【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco

文字の大きさ
241 / 718
異国編:ジッピン前編:出会い

【261話】500ウィンvs50,000ウィン

しおりを挟む
「500ウィン」

「50,000ウィン」

「ごまっ…!!」

提示された金額に驚いたのはヴァジーでもキヨハルでもなく、ヒデマロだった。当の二人は相手が予想通りの金額を提示してきたのかニッと笑うだけだった。

「カユボティ、ヴァジー…。君にとってこの浮世絵はそれほどの価値しかないのかな?残念だなあ」

「いいえ、妥当な金額かと思います。一般的なウキヨエは約300ウィンほどと昨日仰っていましたね?それの1.6倍の金額です。本業ではない学生のウキヨエに500ウィン。ヒデマロの絵を十分評価しているからその金額を提示したんですよ。…キヨハルさん、あなたこそ足元を見すぎでは?」

「いいや。50,000ウィンが妥当な金額だ。ヒデマロの浮世絵はもはや浮世絵の域を超えている。ちらしなどではなく、立派な芸術作品なのだよ。それにヒデマロの浮世絵はこの絵たった1つ。版元もなく、私個人が趣味で摺らせたもの。希少品のことこの上ない」

「喜代春さんっ、ちょ」

「ヒデマロ?」

「ひぅっ…」

異常なほど高額の値をつけられ、慌てたヒデマロがキヨハルの着物の袖を引っ張った。だがキヨハルが彼の名前を呼んだだけで、ヒデマロは震えあがり黙り込んでしまった。その様子をカユボティはじっと観察する。彼にジッピンのことばは分からない。だが、3人の反応や仕草でだいたいの状況を読み取ることができた。

ヴァジーはキヨハルの話を聞いても食い下がる。

「おっしゃる通り、ヒデマロのウキヨエは昨晩見たものとはまったく違う。おそらくこれは未来のウキヨエなのでしょう。希少品ということも理解しているつもりです。だがキヨハルさん。これは木版画ですよ。摺ろうと思えばいくらでも摺れるでしょう」

「摺ろうと思えばね。だが…私が希少価値を落としてまで摺ると思うかな?」

「っ…」

「君もさきほど言っただろう。ヒデマロの浮世絵は未来の浮世絵。今は無価値でも数十年後にはジッピン中…もしかしたら世界中の人々が高値で競り合うものになる。そのとき、摺られた枚数が少なければ少ないほど希少価値がついて、私にとってもヒデマロにとっても都合がいいんだよ」

「…カユボティ、助けてくれ」

「おやおや。もうギブアップかい」

ヴァジーは険しい顔をしてカユボティに助けを求めた。カユボティは面白がっているのかニマニマしている。君はどっちの味方なんだまったく…とヴァジーはため息をついた。バンスティンのことばでキヨハルとのやりとりを説明すると、カユボティは「ふむ…」としばらく考えてヴァジーに指示をした。

「キヨハルにこう言うといい。数十年後にヒデマロのウキヨエが世界中で有名になり、高値で競り合うものになるためにはいったい誰の力が必要なのか。いまこの時点でウキヨエに価値を見出している異国の者は私たちだけ。無名のヒデマロのウキヨエの価値が分かるのも、画家であり事業家である私たちだけ。それも…先見の目を持っている、ね」

「っ!」

「今後何人の異国の者がジッピンに訪れるかは知らないが…。そのうち何人がヒデマロのウキヨエの本当の価値を分かるかな?それに、私たちはバンスティン国からの来訪者。この世界で最も栄え、華やいでいて、芸術が好きな国。バンスティンで流行ったものは隣国へ伝わり同じように流行るだろう。バンスティンで流行るということが、どれほど世界に影響を与えるのか…キヨハルは分かっているはずだ」

「まったく…。恐ろしいよ君は。足元を見ているのは君のほうじゃないか」

「最後にヴァジー。キヨハルではなくヒデマロと交渉しなさい。このウキヨエはヒデマロのもの。パトロンよりも絵師の気持ちを尊重してあげないとねえ?」

カユボティのその言葉に、ヴァジーはヒデマロをちらりと見た。キヨハルの背中に隠れているが、おろおろと戸惑った様子でキヨハルを盗み見ている。カユボティの意図を察し、ヴァジーはぶるっと身震いした。

「君は…キヨハルさんに何か恨みでもあるのかい…?」

「いや?むしろ感謝しているよ」

「こわ…」

相談が終わり、ヴァジーはキヨハルに向き直った。カユボティに入れ知恵された彼の話を聞いてもキヨハルは微笑みを崩さないままだったが、こめかみに青筋が立っていた。

「ふふふ。本当にカユボティは…いやなところを突くねえ。…分かったよ。30,000ウィンまで値を下げよう。これでどうかな?」

「ありがとうございますキヨハルさん。…ヒデマロはどうお考えですか?」

「えっ、俺ですか?!」

「…ヴァジー?彼はまだ学生だ。このようなやりとりをしたことがないから、そっとしておいてあげてくれないかな」

「いいえ。このウキヨエはヒデマロのもの。彼の意見なしには前に進めないでしょう」

「…それもカユボティの差し金かな?」

「さあ、どうでしょうか」

キヨハルがカユボティに視線を送る。それに対しカユボティは口元に指を添えふふんと笑っていた。

「…カユボティ、君って子は本当に…悪い子だねえ…」

「確かにヒデマロのウキヨエは50,000ウィンの価値がある。君はなにもおかしな金額を提示していないよキヨハル。だが、相手が私だということを忘れてはいけない」

お互い祖国のことばでそう呟いている二人を見て、アーサーは目をキラキラさせた。

(なんだか分からないけど面白い!まるで剣を持たずに戦ってるみたい!二人ともかっこいいなあ!どっちが勝つんだろう?僕はやっぱりカユボティに勝って欲しいなあ!たしかカユボティは1,000ウィンでヒデマロさんのウキヨエを買いたいんだよね。僕もなにか力になれないかなあ…)
しおりを挟む
感想 494

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。