34 / 37
第2章:Drug & Monsters Party
9.雨季 2話
しおりを挟む
≪前回のあらすじ≫
古巣の【Fenrir】へ戻ることを決めたカイル。
晴れない気持ちのまま1人【STRAND】を訪れていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雨季に入ったモスグルンは、毎日鈍色の空。
今日もシトシトと雨が降り続く音だけが聞こえる。
いつも以上に活気のないBLITZの店内。
雨音が眠気を誘う。
ジリリリリ………とめったに鳴ることのない電話のベルの音が耳に刺さった。
背筋を真っすぐ伸ばし、まるで起きているかのような姿勢で椅子に腰掛けたまま睡眠をとっていたリュウガは、静かに立ち上がった。
普段は面倒だから気づかないふりをしてシレっと電話をサクラ達に任せている節があるのだが、今回は2階にいる彼女達に気づかれないよう、素早く受話器をとった。
「はい、こちら何でも屋BLITZ」
「あぁ、リューガ、一回で出てくれてよかったよ!外からかけてるんだけど今あんまり手持ちなくてさ」
「そりゃいつものことだろうが。で、要件はなんだ」
内容なんてわかっている。
「あぁ、実は久しぶりに急ぎの用事ができちゃってさぁ、例の議員の息子さんの件、今回の人探し依頼からはしばらく外れなきゃいけなくなりそうなんだよね。だからさ、少しの間任せちゃってもいいかな?」
「あぁ、わかった」
「あれ?マジで。なんかすごいあっさりじゃん!?俺もっとガミガミ言われるの覚悟してたんだけどね。まぁそういうわけだからさ、しばらく空けるってサクラたちにも伝えといてほしい」
「どれぐらいだ?」
「え?」
「その案件とやらが終わるのはいつだ?と聞いてる」
「ん~、現地見るまでちょっとわかんないかな。でもなるべく早く済ませるから」
「馬鹿野郎が」
「ん?なんて………」
「とっとと帰ってこい。それまで依頼は全て引き受けてやる。その代わり必ず戻ったら俺の5倍働け、いいな!!」
それだけ受話器に叫んで強引に電話を切った。
どうせここで何を話したところでアイツの考えは変わらない。
だから、「帰ってこい」とだけしか言えなかった。
「もう一度お前と殺し合うことになるかもしれねえな。皆を助けたいだかなんだか知らねえが下らねえ」」
リュウガは再び目を閉じ、深く深呼吸をした後グっと拳を握り締めた。
「どうしたんですか、リュウガさん!何があったんですか!?」
兄がいるとき以外に聞くことのない、リューガのどなり声と乱暴に電話を切った音に驚いて、2階で一緒にパズルを組み立てていたサクラとシェリルがパタパタと慌てた足音とともに、慌ててやってきた。
「スマン、気にするな。カイルからお前らに言伝だ」
「お兄様から?何でしょう?」
「『ちょっと用事ができちゃってさぁ、今回の依頼からしばらく外れることになりそうなんだよね。だから少しの間任せちゃってもいいかな?ヨロシクー。』だそうだ」
ピリピリとした空気を緩和させようという配慮のつもりなのか、眉一つ動かさず妙に似せた声色でカイルの言伝を話始たリュウガ。
その話ぶりにヘラヘラとした兄の姿がありありと目に浮かんだのか、サクラの眉が吊り上がる。
シェリルは・・・これはおそらく、カイルに似ているなと関心して聞いている顔だ。
「え~、なんですか ソレ。また前みたいに遊びに行ってるんじゃないでしょうねぇ・・・」
「ということは、しばらくリュウガさん一人でお仕事ですか、大変です」
「まぁそういうわけだ、俺はこれから情報を集めに行ってくる。今晩の夕飯、俺の分は作らなくていいから、たまには二人ともゆっくりしてな」
それだけ言い残すとリュウガは壁に掛けてあった墨色の上着を羽織り、雨の街へ出て行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ー同時刻ー
廃棄区画とは離れたセントラルエリアの片隅。
だが見上げると同じ空、同じ雨。
「いやぁ、待たせちゃってごめんねエリス」
電話ボックスから出てくるなり、カイルはばつが悪そうに軽く頭をかいた。
「いえいえ。それで無事にお話はついたのですか?」
「うん、さすが俺の相棒。話が早いよ」
「そうなんですか?私には喧嘩をしていたようにしか聞こえませんでした」
そんなカイルの様子を見て、エリスは少し目を細めクスクスと苦笑した。
「うん、誰かを本気で心配するとき照れくさいのか大体あんな感じなんだよ。超面白いよね。でも毎回毎回からかうたびにぶん殴るのは勘弁して欲しいけど」
楽しそうに語るカイルはとても自然に笑っている。
そう、この人はとても嘘をつくのが上手いのだ。
自分に対しても他人に対しても。
昔からのカイルを知るエリスはそれをよく分かっている。
「じゃあ早速ご挨拶に参りますかね」
「はい、カイルさん。御供致します」
「ハハッ、大袈裟だぁ、エリスは」
カイルは歩き出す。
エリスの差し出す傘に入りながら。
不安やもどかしさを洗い流さんと雨は大地を這い続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~登場人物紹介~
・カイル・ブルーフォード:【なんでも屋 BLITZ】を営む。
元【Fenrir】第1小隊隊長。
・リュウガ・ナギリ(百鬼 龍牙):【なんでも屋 BLITZ】のメンバー。
過去にはカイルと敵対していた。
・サクラ・ブルーフォード:カイルの妹。
主に兄の言動に頭を悩ませている。
・シェリル・ミシュラン:ミシュラン家ご令嬢。
いちよう吸血鬼。
・エリス・フランシスカ:【Fenrir】第2小隊隊長。
古巣の【Fenrir】へ戻ることを決めたカイル。
晴れない気持ちのまま1人【STRAND】を訪れていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雨季に入ったモスグルンは、毎日鈍色の空。
今日もシトシトと雨が降り続く音だけが聞こえる。
いつも以上に活気のないBLITZの店内。
雨音が眠気を誘う。
ジリリリリ………とめったに鳴ることのない電話のベルの音が耳に刺さった。
背筋を真っすぐ伸ばし、まるで起きているかのような姿勢で椅子に腰掛けたまま睡眠をとっていたリュウガは、静かに立ち上がった。
普段は面倒だから気づかないふりをしてシレっと電話をサクラ達に任せている節があるのだが、今回は2階にいる彼女達に気づかれないよう、素早く受話器をとった。
「はい、こちら何でも屋BLITZ」
「あぁ、リューガ、一回で出てくれてよかったよ!外からかけてるんだけど今あんまり手持ちなくてさ」
「そりゃいつものことだろうが。で、要件はなんだ」
内容なんてわかっている。
「あぁ、実は久しぶりに急ぎの用事ができちゃってさぁ、例の議員の息子さんの件、今回の人探し依頼からはしばらく外れなきゃいけなくなりそうなんだよね。だからさ、少しの間任せちゃってもいいかな?」
「あぁ、わかった」
「あれ?マジで。なんかすごいあっさりじゃん!?俺もっとガミガミ言われるの覚悟してたんだけどね。まぁそういうわけだからさ、しばらく空けるってサクラたちにも伝えといてほしい」
「どれぐらいだ?」
「え?」
「その案件とやらが終わるのはいつだ?と聞いてる」
「ん~、現地見るまでちょっとわかんないかな。でもなるべく早く済ませるから」
「馬鹿野郎が」
「ん?なんて………」
「とっとと帰ってこい。それまで依頼は全て引き受けてやる。その代わり必ず戻ったら俺の5倍働け、いいな!!」
それだけ受話器に叫んで強引に電話を切った。
どうせここで何を話したところでアイツの考えは変わらない。
だから、「帰ってこい」とだけしか言えなかった。
「もう一度お前と殺し合うことになるかもしれねえな。皆を助けたいだかなんだか知らねえが下らねえ」」
リュウガは再び目を閉じ、深く深呼吸をした後グっと拳を握り締めた。
「どうしたんですか、リュウガさん!何があったんですか!?」
兄がいるとき以外に聞くことのない、リューガのどなり声と乱暴に電話を切った音に驚いて、2階で一緒にパズルを組み立てていたサクラとシェリルがパタパタと慌てた足音とともに、慌ててやってきた。
「スマン、気にするな。カイルからお前らに言伝だ」
「お兄様から?何でしょう?」
「『ちょっと用事ができちゃってさぁ、今回の依頼からしばらく外れることになりそうなんだよね。だから少しの間任せちゃってもいいかな?ヨロシクー。』だそうだ」
ピリピリとした空気を緩和させようという配慮のつもりなのか、眉一つ動かさず妙に似せた声色でカイルの言伝を話始たリュウガ。
その話ぶりにヘラヘラとした兄の姿がありありと目に浮かんだのか、サクラの眉が吊り上がる。
シェリルは・・・これはおそらく、カイルに似ているなと関心して聞いている顔だ。
「え~、なんですか ソレ。また前みたいに遊びに行ってるんじゃないでしょうねぇ・・・」
「ということは、しばらくリュウガさん一人でお仕事ですか、大変です」
「まぁそういうわけだ、俺はこれから情報を集めに行ってくる。今晩の夕飯、俺の分は作らなくていいから、たまには二人ともゆっくりしてな」
それだけ言い残すとリュウガは壁に掛けてあった墨色の上着を羽織り、雨の街へ出て行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ー同時刻ー
廃棄区画とは離れたセントラルエリアの片隅。
だが見上げると同じ空、同じ雨。
「いやぁ、待たせちゃってごめんねエリス」
電話ボックスから出てくるなり、カイルはばつが悪そうに軽く頭をかいた。
「いえいえ。それで無事にお話はついたのですか?」
「うん、さすが俺の相棒。話が早いよ」
「そうなんですか?私には喧嘩をしていたようにしか聞こえませんでした」
そんなカイルの様子を見て、エリスは少し目を細めクスクスと苦笑した。
「うん、誰かを本気で心配するとき照れくさいのか大体あんな感じなんだよ。超面白いよね。でも毎回毎回からかうたびにぶん殴るのは勘弁して欲しいけど」
楽しそうに語るカイルはとても自然に笑っている。
そう、この人はとても嘘をつくのが上手いのだ。
自分に対しても他人に対しても。
昔からのカイルを知るエリスはそれをよく分かっている。
「じゃあ早速ご挨拶に参りますかね」
「はい、カイルさん。御供致します」
「ハハッ、大袈裟だぁ、エリスは」
カイルは歩き出す。
エリスの差し出す傘に入りながら。
不安やもどかしさを洗い流さんと雨は大地を這い続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~登場人物紹介~
・カイル・ブルーフォード:【なんでも屋 BLITZ】を営む。
元【Fenrir】第1小隊隊長。
・リュウガ・ナギリ(百鬼 龍牙):【なんでも屋 BLITZ】のメンバー。
過去にはカイルと敵対していた。
・サクラ・ブルーフォード:カイルの妹。
主に兄の言動に頭を悩ませている。
・シェリル・ミシュラン:ミシュラン家ご令嬢。
いちよう吸血鬼。
・エリス・フランシスカ:【Fenrir】第2小隊隊長。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる