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ラスト・コンテクスト Part2
プリマキナ・オルソグナス(24)
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沈黙が続く。
「……どうやら、意見はまとまったようだな。今の我らには、静寂を愉しむ時間はあるまい。ツヅキ殿、よいかね?」
「ええ、オレは構いませんが……皆の方は?」
「聞いてたわ」
メイの声が心に響く。
「今のトコロ、ソレしかないと思う……いいんですよね、ヴァーシュ卿?」
「うむ、私とツヅキ殿でデル・ゾーネへ戻る」
「どうやって戻るんです?」
「方法は一つしかあるまい。神器の一つ、鏡を使うのだ」
“場重ねの鏡”……暗黒山脈と外部の遠隔地を直接繋ぐ方法は、確かにソレしかなかった。
デル・ゾーネの一行もかつて、その力で暗黒山脈までの距離と時間を短縮したのだ。
「横から申し訳ないんですがぁ……あ、デル・ゾーネのウィー・シュタッシュトルテですぅ」
「知っておる。どうしたかね?」
「恐縮ですぅ。あの、お二人がココから去るとなると戦力が大きく削がれると思うのですが」
確かに、ヴァーシュと急須――砲瓶――の使える“ゼルテーネ”であるツヅキがいなくなるのは、二人とはいえ大きな戦力の喪失だった。
「埋め合わせになるかはわからないが……U.J.Iの“身体の分けられる”彼女と、ヴェルメロスの少年たちが各々の力を発揮できるようにしよう」
「せ、生体偽装魔法ですか!?」
カップの声だ。
その声からは、珍しい魔法を見るコトができるかもしれない期待感が隠しきれていなかった。
「さよう、その後は皆の努力次第だ。すまない」
「わかりました……じゃあ、お願いします」
メイの返答を聞くと、ヴァーシュは詠唱を行い、杖を振った。
「よし、では行くぞ」
「ええ。皆、悪い」
「大丈夫よ。アイツは私たちが何とかする」
蜘蛛の“炎”が薄まりつつある。
ヴァーシュが目の前の空間に杖を伸ばす。
その先に小さな点が現れたかと思うと、ソレが拡大した。
拡大した先の空間は、静かな廊下だった。
“口頭試問”の際に歩いた廊下だ。
ヴァーシュは歩みを進め、中に入る。
ツヅキもソレに続いた。
二人が向こう側へ消えると、空間は閉じた。
ちょうど蜘蛛の“炎”も消え、雄叫びを上げる。
“再開”の合図だ。
「さあ! ココからが本番よ!」
「ああ! 飛べなくっても全力でやるぜ!」
メイの傍らのオクルスが答える。
メイは彼を勢いよく振り返った。
「え? もう飛べるハズよ? さっきの話、聞いてなかったの?」
「え!? ……マジじゃんか! “アズール”が起動するぜ! やった! さっきの話ってなんだ? コレのコトか?」
「ええ、ヴァーシュ卿が生体偽装魔法を行ったから……」
「マジかよ! マジありがとうじゃんか! おーい皆、アズールが使えるぞ! ジュディの姉ちゃんも動けるんじゃあねえか!?」
それぞれが各々の機械を確認し始めた。
「ちょっと待って。ドコから“通信”を聞いてなかったの?」
「ドコって……なんか鍵の破壊を急がないとみたいなトコまでは聞いたぜ? 結論はでたのか?」
「結論どころか、ソレがでたから、ヴァーシュ卿とツヅキくんは戻ったのよ?」
「戻ったってドコにだ!? ……マジでいないじゃあねえか!」
オクルスが、ツヅキらがいた方向を確認して言った。
「何か……やっぱりおかしいわ」
メイの背筋に冷たいモノが走る。
しかし雄叫びを上げ終わった巨体は、その心配と焦燥に対処するコトをコレ以上許してはくれなかった。
「……どうやら、意見はまとまったようだな。今の我らには、静寂を愉しむ時間はあるまい。ツヅキ殿、よいかね?」
「ええ、オレは構いませんが……皆の方は?」
「聞いてたわ」
メイの声が心に響く。
「今のトコロ、ソレしかないと思う……いいんですよね、ヴァーシュ卿?」
「うむ、私とツヅキ殿でデル・ゾーネへ戻る」
「どうやって戻るんです?」
「方法は一つしかあるまい。神器の一つ、鏡を使うのだ」
“場重ねの鏡”……暗黒山脈と外部の遠隔地を直接繋ぐ方法は、確かにソレしかなかった。
デル・ゾーネの一行もかつて、その力で暗黒山脈までの距離と時間を短縮したのだ。
「横から申し訳ないんですがぁ……あ、デル・ゾーネのウィー・シュタッシュトルテですぅ」
「知っておる。どうしたかね?」
「恐縮ですぅ。あの、お二人がココから去るとなると戦力が大きく削がれると思うのですが」
確かに、ヴァーシュと急須――砲瓶――の使える“ゼルテーネ”であるツヅキがいなくなるのは、二人とはいえ大きな戦力の喪失だった。
「埋め合わせになるかはわからないが……U.J.Iの“身体の分けられる”彼女と、ヴェルメロスの少年たちが各々の力を発揮できるようにしよう」
「せ、生体偽装魔法ですか!?」
カップの声だ。
その声からは、珍しい魔法を見るコトができるかもしれない期待感が隠しきれていなかった。
「さよう、その後は皆の努力次第だ。すまない」
「わかりました……じゃあ、お願いします」
メイの返答を聞くと、ヴァーシュは詠唱を行い、杖を振った。
「よし、では行くぞ」
「ええ。皆、悪い」
「大丈夫よ。アイツは私たちが何とかする」
蜘蛛の“炎”が薄まりつつある。
ヴァーシュが目の前の空間に杖を伸ばす。
その先に小さな点が現れたかと思うと、ソレが拡大した。
拡大した先の空間は、静かな廊下だった。
“口頭試問”の際に歩いた廊下だ。
ヴァーシュは歩みを進め、中に入る。
ツヅキもソレに続いた。
二人が向こう側へ消えると、空間は閉じた。
ちょうど蜘蛛の“炎”も消え、雄叫びを上げる。
“再開”の合図だ。
「さあ! ココからが本番よ!」
「ああ! 飛べなくっても全力でやるぜ!」
メイの傍らのオクルスが答える。
メイは彼を勢いよく振り返った。
「え? もう飛べるハズよ? さっきの話、聞いてなかったの?」
「え!? ……マジじゃんか! “アズール”が起動するぜ! やった! さっきの話ってなんだ? コレのコトか?」
「ええ、ヴァーシュ卿が生体偽装魔法を行ったから……」
「マジかよ! マジありがとうじゃんか! おーい皆、アズールが使えるぞ! ジュディの姉ちゃんも動けるんじゃあねえか!?」
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「ちょっと待って。ドコから“通信”を聞いてなかったの?」
「ドコって……なんか鍵の破壊を急がないとみたいなトコまでは聞いたぜ? 結論はでたのか?」
「結論どころか、ソレがでたから、ヴァーシュ卿とツヅキくんは戻ったのよ?」
「戻ったってドコにだ!? ……マジでいないじゃあねえか!」
オクルスが、ツヅキらがいた方向を確認して言った。
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