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第2章:Drug & Monsters Party
10.操心の魔女 1話
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読んでいただいている方ありがとうございます。
年末から身体をぶっ壊してダウンしておりました。
ぼちぼち更新していきますので、よろしくお願いいたします m💀m
≪前回のあらすじ≫
雨の日のBLITZ店内。
めったに鳴らない電話が鳴り響く。
それはカイルからだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
重厚な黒鉄の柵門、岩山からそのまま切り出したかのような分厚い門壁。
槍と刀剣に加え貴重な銃器で武装した門兵達。
カイルとエリスは世間話をしながらセントラルにある「上層地区(アッパーエリア)」のゲートまでやってきていた。
ここから先は貴族や政府関係者の住まうエリアであり、通行証(パス)を持たない市民は厳重な審査を受けなければ立ち入ることすら叶わない場所である。
「そこで止まれ。何者だ」
二人がパス所持者用のゲートに向かって歩みを進めていると、さっそく武装した兵士が行く手を遮った。
「ねえ、エリス。なんかここの警備前より厳重になってない?」
視線を兵士に合わせたままひそひそとエリスに訊ねるカイル。
「なんでも屋」を始めてから約2年、久しぶりにこの付近に足を運んだが以前はこんな物々しい様子ではなかった。
「ええ、まぁ色々と事情があるんですよ。カイルさん、少しここで待っていてください」
エリスはカイルをその場に残し、こちらへ向かってくる兵士の応対を始めた。
「【Fenrir】第2小隊隊長エリス・フランシスカです。通行許可をいただきたい」
「・・・見ない顔だ。【Fenrir】だと?お前がか?」
遠目からでも分かる程、フェンリルの名を聞いた途端、兵士達の態度が露骨に変わる。
ぞろぞろと集まってきた兵士達は、あきらかに嫌悪と侮蔑を含んだ目でエリスをじろじろ見下ろす。
「はぁ、【Fenrir】様ね。大戦のときは活躍したらしいが、今じゃ何をやってるのかよく分からねえタダの穀潰し集団じゃねぇか」
「そういわず、お手柔らかにお願いします。ちゃんとこのとおり許可証も持っています。通していただけますよね?」
一方的に侮辱されてもエリスは眉一つ動かさず柔和な態度のまま、淡々と通行許可を求め話を続ける。
「偽物なんじゃないか?最近の偽造通行証は精度が高いからな。まぁ、仮にお前の言うことが本当だとしても。色物狂犬部隊の構成員に命令されるのも癪だ」
「なぁ、おい。通してほしけりゃ何か芸でもしてみな」
最後にやって来た別の兵士がニヤニヤと嫌味ったらしく口元を歪め、エリスを足の先から頭の天辺まで品定めするように眺めそう言った。
「そりゃいい!そうだな退屈凌ぎにストリップでもしてくれよ。そしたらすぐにでも通してやるぜ」
また別の兵士が滑稽な仕草で身体をくねらせて馬鹿にする様子を側の者が指笛を吹いて煽る。
「いやいや、ちょっと待って......」
余りにも酷い兵士達の態度を見かねたカイルが駆け寄って間に割って入ろうとしたその時。
エリスが突然大笑いし始めた。
「フフ、アッハッハッハハハハ!フフフフフフ、ハハハ....」
「・・・何がおかしい?」
一方、兵士達は一同に眉をひそめ、怪訝そうな目で突然笑い始めたエリスの様子を見ている。
「ふぅ、失礼。軍属の質の低下も来るところまできましたね。まさかたった数年で平和ボケが軍服を着ている様な間抜けがこんなに増えてしまうとは。実に嘆かわしいことです」
ひとしきり大笑いした後、エリスの身にまとうオーラがガラリと刺々しいものにガラリと変わる。
(あー、不味いかも)
そんなエリスの様子を見たカイルに緊張が走る。
「何ぃ!?お前、誰に向かって」
「おい、バカ!こんなところで騒ぎを起こすな」
くねくねと妙な踊りをしていた兵士が眉を釣り上げて、エリスに食ってかかる。
仲間の制止も聞かず、肩を怒らせてエリスの胸ぐらを掴みかかろうと詰め寄って来る。
しかし、エリスは動じない。
静かに右腕を顔の横に持ち上げ、指をパチンと打ち鳴らして一言こう発した。
『「止まりなさい」」』
「はぁ?何を....」
歩み寄ってきていた兵士は、一瞬立ち止まり理解できないエリスの行動を怪訝そうな顔で見たが、すぐさま歩みを再開。
そして自らの身に起こった異変に気が付いた。
ー 脚が動かないー
まるで石畳の隙間から見えない糸が通され、地面に足が縫い付けられてしまったかのようにその場から一歩も動けなくなってしまった。
普段はそんなことはしないが全意識を脚に集中し、何とか動かそうと試みる。
しかし、動かない。
脚のみ自らの意思の通わない彫刻にでもなってしまったかのようにピクリとも動かすことが出来なくなっていた。
「クソ!お前魔術師か!!」
「ええ、私は【Fenrir】第2小隊隊長だとアナタに名乗りましたよ。まさか軍属の端くれの癖に我々【Fenrir】がどういう集団だということすら知らないのですか?」
そしていつの間に着替えたのだろうか。
兵士の目に映る彼女の服装はラフな私服から、かろうじて軍服をベースにしていると分かる様な黒地に赤のラインが縁取られた大きなフードのついた奇妙な服へと変化していた。
「おい、女!お前がどこの誰でも何でもいい。さっさとこのツマラン手品を止めろ!」
自らの脚が動かない事に苛立ち、エリスのことを睨みつけながら未だ好戦的な態度を崩そうとしない兵士。
その様子にほんのエリスの目が少し細められ、少し口の端が歪められたように見えた。
「『手品』ですか。面白いことを言いますね。確かにタネも仕掛けもあります。そうですね・・・では、1つゲームをしましょうか。アナタが手品とバカにするこの『術式』を無事解除するのと、アナタが自殺するのとどちらが早いのか」
「はぁ?何をフザけたことを」
「無知は罪です。そして時にその罪は己が命で贖うしかない。さぁさぁ、お仲間の皆さんも賭けてください。彼が手品の種を見破ることが出来るか、それとも死んでしまうか。準備はいいですか?それではスタート!」
いつもの上品かつ清涼感のある所作からは想像が難しいクスクスと嗜虐的な笑みを浮かべ、右手の人差し指を一本兵士に向けて突き出し、エリスは次の言の葉を紡いだ。
『「ゆっくり腰の物を引き抜いて、撃鉄を起こし、こめかみに当てなさい。そして180数えて......引き金を引きなさい」』
「や、止めろ!!クソぉおおおこんな手品ごとき.....」
自らの意思とは関係なく、右手が腰のホルスターに向かって伸びてゆく。
左手で自らの右手をへし折らんばかりの力で抑え込とうとするが止まらない。
「さて、答えがでるまで少し時間がありますから、1つクイズを出してあげましょう。オーディエンスの皆様も一緒に考えてみてください。問題です。『何故、我々があなた方のように規律に縛られず、独立独歩を保ち自由に振る舞うことができているのでしょうか?』さぁ、その足りない頭で考えてみなさい」
教壇の前をうろつく教師の様に腰に手を当て、ピンと立てた人差し指をクルクルと円を描くように回しながら楽し気にエリスは言う。
拳銃を引き抜いた仲間の様子を見て慌てて駆け寄ってきた兵士達がソレを取り上げようと必死で腕を掴んでいる様子を眺めながら。
「クソっ!!!止めてくれ!!!嫌だ!」
「・・・分からないようですね。答えは、『本気で我々を敵に回した際、抑えられる勢力がいないから』ですよ。伊達や酔狂でFenrir(神殺しの獣)名乗っているわけじゃないんです。わかりましたか?」
柔らかい表情はそのままに目が微塵も笑っていない恐ろしい笑顔。
カイルは静かに唾を飲み込む。
ああ、そうだ。
久しぶり過ぎて忘れていたけれど。
こっちが彼女の本性だった。
【Fenrir】は、8小隊で構成される組織であり、それぞれの小隊が特化した役割を担っている。
エリスの仕切る第2小隊が得意とするのは諜報、情報操作、そして暗殺。
そんな部隊の長である彼女が得意とするのは、人間の精神に作用する魔術。
派手な破壊力こそ持たないが、特に集団戦、工作活動においては恐ろしい威力を発揮する。
「フ、フランシスカ殿!これまでの無礼な態度を心よりお詫び申し上げる。どうか謝罪の機会をいただけないでしょうか。どうか、お慈悲を!!」
先ほどまでの無礼な態度は完全に鳴りを潜め、冷や汗を流しながら兵士達は必死に叫ぶ。
「どうしたんですか?急に態度を変えて。ふーむ、いまいち誠意が感じられませんね」
そんな彼らの懇願に対し、わざとらしく顎に手を添え何かを考える仕草を作るエリス。
表情だけは一見真剣に考えていそうな様子を作っているが、声のトーンが全てを物語っている。
ー20,19,18ー
「お願いです!!何卒お慈悲を!!!」
もう時間がない。
ついに兵士達は地面に膝をつき額を擦りつけも一斉に歎願を始めた。
拳銃をこめかみに突きつけている兵士は、目の前まで迫った己の死に瞳孔を開いたまま今にも心臓が破裂せんばかりの荒い呼吸を上げている。
ー4,3,2ー
「ふぅ」
短いため息と共にエリスは静かに目を閉じ、再び指を打ち鳴らした。
場に張り詰めた緊張の糸を断ち切るかの様に。
それを合図に術が解除されたのだろう。
拳銃自殺寸前だった男は、途端に膝からその場に崩れ落ち、失禁。
銃を握りしめたまま虚空を見つめ放心している。
「仲間に感謝するのですね。アナタは運がいいです。侮辱した相手が優しい私で。もし他の者なら今頃どうなっていたでしょうね。いいですか、今後は二度と我々(Fenrir)を侮らない事です」
相手に届いているかどうかはお構いなしにエリスは兵士達を一瞥して言った。
「お待たせして申し訳ありません。カイルさん。お恥ずかしい。お見苦しいところをお見せしました。さぁ、行きましょう!我らがホームへ」
カイルの元に戻ってきたエリスは、先程までの彼女とはまるで別人の様に柔らかい物腰に笑顔でそう言った。
その変貌ぶりにカイルは再び無意識に唾を飲む。
そう、本人には口が裂けても言えないが、実はカイルは昔からエリスのことが少し苦手なのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~登場人物紹介~
・カイル・ブルーフォード:【なんでも屋 BLITZ】を営む。
元【Fenrir】第1小隊隊長。
・エリス・フランシスカ:【Fenrir】第2小隊隊長。
年末から身体をぶっ壊してダウンしておりました。
ぼちぼち更新していきますので、よろしくお願いいたします m💀m
≪前回のあらすじ≫
雨の日のBLITZ店内。
めったに鳴らない電話が鳴り響く。
それはカイルからだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
重厚な黒鉄の柵門、岩山からそのまま切り出したかのような分厚い門壁。
槍と刀剣に加え貴重な銃器で武装した門兵達。
カイルとエリスは世間話をしながらセントラルにある「上層地区(アッパーエリア)」のゲートまでやってきていた。
ここから先は貴族や政府関係者の住まうエリアであり、通行証(パス)を持たない市民は厳重な審査を受けなければ立ち入ることすら叶わない場所である。
「そこで止まれ。何者だ」
二人がパス所持者用のゲートに向かって歩みを進めていると、さっそく武装した兵士が行く手を遮った。
「ねえ、エリス。なんかここの警備前より厳重になってない?」
視線を兵士に合わせたままひそひそとエリスに訊ねるカイル。
「なんでも屋」を始めてから約2年、久しぶりにこの付近に足を運んだが以前はこんな物々しい様子ではなかった。
「ええ、まぁ色々と事情があるんですよ。カイルさん、少しここで待っていてください」
エリスはカイルをその場に残し、こちらへ向かってくる兵士の応対を始めた。
「【Fenrir】第2小隊隊長エリス・フランシスカです。通行許可をいただきたい」
「・・・見ない顔だ。【Fenrir】だと?お前がか?」
遠目からでも分かる程、フェンリルの名を聞いた途端、兵士達の態度が露骨に変わる。
ぞろぞろと集まってきた兵士達は、あきらかに嫌悪と侮蔑を含んだ目でエリスをじろじろ見下ろす。
「はぁ、【Fenrir】様ね。大戦のときは活躍したらしいが、今じゃ何をやってるのかよく分からねえタダの穀潰し集団じゃねぇか」
「そういわず、お手柔らかにお願いします。ちゃんとこのとおり許可証も持っています。通していただけますよね?」
一方的に侮辱されてもエリスは眉一つ動かさず柔和な態度のまま、淡々と通行許可を求め話を続ける。
「偽物なんじゃないか?最近の偽造通行証は精度が高いからな。まぁ、仮にお前の言うことが本当だとしても。色物狂犬部隊の構成員に命令されるのも癪だ」
「なぁ、おい。通してほしけりゃ何か芸でもしてみな」
最後にやって来た別の兵士がニヤニヤと嫌味ったらしく口元を歪め、エリスを足の先から頭の天辺まで品定めするように眺めそう言った。
「そりゃいい!そうだな退屈凌ぎにストリップでもしてくれよ。そしたらすぐにでも通してやるぜ」
また別の兵士が滑稽な仕草で身体をくねらせて馬鹿にする様子を側の者が指笛を吹いて煽る。
「いやいや、ちょっと待って......」
余りにも酷い兵士達の態度を見かねたカイルが駆け寄って間に割って入ろうとしたその時。
エリスが突然大笑いし始めた。
「フフ、アッハッハッハハハハ!フフフフフフ、ハハハ....」
「・・・何がおかしい?」
一方、兵士達は一同に眉をひそめ、怪訝そうな目で突然笑い始めたエリスの様子を見ている。
「ふぅ、失礼。軍属の質の低下も来るところまできましたね。まさかたった数年で平和ボケが軍服を着ている様な間抜けがこんなに増えてしまうとは。実に嘆かわしいことです」
ひとしきり大笑いした後、エリスの身にまとうオーラがガラリと刺々しいものにガラリと変わる。
(あー、不味いかも)
そんなエリスの様子を見たカイルに緊張が走る。
「何ぃ!?お前、誰に向かって」
「おい、バカ!こんなところで騒ぎを起こすな」
くねくねと妙な踊りをしていた兵士が眉を釣り上げて、エリスに食ってかかる。
仲間の制止も聞かず、肩を怒らせてエリスの胸ぐらを掴みかかろうと詰め寄って来る。
しかし、エリスは動じない。
静かに右腕を顔の横に持ち上げ、指をパチンと打ち鳴らして一言こう発した。
『「止まりなさい」」』
「はぁ?何を....」
歩み寄ってきていた兵士は、一瞬立ち止まり理解できないエリスの行動を怪訝そうな顔で見たが、すぐさま歩みを再開。
そして自らの身に起こった異変に気が付いた。
ー 脚が動かないー
まるで石畳の隙間から見えない糸が通され、地面に足が縫い付けられてしまったかのようにその場から一歩も動けなくなってしまった。
普段はそんなことはしないが全意識を脚に集中し、何とか動かそうと試みる。
しかし、動かない。
脚のみ自らの意思の通わない彫刻にでもなってしまったかのようにピクリとも動かすことが出来なくなっていた。
「クソ!お前魔術師か!!」
「ええ、私は【Fenrir】第2小隊隊長だとアナタに名乗りましたよ。まさか軍属の端くれの癖に我々【Fenrir】がどういう集団だということすら知らないのですか?」
そしていつの間に着替えたのだろうか。
兵士の目に映る彼女の服装はラフな私服から、かろうじて軍服をベースにしていると分かる様な黒地に赤のラインが縁取られた大きなフードのついた奇妙な服へと変化していた。
「おい、女!お前がどこの誰でも何でもいい。さっさとこのツマラン手品を止めろ!」
自らの脚が動かない事に苛立ち、エリスのことを睨みつけながら未だ好戦的な態度を崩そうとしない兵士。
その様子にほんのエリスの目が少し細められ、少し口の端が歪められたように見えた。
「『手品』ですか。面白いことを言いますね。確かにタネも仕掛けもあります。そうですね・・・では、1つゲームをしましょうか。アナタが手品とバカにするこの『術式』を無事解除するのと、アナタが自殺するのとどちらが早いのか」
「はぁ?何をフザけたことを」
「無知は罪です。そして時にその罪は己が命で贖うしかない。さぁさぁ、お仲間の皆さんも賭けてください。彼が手品の種を見破ることが出来るか、それとも死んでしまうか。準備はいいですか?それではスタート!」
いつもの上品かつ清涼感のある所作からは想像が難しいクスクスと嗜虐的な笑みを浮かべ、右手の人差し指を一本兵士に向けて突き出し、エリスは次の言の葉を紡いだ。
『「ゆっくり腰の物を引き抜いて、撃鉄を起こし、こめかみに当てなさい。そして180数えて......引き金を引きなさい」』
「や、止めろ!!クソぉおおおこんな手品ごとき.....」
自らの意思とは関係なく、右手が腰のホルスターに向かって伸びてゆく。
左手で自らの右手をへし折らんばかりの力で抑え込とうとするが止まらない。
「さて、答えがでるまで少し時間がありますから、1つクイズを出してあげましょう。オーディエンスの皆様も一緒に考えてみてください。問題です。『何故、我々があなた方のように規律に縛られず、独立独歩を保ち自由に振る舞うことができているのでしょうか?』さぁ、その足りない頭で考えてみなさい」
教壇の前をうろつく教師の様に腰に手を当て、ピンと立てた人差し指をクルクルと円を描くように回しながら楽し気にエリスは言う。
拳銃を引き抜いた仲間の様子を見て慌てて駆け寄ってきた兵士達がソレを取り上げようと必死で腕を掴んでいる様子を眺めながら。
「クソっ!!!止めてくれ!!!嫌だ!」
「・・・分からないようですね。答えは、『本気で我々を敵に回した際、抑えられる勢力がいないから』ですよ。伊達や酔狂でFenrir(神殺しの獣)名乗っているわけじゃないんです。わかりましたか?」
柔らかい表情はそのままに目が微塵も笑っていない恐ろしい笑顔。
カイルは静かに唾を飲み込む。
ああ、そうだ。
久しぶり過ぎて忘れていたけれど。
こっちが彼女の本性だった。
【Fenrir】は、8小隊で構成される組織であり、それぞれの小隊が特化した役割を担っている。
エリスの仕切る第2小隊が得意とするのは諜報、情報操作、そして暗殺。
そんな部隊の長である彼女が得意とするのは、人間の精神に作用する魔術。
派手な破壊力こそ持たないが、特に集団戦、工作活動においては恐ろしい威力を発揮する。
「フ、フランシスカ殿!これまでの無礼な態度を心よりお詫び申し上げる。どうか謝罪の機会をいただけないでしょうか。どうか、お慈悲を!!」
先ほどまでの無礼な態度は完全に鳴りを潜め、冷や汗を流しながら兵士達は必死に叫ぶ。
「どうしたんですか?急に態度を変えて。ふーむ、いまいち誠意が感じられませんね」
そんな彼らの懇願に対し、わざとらしく顎に手を添え何かを考える仕草を作るエリス。
表情だけは一見真剣に考えていそうな様子を作っているが、声のトーンが全てを物語っている。
ー20,19,18ー
「お願いです!!何卒お慈悲を!!!」
もう時間がない。
ついに兵士達は地面に膝をつき額を擦りつけも一斉に歎願を始めた。
拳銃をこめかみに突きつけている兵士は、目の前まで迫った己の死に瞳孔を開いたまま今にも心臓が破裂せんばかりの荒い呼吸を上げている。
ー4,3,2ー
「ふぅ」
短いため息と共にエリスは静かに目を閉じ、再び指を打ち鳴らした。
場に張り詰めた緊張の糸を断ち切るかの様に。
それを合図に術が解除されたのだろう。
拳銃自殺寸前だった男は、途端に膝からその場に崩れ落ち、失禁。
銃を握りしめたまま虚空を見つめ放心している。
「仲間に感謝するのですね。アナタは運がいいです。侮辱した相手が優しい私で。もし他の者なら今頃どうなっていたでしょうね。いいですか、今後は二度と我々(Fenrir)を侮らない事です」
相手に届いているかどうかはお構いなしにエリスは兵士達を一瞥して言った。
「お待たせして申し訳ありません。カイルさん。お恥ずかしい。お見苦しいところをお見せしました。さぁ、行きましょう!我らがホームへ」
カイルの元に戻ってきたエリスは、先程までの彼女とはまるで別人の様に柔らかい物腰に笑顔でそう言った。
その変貌ぶりにカイルは再び無意識に唾を飲む。
そう、本人には口が裂けても言えないが、実はカイルは昔からエリスのことが少し苦手なのである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~登場人物紹介~
・カイル・ブルーフォード:【なんでも屋 BLITZ】を営む。
元【Fenrir】第1小隊隊長。
・エリス・フランシスカ:【Fenrir】第2小隊隊長。
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