11 / 49
グリーン先生2回目の授業
しおりを挟む
ハースのいるクラスで、2回目の授業だった。
グリーンは、少々重苦しい気持ちで教室に向かう。
実はあの授業のあと、ハースが教員室にやって来たのだ。
アリスに連れられて。
アリスは授業後に、ハースを説教してくれたらしい。
周りの教師たちがアリスの成長を褒め称えていたので、昔はどうやらこんなフォローはなかったらしい。グリーンは過去の洗礼を受けた教師たちに、同情を禁じ得なかった。
そしてその場で、ハースから授業をきちんと受ける、とのお詫びをもらった。
前回と打ってかわって、ハースは前を向いていた。
だが、グリーンは、奇妙な気分で授業を進めた。
ハースの視線に、いやに熱気を感じるのだ。それに、熱心にノートを取っている。他の先生の話から、ハースが本当にノートを取らなくても理解しているのはわかっている。だが、今は熱心にノートを取っている。
真面目に授業を受けていると言っていいだろう。だが、何だか居心地がひどく悪かった。何しろ、ハースの視線が常にグリーンに向けられているのだ。
授業が終わると、ハースの視線がようやく外れて、グリーンはホッと息つく。
ずっと見られているという妙なプレッシャーがあった。
グリーンが片付けをしていると、ハースがノートを持ってやってきた。
「先生。ノートをとったことがないんですが、このように書けば大丈夫でしょうか」
ハースの質問に、グリーンはなんだか胸が熱くなった。今までノートを取ってこなかったハースが、グリーンのことをきっかけに変わる。
教師として、嬉しい瞬間だ。
「ノートの取り方は人それぞれだからな。自分が分かりやすい方法でとればいいんだ。だが、せっかくだから、見せてくれ」
グリーンはノートを開いた。
その瞬間、ハースの視線が熱かった理由を理解した。
ノートには、グリーンの言ったこと、やったことが、事細かに書かれていた。
昨日見たハースの手帳のようだった。
そう、ノートはまるで、グリーンの観察日記だった。
グリーンはノートをそっと閉じると、ハースに渡した。
「君は、ノートを取らなくても大丈夫だと思うよ。少なくとも、私の授業はノートは不要だろうね」
グリーンはあんな居心地の悪い視線を感じながら、延々と観察日記をつけられるなんて、ごめんだった。
グリーンはそこで初めて、ハースから延々と観察され続けているアリスを尊敬した。
このハースのねちっこい観察に耐え、更にハースの気持ちを動かすことのできる人間は、きっとアリス以外にはいないだろう。
グリーンは、ハースの勉強のしかたについては二度と口を出すまいと誓った。
グリーンは、少々重苦しい気持ちで教室に向かう。
実はあの授業のあと、ハースが教員室にやって来たのだ。
アリスに連れられて。
アリスは授業後に、ハースを説教してくれたらしい。
周りの教師たちがアリスの成長を褒め称えていたので、昔はどうやらこんなフォローはなかったらしい。グリーンは過去の洗礼を受けた教師たちに、同情を禁じ得なかった。
そしてその場で、ハースから授業をきちんと受ける、とのお詫びをもらった。
前回と打ってかわって、ハースは前を向いていた。
だが、グリーンは、奇妙な気分で授業を進めた。
ハースの視線に、いやに熱気を感じるのだ。それに、熱心にノートを取っている。他の先生の話から、ハースが本当にノートを取らなくても理解しているのはわかっている。だが、今は熱心にノートを取っている。
真面目に授業を受けていると言っていいだろう。だが、何だか居心地がひどく悪かった。何しろ、ハースの視線が常にグリーンに向けられているのだ。
授業が終わると、ハースの視線がようやく外れて、グリーンはホッと息つく。
ずっと見られているという妙なプレッシャーがあった。
グリーンが片付けをしていると、ハースがノートを持ってやってきた。
「先生。ノートをとったことがないんですが、このように書けば大丈夫でしょうか」
ハースの質問に、グリーンはなんだか胸が熱くなった。今までノートを取ってこなかったハースが、グリーンのことをきっかけに変わる。
教師として、嬉しい瞬間だ。
「ノートの取り方は人それぞれだからな。自分が分かりやすい方法でとればいいんだ。だが、せっかくだから、見せてくれ」
グリーンはノートを開いた。
その瞬間、ハースの視線が熱かった理由を理解した。
ノートには、グリーンの言ったこと、やったことが、事細かに書かれていた。
昨日見たハースの手帳のようだった。
そう、ノートはまるで、グリーンの観察日記だった。
グリーンはノートをそっと閉じると、ハースに渡した。
「君は、ノートを取らなくても大丈夫だと思うよ。少なくとも、私の授業はノートは不要だろうね」
グリーンはあんな居心地の悪い視線を感じながら、延々と観察日記をつけられるなんて、ごめんだった。
グリーンはそこで初めて、ハースから延々と観察され続けているアリスを尊敬した。
このハースのねちっこい観察に耐え、更にハースの気持ちを動かすことのできる人間は、きっとアリス以外にはいないだろう。
グリーンは、ハースの勉強のしかたについては二度と口を出すまいと誓った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
148
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる