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初夏編:田舎のポントワーブ
【351話】森の魔物
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アイテムボックスの中で数えきれないほどのプラムが放り込まれた頃、とうとうピクルが疲れて地面にへたり込んだ。まだまだ元気なアンジェラとモルはそれに気付かずプラムを採っている。ピクルは信じられないという表情で二人を見上げて泣きそうな声を出した。
「どうして二人はそんなに元気なのぉ~…?わたしもうヘトヘト…」
「わ、ごめんねピクル!疲れさせちゃったの気付かなかった…!」
「大丈夫?ちょっと休憩しようか」
「うん…」
三人はその場でシートを敷いて寝転び、晴天の空を見上げてのんびりした。その時にピクルが自慢げにおいしいプラムジャムの作り方を教えてくれたので、家に帰ったら早速作ろうと決めた。代わりにモルがおいしいフレンチトーストの作り方(カフェのお兄さん直伝のレシピ)を教えると、ピクルはとても嬉しそうにメモを取っていた。
「モルってお料理もできるんだね!素敵だなあ…」
「えへへ。まだへたっぴだけどね。上手になってアンジェラを喜ばせたいんだ」
「そ、そうなんだぁ…」
「モルの料理は今でも充分おいしいよ。わたしモルの料理だいすきだもん!」
「ありがと、アンジェラ」
「わぁー…」
二人の会話を聞けば聞くほどピクルの付け入る隙がない。だが、性格が良く容姿端麗のアンジェラの方が自分よりお似合いだということは、ピクルが一番分かっていた。きゅっと締め付けられる胸の痛みをがまんして、ピクルは二人の会話に耳を傾けていた。
「ん?」
会話の途中でアンジェラが何かに反応した。モルが「どうしたの?」と尋ねると「シッ」と唇に指を当てた。アンジェラはゆっくりと起き上がり、すぐそこにある森の入り口に目を凝らした。
「…アンジェラ?なにかいるの?」
「うん。近くでカサカサって音がした。それに、うめき声みたいなのも」
「げ。魔物じゃないの?」
「そんな気がする」
二人の会話にピクルは顔を真っ青にした。
「そんな!助けを呼ばなきゃ…」
「大丈夫だよピクル。そんなに強そうな魔物じゃないから。わたし倒してくるね」
「はーい」
「えっ?!アンジェラ一人でなんて無理よ!小さい魔物でもこわいんだよ!」
「大丈夫だよ。モル、ピクルをお願いね」
「はーい」
「だめよ!危険だわ!」
ピクルが止めても、アンジェラは「大丈夫」と言ってトコトコと森へ走って行った。心配したピクルが追いかけようとしたが、モルに手を掴まれ止められてしまう。
「モル!私じゃなくてアンジェラを止めてよ!どうしてそんな涼しい顔をしてるの?!あなたのガールフレンドが死んじゃうかもしれないのよ?!」
「死なないよ。だってアンジェラだもん」
「なにを言ってるの?!あんな小柄で細い女の子になにができるのよ!」
「それが、なんでもできちゃうんだよねえ。悔しいことに」
何度説得しようとしても、モルはニコニコしながら「大丈夫」と言うだけだった。ガールフレンドをたった一人で危険な森に行かせたモルに、ピクルはとてもガッカリした。
◇◇◇
「あー、スカート気持ち悪いなあ!動きやすいけどさ」
森の中へ入ったアーサーは、女装に対してブツブツ文句を言いながらアイテムボックスから剣を取り出した。森の中では虫型の魔物がうじゃうじゃとうごめいていた。他にも低級魔物がうろうろしており、アーサーが思っていたよりも魔物の数が多くて驚いた。
「…こんな森の近くで住んでるなんて。よく今まで大きな被害に遭わなかったもんだ」
モニカがいないと大量に発生した魔物を処理するにはかなりの時間がかかる。一緒に来てもらえばよかったなあと後悔しながら、アーサーは地道に低級魔物を倒していった。カトリナにもらった靴がどす黒い血に染まり、黄色いワンピースに返り血が飛ぶ。あとで怒られちゃうなあと、アーサーは魔物を倒しながら言い訳を考えた。
「グルルル…ッ」
「!」
プラム園で微かに聞こえたうめき声がまた聞こえ、アーサーは顔を上げた。木の陰から覗くギラついた瞳と目が合い、アーサーは剣を構えた。…だが、うめき声はそこからだけではなかった。
「グルゥウ…」
「ガルゥ…グル…」
「…しまった。囲まれてる」
アーサーがボーっと低級魔物を倒しているうちに、狼の姿に似た魔物がアーサーを取り囲んでいた。一匹がアーサーに襲い掛かると、残りの魔物も続いてアーサーに飛び掛かる。4,5匹は掴まれる前に倒せたが、数が多すぎて体中に噛みつかれてしまう。露出の多い服装をしていたので魔物の牙が直接肌に食い込んだ。
「っ…、くそっ!」
アーサーは痛みに耐えながら一匹ずつ魔物の息の根を止めていく。だが、倒しても倒しても次々と襲い掛かってきて一向に数が減らない。
「あっ!待て!そっち行っちゃだめ!」
苦戦していると、数匹の魔物が森の外へ飛び出した。走って行った方向にはモニカとピクルがいる。助けに行こうにも今のアーサーでは動けない。苛立ちだしたアーサーは、自分の肉ごと魔物の頭を引きちぎった。
「モニカ…!僕が行くまでピクルを頼むよ!」
◇◇◇
(…アーサー、遅いわね。森の奥で何かあったんじゃ…)
ムスッとしているピクルのそばで、モニカはちらりと森に目をやった。モニカの聴覚では森の奥で蠢いている魔物のうめき声が聞こえない。だが、あまりにもアーサーの帰りが遅すぎる。
「…!!」
モニカの目に森から疾走してくる魔物が5匹映った。あまりに移動速度が速く、あっという間にピクルの背後に迫っている。モニカは慌ててピクルを抱き寄せ、魔物に背中を向けた。
「っ…!」
魔物の牙がモニカの背中や腕に食い込む。突然のことにポカンとしていたピクルは、モルの腕を噛んでいる魔物に気付いてガタガタと震えた。
「あ…あ…モル…っ!」
「ピクル、怪我はない?」
「わたしは大丈夫だけど…モルが…!」
「僕は大丈夫。…もう、びっくりしすぎて魔法を出す余裕なかったじゃない」
「まほう…?」
モルは、はぁとため息をついてからイライラした声色で歌を歌った。その歌声に合わせて指をひょいと振ると、モルを襲っていた魔物が燃え上がり一瞬にして灰になった。
「?!?!」
「あつっ!あつぅっ!!わーん、せっかくカトリナにもらった服が焦げちゃったじゃない!…ピクル、もう大丈夫だよ。魔物は僕が倒したから」
「????」
モルはそう言ってピクルの頭を撫でたあと、さきほどと違う歌を歌った。すると魔物に噛まれてついた傷口があっという間に塞がった。目の前の出来事に驚きすぎて、ピクルはモルが女の子の言葉使いをしていたことに気付かなかった。
「ピクル?大丈夫?」
「っ!」
呆然としているピクルを心配して、モルは彼女の顎に指を添えて顔を覗き込んだ。端正な顔立ちの男の子の顔がくっつきそうなほど近く、ピクルは顔を真っ赤にしてコクコク頷いた。
(~~~!!なんなのこの子…!かっこよくて、すごい魔法を使えるなんて…!魔法なんてはじめて見た!!それに…身を挺してわたしを守ってくれるなんて…!かっこいい!!すごいよぉ!!やだ…ドキドキして心臓がばくはつしちゃうよぉぉ…!!!)
「ピクル?顔が赤いよ?」
「だだだ大丈夫だからそれ以上顔を近づけないでくれる?!死んじゃう!!」
「えっ、死んじゃうの?!回復魔法を…」
「ううん!死なない!死なないから離れてぇ!」
「あ、う、うん。ごめんね…?」
「…二人とも、なにしてるの?」
「ひっ?!」
背後で低い声が聞こえ、ピクルは体をビクつかせた。おそるおそる振り返ると、血だらけでげっそりしたアンジェラが立っている。ピクルはまたもや顔を真っ青にして慌てふためいた。
「きゃぁぁ!!アンジェラが!!アンジェラが死んじゃうぅぅ!!」
「大丈夫だよ。魔物に噛まれただけだから。モニ…モル。回復してくれる?」
「はーい」
傷だらけのアーサーに慣れているモニカにとって、今のアーサーはちょっと擦り傷を負って帰ってきたくらいの感覚でしかなかった。内臓を損傷していなければ骨も折れておらず、毒にもおかされていない傷は回復魔法で瞬時に治すことができた。(ケロっとしている二人を見てピクルは唖然としていた)
「アンジェラ?森の中、そんなに魔物が多かったの?」
「うん。ピクル、このあたり、本当にそんな魔物が出てこないの?」
「うん。ちょいちょい小さい魔物が出てくるだけよ。森の中にそんなにいっぱい魔物がいるなんて知らなかった」
「…モル、これカミ…お父さんたちに相談した方がいいかもね」
「そうだね。帰ったら報告しよう」
「決まり」
「…あなたたち何者なの?普通の子じゃないよね?」
「え?!」
「普通の子だよ?!」
「うん!いたって普通!!」
「普通の子たちは魔物に襲われて返り討ちにしたり、傷だらけになっても平然となんてしてないわ…」
「…普通だよ」
「わたしたち、学院で魔法とか武術を習ってたの。だからだよ」
「…そう…。都会の子って、すごいのね」
アンジェラとモルの服が血だらけのボロボロになってしまったので、その日は家に帰ることにした。家に帰ってきた彼らを見てマイセンさんはカミーユたちに平謝りし、カミーユたちは呆れたようにため息をついていた。
「マイセンさん。お気になさらないでください。うちの子たちはいつもこうなんです」
「ええ。少し目を離すとこんな感じで帰ってくるんですよ」
「いえ、しかし…」
「むしろ、ピクルちゃんを危険な目にあわせてしまったかもしれません。ピクルちゃん、怪我はない?」
ジルが尋ねると、ピクルはモルのうしろに隠れながらコクコクと頷いた。
「良かった。怖い思いはしなかった?」
「……」
「…したんだね。アンジェラ、モル。あとで話があるからね。分かってるよね」
「ひぅ…」
「は、はいぃ…」
「プププ…。ま、まったく、アンジェラとモルったら…ほんと、おてんばなんだから」
リアーナが必死にリナを演じようとするものの、笑いをこらえきれていない。テーブルの下でカミーユ、カトリナ、ジルの3人に足を蹴られて「ヒゥッ」と妙な声をあげてやっと沈黙した。
マイセンさんとピクルが帰ったあと、アーサーとモニカがカミーユたちに散々お説教されたのは言うまでもない。
「どうして二人はそんなに元気なのぉ~…?わたしもうヘトヘト…」
「わ、ごめんねピクル!疲れさせちゃったの気付かなかった…!」
「大丈夫?ちょっと休憩しようか」
「うん…」
三人はその場でシートを敷いて寝転び、晴天の空を見上げてのんびりした。その時にピクルが自慢げにおいしいプラムジャムの作り方を教えてくれたので、家に帰ったら早速作ろうと決めた。代わりにモルがおいしいフレンチトーストの作り方(カフェのお兄さん直伝のレシピ)を教えると、ピクルはとても嬉しそうにメモを取っていた。
「モルってお料理もできるんだね!素敵だなあ…」
「えへへ。まだへたっぴだけどね。上手になってアンジェラを喜ばせたいんだ」
「そ、そうなんだぁ…」
「モルの料理は今でも充分おいしいよ。わたしモルの料理だいすきだもん!」
「ありがと、アンジェラ」
「わぁー…」
二人の会話を聞けば聞くほどピクルの付け入る隙がない。だが、性格が良く容姿端麗のアンジェラの方が自分よりお似合いだということは、ピクルが一番分かっていた。きゅっと締め付けられる胸の痛みをがまんして、ピクルは二人の会話に耳を傾けていた。
「ん?」
会話の途中でアンジェラが何かに反応した。モルが「どうしたの?」と尋ねると「シッ」と唇に指を当てた。アンジェラはゆっくりと起き上がり、すぐそこにある森の入り口に目を凝らした。
「…アンジェラ?なにかいるの?」
「うん。近くでカサカサって音がした。それに、うめき声みたいなのも」
「げ。魔物じゃないの?」
「そんな気がする」
二人の会話にピクルは顔を真っ青にした。
「そんな!助けを呼ばなきゃ…」
「大丈夫だよピクル。そんなに強そうな魔物じゃないから。わたし倒してくるね」
「はーい」
「えっ?!アンジェラ一人でなんて無理よ!小さい魔物でもこわいんだよ!」
「大丈夫だよ。モル、ピクルをお願いね」
「はーい」
「だめよ!危険だわ!」
ピクルが止めても、アンジェラは「大丈夫」と言ってトコトコと森へ走って行った。心配したピクルが追いかけようとしたが、モルに手を掴まれ止められてしまう。
「モル!私じゃなくてアンジェラを止めてよ!どうしてそんな涼しい顔をしてるの?!あなたのガールフレンドが死んじゃうかもしれないのよ?!」
「死なないよ。だってアンジェラだもん」
「なにを言ってるの?!あんな小柄で細い女の子になにができるのよ!」
「それが、なんでもできちゃうんだよねえ。悔しいことに」
何度説得しようとしても、モルはニコニコしながら「大丈夫」と言うだけだった。ガールフレンドをたった一人で危険な森に行かせたモルに、ピクルはとてもガッカリした。
◇◇◇
「あー、スカート気持ち悪いなあ!動きやすいけどさ」
森の中へ入ったアーサーは、女装に対してブツブツ文句を言いながらアイテムボックスから剣を取り出した。森の中では虫型の魔物がうじゃうじゃとうごめいていた。他にも低級魔物がうろうろしており、アーサーが思っていたよりも魔物の数が多くて驚いた。
「…こんな森の近くで住んでるなんて。よく今まで大きな被害に遭わなかったもんだ」
モニカがいないと大量に発生した魔物を処理するにはかなりの時間がかかる。一緒に来てもらえばよかったなあと後悔しながら、アーサーは地道に低級魔物を倒していった。カトリナにもらった靴がどす黒い血に染まり、黄色いワンピースに返り血が飛ぶ。あとで怒られちゃうなあと、アーサーは魔物を倒しながら言い訳を考えた。
「グルルル…ッ」
「!」
プラム園で微かに聞こえたうめき声がまた聞こえ、アーサーは顔を上げた。木の陰から覗くギラついた瞳と目が合い、アーサーは剣を構えた。…だが、うめき声はそこからだけではなかった。
「グルゥウ…」
「ガルゥ…グル…」
「…しまった。囲まれてる」
アーサーがボーっと低級魔物を倒しているうちに、狼の姿に似た魔物がアーサーを取り囲んでいた。一匹がアーサーに襲い掛かると、残りの魔物も続いてアーサーに飛び掛かる。4,5匹は掴まれる前に倒せたが、数が多すぎて体中に噛みつかれてしまう。露出の多い服装をしていたので魔物の牙が直接肌に食い込んだ。
「っ…、くそっ!」
アーサーは痛みに耐えながら一匹ずつ魔物の息の根を止めていく。だが、倒しても倒しても次々と襲い掛かってきて一向に数が減らない。
「あっ!待て!そっち行っちゃだめ!」
苦戦していると、数匹の魔物が森の外へ飛び出した。走って行った方向にはモニカとピクルがいる。助けに行こうにも今のアーサーでは動けない。苛立ちだしたアーサーは、自分の肉ごと魔物の頭を引きちぎった。
「モニカ…!僕が行くまでピクルを頼むよ!」
◇◇◇
(…アーサー、遅いわね。森の奥で何かあったんじゃ…)
ムスッとしているピクルのそばで、モニカはちらりと森に目をやった。モニカの聴覚では森の奥で蠢いている魔物のうめき声が聞こえない。だが、あまりにもアーサーの帰りが遅すぎる。
「…!!」
モニカの目に森から疾走してくる魔物が5匹映った。あまりに移動速度が速く、あっという間にピクルの背後に迫っている。モニカは慌ててピクルを抱き寄せ、魔物に背中を向けた。
「っ…!」
魔物の牙がモニカの背中や腕に食い込む。突然のことにポカンとしていたピクルは、モルの腕を噛んでいる魔物に気付いてガタガタと震えた。
「あ…あ…モル…っ!」
「ピクル、怪我はない?」
「わたしは大丈夫だけど…モルが…!」
「僕は大丈夫。…もう、びっくりしすぎて魔法を出す余裕なかったじゃない」
「まほう…?」
モルは、はぁとため息をついてからイライラした声色で歌を歌った。その歌声に合わせて指をひょいと振ると、モルを襲っていた魔物が燃え上がり一瞬にして灰になった。
「?!?!」
「あつっ!あつぅっ!!わーん、せっかくカトリナにもらった服が焦げちゃったじゃない!…ピクル、もう大丈夫だよ。魔物は僕が倒したから」
「????」
モルはそう言ってピクルの頭を撫でたあと、さきほどと違う歌を歌った。すると魔物に噛まれてついた傷口があっという間に塞がった。目の前の出来事に驚きすぎて、ピクルはモルが女の子の言葉使いをしていたことに気付かなかった。
「ピクル?大丈夫?」
「っ!」
呆然としているピクルを心配して、モルは彼女の顎に指を添えて顔を覗き込んだ。端正な顔立ちの男の子の顔がくっつきそうなほど近く、ピクルは顔を真っ赤にしてコクコク頷いた。
(~~~!!なんなのこの子…!かっこよくて、すごい魔法を使えるなんて…!魔法なんてはじめて見た!!それに…身を挺してわたしを守ってくれるなんて…!かっこいい!!すごいよぉ!!やだ…ドキドキして心臓がばくはつしちゃうよぉぉ…!!!)
「ピクル?顔が赤いよ?」
「だだだ大丈夫だからそれ以上顔を近づけないでくれる?!死んじゃう!!」
「えっ、死んじゃうの?!回復魔法を…」
「ううん!死なない!死なないから離れてぇ!」
「あ、う、うん。ごめんね…?」
「…二人とも、なにしてるの?」
「ひっ?!」
背後で低い声が聞こえ、ピクルは体をビクつかせた。おそるおそる振り返ると、血だらけでげっそりしたアンジェラが立っている。ピクルはまたもや顔を真っ青にして慌てふためいた。
「きゃぁぁ!!アンジェラが!!アンジェラが死んじゃうぅぅ!!」
「大丈夫だよ。魔物に噛まれただけだから。モニ…モル。回復してくれる?」
「はーい」
傷だらけのアーサーに慣れているモニカにとって、今のアーサーはちょっと擦り傷を負って帰ってきたくらいの感覚でしかなかった。内臓を損傷していなければ骨も折れておらず、毒にもおかされていない傷は回復魔法で瞬時に治すことができた。(ケロっとしている二人を見てピクルは唖然としていた)
「アンジェラ?森の中、そんなに魔物が多かったの?」
「うん。ピクル、このあたり、本当にそんな魔物が出てこないの?」
「うん。ちょいちょい小さい魔物が出てくるだけよ。森の中にそんなにいっぱい魔物がいるなんて知らなかった」
「…モル、これカミ…お父さんたちに相談した方がいいかもね」
「そうだね。帰ったら報告しよう」
「決まり」
「…あなたたち何者なの?普通の子じゃないよね?」
「え?!」
「普通の子だよ?!」
「うん!いたって普通!!」
「普通の子たちは魔物に襲われて返り討ちにしたり、傷だらけになっても平然となんてしてないわ…」
「…普通だよ」
「わたしたち、学院で魔法とか武術を習ってたの。だからだよ」
「…そう…。都会の子って、すごいのね」
アンジェラとモルの服が血だらけのボロボロになってしまったので、その日は家に帰ることにした。家に帰ってきた彼らを見てマイセンさんはカミーユたちに平謝りし、カミーユたちは呆れたようにため息をついていた。
「マイセンさん。お気になさらないでください。うちの子たちはいつもこうなんです」
「ええ。少し目を離すとこんな感じで帰ってくるんですよ」
「いえ、しかし…」
「むしろ、ピクルちゃんを危険な目にあわせてしまったかもしれません。ピクルちゃん、怪我はない?」
ジルが尋ねると、ピクルはモルのうしろに隠れながらコクコクと頷いた。
「良かった。怖い思いはしなかった?」
「……」
「…したんだね。アンジェラ、モル。あとで話があるからね。分かってるよね」
「ひぅ…」
「は、はいぃ…」
「プププ…。ま、まったく、アンジェラとモルったら…ほんと、おてんばなんだから」
リアーナが必死にリナを演じようとするものの、笑いをこらえきれていない。テーブルの下でカミーユ、カトリナ、ジルの3人に足を蹴られて「ヒゥッ」と妙な声をあげてやっと沈黙した。
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