家族で異世界冒険譚(ターン)!第2部 ~永井家異世界東奔西走~ 改定版

武者小路参丸

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第15話 反撃開始──超神兵撃破と“移住”の宣言

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吹き抜ける風が、戦場の緊張を揺らしている。

開けた大礼拝堂前の外縁部。石混じりの地面に、先程までの戦闘の痕が散っている。

ミサオは、その中央で静かに息を整えていた。


隣にいるのは、小さな獣人の少年。

永井家の末っ子、ジョロ。

その前方に立つのは、白衣をまとった男。

赤い瞳に冷ややかな光を宿すエドワルド・ヤルセン。

聖職者の面影はある。だがその佇まいは、明らかにそれとは違うものだった。

「まさか、あの咆哮で防がれるとは・・・」

 エドワルドが細く笑う。

「その獣人の子が目覚めなければ、その女の命の灯火は間違い無くついえていた。惜しかったな・・・。」

「惜しかっただぁ?てめぇ!」

 ミサオの声に、怒りがこもる。

「てめぇ、俺のたった1人の大事な嫁さんに何してくれてんだコラッ!それだけじゃねぇ。ジョロを、ウチの家族を、試すみてぇに眺めやがって・・・!」

「観察は、必要でしたから。」
 エドワルドは涼しい顔で応える。

「・・・御方様も、永井家の存在に興味をお持ちです」

「てめぇの言ってる事の意味がイマイチわかんねぇが・・・上等だ。だったら永井家のケンカってのが、どういうもんか見せてやるよっ!」

ミサオが地を蹴る。

その瞬間、ジョロも並んで駆け出した。

向かって来る2人に向かってエドワルドが両手を掲げる。

風が止まり、音が一瞬消える。

ミサオとジョロの向かう先に、空間から無数のひび割れのような裂け目が生まれ、その裂け目が広がった。
 
そこから這い出した黒いモノ・・・触手にも霧にも似た異物が、2人に向かっていくつも襲ってくる。

「別の空間から這い出してくんのか・・・厄介だな!てか、気持ちわりぃっ!」

 ミサオが拳で応戦する。

しかし、攻撃当たらず空を切る。まるで立体の映像を掠めているような錯覚。霧散した霧が又集まって形を作り、ミサオに向かう。

「ジョロ、まずはあの野郎止めろ!足元!」

「うん!」

ジョロがその場で止まり、両膝をついて、地面に両手の平をあてる。。

エドワルドの足元から土が盛り上がり、複数の硬い岩の様な無数の槍が立ち上がった。

 いくつかの槍がエドワルドの脚を何度も掠め、わずかだがエドワルドの動きを鈍らせる。

 ミサオは迫りくる霧の触手をそのままに駆け抜け、エドワルドの顔面に拳を叩き込む!

「・・・てめぇは、御方様(おんかたさま)とか言う前に、まずこの拳の味でも知っとけやぁあああっ!」

 ミサオの怒りの一撃がまともに決まり、エドワルドの身体が吹き飛ぶ!

その瞬間に、裂けた空間からの触手も消える。

のけぞり、回転し、最後はバウンドしながらはるか遠くでその身の動きを止めるエドワルド。

意識が無くなったかの様に見えたエドワルドだったが、ほんの数秒でふらつきながらも立ち上がる。


白衣の端が裂け、髪が乱れている。

エドワルドの赤い目が、ほんのわずかだけ揺れた。

「・・・なるほど、確かに素材としては面白い。」

 そう言い放ったエドワルドの足元に、黒い霧が巻き上がる。

「観察は充分。今回はこれで良しとするか。・・・この国での活動も、手仕舞いとなるのが少し惜しいがな。」

「逃がすかよッ!!」

 ミサオが追おうとした瞬間、エドワルドの周囲の空気が急激に歪む。

 霧が身体を包み込み、エドワルドの姿が薄れ、曖昧に消えていく。

「また再会を期すとしよう、永井家。そして、御方様の為にも・・・こんな所でつまづく事が無い様にな。」

 黒い靄は強く吹いた風に吹き飛び、エドワルドの姿は跡形も無く消えた。

「チッ。舞台だけ引っかき回して、逃げ足だけは一級品かよっ!」

ミサオが舌打ちする。

 すぐに、隣で肩を上下させているジョロに目をやる。

「ジョロ・・・ありがとな。マミも、こうして無事だったのは、お前のおかげだ。」

「・・・僕、ちゃんと、守れた?」

「あぁ。完璧だ」

 ミサオは迷いなく頷く。

「さ、あの野郎の動きも気になるが、ムサシ達が動いてる。今度はお前も含めた全員でぶっ倒す番だ」

「・・・うん!行こう、パピ!」

 風が再び吹く。
二人の影が、広場を越え、兄弟たちのもとへと駆けていった。

・・・虹の橋からの3兄弟の前では、空間が軋んでいた。

振るう刃は通らず、放つ炎は吸い込まれ、降らせた氷も軌道を捻じ曲げられる。

ムサシ、コジロー、サンシロー。

永井家の三兄弟は、目の前に立つ異形に対し、かつてない理解不能を前にしていた。

異形・・・超神兵。

その姿は、神に逆い二つの命を無理やり一つに縫い合わせたような、おぞましい姿。

だが、恐ろしく合理的な兵器。

 頭は一つ。背中合わせに融合した二体の胴体。異なる骨格の腕が四本、左右4本が非対称の足。

 醜悪だが、動きには無駄がない。それは、戦うためだけに構築された(最適化された殺戮機構)。

「・・・斬撃、無効。反応が遅れているように見えて・・・いや、攻撃に先んじて周囲の空間を歪めているのか?」

ムサシが静かに分析する。

「ふん!・・・斬った後に再生している訳じゃない。斬る前に空間を歪めて、攻撃の軌道をずらしているのか。」

超神兵に傷一つ付かない理由を、ムサシは自らの攻撃の合間にも考えていた。

「ちょっ・・・なんだよそれ、意味わかんねぇ・・・!」

 コジローが炎を込めた拳を叩き込む。しかし、異形の左肩に届く寸前で、その異形の身体に付いた肉から黒い霧にじみ出て、吸い取るように炎を無効化した。

そしてコジローの拳は空を切る。

「うわっ・・・俺の炎、喰われた?」

コジローは驚愕している。

「サンくん、そっち!左から回って抑えろ!」

「やるけど・・・、コジョにーにーの攻撃、逸らされてるよねっ!」

コジローの指示に放たれたサンシローの氷の矢は、明らかに命中軌道だった。

それが、異形の身体から湧き出る黒い霧によって、斜めに曲げられて外れる。

その瞬間、超神兵が咆哮する。

だがそれは声ではなく、骨と肉が擦れるような、耳障りな軋みだった。
 
人語はない。ただ、生理的嫌悪と殺意だけが伝わってくる。

「・・・言語反応なし。意思疎通不可。兵器と見て差し支えない。」

 ムサシが短く告げた。

「そりゃ見ればわかるけど、どうすんだよ!ムッちょんにーにー!」

サンシローがムサシに詰問する。

「足止めに切り替える。今すぐの決定打は不要!制圧可能な領域を作るっ!」

ムサシが動く。

細かな攻撃を加えながら異形の視線を引き付け、超神兵をその場に繋ぎ止める。
 
コジローがムサシの攻撃の隙を狙って頭部に火弾を放ち、、サンシローが氷弾を足元に連射して、歩行しようとするのを阻害。

三方向からの連携によって、超神兵の動きが鈍る。

「今だ、サンくん、左腕を狙え!」

「わかった!」

「コジョ、上から叩き込め!」

「あ~いよっ!」

「沈黙せよ!3連重刃!

ムサシの指示に、2人も合わせる。

連携攻撃が炸裂。異形の巨体が、一歩、後退する。

「やはり足止めにもならんか・・・。」

唇を噛むムサシ。

その時、ムサシの背後から声が届く。

「よう、お楽しみの最中だったか?」

 ムサシが振り向くとそこには、こちらに向かって来る父と四男坊の姿。

「ウチの坊主どもが、お前さんの邪魔してすまねぇな!」

 ミサオが地を踏み鳴らしながら姿を現す。

その隣には、小さな獣人ジョロがいる。

「ムッちょんにーにー!サンくんにーにー!コジョにーにーっ!」

 コジマルが叫ぶ。

「パピ、ジョロ・・・!」

サンシローの表情が輝く。

コジローが笑みを浮かべる。
 
ムサシは無言で頷き、刀を構え直す。

「これで決めるぜ。全戦力、ぶつけてやらぁ!反撃開始と行こうぜ、息子達!」

ミサオが言い放つ。

見守るクミコを含め、六つの魂が再び一つに揃った。


そこで又、超神兵の咆哮が空気を震わせる。
 

背中合わせに融合した異形の巨体が、四本の腕をうごめかせながら、家族たちを睨み据える。

その姿を見ても、永井家の面々は一歩も退く気配は無い。

「ムッちょん! 準備いいか!」

ミサオの声に、ムサシが頷いた。
 
刀を構え、静かに一歩前へ出る。

 「重力、斬撃に乗せる。同時に異形の空間操作にも干渉、重力による空間固定・・・2点への膨大な魔力使用。出来るか?・・・いや、やってみせる!いざ、参る!」

言葉と共に、両腕を広げて異形に走るムサシ。

右手の刀は既に細かく震えている。

空いた左手には魔力を練っている、

「これが今の俺の、全力だぁ~っ!」

ムサシは飛び上がり、異形の身体から滲み出る黒い霧を左手の重力操作で押さえつけ、右手一本で振りかぶった刀を、重力で加速させて一直線に下へと叩き込む!

(ズバッ!)

重力刃が異形を斬り裂き、敵の空間操作が一瞬止まる。

「コジョ、今だっ!」

ムサシが叫ぶ。

「おっけ~!そろそろ火加減、ちょうど良さそうだしなぁ。」

コジョがにっこり笑いながら、ムサシの攻撃の間に練り上げていた魔法を放つ。

胸の前で、祈るかの様に組み合わされていた両の拳。

それをそのままの形で前に向けたコジロー。

指鉄砲が拳銃ならば、これは言うなればバズーカ砲。

「ムッちょんの作ってくれた隙間、外すかよ!」

裂けた装甲の隙間をえぐるようにして打ち込まれた蒼い炎の砲弾が、裂け目を広げてプスプスと炭化する。

「サンくん、冷やしキツめで!」

「任せといてっ!」

コジローの言葉に反応するサンシロー。

 氷の魔力が収束し、ピンポイントで炭化した場所に瞬間凍結を起こす。

「ジョロッ!ヤツを固めてくれっ!」

3人の動きを見ていたミサオがジョロに叫ぶ。
 
「いくよ、パピ!」

異形の足元から土柱が何本も突き上がり、異形の腰から下をがっちりと封じた。

 (ズズン・・・!)


四兄弟の連携が、異形の一角に壊れかけた一点を生み出した。

 「よくやった・・・ムッちょん、コジョ、サンくん、ジョロ。パピはうれしすぎて、昇天しちまいいそうだ・・・。」
 
ミサオは前へ出る。

 「てめぇの硬ぇ身体・・・こいつらが砕くまでの道を切り開いてくれた。

 ・・・だったら、締めはこの俺がやるしかねぇだろ?」

構えはない。

型もない。

だが全身から殺気と気迫を放ちながら、ミサオは歩を進める。

無防備に異形の前に立つミサオ。

 「これがみんなで初めての共同作業だ・・・俺は幸せもんだ。・・・永井流・魂震掌!」

ミサオの捻りを加えた右の掌が、地を蹴った勢いと全身の捻りを乗せて、敵の胸部中央に叩き込まれる。ただの属性の無い膨大な魔力を乗せて。

(バゴンッ!)

それまでうごめいていた異形が、硬直する。
 
掌底に込められたのは、空手、柔道、八極拳、合気、剣術・・・これまで積み重ねた努力の積み重ねと、家族への想い。

(ドゥン!)

破裂音とともに、掌からのエネルギーが突き抜け、2つの肉体をつなぎとめていた背中合わせの敵の胴体に亀裂が走る。

次の瞬間、超神兵の軸・・・異形の核が、内側から弾け飛んだ。

縦に裂けながら崩れ落ちる巨体。

誰もが言葉を忘れ、ただ、ミサオの姿を見つめていた。

 「・・・本当の居場所に帰りな。お前にゃ、この世界は似合わねぇ。」

呟くように、ミサオが言う。

風が吹き、静けさが戻る。

その中心で永井家の父、ミサオが、拳を構えることなくただまっすぐに立っていた。


「おおっ・・・超神兵が!我が偉大なる超神兵が!この国の・・・カチオの未来が!」

テラスから永井家と超神兵の決着を垣間見た、国の象徴たる枢機卿がうろたえている。

教国の新たなる計画の破綻に、絶望し、絶叫する。

「我が国の教え、カチオの栄光がっ!馬鹿なっ!こんな、こんな事で・・・は、ははっ・・・アーッハッハッハッハッハッ、我が、カチオは永遠なのだ~~~っ!


正気を失ったような恍惚とした表情で叫ぶ枢機卿。

周りの聖騎士達にも動揺が走り、右往左往する、



「枢機卿閣下!さあ、こちらへ!下賎の所業を長く目にされる事など、お身体に障ります。中へ、お部屋に戻りましょう・・・。」

錯乱する枢機卿の身体を支え、テラスから移動を施す男。

側近の1人、マリアード・ギルモア。

枢機卿の傍に常に寄り添い、国の未来を憂いていた男。枢機卿補佐兼典礼大司教。

(この国の未来の礎を、あの男・・・いや、あの家族が壊してしまったのかっ!

・・・許さん。

・・・決してこのままには、して置かぬぞ・・・!)

テラスから姿を消す2人とそれを守る上級聖騎士達。

「増援は!他の場所からの増援はどうした!」

正気を取り戻し、激昂するクレブの言葉に、慌てて走り寄る1人の聖騎士。

「はっ!それが、通達はとっくに出ておりますが、来る気配が一向に・・・。」

「何をやっておる!早く伝令を走らせよっ!あのような不埒な輩共、一刻たりともこの地で息をもさせるなっ!急げっ!」

「はっ!直ちに!」

聖騎士は一目散に信徒地区とを繋ぐ検問へと走る。


「そ~いえばさぁ、戦ってる時ここの聖騎士とやら、増えなかったよなぁ、ムッちょん?」

「・・・パピ?仕掛けですか?」

コジローの疑問を受け、ミサオの顔を覗き込むムサシ。

「・・・まあ、100パーってわけじゃなかったが、ここのギルマスのランカさんも、熱い血持ってる女性だった。そういうこった。

今回の件は、国が絡んでるからな。

デカい話になりそうだから、根回ししとかなきゃと思ってな!」

笑顔で返すミサオであった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

場所は変わって、聖カチオ教国、神官地区と信徒地区をつなぐ検問所。


「だ~か~ら~!通せって言ってんだろ!さっき見えてんだよ!ありゃ闇憑きだろ!あいつらの案件は、冒険者で処理する決まりだろうが!」

「そうだそうだ!」

「いや、こちらも情報が詳しく降りては来ておらん!それよりも、お前達の後ろの騎士達が通れん!道を開けよ!」

「そんな事言って、俺達の飯の種、そっちでかっさらうつもりか?この国は、ギルドとの協定、無視しやがんのかっ?」

「そうだそうだ!」

「そんな事言ってはおらん!それよりも、道を、道を開けよっ!」

似たような光景が、信徒地区と獣人保護区にまたがる検問所でも起きている。

押し問答のフリをした、冒険者ギルドの妨害工作。そのせいで道を塞がれた聖騎士の増援部隊は足止めを食らっている。


先に、ミサオが食堂の女将に託したS級冒険者のペンダント。

それがこの国の冒険者ギルドのギルド・マスター、ランカの手に渡り、この国に滞在する冒険者へ号令が発せられている。

「S級のミサオ一家、家族全員の退却の支援を全力でやるように!」

面会時の、ミサオとランカの密かな取り決め。

それが今、迅速に機能していた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「パピ、この後どうするの?」

「そうだよ、このままここに居ても、めんどくさい事が・・・。」

不安そうな顔をするジョロとサンシロー。

「ただこの国を脱出。・・・ってわけにもいくめぇよ。お前さん達の気にしてるあの子の所、行かなきゃお前達も落ち着かねぇべ?」

懐から、魔法防壁を通過する魔道具を取り出しながら言うミサオ。

「そうね。私達だけって訳にはね。先の事も考えて行動しなきゃ!じゃあ、とりあえず・・・。」

「ああ、ずらかるか!」

クミコの言葉に答えるミサオ。

向かってこようとする聖騎士達を叩き伏せながら永井家一行が走り出す。

千切っては投げ、蹴り、殴りながら永井家一行は混乱の隙を突いて、魔法防壁を魔道具で抜け、その姿を消す。

目指すはこの国の最下層、獣人保護区。

永井家のこれから。

まだそれはあやふやなまま、6人は今出来る事に、全力で動く。


人目を避けながら、ギルマス・ランカの差配を幸いに、信徒地区を抜け、一路獣人保護区へと足早に向かう永井家一行。

「パピ?」

走るミサオの背中に、ジョロの声がかかる。

「どした?今日の殊勲賞!」

皆で駆ける中で会話が進む。

「これでラティファちゃん・・・泣かずに済むかな?」

「・・・そうだな。そうだと良いな!」

笑みで返すミサオだが、内心ではその先の事まで考えていた。

(しばらくの間、誘拐やら闇憑きの件に関しては、この混乱だ。沈静化するだろう。

しかし、その後は?

あの保護区に名を借りた差別の構造は?

知った以上、見過ごせないよな・・・。)

ミサオは思案にふけりながらも、気付けば一行は無事、獣人保護区へと侵入する事に成功する。

サンシローの案内で、この地区の長・ヘンリーの元へと迷わず向かう永井家一行。

「深夜に済まない!火急の件にて、話し合いに来た。入ってもいいだろうか?」

テントの外で止まり、声をかけるミサオ。

「は、はいっ!すぐ参ります!」

慌てて入り口へと近づいてくる足音と共に、幕が開けられ、タヌキ耳の獣人、ヘンリーが顔を出す。

「ギルドのランカさんから、話は伺っています。さぁ、皆様中へ、狭くて申し訳ありませんが、どうぞ!」

こちらにも、この地のギルマスの手は回っていた。

(うれしいじゃねぇの!義理人情は、異世界でも通用するんだな。ありがてぇよ・・・。ランカさん!冒険者のみんな、)

仕事が出来る人間で助かったと、ミサオは内心ランカと冒険者達に感謝を捧げる。

床に皆で座り、ヘンリーと向かい合う永井家。

「取り敢えず一旦、カタは付いたよ・・・井戸の件、助かった。ありがとうございます。」

サンシローがヘンリーに頭を下げる。

「いや、それは良かった!水神様(みすがみさま)のお役に立てて何よりです。・・・それより、皆様の、その、ご関係・・・は?」

「うん・・・みんな、俺の家族!親父にお袋、兄貴たちに弟、みんな俺の一番大事な家族。・・・やっと会えたよ!」

笑顔で話すサンシローに、驚くヘンリー。

「改めまして。私、この永井家の家長となりますミサオ・ナガイと申します。

隣が妻クミコ、息子達はその隣から年齢順に、ムサシ、コジロー、水神様では無くサンシロー、コジマルです。サンシローが随分とお世話になったようで。本人に成り代わり、感謝申し上げます。」

皆を改めて紹介しつつ、頭を下げるミサオとそれに合わせるクミコ。

ミサオは言葉を続ける。


「単刀直入にお聞きします。こちら、獣人保護区の方々は、このままここで暮らしていく事をお望みですか?」

「・・・それはどういう意味でしょうか?」

ミサオの言葉に困惑するヘンリー。

「今までのこちらの方々へのこの国の仕打ち、表立ったもの、影での出来事、色々あるでしょうが、私個人の意見ですが、はっきり言って理不尽な事だと感じて居ます。」

「・・・私達も、意味なき差別、不当な、謂れなき汚名だと思っております。」

ミサオの主張に肯定の意を示すヘンリー。

「・・・ならばあなた方が、尊厳を持って生きられる場所。・・・そんな場所があれば、移住されるという意思はありますか?」

「は?そのような場所が一体何処に・・・」

「私が・・・いや、俺達が作ります!」

不審がるヘンリーに、高々と宣言するミサオ。

「今回の事件では、国というものが関わっています。

・・・おそらく、冒険者ギルドと言えど、トラブルの全てを処理出来るとは思いません。

そして今のこの混乱。こちらの保護区にも何らかの影響が出ると俺は睨んでます。」

「それは確かに・・・。」

「今よりも悪くなる恐れもあります。

ならば、自分達が、自分達らしく生きられる場所。・・・誇りを持って生きられる場所を、俺は確保する為に動きます。

最初は何もありません。ゼロからになります。

それでも良ければ、俺達と町・・・は大げさかな?村作り、してみませんか?」

そこまで一気に語ったミサオが一息つく。

「・・・私、行きたい!」

いきなり外から聞こえた声に、テントの中の皆の視線が一点に集まる。

その先には、入り口の幕を上げて叫ぶ獣人の女の子、ラティファ。

「私、今まで何にも悪い事してない!お父さんも、お母さんだって!なのに、ここの人間の人達、穢れた者とか、いやらしい人種だとか・・・おかしいよ!それに、私をさらおうといた悪者も・・・。」

目に涙を溜め、訴えるラティファ。

その姿を見て、改めてヘンリーに問うミサオ。

「長(おさ)。・・・いや、ヘンリーさん。なるべく早急に場所、見つけます。それまでの間に皆の意見、確認して下さい。」

「うむ・・・全ての者が動くかどうかは保証しませぬが、移住の件、明日にでも皆に図る事をお約束致します!」

「ラティファちゃん・・・もう泣かなくて、済むといいね!」

大人2人の会話の後ろで、少女に笑顔で言うジョロ。

それに答え、笑顔で頷くラティファ。


「あっ!お待ち下さい!」

その場を立とうとする永井家を、ヘンリーが止める。

「これを、ランカさんから預かっております。」

差し出されたのは、S級冒険者の印、銀のペンダント。

ランカが前もってヘンリーに渡していたらしい。

笑顔でミサオが受け取る。


「・・・そう時間は掛けません。連絡も、ランカさん経由でします。その日が決まったら、移動の事は任せて下さい。それでは。」

一礼し、テントを後にする永井家一行。

「さて、あと一つ防壁越えたら外だ。転移魔法阻害するこの防壁ってホントめんどくせぇよな?さあ、抜けたらすぐポチっとやって、段取り開始だ!

マイホーム・・・いや、いきなりマイホームタウン作りってか?

副業始まりでこれって展開すごくねぇ?マミどう思う?」

「若い頃から比べたら、それでも落ち着いた方じゃない?
いきなり村作りって言い出した時にはビックリしたし、前もって教えなさいよね?でも、みんなで居られる場所、素敵じゃない!」

ミサオの苦笑に、笑顔で返すクミコ。

「・・・だわな。家族だけなら何とでもなるが、知り合いレベルにまで危害が及ぶのは我慢ならねぇ。

悪党の常套手段だからな。皆の笑顔、曇らせられねぇよな。」

そう言うと、家族を促し、外へと繋がる保護区の防壁を、ミサオは越えていった。











    
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