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1章 なんで月に町が? なにそれ魔法??

おつかい

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 「あれまあもう終わったの? ちょうどいいわね。心温ちゃんにおつかいを頼みたいの。卵が二つしかなかったのよ。だから、卵を買ってきてくれる?」
いきなりの頼みごとに、心温は困惑する。
まだ、どうして月に町があるのかについても説明してもらっていないというのに、いきなり買い物とはレベルが高すぎるでしょ。と心温は思った。
(それに、こんな派手な格好あんまり見られたくない……)
とも思った。
 黒のゴスロリに黒のヘッドドレス。クロスリボンシューズまで。
別に、令嬢としては恥ずかしくない格好なのだが。
「買うのは、最高級の『こだわり卵 美味』よ。その卵は金貨2枚で買えるから」
ジュリエットは隣接されているキッチンからそう言って、キラキラ光る何かを投げて心温に渡した。
それは、月が彫られた金貨二枚だった。
「ここから出て右に曲がると商店街があるの。そこの右側手前から二番目の店で売っているわ。じゃ、よろしく!」
完全に押し付けである。
まあ、月に慣れさせようとするジュリエットの厚意なのだが。
家には5万円くらい貯金があったのにな……。心温は、家の貯金箱を思い浮かべた。
おそらく、一生取りには行けないであろう。
心温はあのお金を一生取りに行けないことにため息をついた。
 そういえば、最初魔法でここに来たんだよね。ジュリエットさん、【ワープ】って唱えてた。あたしも出来るかな!? 心温はそう思いついた。
心温は、早速試すことにした。
豪邸の玄関に行き、
(近くの商店街の右側手前から二番目の店に行きたい‼)
「【ワープ】!」
心温はそう唱えた。
 「お嬢ちゃん、ここは初めてだね? 初めて見る顔だよ」
そこで見たのは、白いハチマキをつけた男だった。
どうやら、無事についたらしい。
「えっと、ここって『こだわり卵 美味』買えますか?」
「おう! 買えるぜ!」
ずいぶん元気な(?)人だなあ。と心温は思った。
「はい、それください。金貨です」
心温は、木製のカルトンに金貨を置いた。
「あいよ! まいどあり‼」
すぐに、活発な答えが返ってきた。
「ありがとうございました! 【ワープ】」
すぐに呪文を唱え、家に帰った(?)。
 店の男は、心温が【ワープ】を使えることに困惑していた。
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