうモニカ。じゃあ、泡を落として温泉に浸かりましょうか」
「うん!」
タオルを頭に乗せ、とろみのある温泉に体を浸ける。二人は同時に「ふぅー」と気持ちよさそうな声を出した。
「モニカ、体の調子はどう?」
「シャナったら。もうすっかり元気って今朝も言ったでしょお?」
「そうだったかしら?ふふ、ごめんなさい」
「えへへ。心配してくれてありがと」
「本当に、元気になってくれてよかったわ」
「シャナとユーリとアーサーのおかげよ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
二人は微笑み合ったあと、しばらくぼぉっとお湯に浸かっていた。東側の温泉からアーサーとユーリの笑い声が聞こえてくる。シャナは「あの子たちったら…静かに入らないと怒られちゃうわよぉ…?」と心配そうに呟いていたが、すぐに笑い声がおさまったので安堵のため息をついた。そんなシャナに、モニカがそわそわしながら視線を送っていた。
「どうしたのモニカ?」
「あっ、う、ううん!なんでもない!」
「そう?気になることがあるんじゃない?」
「あっ、え、えっとね!アクセサリーまで買ってもらっちゃって申し訳ないなーって思ってたの!」
「ああ。アクセサリーのお金は、あのあとこっそりアーサーに渡されちゃったわ」
「そうだったの?!気付かなかった!」
「ご丁寧にリゥとユエに値段をきっちり確認してね。コスメや服は甘えるけど、アクセサリーはさすがに金額が大きすぎるから渡すって聞かなくて。あの子、昔から人にお金出させるのいやがるわよねえ」
「ごめんねシャナ。せっかくの好意を…」
「気にしないで。むしろ私の方こそ気をつかわせてしまってごめんなさいね」
「ううん。私もアーサーもすっごく嬉しいんだよ!今日とっても楽しかったし!でもお金はユーリに使ってあげて!私たちは気持ちだけで充分だもん」
「分かったわ。あなたたちがそっちの方がやりやすいなら、そうする」
「うん!」
「…で?本当に言いたいことはそれじゃないわよね?」
「ぎくっ」
上手に気をそらすことができたと思っていたが、シャナにはお見通しだったようだ。シャナは湯がしたたる指でモニカのほっぺをぷにぷにとつつきながら言った。
「もう私たち、隠し事するような間柄じゃないでしょう?思っていることがあるなら言ってみなさい?」
「うう…」
「そうじゃないと、モニカが髪を伸ばしている理由をバラしちゃうわよぉ?」
「ひぇ?!」
「あれは何年前だったかしら。アーサーが…」
「きゃー!シャナ!分かった!言う!言うからぁ!!」
モニカは慌ててシャナの口を塞いだ。シャナがニヤニヤしていると、モニカはゆっくりと手を離し「答えたくなかったら答えなくていいからね」と前置きをしてから尋ねた。
「これはただの好奇心なんだけど…」
「ええ。どうぞ」
「あのね、私にヒョウイしたインマのコンパクが言ってたんだけど…」
「オブシーね。彼がなにを言ってたの?」
「100年前に…シャナと会ったことがあるって」
「あらあら…」
シャナは困ったように笑った。
「インマの言ってたシャナが、今のシャナと全然違ったの。あれは本当にシャナのことなのかなあ?」
モニカがちらりと見ると、シャナがこくりと頷いた。
「オブシーとは確かに100年前戦ったわ。戦っというより…まあ、うん。いたぶった…と言った方がいいのかしらね…」
「イタブッタ…」
「実は私、カミーユに出会うまですっごく…荒れてたのよ。冒険者をしている頃は特にひどくって…。ヒト型の魔物をいたぶりまくっていたら、いつの間にかS級冒険者になっちゃってたほどにね」
「ひぇ…。どうしてヒト型の魔物をイタブってたの?」
そう尋ねられ、シャナは空を見上げながらふぅと深く息を吐いた。
「…アーサーに言わない?」
「言わない。約束する」
「もちろんユーリにもね」
「絶対言わない」
「ありがとう。じゃあ話すわ。…私の過去をざっくりと」
1ページにおさまる程度にね、と軽く笑ってから、シャナはぽつりぽつりと話し始めた。
「おちからかげんいかがですかー?」
「うふふ、とっても気持ちいいですよ~」
「かゆいところはありませんかー?」
「ありませーん」
「はい!洗い終わりましたー!」
「ありがとうモニカ。じゃあ、泡を落として温泉に浸かりましょうか」
「うん!」
タオルを頭に乗せ、とろみのある温泉に体を浸ける。二人は同時に「ふぅー」と気持ちよさそうな声を出した。
「モニカ、体の調子はどう?」
「シャナったら。もうすっかり元気って今朝も言ったでしょお?」
「そうだったかしら?ふふ、ごめんなさい」
「えへへ。心配してくれてありがと」
「本当に、元気になってくれてよかったわ」
「シャナとユーリとアーサーのおかげよ。本当にありがとう」
「どういたしまして」
二人は微笑み合ったあと、しばらくぼぉっとお湯に浸かっていた。東側の温泉からアーサーとユーリの笑い声が聞こえてくる。シャナは「あの子たちったら…静かに入らないと怒られちゃうわよぉ…?」と心配そうに呟いていたが、すぐに笑い声がおさまったので安堵のため息をついた。そんなシャナに、モニカがそわそわしながら視線を送っていた。
「どうしたのモニカ?」
「あっ、う、ううん!なんでもない!」
「そう?気になることがあるんじゃない?」
「あっ、え、えっとね!アクセサリーまで買ってもらっちゃって申し訳ないなーって思ってたの!」
「ああ。アクセサリーのお金は、あのあとこっそりアーサーに渡されちゃったわ」
「そうだったの?!気付かなかった!」
「ご丁寧にリゥとユエに値段をきっちり確認してね。コスメや服は甘えるけど、アクセサリーはさすがに金額が大きすぎるから渡すって聞かなくて。あの子、昔から人にお金出させるのいやがるわよねえ」
「ごめんねシャナ。せっかくの好意を…」
「気にしないで。むしろ私の方こそ気をつかわせてしまってごめんなさいね」
「ううん。私もアーサーもすっごく嬉しいんだよ!今日とっても楽しかったし!でもお金はユーリに使ってあげて!私たちは気持ちだけで充分だもん」
「分かったわ。あなたたちがそっちの方がやりやすいなら、そうする」
「うん!」
「…で?本当に言いたいことはそれじゃないわよね?」
「ぎくっ」
上手に気をそらすことができたと思っていたが、シャナにはお見通しだったようだ。シャナは湯がしたたる指でモニカのほっぺをぷにぷにとつつきながら言った。
「もう私たち、隠し事するような間柄じゃないでしょう?思っていることがあるなら言ってみなさい?」
「うう…」
「そうじゃないと、モニカが髪を伸ばしている理由をバラしちゃうわよぉ?」
「ひぇ?!」
「あれは何年前だったかしら。アーサーが…」
「きゃー!シャナ!分かった!言う!言うからぁ!!」
モニカは慌ててシャナの口を塞いだ。シャナがニヤニヤしていると、モニカはゆっくりと手を離し「答えたくなかったら答えなくていいからね」と前置きをしてから尋ねた。
「これはただの好奇心なんだけど…」
「ええ。どうぞ」
「あのね、私にヒョウイしたインマのコンパクが言ってたんだけど…」
「オブシーね。彼がなにを言ってたの?」
「100年前に…シャナと会ったことがあるって」
「あらあら…」
シャナは困ったように笑った。
「インマの言ってたシャナが、今のシャナと全然違ったの。あれは本当にシャナのことなのかなあ?」
モニカがちらりと見ると、シャナがこくりと頷いた。
「オブシーとは確かに100年前戦ったわ。戦っというより…まあ、うん。いたぶった…と言った方がいいのかしらね…」
「イタブッタ…」
「実は私、カミーユに出会うまですっごく…荒れてたのよ。冒険者をしている頃は特にひどくって…。ヒト型の魔物をいたぶりまくっていたら、いつの間にかS級冒険者になっちゃってたほどにね」
「ひぇ…。どうしてヒト型の魔物をイタブってたの?」
そう尋ねられ、シャナは空を見上げながらふぅと深く息を吐いた。
「…アーサーに言わない?」
「言わない。約束する」
「もちろんユーリにもね」
「絶対言わない」
「ありがとう。じゃあ話すわ。…私の過去をざっくりと」
1ページにおさまる程度にね、と軽く笑ってから、シャナはぽつりぽつりと話し始めた。
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