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United Japanese tea varieties of Iratsuko(8)
宙宇るす流逆(4)
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敵に近づけるのは自分だけだとアサヒが気づいた時、既に身体が勝手に動いていた。
勢いをつけ、敵にタックルする。
始めこそ衝撃があったものの、ソレに続いて訪れると思っていた抵抗感は少なかった。
顔を上げると、敵がフランシスから離れて後ろ向きに窓に向かってジャンプしていた。
敵の身体が窓枠を越えると、ガラスの破片が宙に浮かんで戻り、窓を構成し直した。
そのまま敵の身体は、向かいのビルの屋上へと消えていった。
「飛び込んで入って来たってコトか……」
フランシスが呟く。
「安全じゃあなくなったというコトかしら?」
「いや、逆だろ。敵は俺たちを見つけて入って来たんだから、今は敵からすれば見つける前ってコトだ」
「そうかしら? 気づけばまだ、この部屋はボロボロだわ。弾丸が“巻き戻ってきそうな”弾痕だって山ほどある。コレから私たちが殺される。ヤツらから見れば、死んでた私たちが起き上がったのに気づいたから、今のヤツが飛び込んできたのかも」
「ちょっと待て、整理させろ」
ジュディとムサシが問答を繰り広げる。アサヒが割って入った。
「いえ、どうやら……今、僕が見つかったから、入って来たようです。敵の姿を追いかけて窓際に今、近づいた僕を向こうからさっきのヤツが見つけました」
「なるほど。つまり、お前のミスか」
「……すみません」
アサヒにムサシがキツく当たる。
ムサシはアサヒに近づくと、肩を叩いて笑った。
「冗談だよ! フランシスを助けて、敵の姿を見失うまいと思ったら敵に見つかって、フランシスが襲われたワケだ。こんな因果律は誰も読めっこないさ。頭がおかしくなっちまう」
「ムサシさん、冗談っぽくないから怖いんですよ……」
ジュディとフランシスも吹き出した。
◇◇◇
その後、隠れていたビルを出て、上手く廃墟群を利用しながら敵に見つかることなく進んだ。
廃墟が消え始め、自然物が多くなってきた。
気づくと一行は、森の中を進んでいた。人工物がほとんど、自然に還っていきつつあるような光景の森だ。
とは言え、落葉は樹々へと地面から舞い戻っている。
長い目で見れば、この森は“人工物へと還っていっている”森なのだろう。
ジュディが手のひらの上に、ホログラムのマップを投影した。
「道程の半ばまで踏破したわ。あと半分でこの廃都からも脱出できる」
「相変わらずオプティミスト(楽天主義)だな。まだ半分もあるのかよ」
「どちらにせよ歩くしかないのだから、私の思考の方がプラグマティック(実用的)でもあるわよ。実用的なのはお好きではなくて? ムサシさん」
「おっと、プラグマティストの俺にソレを言うなら、反論はあるぜ。もしも俺なら、道程についてはまだ頭の中で把握してるから、こんなトコで地図を展開して再確認したりはしないねえ。目的地の遠さを思い知らされて、意欲が削がれるだけだからな」
ジュディとムサシの討論の光景を見ながら、アサヒがフランシスに呟く。
「相変わらず、二人とも尖ってますね」
「そうか? ああいう思想の投げ合いを始めたってコトは、久方ぶりに二人とも楽しんでるってコトだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ。アイツらは本質的には、甘噛みし合うのが好きなタチなんだよ。つまるところ、どっちもS」
「うるせえな。聞こえてるぞ、お前ら」
勢いをつけ、敵にタックルする。
始めこそ衝撃があったものの、ソレに続いて訪れると思っていた抵抗感は少なかった。
顔を上げると、敵がフランシスから離れて後ろ向きに窓に向かってジャンプしていた。
敵の身体が窓枠を越えると、ガラスの破片が宙に浮かんで戻り、窓を構成し直した。
そのまま敵の身体は、向かいのビルの屋上へと消えていった。
「飛び込んで入って来たってコトか……」
フランシスが呟く。
「安全じゃあなくなったというコトかしら?」
「いや、逆だろ。敵は俺たちを見つけて入って来たんだから、今は敵からすれば見つける前ってコトだ」
「そうかしら? 気づけばまだ、この部屋はボロボロだわ。弾丸が“巻き戻ってきそうな”弾痕だって山ほどある。コレから私たちが殺される。ヤツらから見れば、死んでた私たちが起き上がったのに気づいたから、今のヤツが飛び込んできたのかも」
「ちょっと待て、整理させろ」
ジュディとムサシが問答を繰り広げる。アサヒが割って入った。
「いえ、どうやら……今、僕が見つかったから、入って来たようです。敵の姿を追いかけて窓際に今、近づいた僕を向こうからさっきのヤツが見つけました」
「なるほど。つまり、お前のミスか」
「……すみません」
アサヒにムサシがキツく当たる。
ムサシはアサヒに近づくと、肩を叩いて笑った。
「冗談だよ! フランシスを助けて、敵の姿を見失うまいと思ったら敵に見つかって、フランシスが襲われたワケだ。こんな因果律は誰も読めっこないさ。頭がおかしくなっちまう」
「ムサシさん、冗談っぽくないから怖いんですよ……」
ジュディとフランシスも吹き出した。
◇◇◇
その後、隠れていたビルを出て、上手く廃墟群を利用しながら敵に見つかることなく進んだ。
廃墟が消え始め、自然物が多くなってきた。
気づくと一行は、森の中を進んでいた。人工物がほとんど、自然に還っていきつつあるような光景の森だ。
とは言え、落葉は樹々へと地面から舞い戻っている。
長い目で見れば、この森は“人工物へと還っていっている”森なのだろう。
ジュディが手のひらの上に、ホログラムのマップを投影した。
「道程の半ばまで踏破したわ。あと半分でこの廃都からも脱出できる」
「相変わらずオプティミスト(楽天主義)だな。まだ半分もあるのかよ」
「どちらにせよ歩くしかないのだから、私の思考の方がプラグマティック(実用的)でもあるわよ。実用的なのはお好きではなくて? ムサシさん」
「おっと、プラグマティストの俺にソレを言うなら、反論はあるぜ。もしも俺なら、道程についてはまだ頭の中で把握してるから、こんなトコで地図を展開して再確認したりはしないねえ。目的地の遠さを思い知らされて、意欲が削がれるだけだからな」
ジュディとムサシの討論の光景を見ながら、アサヒがフランシスに呟く。
「相変わらず、二人とも尖ってますね」
「そうか? ああいう思想の投げ合いを始めたってコトは、久方ぶりに二人とも楽しんでるってコトだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ。アイツらは本質的には、甘噛みし合うのが好きなタチなんだよ。つまるところ、どっちもS」
「うるせえな。聞こえてるぞ、お前ら」
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