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初夏編:一家でトロワ訪問
【378話】ありがとうございます
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「アビーーーー!!」
「モニカーーーー!!!」
キャネモに挨拶をして、キャネモが満足するまでアビーがダンスに付き合ったあと、リングイール一家は貧困層を訪れた。児童養護施設に入ると、双子の訪問に大喜びの子どもたちが駆け寄ってきて飛びついた。さきほどまで外で遊んでいたのか子どもたちは土や泥まみれだった。真新しい服が汚れてもまったく嫌がる素振りをせず、双子は子どもたちを抱き返した。
「あぁぁ…!こら子どもたちっ!手を洗って服を着替えてきなさい!アビーとモニカの服が汚れちまうだろう!」
双子の身に付けている服が高級だと分かっている大人たちは顔を青くしながら子どもたちに注意した。それに対してカトリナは、クスクス笑いながら首を振る。
「気になさらないでくださいな。服は洗えばいいだけですから。あの子たちも喜んでいることですし、どうかこのまま」
「おや?あなたは…?」
息を飲むほど美しいカトリナとジルに、トロワの大人たちはたじろいだ。見るからにトロワの住民ではない、階級が高い貴族だと分かった。リングイール夫妻は洗練された所作で挨拶をする。
「失礼いたしました。私はリングイール家当主、ジルと申します。こちらは妻のカトリナ。アビーとモニカの両親です」
「いつも娘がお世話になっておりますわ」
「なっ、なっ、なっ」
アビーとモニカの両親と聞き、驚きのあまり大人たちは言葉を失った。俺ぁ貴族のことなんか分からねえがきっとこの方たちはすげぇ貴族にちがいねぇ、だってこんなに綺麗なんだから。アビーとモニカはそんなすげぇ子たちだったのかよおい、とコソコソと話している声がカトリナとジルにははっきり聞こえている。聞こえないふりをして微笑みを浮かべていると、先ほど子どもたちに注意した女性がバッと勢いよく頭を下げた。床にはポタポタと涙が落ちている。カトリナとジルが驚いていると、女性は震える声を絞り出した。
「ありがとうございます。ありがとうございます。アビーとモニカのおかげで私たちはこんなに幸せに暮らせています。いくらお礼を言ったって足りません。あたしたちにはなんにも渡せるものがありません。お礼を言うしかできません。ごめんなさい。ごめんなさい」
その言葉を聞いたトロワの大人たちは、ブワッと涙を溢れさせ次々とカトリナとジルに頭を下げた。
「トロワはそれはもうひでぇとこだった。それをアビーとモニカがこんなに、こんなに良い町に変えてくれました。ありがとうございます」
「私はここで生まれ、ここで育ち、ここで子を産みました。一度だって笑ったことはなかった。早く死にたかった。私のこどもはもう飢え死んでここにはいません。でもそのときは、それが普通のことだって、しかたないことだって思ってました。一滴の涙も落ちなかったんです。むしろここで飢え苦しみながら生きるより早く死ねて良かったのかもしれないとすら思っていたんです。でも、アビーとモニカがここを変えてくれて、わたしはやっと泣けました。こうして元気に過ごしている子どもたちを見て、私の子どもも長生きしてほしかったって思いました。私も、生きてて良かったって思いました」
「はらいっぱいメシを食えるようになって余裕ができました。今までは、人がメシを食ってるところを見たらはらがたってた。羨ましくて気が狂いそうだった。でも、今はそうじゃないです。子どもたちがうまそうにメシを食うのを見てると、胸がぽわぽわってあたたかくなります。そう思えるようにしてくれたのは、アビーとモニカです」
少女二人には言えなかった感謝の言葉や辛かった過去を、トロワの大人たちは夫妻に伝えた。一度口を開いてしまうと止めることはできず、彼らはおんおん泣きながら話し続けた。カトリナとジルは優しい笑みを浮かべ、一人一人の話に丁寧に耳を傾ける。いたわりのことばやはげましのことばをかけ、背中を優しく撫でた。
大人たちが泣き出したので、アビーとモニカ、またトロワの子どもたちも心配そうに彼らに視線を送っていた。視線に気付いたジルとカトリナは、双子に「大丈夫だよ。しばらく泣かせてあげて」と唇だけを動かし伝えた。双子はこくりと頷き、トロワの子どもたちを食堂へ連れて行った。
「モニカーーーー!!!」
キャネモに挨拶をして、キャネモが満足するまでアビーがダンスに付き合ったあと、リングイール一家は貧困層を訪れた。児童養護施設に入ると、双子の訪問に大喜びの子どもたちが駆け寄ってきて飛びついた。さきほどまで外で遊んでいたのか子どもたちは土や泥まみれだった。真新しい服が汚れてもまったく嫌がる素振りをせず、双子は子どもたちを抱き返した。
「あぁぁ…!こら子どもたちっ!手を洗って服を着替えてきなさい!アビーとモニカの服が汚れちまうだろう!」
双子の身に付けている服が高級だと分かっている大人たちは顔を青くしながら子どもたちに注意した。それに対してカトリナは、クスクス笑いながら首を振る。
「気になさらないでくださいな。服は洗えばいいだけですから。あの子たちも喜んでいることですし、どうかこのまま」
「おや?あなたは…?」
息を飲むほど美しいカトリナとジルに、トロワの大人たちはたじろいだ。見るからにトロワの住民ではない、階級が高い貴族だと分かった。リングイール夫妻は洗練された所作で挨拶をする。
「失礼いたしました。私はリングイール家当主、ジルと申します。こちらは妻のカトリナ。アビーとモニカの両親です」
「いつも娘がお世話になっておりますわ」
「なっ、なっ、なっ」
アビーとモニカの両親と聞き、驚きのあまり大人たちは言葉を失った。俺ぁ貴族のことなんか分からねえがきっとこの方たちはすげぇ貴族にちがいねぇ、だってこんなに綺麗なんだから。アビーとモニカはそんなすげぇ子たちだったのかよおい、とコソコソと話している声がカトリナとジルにははっきり聞こえている。聞こえないふりをして微笑みを浮かべていると、先ほど子どもたちに注意した女性がバッと勢いよく頭を下げた。床にはポタポタと涙が落ちている。カトリナとジルが驚いていると、女性は震える声を絞り出した。
「ありがとうございます。ありがとうございます。アビーとモニカのおかげで私たちはこんなに幸せに暮らせています。いくらお礼を言ったって足りません。あたしたちにはなんにも渡せるものがありません。お礼を言うしかできません。ごめんなさい。ごめんなさい」
その言葉を聞いたトロワの大人たちは、ブワッと涙を溢れさせ次々とカトリナとジルに頭を下げた。
「トロワはそれはもうひでぇとこだった。それをアビーとモニカがこんなに、こんなに良い町に変えてくれました。ありがとうございます」
「私はここで生まれ、ここで育ち、ここで子を産みました。一度だって笑ったことはなかった。早く死にたかった。私のこどもはもう飢え死んでここにはいません。でもそのときは、それが普通のことだって、しかたないことだって思ってました。一滴の涙も落ちなかったんです。むしろここで飢え苦しみながら生きるより早く死ねて良かったのかもしれないとすら思っていたんです。でも、アビーとモニカがここを変えてくれて、わたしはやっと泣けました。こうして元気に過ごしている子どもたちを見て、私の子どもも長生きしてほしかったって思いました。私も、生きてて良かったって思いました」
「はらいっぱいメシを食えるようになって余裕ができました。今までは、人がメシを食ってるところを見たらはらがたってた。羨ましくて気が狂いそうだった。でも、今はそうじゃないです。子どもたちがうまそうにメシを食うのを見てると、胸がぽわぽわってあたたかくなります。そう思えるようにしてくれたのは、アビーとモニカです」
少女二人には言えなかった感謝の言葉や辛かった過去を、トロワの大人たちは夫妻に伝えた。一度口を開いてしまうと止めることはできず、彼らはおんおん泣きながら話し続けた。カトリナとジルは優しい笑みを浮かべ、一人一人の話に丁寧に耳を傾ける。いたわりのことばやはげましのことばをかけ、背中を優しく撫でた。
大人たちが泣き出したので、アビーとモニカ、またトロワの子どもたちも心配そうに彼らに視線を送っていた。視線に気付いたジルとカトリナは、双子に「大丈夫だよ。しばらく泣かせてあげて」と唇だけを動かし伝えた。双子はこくりと頷き、トロワの子どもたちを食堂へ連れて行った。
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