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決戦編:裏S級との戦い
クルド・スパークル
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心臓をふたつ潰されても、シルヴェストルの攻撃は衰えない。クルドでさえ、シルヴェストルの攻撃を受けたら吹き飛ばされる。その上動きが素早いので、攻撃がほとんど当たらない。
せっかくウスユキが治癒してくれた体もみるみるうちに傷が増え、体力も削られていく。
クルドは舌打ちをして呟いた。
「チッ……! こんなにすばしっこかったらこっちの体力削られて全滅だ……! そのくらいなら……!」
クルドはカミーユと応戦しているシルヴェストルの背後を取り、羽交い絞めにした。
「カミーユ!! 俺ごとやれ!!」
「は!? お前何言ってんだ!? そんなことするわけ――」
「さっさとしろ!! このままじゃラチがあかねえ!! 心臓ひとつでいい! 刺せ!」
「できるわけ……っ」
動きを封じられたシルヴェストルが唸る。クルドの手に噛みつき、グチャグチャと音を立て食いちぎる。それでもクルドは動じない。
次にシルヴェストルが肘鉄砲を食らわせた。それだけでクルドの内臓がぐちゃぐちゃになったが、クルドはシルヴェストルを離さない。
「おい……はやくしろ……っ! 俺に無駄死にさせる気か……っ!」
「くそっ……」
カミーユは唇を噛み、大剣を構えた。彼らしくもなく大剣がブルブルと震えている。
クルドはそれを見てヘッと笑った。
「なんだよカミーユ……。こええのか……?」
「ああ、こええよ……。お前ってやつはほんと、ひでぇことをさせる……っ」
「悪いなあ……こんなこと任せられんの、お前しかいねえんだ……。汚れ仕事は……リーダーがやるものだろ……?」
「ああ……そうだな……」
カミーユは深く息を吸い、唾を呑み込んだ。
「クルド……。今までありがとうな……。お前と同じ世代にS級冒険者になれたこと、誇りに思う」
「俺もだカミーユ……。お前ほど立派なS級はいねえ……俺の次にな……」
「ヘッ……ちげえねえ」
「カミーユ……お前と飲んだ酒が……一番美味かった……」
「そんなこと……最期に言うんじゃねえよ……っ」
やりたくなくなんだろうが、と、か細い声で呟き、カミーユは剣を振り上げた。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
「カミーユ……ダフによろしくな……」
シルヴェストルとクルドの体に、カミーユの大剣がのめりこむ。ふたつの体は真っ二つに切り裂かれ、地面に倒れた。
カミーユは崩れ落ち、息絶えたクルドに縋り付く。獣の雄たけびのような泣き叫ぶ声。他の冒険者たちも、肩を震わせ、涙を流した。
クルド・スパークル。二十歳という若さでS級冒険者に上り詰めた、バンスティン国の誇り。
彼が残した功績は、歴史書に数十ページに亘り記載されているほどだ。
世界的にも有名な彼は、幾度となく異国からスカウトされていたが、愛すべき母国を守るため、バンスティン国で剣を振るい続けた。
普段の泣き虫で情けない姿では想像できない彼の才能あふれる剣技には、魔物ですら魅入ってしまうといわれている。
人情厚い彼は、庶民からも貴族からも愛されていた。そしてもちろん、数多の冒険者からも。
享年四十歳。
配偶者も子どももいなかった彼の墓は、再建されたイルネーヌ町の中央に建てられた。
イルネーヌ町の誇りとして、彼の墓には毎日何百本もの花が献花されることになる。
せっかくウスユキが治癒してくれた体もみるみるうちに傷が増え、体力も削られていく。
クルドは舌打ちをして呟いた。
「チッ……! こんなにすばしっこかったらこっちの体力削られて全滅だ……! そのくらいなら……!」
クルドはカミーユと応戦しているシルヴェストルの背後を取り、羽交い絞めにした。
「カミーユ!! 俺ごとやれ!!」
「は!? お前何言ってんだ!? そんなことするわけ――」
「さっさとしろ!! このままじゃラチがあかねえ!! 心臓ひとつでいい! 刺せ!」
「できるわけ……っ」
動きを封じられたシルヴェストルが唸る。クルドの手に噛みつき、グチャグチャと音を立て食いちぎる。それでもクルドは動じない。
次にシルヴェストルが肘鉄砲を食らわせた。それだけでクルドの内臓がぐちゃぐちゃになったが、クルドはシルヴェストルを離さない。
「おい……はやくしろ……っ! 俺に無駄死にさせる気か……っ!」
「くそっ……」
カミーユは唇を噛み、大剣を構えた。彼らしくもなく大剣がブルブルと震えている。
クルドはそれを見てヘッと笑った。
「なんだよカミーユ……。こええのか……?」
「ああ、こええよ……。お前ってやつはほんと、ひでぇことをさせる……っ」
「悪いなあ……こんなこと任せられんの、お前しかいねえんだ……。汚れ仕事は……リーダーがやるものだろ……?」
「ああ……そうだな……」
カミーユは深く息を吸い、唾を呑み込んだ。
「クルド……。今までありがとうな……。お前と同じ世代にS級冒険者になれたこと、誇りに思う」
「俺もだカミーユ……。お前ほど立派なS級はいねえ……俺の次にな……」
「ヘッ……ちげえねえ」
「カミーユ……お前と飲んだ酒が……一番美味かった……」
「そんなこと……最期に言うんじゃねえよ……っ」
やりたくなくなんだろうが、と、か細い声で呟き、カミーユは剣を振り上げた。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
「カミーユ……ダフによろしくな……」
シルヴェストルとクルドの体に、カミーユの大剣がのめりこむ。ふたつの体は真っ二つに切り裂かれ、地面に倒れた。
カミーユは崩れ落ち、息絶えたクルドに縋り付く。獣の雄たけびのような泣き叫ぶ声。他の冒険者たちも、肩を震わせ、涙を流した。
クルド・スパークル。二十歳という若さでS級冒険者に上り詰めた、バンスティン国の誇り。
彼が残した功績は、歴史書に数十ページに亘り記載されているほどだ。
世界的にも有名な彼は、幾度となく異国からスカウトされていたが、愛すべき母国を守るため、バンスティン国で剣を振るい続けた。
普段の泣き虫で情けない姿では想像できない彼の才能あふれる剣技には、魔物ですら魅入ってしまうといわれている。
人情厚い彼は、庶民からも貴族からも愛されていた。そしてもちろん、数多の冒険者からも。
享年四十歳。
配偶者も子どももいなかった彼の墓は、再建されたイルネーヌ町の中央に建てられた。
イルネーヌ町の誇りとして、彼の墓には毎日何百本もの花が献花されることになる。
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