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しおりを挟む面倒を見ろとの依頼で押し付けられた、もとい紹介されたのは、僕とそう年が変わらないであろう二人の少女。
並んで右側は金色のツインテールに碧眼の少女で、浮かべる表情は快活な印象を受ける。
そして左側は銀色のショートカットだが、前髪は長めで目が少し隠れていた。此方は金色の少女とは逆に大人し気な印象だ。
女の子とか聞いて無かったし……。
僕は抗議の意味を込めて盗賊ギルドのライサ支部長であるクルスト・オルタスを睨みつけるが、彼はそんな視線を意に介す程に繊細では無かった。
若くて新人の女性冒険者となると色々と厄介事が増える可能性があるのだけど、でもそんな事は言っても仕方が無いだろう。
確かに町中での仕事をメインにと考えたなら、女の子の方が人当りは良いのかも知れないのだけれど。
女の子相手に厳しくは、教え難いなあ……。
「金色の方がルリスで、銀色がクーリだ。まあ本当なら二人とも娼婦の予定だったんだがよ、当人等が冒険者になる事を望んだもんで今回の話の候補にあがったんだ」
うん、そんな余計な情報は聞きたくなかった。
勿論クルストはわかってて言ってるのだろうけど、そんな事情を聞いたら断り難くなってしまう。
やっぱり僕は、このクルストって人物があまり好きじゃない。
そんな事を考えてたら、金色の方、確かルリスと呼ばれた少女が一歩前に進み出た。
「何なのクルストさん、その貧相なのは。本当に冒険者? アタシ達と同い年位じゃない。こんなのに教わる事なんてないわよ」
「ちょっと、駄目だよルリちゃん! 折角来てくれた冒険者さんなのに」
薄い胸を僅かに反らしながら、見下すような視線を此方に向けて来る。
慌てて銀色……、えっと、クーリがルリスをと窘め発言を注意しているが、まあでも金色の彼女の意見もあながち間違いでは無い。
だって本来こういった指導は、もっと年上のベテラン冒険者がやるものだと僕でも思う。
「おいおい、お前ら自分の立場がわかってんのか。ユーの字は此れでもラ……」
二人を、というより金髪のルリスって名前の少女を注意しようとしたクルストを、僕は手で制した。
少し楽しい気分になったからだ。
寧ろ、内心で僕を見下しながらもクルストの手前文句を言わずに黙っている様な輩よりは、正直でずっと良い。
考え無しではあるのだろうけど、そんなの大人じゃないのだからある意味で当然だと思う。
冒険者をやるなら其処は此れから学べば良いだけの事だから。
「えっと、ルリスさんだったよね。まあ確かに僕は大した冒険者じゃないけれど、でも吠えるだけしか能の無い犬にも芸を仕込む位は出来るから心配しなくて良いよ」
僕は少し困った風に笑って、彼女を挑発する。
さっと顔を怒りの朱に染めて構えを取るルリスさんに、けれども僕は首を横に振った。
「君一人じゃ意味が無いでしょ。教えるのは二人になんだから、掛かって来るなら二人で来ないと。……何処か空いてる場所ってあるの?」
最後の質問はクルストに対してだ。
似合わない事をやってるとは、自分でも思う。でも真面目に学んで貰うには、最初に素直になって貰った方が効率はきっと良い筈。
どうせ色々教えるなら、ちゃんと身に付けて貰いたいし。
あと、年も近いのだし出来れば友達にもなってくれたらとても嬉しい。少し口が悪かったのは、後で謝ったら許してくれると良いな……。
やって来たのは少し広めの空き地だった。
野次馬が鬱陶しいなと思ってたら、クルストが人払いをしてくれた。気に食わない相手だけど、便利だなあと思う。
クルストに借り受けた木剣と盾を持ち、空き地の中央に陣取る。
ルリスさんは木製の短剣を2刀流、クーリさんは僕と同じで木剣と盾だった。
2対1とはなるけれど、多分問題は無いだろう。出会ってから、ずっと二人の動きを観察して手の判断だ。
無理そうだったらそもそもあんな喧嘩の売り方はしない。
「双方とも準備は良いか? ユーの字すまんな。似合わない真似させて。まあ、よろしく頼むわ」
クルストの言葉に、僕は首を横に振る。
本当に、わかってて言ってるならクルストはとても性格が悪い。……うん、わかって無くても性格は悪いけど。
そのタイミングでの僕への気遣いは、二人の少女、特にルリスさんに対する挑発にしかなってないのだ。
しかも怒りは僕に向く形である。
自分の言葉で怒らせるのは自己責任だし構わないのだけど、クルストにされると少し腹が立つ。
後で謝っても許して貰えなくなったらどうしてくれるんだろう。
でもそんな僕の気持ちがクルストに通じる筈も無く、
「はじめっ!」
放たれた開始の合図にルリスさんが矢の様に飛び出し突っ込んで来た。
スレンダーな体形のルリスさんの動きは、見た目の印象通りに速い。
けれどその速さは、僕の想定の域を出ていなかった。
わざわざクルストが冒険者になるようにと選んだ相手だ。当然それなりの素地がある、つまりは動ける人間であるのは当然である。
でもその動けるの範疇は、戦う事を生業にしていない人間にしては、動けるといった程度でしかない。
貧民街に生きていて、盗賊ギルドとも繋がりを持つのだから荒事には多少慣れているのだろうけど、それでも素人である事に変わりは無かった。
ルリスさんは一人で突っ込んで来たけれど、多分連携の仕方も知らないのだと思う。
貧民街での喧嘩程度なら、この勢いで飛びかかれば反応が出来る相手は、確かにそうそう居ないのだろう。
真っ直ぐに変化も無く突っ込んできた彼女に対し、僕は素早く一歩踏み込んで位置をずらして体重を乗せた蹴りを放つ。
突然の移動に僕の位置を見失ったルリスさんは、蹴りを綺麗に喰らって吹き飛んだ。
地を転がって倒れ伏すルリスさんと、一瞬の出来事に茫然としているクーリさんに向かって叱責を飛ばす。
「何で一人で突っ込んで来たの。二人で来てって言ったでしょ? クーリさんもぼんやりしてたらダメだよ。ルリスさんを見殺しにするの?」
僕の言葉に、ルリスさんはふらつきながらも立ち上がり、此方を睨みつけて来る。
負けん気が強いのはとても良い事だし此れは必要があってやってるのだけど、どんどん嫌われていってるみたいでちょっと切ない。
クーリさんも慌てた様にルリスさんに駆け寄り、横に並んで木剣を構えた。
うーん。内心、少し困る。
……まだ突っかかって来てくれる分、ルリスさんは反撃って形で攻撃し易いが、そうして来ないクーリさんはとても殴り辛い。
でも冒険者になろうとしている相手に、そんな遠慮は無意味で失礼だ。
僕は意識を切り替え、心を定める。覚悟は決めた。
格付けは既に終わったと考えて良いだろう。此処からは教練の時間になる。
僕にトーゾーさんが、ガジルさんが、冒険者ギルドの教官が、或いは他の先輩冒険者達がしてくれたように、彼女達に技を、身体の動かし方を叩き込んで行く。
それから暫く。
最後の力を込めてとばかりに振われたクーリさんの一撃を、それでも僕は自分の木剣で難なく弾く。
恐らくはもう握力が残ってなかったのだろうか。攻撃を弾かれた勢いで彼女の木剣は宙を舞い、地に落ちる。
大人し気に思えたクーリさんだが、粘り強さはルリスさんより上だった。
倒れたルリスさんが動けなくなった後も、クーリさんは独りで剣を振って挑んで来たのだ。
其れだけ冒険者になる為に本気なのだろう。
僕には女性の気持ちは判らないので、娼婦よりも冒険者の道を選ぶ事がどんな意味を持つのかはわからない。
ある意味でその二つは真逆の道だ。
女性らしさに磨きをかけて武器にする、自由の少ない娼婦。野宿や戦いで、身綺麗な生活とは疎遠になる、自己責任の自由を持つ冒険者。
どちらも一長一短だろう。どっちが良いかなんて、他人が口出す事じゃない。
でも彼女達は冒険者の道を選んだのだ。
だったら僕にも手助けは可能である。いや、まあ、依頼だからってのもあるのだけれど。
「クーリさん。もう良いよ。お疲れ様。最初からキツくしちゃってごめんね。ルリスさんも……、聞こえてるかな? 変に挑発してごめんなさい」
よろめきながらも木剣を拾いに行こうとしたクーリさんを止めて、終わりを告げる。
制止を受けたクーリさんは崩れる様に地面にへたり込む。限界はとっくに超えていたのだろう。
ちょっと、やりすぎた事を反省する。
「明日から、色々教えさせて貰おうと思うんだけど、二人は僕でも良い?」
僕の言葉に、ルリスさんとクーリさんの2人は首を縦に振る。
どうやら喋る元気も残ってない様子。でもどうやら、ちゃんと僕を認めてはくれたみたい。
僕は自分の背嚢から、傷用の軟膏を取り出して、二人の傍に置く。
「二人とも、此れ、傷用の軟膏だから使って。特にクーリさんは手の皮がグズグズだろうから確り薬を塗り込んでね。じゃあ、明日からよろしく」
僕は二人に声をかけ、そして離れた場所でニヤニヤと此方を見守っていたクルストを睨み付けた。
手をパチパチ叩きながら近寄って来るクルストは、その仕草もわざとらしい。
「お疲れ、ユーの字。流石だな。んで、依頼は受けて貰えるって事で良いんだよな?」
確認して来るクルストに、僕はやっぱりイラッとする。
わかっていても確認するのは当たり前だし、正しい事だとも思うのだけれど、何故かクルストに対しては腹が立つのだ。
多分きっと、此れが相性が悪いって奴なのだろう。
心底気に食わない相手なのだけれど、別に嫌っている訳じゃ無いのだ。
勿論全然好いてはないが、少なくとも僕はスジの通らない事をされた事は無い。
それなりの立場があって忙しい筈なのに、態々出て来て構ってくる辺りが、玩具にされている様で腹は立つけど。
「別に貴方やギルドの為じゃないし。町の人と、ルリスさんとクーリさんの二人と、後はお金の為だから。依頼料はちゃんと払ってよ」
僕は後の事をクルストに任せ、その場を後に、何時もの宿を目指して歩き出す。
もうじき夕暮れがやって来る。
明日からの為に、考えるべき事は幾つもあった。
何から覚えて貰うか。どこまで教えるのか。冒険者ギルドへの登録は何時にするのか等々。
でも真っ先に決めなきゃいけないのは、ヨルムの事を教えるかどうかだ。
あの二人とは毎日ずっと共に行動する訳じゃ無いとはいえ、此れから暫くはそれなりの時間を割く事になる。
ヨルムの存在を完全に隠したままにするのは少し不便だ。特に食事が。
けれど盗賊ギルドと繋がりのある二人に、ヨルムを見られるのも不安と言えば不安だった。
服の上からポンポンとヨルムを叩くと、スルスルと這い出て胸元から顔を覗かせる。
ヨルムはあの二人をどう思ったんだろう?
ゆっくり考えて、一つずつ決めよう。悩み過ぎても仕方ない。
早く帰ってのんびりするのだ。晩御飯は何だろうか。
ルリス(guest)
age13
color hair 金色 eye 碧色
job 盗賊 rankなし
skill 投擲1 罠1 鍵知識1 その他
unknown
所持武装 鉄のショートソード×2(低) 革鎧(低)
クーリ(guest)
age14
color hair 銀色 eye 赤色
job 戦士/盗賊 rankなし
skill 片手剣1 盾1 気配察知1 その他
unknown
所持武装 鉄のファルシオン(並) 革の小盾(低) 革鎧(低)
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