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第1章:Blue Blood Panic
4.事のあらまし
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≪前回のあらすじ≫
旧知が怪しい話(依頼)を持ってきた。
================================================================
「あれぇ、アー君はその吸血ちゃんに会ってるの?」
「そう、あれはたまたま帰りが遅くなった夜のことだ。第三の被害者が血を吸われているところを 目撃した。・・・アー君と呼ぶんじゃない。」
「へぇ、それは大変だったねぇ。」
「あぁ、本当に参ったことだ。」
「お前らな、ただ茶飲みついでの世間話をしてるんじゃねぇんだぞ。」
「アドルフ、何でその時に対処しとかなかったんだ?一線を退いたとはいえお前結構な腕だろ。」
二人のスローペースな会話にさすがにしびれを切らしたリューガが口をはさんだ。
「それはだな、・・・・・怖かったのだ」
アドルフは消え入りそうな声でつぶやいた。
「なにぃ?」
「くっ、怖かったのだ!!丸腰の時に深夜に月明かりの下で生き血を啜っている人影を見かけてみろ。そりゃ怖いわ!ビビるわ!腰も抜かすわっ!!逃げ出したくなるわっ!!私だって怖いものの一つや二つある!!!!」
ものすごい剣幕で必死にまくし立てるアドルフにカイルは爆笑、リュウガは呆れ、サクラはそそくさと追加のコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。
声にこそ出さないが「アドルフさんって意外とヘタレなんですね」と表情が物語っていた。
そんな風にブリッツの面々が三者三様の反応を示している中、主の扱いに耐えかねた護衛の一人がついに口を開いた。
「貴様ら、黙って聴いていれば、先ほどから卿への度重なる無礼、許さんぞ。」
「あぁ、ごめんねぇ。アドルフとは結構古い仲だから話してると楽しくって。」
「二度は言わない。今すぐ謝罪しろ。」
警告と共に、護衛の二人は再び腰の拳銃へと手を伸ばしたがその手は空を切った。
「なっ………」
今までポーカーフェイスをつらぬいていた護衛たちも流石に驚きを隠せない。
なぜなら、護衛たちの腰のホルスターに収められていたはずの拳銃が、どういう訳かカイルの手の中でクルクルと回っているのだから。
まるで手品のワンシーンを見ているかのようだ。
「きっ、貴様いつの間に………」
「大変失礼を、こちらお返し致します。」
わけがわからないという表情をしている護衛たちにカイルはさわやかに微笑みながら仰々しく拳銃を返した。
「だからここへ来る前に言ったであろう。こいつらに常識的に挑んでも無駄なのだ。お前達、いいから外で待っていろ。」
再び真面目な表情を取り戻したアドルフは諦めた様に言った。
「まぁこんなもの使われて店の備品が壊れでもしたらまたサクラに怒られるからねぇ。それにさ、もっと詳しく吸血鬼の話を聞きたいし。」
カイルの表情も珍しく真面目であった。
「そうだな、話を戻そう。私が見た吸血鬼だが、誰かはわかっている。あれはミシュラン家現当主のデイズ様だ。最近パーティーで何度か御挨拶したこともあるので間違いない。」
「確かデイズ様といえば、貴族にしては珍しく僕ら平民にも対等に接してくださると有名な貴族様じゃなかったっけ。」
「あぁ、私もいまだに信じられん。」
「なるほど、相手が貴族ならばいかに政府のお偉方でも下手には動けねぇわな。」
この国の身分制度は厳密なのである。
いまだに何世紀も前のような貴族と平民において大きな扱いの差がある。
もっとも近年においては、昔ほどの絶対絶大な影響力を持つものは減り、自らの実力以上にプライドを重視するあまり没落する貴族や急激に成り上がり貴族の名を買い上げる平民も現れているとか。
「表向き、我々政府の命に貴族は従う構造になっているのだが、実際のところ裏で貴族がその命令を決定しているのが実情だ。貴族達から莫大な額の寄付抜きに現行の政府の機能維持は不可能だからな。本質的には我々は大貴族の意向には逆らえないように出来ているのだよ。もっとも、そんなことはブルーフォードの名を語る貴様が一番よく分かっているだろうがな。」
意味深なアドルフの言葉にもカイルは普段どおりのさわやかな笑みを保っていたがサクラの表情が一瞬曇ったのをアドルフは見逃さなかった。
「まぁ、そんなことは今はどうでもよいことだったな。とにかく依頼の概要は分かったか?」
「えぇ、それではこの「吸血鬼退治」の依頼。引き受けるとしましょうかねぇ。」
カイルのその言葉にサクラが契約手続きの書類を作成しようと机に向かったとき、リュウガが面倒くさそうに言った。
「・・・それで、さっきからそこにいるそいつはいったいだれなんだ?」
あまりに突然の発言に一瞬の間があった。
「んん?何言ってんのリューガ。そいつっていったい誰のこと?」
サクラも何のことかと首をひねっているがアドルフだけは納得したような表情をしていた。
「扉の向こうで物音一つたてない者の気配まで読み取るとは流石だな。実は今回は貴様らにもう1つ依頼がある。そのためにこんな薄汚いところまでわざわざ御足労頂いたのだ。お連れしろ!」
アドルフの命令を受け、先ほど外に出て待機していた護衛たちが、何でも屋「BLITZ(ブリッツ)」の扉を開き、両脇を守るように直立する。
そこには深い青色の見るからに上等な衣を纏い、ウェーブのかかったグレーのセミロングの髪にやわらかな瞳、透き通るような肌をした少女が立っていた。
================================================================
~登場人物紹介~
・アドルフ・ヴァルト:偉い眼鏡。論理の通じないオカルト的な話が苦手。
・カイル・ブルーフォード:廃棄区画にて「なんでも屋 BLITZ」を営む。大体適当。
・リュウガ・ナギリ(百鬼 龍牙):「なんでも屋 BLITZ」のメンバー。気配が読めるらしい。
・サクラ・ブルーフォード:カイルの妹。意外と辛辣。
旧知が怪しい話(依頼)を持ってきた。
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「あれぇ、アー君はその吸血ちゃんに会ってるの?」
「そう、あれはたまたま帰りが遅くなった夜のことだ。第三の被害者が血を吸われているところを 目撃した。・・・アー君と呼ぶんじゃない。」
「へぇ、それは大変だったねぇ。」
「あぁ、本当に参ったことだ。」
「お前らな、ただ茶飲みついでの世間話をしてるんじゃねぇんだぞ。」
「アドルフ、何でその時に対処しとかなかったんだ?一線を退いたとはいえお前結構な腕だろ。」
二人のスローペースな会話にさすがにしびれを切らしたリューガが口をはさんだ。
「それはだな、・・・・・怖かったのだ」
アドルフは消え入りそうな声でつぶやいた。
「なにぃ?」
「くっ、怖かったのだ!!丸腰の時に深夜に月明かりの下で生き血を啜っている人影を見かけてみろ。そりゃ怖いわ!ビビるわ!腰も抜かすわっ!!逃げ出したくなるわっ!!私だって怖いものの一つや二つある!!!!」
ものすごい剣幕で必死にまくし立てるアドルフにカイルは爆笑、リュウガは呆れ、サクラはそそくさと追加のコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。
声にこそ出さないが「アドルフさんって意外とヘタレなんですね」と表情が物語っていた。
そんな風にブリッツの面々が三者三様の反応を示している中、主の扱いに耐えかねた護衛の一人がついに口を開いた。
「貴様ら、黙って聴いていれば、先ほどから卿への度重なる無礼、許さんぞ。」
「あぁ、ごめんねぇ。アドルフとは結構古い仲だから話してると楽しくって。」
「二度は言わない。今すぐ謝罪しろ。」
警告と共に、護衛の二人は再び腰の拳銃へと手を伸ばしたがその手は空を切った。
「なっ………」
今までポーカーフェイスをつらぬいていた護衛たちも流石に驚きを隠せない。
なぜなら、護衛たちの腰のホルスターに収められていたはずの拳銃が、どういう訳かカイルの手の中でクルクルと回っているのだから。
まるで手品のワンシーンを見ているかのようだ。
「きっ、貴様いつの間に………」
「大変失礼を、こちらお返し致します。」
わけがわからないという表情をしている護衛たちにカイルはさわやかに微笑みながら仰々しく拳銃を返した。
「だからここへ来る前に言ったであろう。こいつらに常識的に挑んでも無駄なのだ。お前達、いいから外で待っていろ。」
再び真面目な表情を取り戻したアドルフは諦めた様に言った。
「まぁこんなもの使われて店の備品が壊れでもしたらまたサクラに怒られるからねぇ。それにさ、もっと詳しく吸血鬼の話を聞きたいし。」
カイルの表情も珍しく真面目であった。
「そうだな、話を戻そう。私が見た吸血鬼だが、誰かはわかっている。あれはミシュラン家現当主のデイズ様だ。最近パーティーで何度か御挨拶したこともあるので間違いない。」
「確かデイズ様といえば、貴族にしては珍しく僕ら平民にも対等に接してくださると有名な貴族様じゃなかったっけ。」
「あぁ、私もいまだに信じられん。」
「なるほど、相手が貴族ならばいかに政府のお偉方でも下手には動けねぇわな。」
この国の身分制度は厳密なのである。
いまだに何世紀も前のような貴族と平民において大きな扱いの差がある。
もっとも近年においては、昔ほどの絶対絶大な影響力を持つものは減り、自らの実力以上にプライドを重視するあまり没落する貴族や急激に成り上がり貴族の名を買い上げる平民も現れているとか。
「表向き、我々政府の命に貴族は従う構造になっているのだが、実際のところ裏で貴族がその命令を決定しているのが実情だ。貴族達から莫大な額の寄付抜きに現行の政府の機能維持は不可能だからな。本質的には我々は大貴族の意向には逆らえないように出来ているのだよ。もっとも、そんなことはブルーフォードの名を語る貴様が一番よく分かっているだろうがな。」
意味深なアドルフの言葉にもカイルは普段どおりのさわやかな笑みを保っていたがサクラの表情が一瞬曇ったのをアドルフは見逃さなかった。
「まぁ、そんなことは今はどうでもよいことだったな。とにかく依頼の概要は分かったか?」
「えぇ、それではこの「吸血鬼退治」の依頼。引き受けるとしましょうかねぇ。」
カイルのその言葉にサクラが契約手続きの書類を作成しようと机に向かったとき、リュウガが面倒くさそうに言った。
「・・・それで、さっきからそこにいるそいつはいったいだれなんだ?」
あまりに突然の発言に一瞬の間があった。
「んん?何言ってんのリューガ。そいつっていったい誰のこと?」
サクラも何のことかと首をひねっているがアドルフだけは納得したような表情をしていた。
「扉の向こうで物音一つたてない者の気配まで読み取るとは流石だな。実は今回は貴様らにもう1つ依頼がある。そのためにこんな薄汚いところまでわざわざ御足労頂いたのだ。お連れしろ!」
アドルフの命令を受け、先ほど外に出て待機していた護衛たちが、何でも屋「BLITZ(ブリッツ)」の扉を開き、両脇を守るように直立する。
そこには深い青色の見るからに上等な衣を纏い、ウェーブのかかったグレーのセミロングの髪にやわらかな瞳、透き通るような肌をした少女が立っていた。
================================================================
~登場人物紹介~
・アドルフ・ヴァルト:偉い眼鏡。論理の通じないオカルト的な話が苦手。
・カイル・ブルーフォード:廃棄区画にて「なんでも屋 BLITZ」を営む。大体適当。
・リュウガ・ナギリ(百鬼 龍牙):「なんでも屋 BLITZ」のメンバー。気配が読めるらしい。
・サクラ・ブルーフォード:カイルの妹。意外と辛辣。
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