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しおりを挟む公都への街道を少し逸れて辿り着いた村の名前はペタニと言って、規模のかなり大きな村だった。
何でも北部地域ではある程度の大きな村じゃないと、危険過ぎて生き残れないそうだ。
防備もそれなりに厚く、返しの付いた柵だけでなく一部は防壁に覆われているし、物見櫓も幾つか備え付けられている。
宿も複数あり、村の中の人通りも多い。
村に着いた僕達は2手に分かれ、僕とカリッサさんは宿の確保を、そしてトーゾーさんとパラクスさんはデススパイダーの討伐依頼を出した村長への挨拶へと向かう。
選んだ宿はやっぱり、食堂を兼ねている食事の美味しそうな宿にした。
宿には僕達以外の冒険者も居たので少し驚いたが、後で聞いた話によると彼等はデススパイダーの討伐ではなく、村の防衛の為に雇われた冒険者なんだそうだ。
デススパイダーの件とは関係無く、北部の村では冒険者を魔物の襲来に備えて村に一定期間滞在させる依頼を出す事は良くあるらしい。
多少品定めするような目で見られたが、特に絡んで来る訳でも無かったので一安心である。
だって今回はトーゾーさんが一緒なので、下手に絡まれると相手側に人死にが出かねない。
トーゾーさんは僕や仲間と認めた人には優しいし面倒見も良いが、その範疇に含まれない人間に対しては簡単に敵と判断して斬ってしまう極端さを持っていた。
勿論咎人とならない法の範疇ギリギリで、だけれども。
以前トーゾーさんに教えて貰ったけど、彼の故郷の剣士はそんなのばかりだったそうなので、多分生まれ育った地域に由来する価値観に差があるのだろうと思う。
ライサの町でも以前、異国人である事を侮ってトーゾーさんに絡んだ馬鹿な冒険者が腕を斬り落とされそうになった事がある。
その時は当時ライサで一番の戦士と言われたガジルが割って入り、その冒険者は助かった。
けれどその時にトーゾーさんはガジルさんを敵だと認識し、今もライサの町の冒険者ギルドで語り継がれる決闘騒動へと発展したのだ。
ライサの町でガジルさんとトーゾーさんが並んで一目置かれている理由でもある。
今では二人も和解済みで、偶にお酒を一緒に呑んだりもする仲だけれども。
要するにトーゾーさんはそんな人だ。
多分今回は一緒に旅をする僕やカリッサさんに配慮して多少の事は流すだろうが、だからこそ逆に僕やカリッサさんに変なちょっかいを出した相手には容赦しないだろう。
でもそんな所があると知ってても、僕はトーゾーさんを尊敬している。
故郷を遠く離れたこの場所で、刀の腕を頼りに自分を曲げずに生きているのだ。それはきっと生半可な事では無い筈だから。
村長への挨拶を終えて宿に合流したトーゾーさんとパラクスさんを見て他の冒険者達が動揺していたけど、彼等の知る噂のトーゾーさんと、僕が知るトーゾーさんは別物なのだ。
僕等が宿の主人に聞いた情報と、トーゾーさん達が村長に聞いてきた情報を、食事を取りながらすり合わせる。
メニューは猪肉のステーキに、サラダ、麦の粥。
切り分けた肉をヨルムに食べさせながら、話を仕切るパラクスさんの言葉に耳を傾けた。
「森で主に見られる魔物はジャイアントトードやキラーマンティス、オークにダイアーウルフだそうだ。まあどれも余程の数が群れない限りは問題にならないね」
僕には単体で出られても問題な気がするが、トーゾーさんやパラクスさんの基準に合わせればそんな認識になるのだろう。
でも実際はそんなレベルの魔物が気軽に森に居るなら、狩人って職業は成り立たない位に拙い化け物だ。
そしてこの魔物達が最近頻繁に森の外に姿を見せるらしい。
多分森の魔物達は、デススパイダーに生活圏を脅かされて森の外に出て来るのだと推察される。
別に魔物に同情する趣味は無いが、其れで迷惑を被るのはこのペタニの村の人々だ。
デススパイダーの討伐は成るべく早いに越した事は無いと、明日にでも一度森に踏み入る事が決まり、話し合いは解散となった。
宿は4人とも個室を取っている。トーゾーさんもパラクスさんも、明日は森に入ると決めたので酒は飲まずに早寝をするらしい。
カリッサさんはまだ食べ足りないらしく、お代わりを受け取りに宿の主人の所へ行く。
僕のお腹はもう満ちているけれど、一人で食べるのも寂しいだろうから取り敢えずカリッサさんに付き合おうかな。
宿のご主人、カリッサさんに食べられ過ぎて泣かなきゃ良いのだけれど。
そう、思った時だった。
「少し、良いか?」
僕の座るテーブルの前に立つ、硬い表情をした一人の冒険者。僕が言えた事では無いがまだ年若い少年……、多分15歳くらいなんじゃないだろうか。
チラと横目で見れば、少年が先程まで居た筈のテーブルでは、彼の仲間達が蒼褪めた顔で百面相をしている。
うーん、どういう状況だろう。少年の仲間達は彼よりも全員が年上に見えた。
あの表情を見る限りでは、最年少である少年が暴走したのだろうか。トーゾーさんが部屋に入った後で本当に良かった。
「つまらない用事で無ければ、どうぞ。あ、でも仲間が此処で食事をすると思うので、手早く済むと有り難いです」
正直多分碌な用事じゃないんだろうなとは思うが、一応先を促す。
少年の目は、考え無しに絡んで来る冒険者の割りには、些か必死な色がある様に見えたから。
僕の態度に一瞬鼻白んだ彼だったが、一歩離れたかと思うと、手にした槍をグルグルと頭上で回した後、ピタリと此方に突きつける。
いきなり何をするんだこの人。
「俺の名はクレン。そちらは人斬りトーゾーの弟子とお見受けした。一手立ち合いを希望する」
槍を突き付けたまま名乗り、立ち合いとやらを望んで来るクレン。本当にトーゾーさんが部屋に入った後で良かったと思う。
そして幸運にも折角血が流れずに済んだので、出来れば手加減がある事を祈りつつ、僕はクレンの頭にカリッサさんが拳を叩き込むのを眺めていた。
うわ、凄い痛そう。衝撃に槍を落とし、白目を剥きながら倒れるクレンを、咄嗟に立ち上がって受け止める。
クレンの仲間達が慌てて駆け寄って来るが、……うん、今更感が凄い。
「えっと、魔物討伐の仕事があるし相手は出来ませんって伝えて置いて貰えます? 後、トーゾーさんが居る時だったら本当に斬られてる可能性があるので、次からは絶対に止めてくださいね」
僕の言葉に、青い顔をしたクレンの仲間達がコクコクと頷いた。
本当に大丈夫か心配になるが、取り敢えずはどいて貰う事が先決だ。だって此処は、今からカリッサさんが食事をする場所である。
目の前で白目を剥いたクレンも多少は心配であるけれど、でも宿の中で槍を振り回して突きつけるとか、完全に自業自得なので仕方ない。
相手がトーゾーさんで無くても、下手をすれば斬られてもおかしくないのだ。
……まあ済んだ出来事は忘れて、食事をするカリッサさんの話し相手を努めるとしよう。
クレン・ライシルト(guest)
age15
color hair 茶色 eye 青色
job 戦士 rank3(下級冒険者)
skill 両手槍4 片手槍3 片手剣2 盾2 槍投擲3 野外活動1 応急手当3 その他
unknown なし
所持武装 鋼鉄製のロングスピア―(高) 鉄のジャベリン×2(並) 鉄のチェインメイル(並)
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