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私の疑問に、マシュー様が目を細めて私をじっと見る。
いや、あの、その……私を愛おしそうに見るのをやめていただけると助かります。何だか色気まで漏れているし、心臓がドクンと変に弾みます。不整脈はなかったはずなんですけど。
「互いの気持ちがあるのなら、構いはしないだろう」
言葉を言い終わる前に、マシュー様の顔が近づいてきて、言い終わると同時に唇に噛みつかれた。
「ん……ふ……」
警戒もしてない状態で、たぶんマシュー様の色気に当てられてポカンとしていたせいで唇が半開きだったのか、簡単に舌を絡み取られる。
初めてのことだと言うのに、口の中を舌が這うことに違和感を感じるどころか、快感を拾ってしまう。
「ん……ぁん」
唇から漏れる音は、自分の口から出ているものとはとても思えない甘い声で、出さないようにと思っても、勝手に唇の端からこぼれていってしまう。
力が抜けて崩れそうになって、マシュー様にしがみつくと、 マシュー様が唇を離した。
離れていく唇が寂しくて、目で追ってしまう。
「いいな?」
同意をとる質問の形ではあったけど、マシュー様は私の返事を待たずに私を抱えあげると、ベッドに近づきゆっくりと私を下ろした。力が抜けてしまっているために、抵抗もできない私の両方の腕を頭の上に縫い止めると、また噛みつくようなキスをされる。
歯列の裏をなぞられれば甘い声が漏れ、舌がからめられればこの先の予感に太ももを擦り合わせてしまう。……処女なのに……知識だけ頭に入れすぎたのかな。
マシュー様が顔を上げてぺろりと自分の唇をなめると、色気の漏れた表情で私をじっと見つめる。
「起きてるときのほうがいいな」
起きてるときのほう?
「ど……ういう……意味?」
キスだけしかされていないというのに、私の息はきれていて、淡く沸いた疑問は、その息のようにとぎれとぎれで、うまく頭の中で組み立てられない。
「うなされていたから慰めておいた」
……うなされていたから? 慰めておいた?
「どう……いうこと……ですか」
「嫌な夢をそれ以上見ないように……」
「見……ない……ように?」
マシュー様が私の唇をなぞる。
「キスした」
……ああ、キスした……ね。
え?!
「どういうことですか」
一気にフワフワとした気分が吹き飛ぶ。
「怒るな。お前の気持ちがあるとわかったからした。それまではしてはない」
「そ、そういう問題じゃありません」
「……そうだな。悪かった」
「……謝るのなら……」
謝られても、何だか納得は行かないけれど……。
「お前が覚醒しているときに可愛がればよかった」
「かわいがる?」
マシュー様が少し目を逸らす。
「少し触れただけだ」
「は?!」
少し触れた、だけ?
「はぁ?!」
この感じやすい体は……もしや……。
いや、私うなされて起こされてたから汗かいてたんだよね??
あれ、最近目覚めが、マシュー様に起こされていたのは、意図的?
そういえば、いつも目覚めた時の胸に残る嫌な感じを最近感じなかったのは、直前はうなされていなかったからってこと?
……マシュー様の謎の色気に当てられて、どうにもなるつもりはないのに、私一人で発情するとか痛い子だわー、ってマシュー様がいなくなった部屋で一人反省会やってたのって、私のせいじゃなかったってこと?
……いや、私も気づけよ、ってこと?!
いや、35年も処女で、そんな触れ合いをしたことがない私がそんなことに気づけるはずもない!
「マシュー様!」
「怒った顔も好きだがな」
また目が合ったマシュー様は、笑っている。
「そんな問題じゃありません」
「気持ちは通じていた」
マシュー様の目が細められて、私の頬を撫でる。
「それでも!」
「お前の許可が得られないのもわかっていたからな」
切なそうな目が、私の目をじっと見つめる。
「……それなら」
「それでも、欲しかった」
マシュー様の熱い吐息に、ずくん、とおなかの奥がうずく。
「それでも……」
「お前を感じたかった」
「これきりでも?」
「立夏も同じ気持ちなのであれば、後悔はない」
マシュー様の言葉に、ふいに涙がこぼれる。
……何て馬鹿なの。
「馬鹿なんですか」
「それ、泣きながら聞くことか」
クククと笑いながら、マシュー様が私の涙をすする。
「だって!」
もう二度と会えないのに。
その言葉は、マシュー様の唇の中に消えた。
また絡められた舌に、思考が解け始める。
「いいな」
マシュー様の唇が少しだけ離れて、同意を求められる。今度は、私の気持ちを待つように。
「手を……離して……」
「嫌だ。離す気はない」
耳元でささやかれる言葉に、ドクンと心臓がはねる。
「マシュー様に触れたいから……」
私の言いたいことを正確に読み取ってくれたマシュー様が、嬉しそうに目を細めて、縫い止めていた手を緩めてくれた。
「ようやく本音を言ったな」
「それ以外は……求めてなかったでしょ?」
きっと私がYesと言うまで、私はじらされ続けたのだと思う。
「当たり前だ」
「本当に、馬鹿」
詰ったというのに、マシュー様は嬉しそうに笑った。
「素が出てきたな」
愛おしそうな目で私の頬をなぞる。
「マシュー様……」
撫でられるだけで、体がうずく。
「マシューで良い」
「マシュー……?」
「何だ、リッカ?」
名前を呼ばれるだけで、胸がきしむ。喜びを感じて? この先の未来がよぎって?
私の涙をマシューがぬぐう。
「もっと呼んで」
「ああ、リッカ」
この声を、胸に刻みつけよう。
いや、あの、その……私を愛おしそうに見るのをやめていただけると助かります。何だか色気まで漏れているし、心臓がドクンと変に弾みます。不整脈はなかったはずなんですけど。
「互いの気持ちがあるのなら、構いはしないだろう」
言葉を言い終わる前に、マシュー様の顔が近づいてきて、言い終わると同時に唇に噛みつかれた。
「ん……ふ……」
警戒もしてない状態で、たぶんマシュー様の色気に当てられてポカンとしていたせいで唇が半開きだったのか、簡単に舌を絡み取られる。
初めてのことだと言うのに、口の中を舌が這うことに違和感を感じるどころか、快感を拾ってしまう。
「ん……ぁん」
唇から漏れる音は、自分の口から出ているものとはとても思えない甘い声で、出さないようにと思っても、勝手に唇の端からこぼれていってしまう。
力が抜けて崩れそうになって、マシュー様にしがみつくと、 マシュー様が唇を離した。
離れていく唇が寂しくて、目で追ってしまう。
「いいな?」
同意をとる質問の形ではあったけど、マシュー様は私の返事を待たずに私を抱えあげると、ベッドに近づきゆっくりと私を下ろした。力が抜けてしまっているために、抵抗もできない私の両方の腕を頭の上に縫い止めると、また噛みつくようなキスをされる。
歯列の裏をなぞられれば甘い声が漏れ、舌がからめられればこの先の予感に太ももを擦り合わせてしまう。……処女なのに……知識だけ頭に入れすぎたのかな。
マシュー様が顔を上げてぺろりと自分の唇をなめると、色気の漏れた表情で私をじっと見つめる。
「起きてるときのほうがいいな」
起きてるときのほう?
「ど……ういう……意味?」
キスだけしかされていないというのに、私の息はきれていて、淡く沸いた疑問は、その息のようにとぎれとぎれで、うまく頭の中で組み立てられない。
「うなされていたから慰めておいた」
……うなされていたから? 慰めておいた?
「どう……いうこと……ですか」
「嫌な夢をそれ以上見ないように……」
「見……ない……ように?」
マシュー様が私の唇をなぞる。
「キスした」
……ああ、キスした……ね。
え?!
「どういうことですか」
一気にフワフワとした気分が吹き飛ぶ。
「怒るな。お前の気持ちがあるとわかったからした。それまではしてはない」
「そ、そういう問題じゃありません」
「……そうだな。悪かった」
「……謝るのなら……」
謝られても、何だか納得は行かないけれど……。
「お前が覚醒しているときに可愛がればよかった」
「かわいがる?」
マシュー様が少し目を逸らす。
「少し触れただけだ」
「は?!」
少し触れた、だけ?
「はぁ?!」
この感じやすい体は……もしや……。
いや、私うなされて起こされてたから汗かいてたんだよね??
あれ、最近目覚めが、マシュー様に起こされていたのは、意図的?
そういえば、いつも目覚めた時の胸に残る嫌な感じを最近感じなかったのは、直前はうなされていなかったからってこと?
……マシュー様の謎の色気に当てられて、どうにもなるつもりはないのに、私一人で発情するとか痛い子だわー、ってマシュー様がいなくなった部屋で一人反省会やってたのって、私のせいじゃなかったってこと?
……いや、私も気づけよ、ってこと?!
いや、35年も処女で、そんな触れ合いをしたことがない私がそんなことに気づけるはずもない!
「マシュー様!」
「怒った顔も好きだがな」
また目が合ったマシュー様は、笑っている。
「そんな問題じゃありません」
「気持ちは通じていた」
マシュー様の目が細められて、私の頬を撫でる。
「それでも!」
「お前の許可が得られないのもわかっていたからな」
切なそうな目が、私の目をじっと見つめる。
「……それなら」
「それでも、欲しかった」
マシュー様の熱い吐息に、ずくん、とおなかの奥がうずく。
「それでも……」
「お前を感じたかった」
「これきりでも?」
「立夏も同じ気持ちなのであれば、後悔はない」
マシュー様の言葉に、ふいに涙がこぼれる。
……何て馬鹿なの。
「馬鹿なんですか」
「それ、泣きながら聞くことか」
クククと笑いながら、マシュー様が私の涙をすする。
「だって!」
もう二度と会えないのに。
その言葉は、マシュー様の唇の中に消えた。
また絡められた舌に、思考が解け始める。
「いいな」
マシュー様の唇が少しだけ離れて、同意を求められる。今度は、私の気持ちを待つように。
「手を……離して……」
「嫌だ。離す気はない」
耳元でささやかれる言葉に、ドクンと心臓がはねる。
「マシュー様に触れたいから……」
私の言いたいことを正確に読み取ってくれたマシュー様が、嬉しそうに目を細めて、縫い止めていた手を緩めてくれた。
「ようやく本音を言ったな」
「それ以外は……求めてなかったでしょ?」
きっと私がYesと言うまで、私はじらされ続けたのだと思う。
「当たり前だ」
「本当に、馬鹿」
詰ったというのに、マシュー様は嬉しそうに笑った。
「素が出てきたな」
愛おしそうな目で私の頬をなぞる。
「マシュー様……」
撫でられるだけで、体がうずく。
「マシューで良い」
「マシュー……?」
「何だ、リッカ?」
名前を呼ばれるだけで、胸がきしむ。喜びを感じて? この先の未来がよぎって?
私の涙をマシューがぬぐう。
「もっと呼んで」
「ああ、リッカ」
この声を、胸に刻みつけよう。
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