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今ここ→④
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今にもつかみかかろうと近づいてくるジョエルから、テオ様が私を遠ざけてくれる。
「侮辱しているのは、あなたの方ではないかしら。ジョエル」
私は静かな声でジョエルに告げる。
「わ、私を呼び捨てにするなど!」
「そうよ! 侮辱しているのはあなたの方だわ!」
激昂するジョエルは、まだ私が誰か気づいていないらしい。
でも、一部の妖精たちは、私の声で、私が誰だか気づき始めているようだ。
ささやく声の中に、「フィオーレ様」との名前が出てきているからだ。
番であるはずのジョエルは、未だに気づいていないと言うのに。
「私が呼び捨てにすることは問題があるのかしら?」
私はつけていた黄色の仮面を外すと同時に、自分に掛けていた魔法を全て解いた。
そして、私を守るように立っていたテオ様に、場所を開けてもらう。
先程まで激昂していたジョエルとコラソンが、唖然とした表情で目を見開いている。
「ひ、瞳の色が」
「私は、瞳の色を変えることもできるの。他にそんなことができる妖精はいないと思うけど」
妖精王になるものだけが使える魔法がいくつかある。今回は役に立ったというべきだろう。
「私がジョエルと呼んではいけなかったかしら? そうね、ジョエルの正式なお相手はコラソン嬢ですものね」
私の言葉に、我に返ったジョエルが、腕に絡まりついていたコラソンを押し退ける。
「フィオーレ様、いやフィオーレの番は、私だ!」
「私の番は、間違いなくこのテオ様だわ。テオ様は、私の姿がどうであれ、番であることに気づいてくれたの。それに私も、一目でテオ様が番だとわかったわ」
私が首を横にふると、ジョエルが焦った表情になる。
「な、何を言い出すんだ! フィオーレだって、私が番だと認めたではないか!」
私は呆れて首を横に振る。
「私があなたを番だと認めたことはないわ。私には欠陥があるのだと言って、番がわからないのだと決めつけたのは、私以外よ。それにジョエル。姿を変えた私に気づくことなく、更には『見たこともない妖精だ。きっと田舎から出てきたんだろう』って、コラソン嬢と笑っていたわね。本当に番であるなら、姿が変わっていても気づくはずだわ」
ジョエルは明らかに狼狽していて、コラソンも青ざめる。
狼狽していたジョエルが、ハッと我に返る。そして、ニヤリと笑う。とても嫌な表情だ。
「私が番であると、陛下が、妖精王が宣言したのだ! フィオーレは、妖精王の言葉を偽りとするのか?!」
ジョエルがわななく。
会場全体が、息をのむ。
そう。妖精たちにとって、妖精王は絶対だから。
その妖精王を、次期とは言え、妖精王になる私が「偽りだ」と言ってしまったのだから。
でも、私には、真実があるから。
「妖精王には、次期妖精王の番を見つける能力などないわ。番を見分けられるのは、番同士だけよ。お父様は、あなたに騙されて間違ったことを宣言してしまっただけだわ」
「騙してなどない!」
叫ぶジョエルに、私はきっぱりと首を横にふる。
「私だって、テオ様に出合わなければ、番を見つける能力がないのだと納得するしかなかったわ。でも、テオ様に出会って、番がどういうものか、すぐに分かったもの」
「その感覚は嘘だ! 私こそがわかっているんだ! フィオーレの番は私だ! フィオーレには、番を見つける能力が欠けているんだと言われていただろう!?」
ジョエルが乱暴に告げる。
私は、大きなため息が出そうになるのを、グッとこらえる。
「じゃあ、それを誰が証明してくれるのかしら?」
証明できるならしてみろって言うんだ、この嘘つきめ!
「侮辱しているのは、あなたの方ではないかしら。ジョエル」
私は静かな声でジョエルに告げる。
「わ、私を呼び捨てにするなど!」
「そうよ! 侮辱しているのはあなたの方だわ!」
激昂するジョエルは、まだ私が誰か気づいていないらしい。
でも、一部の妖精たちは、私の声で、私が誰だか気づき始めているようだ。
ささやく声の中に、「フィオーレ様」との名前が出てきているからだ。
番であるはずのジョエルは、未だに気づいていないと言うのに。
「私が呼び捨てにすることは問題があるのかしら?」
私はつけていた黄色の仮面を外すと同時に、自分に掛けていた魔法を全て解いた。
そして、私を守るように立っていたテオ様に、場所を開けてもらう。
先程まで激昂していたジョエルとコラソンが、唖然とした表情で目を見開いている。
「ひ、瞳の色が」
「私は、瞳の色を変えることもできるの。他にそんなことができる妖精はいないと思うけど」
妖精王になるものだけが使える魔法がいくつかある。今回は役に立ったというべきだろう。
「私がジョエルと呼んではいけなかったかしら? そうね、ジョエルの正式なお相手はコラソン嬢ですものね」
私の言葉に、我に返ったジョエルが、腕に絡まりついていたコラソンを押し退ける。
「フィオーレ様、いやフィオーレの番は、私だ!」
「私の番は、間違いなくこのテオ様だわ。テオ様は、私の姿がどうであれ、番であることに気づいてくれたの。それに私も、一目でテオ様が番だとわかったわ」
私が首を横にふると、ジョエルが焦った表情になる。
「な、何を言い出すんだ! フィオーレだって、私が番だと認めたではないか!」
私は呆れて首を横に振る。
「私があなたを番だと認めたことはないわ。私には欠陥があるのだと言って、番がわからないのだと決めつけたのは、私以外よ。それにジョエル。姿を変えた私に気づくことなく、更には『見たこともない妖精だ。きっと田舎から出てきたんだろう』って、コラソン嬢と笑っていたわね。本当に番であるなら、姿が変わっていても気づくはずだわ」
ジョエルは明らかに狼狽していて、コラソンも青ざめる。
狼狽していたジョエルが、ハッと我に返る。そして、ニヤリと笑う。とても嫌な表情だ。
「私が番であると、陛下が、妖精王が宣言したのだ! フィオーレは、妖精王の言葉を偽りとするのか?!」
ジョエルがわななく。
会場全体が、息をのむ。
そう。妖精たちにとって、妖精王は絶対だから。
その妖精王を、次期とは言え、妖精王になる私が「偽りだ」と言ってしまったのだから。
でも、私には、真実があるから。
「妖精王には、次期妖精王の番を見つける能力などないわ。番を見分けられるのは、番同士だけよ。お父様は、あなたに騙されて間違ったことを宣言してしまっただけだわ」
「騙してなどない!」
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ジョエルが乱暴に告げる。
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「じゃあ、それを誰が証明してくれるのかしら?」
証明できるならしてみろって言うんだ、この嘘つきめ!
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