634 / 718
決戦編:カトリナ
炎の中の輝き※※
しおりを挟む
---------------------------------
※注意※
※この話はかなりショッキングな描写があります※
※15歳未満の方、グロが苦手な方は、飛ばしてください※
---------------------------------
「え……」
バーンスタイン家に戻ったサンプソンは、ドアが開け放たれた自室に立ちすくんだ。
真っ暗な部屋に灯りをともす。部屋の中には、誰もいない。
「マデリア……?」
サンプソンはあたりを見回した。押し倒された家具。割れた窓。
「ムル……?」
割れたグラスに、床に落ちた食料。
そして、血痕。
「っ……」
血の気の引いた顔でサンプソンが走り出す。向かう先はもちろん、地下の隠し部屋。
「あぁぁぁぁぁっ!! あぁぁっ、あぁぁぁぁ!!」
「ケヘヘヘヘ!! どうだい魔物の眼球はぁ! よく見えるだろう!? 人間の目じゃあ見えないものもしっかりとぉぉっ! ケヘッ! ケヘヘェ!!」
前にも見た光景が、またサンプソンの目の前に広がっていた。
鎖に繋がれたマデリアに魔術師が覆いかぶさっている。
床には魔物とマデリアの血、そして――
息絶えた、ムルが横たわっていた。
「う……うわぁあぁぁぁぁ!!!!!」
サンプソンは絶叫し、魔術師に襲い掛かった。
「なんだい、まぁたあんたかい! 全く! あんたのせいで最高の素材は奪われるし、次の素材も奪われるしで散々だったよ!! でもまあ、家を空けてくれたおかげでこうして実験ができたけどねえ! ケヘヘヘヘ!!」
「マデリアに何をしたああああ! ムルに……ムルになにをしたんだああああ!!」
「んん? 見たら分かるだろうさ。この床に寝っ転がってるのには、ドラゴンの足にしてやろうと思って足を切り落としたんだよお。そしたら痛みで死んじまった。この素材はハズレだったよぉ」
残念残念、と魔術師はため息を吐いたが、すぐにおぞましい笑顔になった。
「それでこっちには、目玉をほじくりだして魔物の眼球に取り換えてやったのさあ。やっぱりこの素材はいいねえ。目玉をほじくりだしても、顔の皮を剥いでも、元気に可愛い叫び声を聞かせてくれるんだよぉ」
「やめろぉぉぉ!! 今すぐ! 今すぐマデリアとムルを返せぇぇぇ!!」
「んもう全く。これでタイムリミットかい。それなら、こんなダメ素材に時間とってないでこっちの素材をいじくりまわせば良かったよぉ……」
魔術師は手をひらひらと振り、奥の部屋に歩いて行った。
サンプソンは泣き叫びながらマデリアとムルを抱え、自室に戻る。
「ごめん……ごめん……! あああ……どうしよう、どうしたら……!」
「サン……プソン……」
「マデリア……! ごめん……ごめん……!」
「落ち……着いて……。私は……大丈夫……。杖、を……」
マデリアが杖を振ると、ムルの切断された足に徐々に肉が巻いていく。
「マデリア……?」
「回復魔法……もっと練習しておけばよかった……私じゃ……血を止めるので精一杯……。サンプソン……ポーションは持っていない……?」
「……」
「ポーション飲んだら……ムル……元気になるよね……?」
「マデリア……ムルは……」
「わ、私の足を、ムルにあげるから……。そ、そうだ。あの魔術師に頼もう……そしたら、綺麗にくっつけてくれるだろうし……」
「マデリア、聞いて。ムルはね……」
「血が足りない? だったら私の血を……。大丈夫、私って何されても死なないみたいだから、いっぱい血を抜かれたって大丈夫なの……。だから、ムルに血を……」
サンプソンは唇を噛み、マデリアの杖をムルではなく彼女自身に向けさせる。
「サンプソン、ちょっとやめて。今ムルを治してるんだから……」
「マデリア。先に君自身を治そう……。君だって、顔半分が血だらけだし、目なんて……」
「私はいいの。先にムルを……」
「ム、ムルはもう大丈夫だから。僕がポーションを飲ませておくから。そしたら元気になるよ。だから、君は自分で治してくれるかな……」
「……分かった」
自身に回復魔法をかけるマデリアは、体力と魔力の限界を迎え、いつしか気を失っていた。
翌朝目を覚ました彼女は、サンプソンに抱きしめられているムルが息をしていないことに気付き、嘘つきと彼を罵った。
そして二人はムルの亡骸に顔をうずめ、涙が枯れるまで彼の死を悼んだ。
「さっきはごめんなさい」
「……なにがだい?」
「本当は知っていたの。元からムルが死んでいたこと」
「……うん」
「それなのに、嘘つきなんていってごめんなさい」
「嘘をついたことに変わりはないよ」
サンプソンはゆっくりと立ち上がり、暖炉の前でポケットに手を差し込んだ。
取り出したのは、カトリナに渡すはずだった婚約指輪。
彼はそれを両手で包み込み、唇を添える。
「カトリナ……。愛しているよ。ずっと」
でも、さようなら。
炎の中でも、ダイアモンドはキラキラと輝いていた。
「君よりも……守らなきゃいけないものが、できてしまった」
※注意※
※この話はかなりショッキングな描写があります※
※15歳未満の方、グロが苦手な方は、飛ばしてください※
---------------------------------
「え……」
バーンスタイン家に戻ったサンプソンは、ドアが開け放たれた自室に立ちすくんだ。
真っ暗な部屋に灯りをともす。部屋の中には、誰もいない。
「マデリア……?」
サンプソンはあたりを見回した。押し倒された家具。割れた窓。
「ムル……?」
割れたグラスに、床に落ちた食料。
そして、血痕。
「っ……」
血の気の引いた顔でサンプソンが走り出す。向かう先はもちろん、地下の隠し部屋。
「あぁぁぁぁぁっ!! あぁぁっ、あぁぁぁぁ!!」
「ケヘヘヘヘ!! どうだい魔物の眼球はぁ! よく見えるだろう!? 人間の目じゃあ見えないものもしっかりとぉぉっ! ケヘッ! ケヘヘェ!!」
前にも見た光景が、またサンプソンの目の前に広がっていた。
鎖に繋がれたマデリアに魔術師が覆いかぶさっている。
床には魔物とマデリアの血、そして――
息絶えた、ムルが横たわっていた。
「う……うわぁあぁぁぁぁ!!!!!」
サンプソンは絶叫し、魔術師に襲い掛かった。
「なんだい、まぁたあんたかい! 全く! あんたのせいで最高の素材は奪われるし、次の素材も奪われるしで散々だったよ!! でもまあ、家を空けてくれたおかげでこうして実験ができたけどねえ! ケヘヘヘヘ!!」
「マデリアに何をしたああああ! ムルに……ムルになにをしたんだああああ!!」
「んん? 見たら分かるだろうさ。この床に寝っ転がってるのには、ドラゴンの足にしてやろうと思って足を切り落としたんだよお。そしたら痛みで死んじまった。この素材はハズレだったよぉ」
残念残念、と魔術師はため息を吐いたが、すぐにおぞましい笑顔になった。
「それでこっちには、目玉をほじくりだして魔物の眼球に取り換えてやったのさあ。やっぱりこの素材はいいねえ。目玉をほじくりだしても、顔の皮を剥いでも、元気に可愛い叫び声を聞かせてくれるんだよぉ」
「やめろぉぉぉ!! 今すぐ! 今すぐマデリアとムルを返せぇぇぇ!!」
「んもう全く。これでタイムリミットかい。それなら、こんなダメ素材に時間とってないでこっちの素材をいじくりまわせば良かったよぉ……」
魔術師は手をひらひらと振り、奥の部屋に歩いて行った。
サンプソンは泣き叫びながらマデリアとムルを抱え、自室に戻る。
「ごめん……ごめん……! あああ……どうしよう、どうしたら……!」
「サン……プソン……」
「マデリア……! ごめん……ごめん……!」
「落ち……着いて……。私は……大丈夫……。杖、を……」
マデリアが杖を振ると、ムルの切断された足に徐々に肉が巻いていく。
「マデリア……?」
「回復魔法……もっと練習しておけばよかった……私じゃ……血を止めるので精一杯……。サンプソン……ポーションは持っていない……?」
「……」
「ポーション飲んだら……ムル……元気になるよね……?」
「マデリア……ムルは……」
「わ、私の足を、ムルにあげるから……。そ、そうだ。あの魔術師に頼もう……そしたら、綺麗にくっつけてくれるだろうし……」
「マデリア、聞いて。ムルはね……」
「血が足りない? だったら私の血を……。大丈夫、私って何されても死なないみたいだから、いっぱい血を抜かれたって大丈夫なの……。だから、ムルに血を……」
サンプソンは唇を噛み、マデリアの杖をムルではなく彼女自身に向けさせる。
「サンプソン、ちょっとやめて。今ムルを治してるんだから……」
「マデリア。先に君自身を治そう……。君だって、顔半分が血だらけだし、目なんて……」
「私はいいの。先にムルを……」
「ム、ムルはもう大丈夫だから。僕がポーションを飲ませておくから。そしたら元気になるよ。だから、君は自分で治してくれるかな……」
「……分かった」
自身に回復魔法をかけるマデリアは、体力と魔力の限界を迎え、いつしか気を失っていた。
翌朝目を覚ました彼女は、サンプソンに抱きしめられているムルが息をしていないことに気付き、嘘つきと彼を罵った。
そして二人はムルの亡骸に顔をうずめ、涙が枯れるまで彼の死を悼んだ。
「さっきはごめんなさい」
「……なにがだい?」
「本当は知っていたの。元からムルが死んでいたこと」
「……うん」
「それなのに、嘘つきなんていってごめんなさい」
「嘘をついたことに変わりはないよ」
サンプソンはゆっくりと立ち上がり、暖炉の前でポケットに手を差し込んだ。
取り出したのは、カトリナに渡すはずだった婚約指輪。
彼はそれを両手で包み込み、唇を添える。
「カトリナ……。愛しているよ。ずっと」
でも、さようなら。
炎の中でも、ダイアモンドはキラキラと輝いていた。
「君よりも……守らなきゃいけないものが、できてしまった」
23
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ボンクラ王子の側近を任されました
里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」
王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。
人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。
そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。
義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。
王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。