296 / 718
初夏編:初夏のオヴェルニー学院
【315話】異国の贈り物
しおりを挟む
ジュリアとウィルクは次々と贈り物を取り出した。見慣れない服、見慣れない武器、見慣れない髪飾りに見慣れないお菓子…。ひとつひとつに兄と姉から一言メモがくっつけられており、それを読んではクスっと笑ったり目を潤ませていた。
異国の物に興味を持った生徒たちがぞろぞろと彼らの周りに群がってくる。女子たちは華やかなキモノと可愛らしい干菓子に心を奪われ、男子たちはカタナに夢中になった。
「ねえ見てこれぇ!!かわいいー!!」
「ほんとだぁ!!どこで買えるのこれぇ?!」
「おい、このメモ見てみろよ!」
「なになに…?"僕たちジッピンの文化品を扱う画商になりました。ルアンに画廊を建てる予定だから、よかったら遊びに来てね"…」
「え!!ルアンでこういうの買えるってこと?!」
「そういうことだよな!?」
「やだ!ママにお願いしてルアン連れて行ってもらお!」
「ルアンっつったらリーノがいるよな?」
「長期休暇にルアン行って画廊行ってリーノに会いに行こうぜ!!」
「そうしよう!」
生徒たちが盛り上がっている中、ジュリアが小さい声で呟いた。
「そう…。アーサー様とモニカ様はジッピンに行ってらっしゃったのね」
「ジッピン…。あの鎖国していた島国ですね。なぜまたそのような辺鄙な国に」
「さあ。あの方たちのすることは分からないわ」
「そうですね。それよりお姉さま見てください!この剣、とてもかっこいいです!」
「ええ、素敵ね。でも扱いが難しそうだわ」
「使いこなして見せます!よし、今日の授業はこれでやってみよう!」
「カーティス先生に怒られても知らないわよ。私はこの髪飾りが気に入ったわ。この国のものと違ってゴテゴテしていないのにゴージャスなのが好き」
「ええ。とても芸術的です」
「あら、あなたに芸術が分かるの?」
「失礼ですよお姉さま!これでもありとあらゆる教育を受けていますから!!」
「へぇ?つまり頭でっかちってことね」
「意地悪はおやめください!」
「ふふ、ごめんなさい。つい」
姉に意地悪を言われてぷんぷんと頬を膨らませながら、ウィルクは贈り物の最後のふたつを取り出した。それは小さな絵画だった。1枚はまるで適当に絵具をぶちまけたようにとりとめのないもの。もう1枚は大波と山が描かれた版画だった。
「…これは?」
ジュリアのアイテムボックスにも同じような絵画が入っていた。それを見た彼女は苦々しく笑っている。
「…あの画家たちと面識があるのは知っていたけれど…。実物を見るとまた…ひどいものね」
「あの画家?有名な画家なのでしょうか」
「ええ、ある意味有名よ。なんでも彼らの展覧会に行けば吐き気をもよおすって」
「悪い意味で有名なんじゃないですか…」
「でももう1枚の版画は素敵だわ。これもジッピンのものね。美しいわ」
「そうでしょうか…。僕には良さがさっぱり…」
「ふふ。だからあなたはだめなのよ。この良さが分からないなんてまだまだお子さまね」
「むぅ…!僕はどちらかというと油絵の方が好きですね!色彩がきれいではありませんか!」
「あらあら、悪趣味」
「ジュリアお姉さま!どちらの絵もモニカお姉さまとお兄さまが贈ってくださったものですよ!それを悪趣味なんてよく言えましたね!」
「む…。た、確かにそうだわ…。私ったら失言を…」
「きっとどちらの絵にも魅力があるに違いありません!それが分からないのは、僕たちが至らないからです」
「まさかウィルクにこんなことを言われる日が来るなんてね。ふふ、そうね。今日からこの油絵の画家について調べてみることにするわ。もしかしたら意図的にこのような絵を描いているのかもしれない。この目も当てられない絵でなにかを表現しようとしているのかもしれないですものね」
「僕もこの版画について調べてみます。ジッピンの情報なんてほとんどないでしょうが…」
「私もなにか分かったら共有するわ。…ねえウィルク」
「はい、お姉さま」
「いつか、ルアンの画廊へ行ってみたいわね」
「!行ってみたいです!!」
「誰にも内緒でこっそり行ってみましょうか」
いたずらっぽく笑うジュリアに、コクコクとウィルクが頷く。正しいことしかしようとしないジュリアがまさかこのような提案をするとは思いもしなかった。それほどまでにアーサーとモニカに会いたいんだろうな、とウィルクはクスクス笑った。姉がボソッと呟いた言葉は、ウィルクの耳には届かなかった。
「…助けて…」
異国の物に興味を持った生徒たちがぞろぞろと彼らの周りに群がってくる。女子たちは華やかなキモノと可愛らしい干菓子に心を奪われ、男子たちはカタナに夢中になった。
「ねえ見てこれぇ!!かわいいー!!」
「ほんとだぁ!!どこで買えるのこれぇ?!」
「おい、このメモ見てみろよ!」
「なになに…?"僕たちジッピンの文化品を扱う画商になりました。ルアンに画廊を建てる予定だから、よかったら遊びに来てね"…」
「え!!ルアンでこういうの買えるってこと?!」
「そういうことだよな!?」
「やだ!ママにお願いしてルアン連れて行ってもらお!」
「ルアンっつったらリーノがいるよな?」
「長期休暇にルアン行って画廊行ってリーノに会いに行こうぜ!!」
「そうしよう!」
生徒たちが盛り上がっている中、ジュリアが小さい声で呟いた。
「そう…。アーサー様とモニカ様はジッピンに行ってらっしゃったのね」
「ジッピン…。あの鎖国していた島国ですね。なぜまたそのような辺鄙な国に」
「さあ。あの方たちのすることは分からないわ」
「そうですね。それよりお姉さま見てください!この剣、とてもかっこいいです!」
「ええ、素敵ね。でも扱いが難しそうだわ」
「使いこなして見せます!よし、今日の授業はこれでやってみよう!」
「カーティス先生に怒られても知らないわよ。私はこの髪飾りが気に入ったわ。この国のものと違ってゴテゴテしていないのにゴージャスなのが好き」
「ええ。とても芸術的です」
「あら、あなたに芸術が分かるの?」
「失礼ですよお姉さま!これでもありとあらゆる教育を受けていますから!!」
「へぇ?つまり頭でっかちってことね」
「意地悪はおやめください!」
「ふふ、ごめんなさい。つい」
姉に意地悪を言われてぷんぷんと頬を膨らませながら、ウィルクは贈り物の最後のふたつを取り出した。それは小さな絵画だった。1枚はまるで適当に絵具をぶちまけたようにとりとめのないもの。もう1枚は大波と山が描かれた版画だった。
「…これは?」
ジュリアのアイテムボックスにも同じような絵画が入っていた。それを見た彼女は苦々しく笑っている。
「…あの画家たちと面識があるのは知っていたけれど…。実物を見るとまた…ひどいものね」
「あの画家?有名な画家なのでしょうか」
「ええ、ある意味有名よ。なんでも彼らの展覧会に行けば吐き気をもよおすって」
「悪い意味で有名なんじゃないですか…」
「でももう1枚の版画は素敵だわ。これもジッピンのものね。美しいわ」
「そうでしょうか…。僕には良さがさっぱり…」
「ふふ。だからあなたはだめなのよ。この良さが分からないなんてまだまだお子さまね」
「むぅ…!僕はどちらかというと油絵の方が好きですね!色彩がきれいではありませんか!」
「あらあら、悪趣味」
「ジュリアお姉さま!どちらの絵もモニカお姉さまとお兄さまが贈ってくださったものですよ!それを悪趣味なんてよく言えましたね!」
「む…。た、確かにそうだわ…。私ったら失言を…」
「きっとどちらの絵にも魅力があるに違いありません!それが分からないのは、僕たちが至らないからです」
「まさかウィルクにこんなことを言われる日が来るなんてね。ふふ、そうね。今日からこの油絵の画家について調べてみることにするわ。もしかしたら意図的にこのような絵を描いているのかもしれない。この目も当てられない絵でなにかを表現しようとしているのかもしれないですものね」
「僕もこの版画について調べてみます。ジッピンの情報なんてほとんどないでしょうが…」
「私もなにか分かったら共有するわ。…ねえウィルク」
「はい、お姉さま」
「いつか、ルアンの画廊へ行ってみたいわね」
「!行ってみたいです!!」
「誰にも内緒でこっそり行ってみましょうか」
いたずらっぽく笑うジュリアに、コクコクとウィルクが頷く。正しいことしかしようとしないジュリアがまさかこのような提案をするとは思いもしなかった。それほどまでにアーサーとモニカに会いたいんだろうな、とウィルクはクスクス笑った。姉がボソッと呟いた言葉は、ウィルクの耳には届かなかった。
「…助けて…」
14
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。