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1章 なんで月に町が? なにそれ魔法??

泥棒、逮捕ー‼

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 「買ってきました~!」
心温は、元気にそう言いながらキッチンに入った。
「ちょうどいいわ! ありがとう‼」
ジュリエットは大声でそういうと、心温の手から卵をぶんどった。
普段のジュリエットからは想像できない行為である。
心温は一瞬呆然としたが、
(料理のことになると人が変わるのかな……)
と自分を無理やり納得させた。
まだアップルパイの完成までで時間があると考え、心温は暖炉手前のソファに座った。
 ソファでごろごろしていると、かすかに「泥棒ー‼」という声が聞こえた。
泥棒が出るとしたら無難に商店街だろう。
そう考えて心温は【ワープ】で商店街へ向かった。
タラべコスパは、【ワープ】を使えるのに呆然としていた。
 商店街に着くと、奥の方からフカヒレなどを持った男が走ってくる。
恐らくこの男の人が泥棒だと心温は考えた。
男は、最後の関門が子供と知って、
(これは盗めるぞ……。今日はフカヒレパーティーだ‼)
と確信していた。
奥の方にいた、「泥棒ー!」と叫んでいた女性も青ざめている。
だが、心温を軽視してはいけない。
心温はあっという間に『フカヒレ奪還作戦』のプランを思いついた。
「【ウィンド】!」
心温は【ウィンド】でフカヒレを奪う。
男はこんな子供に取られるとは思っていなかったか、
「ガ、ガキのくせに【ウィンド】使うとはなんだー! もしや大人か!?」
と声を上げた。
どう見ても身長が子供であるが、男は魔法で変身したと思い込んだ。
何で大人扱いされるのか首を傾げたが、心温ははっきりと言い放った。
「だれが大人ですか‼ あたしは小学五年生の11歳です‼ 大学の勉強わかりません!」
内容が謎だが。
心温が言い終わると「マジ!? 子供!?」「本当に子どもなのか‼」という声が聞こえてきた。
「ショウガクゴネンセイってなんだ?」という声もあったが。
「こ、この野郎ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
それを聞くなり男は心温に走ってきた。
手にはナイフを持っている。
「【ウィンド】」
普通に心温はナイフを奪う。
男の顔が青ざめる。
そして、
「【ウォーターヴァイン】」
水のつるで男を拘束する。
男はあっという間にびしょ濡れだ。
商店街の人間は、最初は呆然として無言だったが、すぐに歓声が上がった。
 「ヴァイン(vine)」とは、英語で「蔓」のことである。
魔法の呪文は、英語で構成されている。
だが心温は英語が得意ではない。
というか苦手科目である。
すらすら英語の呪文が出てきたのは、底知れぬ魔力のせいとしか考えられない。
普通は、一般的なアレンジの例を魔法学校などで習うのだが。
分からない場合は、「月ネット」で調べるほかない。
月ネットは、インターネットの月バージョン(パクリ)である。
 少したって、警察のような服の人が男を連行していった。
心温は、危うく【ウォーターヴァイン】を解除し忘れるところだった……。
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