少年と白蛇

らる鳥

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 少しずつわかって来た。
 オーガは基本的に強気と言うか、攻めっ気に逸る個体が多い。
 故に相手の攻撃の勢いを利用して急所に刃を入れてやれば、意外な程にあっさりと崩れたりする。
 ただし中々殺し切れずに一旦相手を慎重にさせてしまえば、膨れ上がった硬い筋肉が急所を守るので非常にしぶとい相手になってしまう。
 オーガの相手をする時は、相手の巨体を怖れず大胆に、そして的確に。
 振り下ろされる相手の拳に合わせてすれ違い、喉を切り裂く。思い切り振り抜いた剣は想像以上の威力を発揮し、オーガの首が綺麗に飛ぶ。
 剣を振って血を落としてから振り返れば、トーゾーさんが此方に向かって親指を立てていた。
 戦いの事でトーゾーさんに褒められるのは凄く嬉しい。
 さて、けれども僕等の目的は別にオーガを狩る練習では無いのだ。
 既に北ライサ山も中腹を過ぎた。そろそろ本格的に花を探そう。
 本当は山頂付近の方が花も見つかり易い筈なのだが、同時にあの辺りにはハーピーの巣も存在するので、結果的に山頂付近の方が探索の効率は悪くなる。
 ハーピーも片手で数えれる程度なら兎も角、20や30も群れられると、多分トーゾーさんでも相手をするのは面倒になって来るだろうし。
 呪いを遠ざける清き花は摘むと非常に枯れ易いが、逆に摘まなければ年中花を咲かせていた。
 特別な効果があるだけあって普通の植物では無いのだろう。その生育には魔力が色濃く関わるらしい。
 魔力、……うん、魔力か。
 ヨルムが出て来てくれたら良いのだが、この寒い北ライサ山で服の中から出て来て貰うのも悪い気はした。
 だから少し、試してみよう。
 植生を確かめるフリをしながら、瞳に意識を集中する。
 ああ、成る程。世界に、別の色が混ざって見えて来たように思う。気のせいじゃない、多分此れが魔力だ。
 少し色の濃い部分を見つけ、そちらに行ってみれば、とても美しい青色の花が幾輪も咲いてた。
 根を周囲の土ごと掘り起こして袋に入れる。この際に一緒に魔石を入れて置くと、魔石が発する魔力で花が枯れる事を防ぐ。
 幸い此処まで登ってくる間にオーガの魔石が割と沢山手に入っていた。
 よし、どんどん採取していこう。瞳への集中を解くと、急に視界から魔力の色が消えて、感覚の違いに一瞬眩暈がする。
 けれど、うん、多分大丈夫かな。勿論多めに採取すると言っても、根こそぎはダメだ。
 次にまた増えて貰える様に、間引くような形で採取して行く。うんうん、スムーズに採取出来るととても楽しかった。
 本格的に冬になったら、また森でも寒い時期の薬草が採取出来るようになるだろう。
 森での採取依頼ならルリスさんやクーリさんとも一緒に行けるし、今度誘ってみても良いかも知れない。
 ただその時、採取する僕の背中をトーゾーさんが少し心配げに見てると、僕はまだ気付けて居なかった。

 帰路について思う事は、北ライサ山ってやっぱり危ない場所なんだなって事だろうか。
 今回はトーゾーさんが居てくれたから良いけれど、一寸敵の出て来る数が多すぎだ。
 古ミズルガの時も思ったが、引っ切り無しに敵が出現するのはやはりキツイ。
 普段の僕は成るべく隠れ潜みながら敵を見つけ、先手を取って倒してはまた息を潜めて進むやり方を取っているだけに、連続した魔物との戦いにはあまり慣れていないのだ。
 建築物のある古ミズルガではまだ安全地帯を確保して休憩出来たが、この北ライサ山ではそうもいかなかった。
 休みたければ山を下り切るしかないのである。
 麓付近に来ればオーガもあまり出現しなくなるが、代わり遭遇したのはオークだ。
 しかもこいつ等は、数だけはオーガを大きく上回って出て来るのだから、辛くは無いが少々しんどい。
 巣でも近くにあるのだろうか。
 以前、山には入らずに滅びたオークの巣穴を漁る為にこの付近に来た頃があるけれど、あの頃に比べたら随分成長した物だと思う。
 よし、山を抜けるまではあと少しだ。勿論山を抜けた所で、町までは大分歩かなければならないのだけれども。


 硝子の容器の中を満たす液体に、清き花と砕かれた魔石が投入される。
 透明だった液体の色が一瞬にして変わるが、暫くすると液体の色はまた徐々に透明へと戻って行く。
 そして取り出された清き花は、姿は変わらないのにまるで金属で出来ているかの様に硬い何かへと変わっていた。
 錬金術はとても不思議である。次々に採取して来た花を処理していくパラクスさん。
 とても簡単そうに見えるけど、そもそもこの液体を用意するのに色んな素材と時間を必要としたらしい。
 素材の代金は全てトーゾーさん持ちだそうだ。トーゾーさんがその金額を経費として娼館に請求するかはお任せだそうだ。
 勿論トーゾーさんがそう出来ないと知っての処置なので、多分まだちょっとパラクスさんは相談が遅かったのを怒ってる。
 娼館側も特にお金に困ってる訳じゃ無いだろうから、言ったら払ってくれるとは思うんだけど、トーゾーさんは少し見栄っ張りだから。
 僕等が加工した花を持って娼館に行く頃には、カリッサさんの呪いの解除も無事に済んでいた。
 胸を張って報告して来るカリッサさんを、手を叩きながら皆で褒め称えたら、当たり前の事だって言ってたけどちょっと嬉しそうで可愛い。
 でも本当に凄いと思う。だってこの町の教会の神官がどうにも出来なかった事なのだから。

 トーゾーさんは大喜びで直ぐにエルサローネさんに会いに行っていた。
 僕も美人のエルフさんは少し見てみたかったのだけれど、トーゾーさんの邪魔をするのも野暮だし、病み上がりとは違うだろうけど、気が滅入ってた後だろうから遠慮する。
 その分他のお姉さん達の凄い歓待を受けたのだが、僕、パラクスさん、カリッサさんの3人の中で一番お姉さん達にモテたのはカリッサさんだ。
 うん、知ってた。パラクスさんも格好良い男性なのだが、カリッサさんはこう、顔は美人で性格もちょっと男前だから、仕方ない。
 明日からは僕とカリッサさんは用心棒の仕事で、トーゾーさんとパラクスさんは彼の貴族を何とかしに行く。
 でも折角良い気分なのだし、今日はこの歓待を楽しもう。
 僕等がトーゾーさんと顔を合わせたのは、次の日の朝の事でした。やっぱり野暮しなくて良かったね。



 ユーディッド
 age13
 color hair 茶色 eye 緑色
 job 狩人/戦士 rank4(中級冒険者)
 skill 片手剣5(↑) 盾3 格闘術3 弓6 野外活動5 隠密4 気配察知5 罠3 鍵知識2 調薬2
 unknown 召喚術(ヨルム)
 所持武装 
 鋼のブロードソード(高) 鋼のショートソード(高) 複合弓(高) 
 革の小盾(高) 中位魔獣の毛皮マント(高) 革の部分鎧(高) デススパイダーシルクの手袋(最高)


 ヨルム
 age? rank7(上位相当)
 skill 縮小化 巨大化 硬化 再生 毒分泌 特殊感覚
 unknown 契約(ユーディッド) 感覚共有(ユーディッド)



 此れまでの経験と訓練により、片手剣が上昇しました。
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