幻想の森

たなた

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1章 出会い

出会い

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・・・・おい

その時、風の音ではない

静夜の月が鳴る振動が森の鼓動と混ざり合った気配がする

何事かと驚いて顔を上げる。

視界の端、暗い森の中の端に灯る光

眩さに目を細めながら見ると

暗がりの中に赤と黄色のフィルターが揺れ燃えるその灯篭を持った1つの人影が立っていた。徐々に灯りとともに人影も近づいてくる。

・・人?・・人が・いる。

その事にとてつもなく驚いた。

喜びと恐れと安堵の混ざり合ったような焦燥感を覚え

鉛のように重たい体を起こして少し後ずさりする。

・・・誰かいるのか、?

との声と目の前まで近づいてきた影は

艶やかな声と

地面につく長さの羽織を着て

その中からすらりとした脚がのぞいていた

何とも艶やかに感じてしまったその姿に目を奪われ、気が付けば

私の顔を覗き込むように青年の顔が眼前に迫っていた

灯篭の光に彼の顔があらわになる。

ふわりとした髪がかかる眠たそうな二重瞼

澄んだ湖底のような青い瞳

美形の薄い唇

あまりの美しさに息が止まっている私に

・・・こんなとこでなにしてる

怪訝そうに眉毛を寄せ、見た目に反してぶっきらぼうに言った

え・・と・・

私は言葉を失っていたことに気が付き、何か言わなくてはと慌てふためいて口を開く

あの・・・わからないです。・・・・気が付いたらここにいて。

彼は瞳を私に向けたまま気だるげに瞼を半分伏せる。

もしかして初めて来た?

え・・・?と

口から洩れると私がわからない事を察したようで、またため息をつかれる。その息は春夜の湖上に舞い降りる風を思わせた。

何処に住んでるの?家族は?

・・・えと・・・・・

・・・なまえは?

そう聞かれて気が付いた。私の名前ってなんだっけ

私はもう一度思い出そうとしても、何故か、その部分だけが抜き取られてしまったみたいに真っ白になっている

・・え・・と・・・・・・・・・わからないです

彼はまた春夜のため息をつくと呆れたような顔で私をみた

・・・結構重症だな

え?

いや、何でもない。

彼は、考え込んでいた顔を顔を上げて、私の両目をじっと見つめる

・・・幻想世界に来たのは初めてみたいだな。

・・・げんそうせかい?

心臓がドキマキしながら私は言葉を繰り返した。

ああ。ここは、現実じゃない。夢の中の世界なんだ。

ゆめのなか・・・?

そうだ。けど、たいてい君くらいの年齢の人は現実の世界のことも覚えてるはずなんだけど・・・・

とまた難しい顔で考え込んだ。


その時ひらひらと

小さい何かが私たちの間に落ちてきて

私は思わず手を伸ばす

手のひらの小さな桜の花びら

それが何故かとても愛おしく思えた

小さな体から私のことを見てくれているような気がして、そっと手の中に包み込んだ。


不意に立ち上がった気配がして見上げると、 ん と彼は私に手を差し出していた。

その手の意味が分からずに固まっていると

彼はいっそう手を開き私に突きつける。

。。桜の花びらが欲しいのかな

・・・少し名残惜しい気持ちを残しながらも彼の手にそっと置こうとした。けれど

・・ちがう

と、手に乗せる前に彼の手がどこかへ行ってしまう。驚いて見上げれば、少し不機嫌そうな顔があった。

・・それは、とっておけ。いつか使う時が来る。・・っ

すると彼はしびれを切らしたのか花弁を持ってないほうの私の手をしゃがんで強引につかむと、歩き出した。

え、あの! !。・・まって・どこに行くんですか・・・・

私はびっくりして勝手に手を引いてずんずん進む彼に聞くと

いいから、ついてこい

と不機嫌な声で言われてしまった。私はすっかり委縮してしまって、強い力で握られてしまっていて振り解けないし。足がつんのめりそうだし。

とりあえず転ばないように足元を必死に目を凝らすことで精いっぱいだった。
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